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新型「サイバーナビ」の高音質オーディオ基板をじっくり見られる、楽ナビの25周年イベント

高音質に徹底的にこだわったという新型サイバーナビのオーディオ基板

25周年を迎えた楽ナビのイベント

 パイオニアはカロッツェリア「楽ナビ」の25周年を記念したイベントを二子玉川 蔦屋家電(東京都世田谷区玉川1-14-1)の2階で、10月8日まで開催している。

 この楽ナビ25周年イベントでは、楽ナビの歴代モデルを展示してあるほか、同製品の最新モデルのタッチ&トライなども実施。さらに、10月5日発表したばかりの新型「サイバーナビ」のタッチ&トライや新型スピーカーも展示。カロッツェリア製品の今が分かるようになっている。

新型サイバーナビの912シリーズ。タッチ&トライも可能

 この中で注目したいのは、新型「サイバーナビ」の基板展示。9V型ネットワークスティックセット「AVIC-CQ912III-DC」など、新しい912シリーズでは、「原音再生にこだわった高音質を実現する設計思想『マスターサウンド・アーキテクチャー』のもと、新『マスターサウンドクロック』をはじめとした高音質パーツを惜しみなく採用し、サイバーナビ史上最高の音質を実現」とうたわれており、その技術的背景を目で見て理解できるようになっている。

 音を目で見るとは、なにか矛盾しているようだが、回路の基板設計に詳しい方やオーディオパーツに詳しい方なら理解できる部分もあるだろう。

新型サイバーナビのオーディオ基板を手に取って楽しめる。残念ながら音は聞けないので、用意されたルーペなどを使って目で見て楽しんでほしい

オーディオにこだわった新型サイバーナビ

サイバーナビ史上最高音質とのこと

 912シリーズでは、デジタルオーディオの要となるパーツである基準クロック信号生成に、従来よりも高品質で高精度なものを採用。これにより、デジタルオーディオの音質悪化の原因であるジッターを低減し、よりよい音を出すことができるという。ジッターは時間軸方向のゆがみのため、なかなかスペックに現わすことが難しいのだが、今度のサイバーナビではそこにも手を入れてきた。

 さらに、このマスターサウンドクロック周辺の抵抗には、音質に悪影響を与えにくい非磁性タイプの抵抗(fのマークが入った抵抗)を採用。基準信号まわりの信号変化に配慮している。

 分かりやすい部分では、信号の増幅を行なうオペアンプに、ハイエンドオーディオ機器・プロ用オーディオ機器用の「MUSES8820」を採用。このMUSES(ミューズ)チップも見ることができる。このミューズシリーズのオペアンプは、「従来では音質向上を実現する際の障壁になっていた、材料・チップサイズ・生産性などを意識せず音質を追求し開発した半導体デバイス」(日清紡マイクロデバイス)と製造メーカーが専用Webサイトで語っているように、高級オーディオ製品向けにデザインされた製品。実際に、サイバーナビのオーディオまわりの開発にたずさわったスタッフに聞くと、「これまでよりも部品レベルで一桁違うコストがかかっています」とのこと。デジタルオーディオの基礎体力は半導体部品で決まるところもあり、912シリーズではオーディオにこだわった基礎体力を上げてきていることが一目瞭然となっている。

中央部付近にある銀色のケースがマスターサウンドクロック。オーケストラの指揮者だと思えばよいだろう。その近くにあるfのマークが入ったチップ抵抗が非磁性タイプの抵抗。余分な電磁波を出さない
中央部の半導体がMUSES8820(IC608と指示されている)。丁寧な配線やグラウンドからも、オーディオメーカーらしい配慮がうかがえる

 もちろん、基礎体力だけでなく作り込みもしっかり行なわれており、非磁性タイプの抵抗は当初4個で設計していたが、あまりにも解像度が高すぎて聞き疲れが出やすいため、2個の設計として、MUSES8820に合わせた作り込みも実施。オーディオ的に優れた製品に仕上げてあるという。

 実際、オーディオまわりの回路基板を見ても、配線を90度で曲げずにゆるく曲げてあるほか、ノイズを抑えるためのグラウンドを広く取ってあるなど、信号を丁寧に増幅しようとする意図が分かる。この辺りは、後から補正などの手段で手を入れるのが難しいため、日本有数のオーディオノウハウを持つパイオニアがしっかり仕上げてくれるているのはうれしい部分だ。

 ところで、912シリーズで気になるのは「サイバーナビ史上最高の音質を実現」と宣言されているところ。これまで音に優れたサイバーナビとして「サイバーナビ Xシリーズ」があったが、それを超えることはできたのだろうか?

こちらはナビゲーション基板。トロイダルコイルや2本で2万6000μFの電解コンデンサを見ることができる

 担当者に聞いたところ、銅メッキされたシャシーやビスを用いるサイバーナビXのメリットは、徹底的に騒音となるフロアノイズを押さえ込んでいることにあるという。徹底的に静かな空間を作り出すことで、ワイドなダイナミックレンジを得ており、そこは負ける部分があるとのことだ。

 今回のサイバーナビ912シリーズでは、銅メッキされたシャシーやビスなどは用いていないものの、一般的なナビとしては異常なまでにオーディオに物量が投入されていた。逆に言えば、そこまでオーディオ製品として優れたものにしないと、スマートフォンが高機能化するなかでの製品特徴が出しづらくなっているということになる。

 サイバーナビであれば、インターネットつなぎ放題のサービスもあり、ミュージックライブコンテンツの多いYouTubeの視聴アプリを使うこともできる。さらに、ハイレゾ配信も始まっている、各種スマートフォン向け音楽サービスと接続して、高音質なクルマの室内空間を作り上げることも可能だ。

 単なるナビ製品ではなく、インターネットコンテンツに接続可能な高音質エンタテイメントプラットフォームになりつつあるのが、サイバーナビの現在地ということなのだろう。

 と、小難しいことを書いてもみたが、ここでしか見ることのできない(手に取って裏側も見られるよ)美しくデザインされた基板を眺めるだけでも楽しく過ごせるイベントとなっていた。8日までとなるが二子玉川の蔦屋家電を訪ねていただければと思う。

【お詫びと訂正】記事初出時、MUSES8820の半導体タイプをDIP8と表記しましたが、表面実装タイプのためSOP8になります。お詫びして訂正させていただきます。