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ベルリング、消防隊員を対象にした運転講習会 緊急走行時のレベルアップを図る

2024年3月6日 開催

ベルリングの救急車「C-CABIN」で講習を実施した

 救急車や消防車の企画・開発を行なうベルリングは3月6日、消防隊員を対象にした「救急車 運転講習会」を千葉県千葉市にあるKatsumata Mobility Laboにて実施した。

 参加した消防隊員はコーナリング、スラローム、急ブレーキなどをしながら緊急走行時に求められる運転技術を確認した。

ベルリングの救急車「C-CABIN」で急ブレーキやスラローム走行

 すでに消防隊員は日ごろから救急車を使って迅速に患者を医療期間に届ける技術を持っているが、今回の講習は運転に対して新たな発見をしてもらうためのもの。

Katsumata Mobility Laboにて消防隊員を対象にした「救急車 運転講習会」が開催された

 普段はあまりすることのない速い速度でコーナーを抜け、パイロンの間を縫うように走るスラローム、急ブレーキなどを運転の研究・研修コースがあるKatsumata Mobility Laboで行なった。

勝又自動車株式会社 代表取締役社長 勝又隆一氏
株式会社ベルリング 代表取締役 山木拓磨氏

 コースではKatsumata Mobility Laboの教習車と、ベルリングの救急車「C-CABIN」のデモカーも使い、実際の救急車の重さや重心の高さがある中での講習となった。

教習車も併用して講習を実施
急ブレーキテストに向かう教習車

 講習は受講者の技量や癖に応じてレクチャーする「D-SUP」というプログラムを通じて行ない、Katsumata Mobility Laboを運営する勝又自動車でこれまで多くの運転講習を行なってきたインストラクターが担当する。

 受講者の運転を確認してインストラクターが受講者の運転の癖を再現し、そのうえで模範運転をして、受講者が自らの運転に対して「発見」をしてもらうというプログラムとなる。

 速い速度でコーナーをまわったり、急ブレーキをかけたりすることになるが、通常の救急車の運転ではそのようなことはしない。しかし、緊急走行時にはせざるを得ない場面に遭遇する可能性があり、その場合でも事故を起こさず、搬送中の患者や処置をしている救急隊員への衝撃を最小限に抑える必要もある。

コーナーをロールして抜けるC-CABIN
コーナーでのロールと荷重のかかり具合を覚えていく

 また、速い速度でもスムーズにコーナーを抜け、急ブレーキをかけても衝撃を与えない技術を身に付けておけば、通常の緊急走行でもより揺れや衝撃の少ない運転に応用することもできる。

C-CABINでも急ブレーキを実践。急ブレーキの最初と最後の調整次第では衝撃を大幅に和らげることができることを覚えていく
スラローム走行はコーナーの応用だが、ステアリングの切り込み、ロール、荷重移動などを覚えていく

教習所で教えてもらえないことが習え、救急業務に活かしたい

 今回、参加した消防隊員は、千葉県の柏市消防局から2名、流山市消防本部から1名の3名。どちらもベルリングのC-CABINを配備して運用している。

C-CABINのデモカーで講習を実施した
救急車とコースの説明を受ける

 講習を終えた感想では、教習所や日常の運転では絶対に教えてもらえないことが習えたという言葉が聞かれた。

 具体的に身に付いた点は、座席の調整の見直しによるブレーキのかけ方の違いや、コーナーに向かう際の荷重移動やブレーキのかけ方が分かり、よりスムーズにコーナーをまわることができるようになったという。

 その際、インストラクターが自分の運転の癖を見つけ、再現して同乗者として自分で体験できる点は分かりやすく、講習時間内にも自分の運転の変化を実感したという。

解説しながら模範運転を見せる勝又隆一氏

 また、講習を通じてこれまで意識していなかったところを意識するようになり、救急業務や日常の運転にも講習内容を活かしたいとの声も聞かれた。

救急車の講習を実施した理由は、緊急走行のレベルアップ

 ベルリングの山木拓磨氏によれば、ベルリングと勝又自動車の間でベース車両の購入といった関係がある中で、勝又自動車の代表取締役社長である勝又隆一氏から救急車の乗り心地や足まわりなどについて質問があるなど交流があったという。

 そこから、救急車のメーカーとして実際の走行性能や乗り心地を改善したいという考えが高まり、ちょうど2023年に勝又自動車が「D-SUP」というドライビングスキルをアップデートするプログラムを開始したことから、今回のような講習を開催するに至ったという。

ベルリングのC-CABIN。ハイエースバンがベース車となるが、外観上では右側サイドパネルを垂直に立て室内空間を広げていることが特徴となる

 C-CABINは揺れないことも特徴の1つとしているが、運転のレベルアップはさらに揺れない走行を実現できることにもつながっていく。救急車の車内での揺れは、傷病者の体調に影響するだけでなく、救急処置の円滑さにもつながる。大きな揺れがあれば、車内の救急隊員も自分の体を支えるために一瞬手が止まるなどの影響があるからだ。

C-CABINの特徴

 今回、C-CABINの納入先の消防署の隊員が受講することになったが、ベルリングの救急車に興味があるところや、世間の緊急走行のレベルが上がるのなら、ベルリングの納入先以外に対しても講習を広げていくこともありえるとしている。

D-SUPの内容

 今回の運転講習会の会場となったKatsumata Mobility Laboは、もともと勝又自動車が運営する教習所だった施設。現在は研究・研修施設として活用し、ドローンの研修などにも利用し、さまざまなモビリティの発展に関わっている。

Katsumata Mobility Labo

 中でも今回の講習のベースとなったドライビングスキルをアップデートするプログラム「D-SUP」は、日常の運転の癖をインストラクターが発見し、マンツーマンで癖を修正しスキルアップしていくプログラム。対象は初心者からレーサーまでと幅広い。特別技術顧問顧問にはレーシングドライバーの脇坂寿一氏が就任している。

自らもハンドルを握り、運転中の目線について解説する勝又隆一氏

 D-SUPの運営にも関わる勝又隆一氏は、今回の講習でも自らハンドルを握って運転のポイントを指導した。講習でも救命処置のしやすい車内は「クルマが作るのではなくドライバーが作る」を強調していた。

「救急車 運転講習会」に参加した消防隊員とスタッフたち