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トヨタ 佐藤恒治社長、型式認証不正の再発防止策を説明 新たな指示かんばんの導入やG-CQO設置など広範な対策

トヨタ自動車株式会社 代表取締役社長 佐藤恒治氏

 トヨタ自動車 代表取締役社長 佐藤恒治氏は8月9日、国土交通省に型式認証申請不正の再発防止策を届け出るとともに、東京本社において再発防止策の説明を報道陣に向けて行なった。

 佐藤社長は冒頭、「7月31日、国土交通省より受領いたしました認証業務に関する是正命令に関して、ご指導いただきました観点を踏まえて、本日(8月9日)国土交通省に再発防止策を提出してまいりました。今回の認証の問題に関しましては、やはり経営と現場の両軸で大変多くの課題があったと認識しております。あらためて経営の責任を認識しつつ、再発の防止を全社一丸となって取り組んでいくということをお約束申し上げました。その旨をもって、これから現場でしっかりと指揮を執ってまいりたいと思います」と、国交省への届け出を報告。

 国交省へ提出した「再発防止策についてのご報告」はトヨタのWebサイトに掲載されているが、会社全体の業務運営体制の再構築、自動車開発・認証全体の業務管理手法の改善、不正リスクに対応した法規・認証関連業務の実施体制の構築からなる広範なもので、本文13ページから構成されている。

 組織的には、CEO(Chief Executive Officer)である社長の直下に、CTO(Chief Technology Officer)とG-CQO(Global Chief Quality Officer)を
総合判断責任者として置き、経営判断が必要な節目会議で認証業務を正しく実行するための判断ができるよう、責任者とプロセスを見直すとしている。

 さらに、認証業務への監査のためにCRO(Chief Risk Officer)も参加するGRC会議を設置。現場が課題を上げやすい環境整備に努めることで、経営層に対して適正な情報が報告できる体制を作り上げていく。

 CEOは佐藤恒治社長、CTOは中嶋裕樹副社長、CROは長田准執行役員、G-CQOは宮本眞志カスタマーファースト推進部本部長。さらに新しく開発・認証現場を支える衝突エキスパートを設置。この衝突エキスパートには御沓悟司クルマ開発センター(Fellow)が就任する。

 佐藤社長は、現在トヨタで認証業務に直接携わるスタッフが「400名ぐらい」といい、「10%程度の人員増員を考えていきたい」と人員リソース面での強化も語る。このリソースの強化は、職場に応じてていねいに行なっていくといい、職場実態に合わせながら職場の負荷を下げるという観点での取り組みを行なっていく。

 また、認証プロセスにおいては、認証主管部署が、試験日程、対象法規№、認証車の仕様、試験環境、試験条件、データや写真の記録方法、遵守する規程や手順書№などを含む試験指示書(指示かんばん)を発行。指示かんばんのやりとりを行なうことで、いつでも認証業務に関係する者がアクセスでき、確認可能な状態のデータ保管を行なっていく。

 佐藤社長は、「まず先日の追加で(国交省から)ご指摘いただいた案件も踏まえて、やはり我々が反省すべきことが2つあると思います。まず国連法規まで含めて、法規・認証の全体像に対する理解がまだまだ甘かった。ここに対する理解を経営層を含めてしっかり取り組むということ。もう一つはエビデンスの残し方です。この部分は現場で届け出をするところまでの努力が非常に強くいるわけですけれど、届け出が行なわれた後に、第三者から見たとき、しっかりと分かりやすい形で残っているのか。体系的に残せているのかという点で、非常に我々の管理体制が、省から見たときにも、我々自身が改めて振り返っても十分な状態ではなかったということです。この2つについては、先日の(国交省の)ご指摘・ご指導を含めて、新たにさらに深掘りをしているポイントです」と、体制構築の背景を説明。広範な体制変更・仕組みの変更を行なっていくとした。

 もちろん、単純に人員増などですべてを対応すべきものではなく、再発防止策にはデジタル化の取り組みも記されている。具体的には不明なものの、「試験記録を正しく保管する作業においては、膨大な書類作成や繰り返しの確認が必要になるため、デジタル技術の活用によりミスや作業負荷を低減する取り組みも推進します」と説明されており、今後、エビデンスなど含めた認証業務のトレースや背景をしっかり記録していくようだ。

 トヨタは認証業務不正を国交省に報告後、立ち入りによって新たな不正事項が見つかるなど、試験記録の面で甘さが見られた。話題となった後面衝突の台車試験においても、1100kgと1800kgの違いのほか、被対称物の条件違いが後で「(試験実施時にダミー人形を搭載)←今回追加」と発表されている。また、台車の接触面積も1800kg台車と1100kg台車で異なっていたようで、それらは当初開示されていなかった。すでに再試験で合格した事項ではあるが、データ管理の甘さがかいま見える部分になる。

 トヨタは型式認証について、経営層レベルの会議体も変更することで不正とならない体制を作り上げていく。

 佐藤社長は、その上で一番大切なこととして「豊田(会長)も、私も一生懸命取り組んでいますのは、我々が現場に行くということ」と語る。佐藤社長自身も開発者出身であるが、改めて衝突試験の現場に行ったら、見える風景は違ったという。「会長、社長が待っていて、会議室で何か報告を受けて管理するのではなく、会長も社長も自分たちが現場に行く。こういう取り組みで声が上げられやすいようにしていく」と、現場の声を聞くことは基本的な動きになると説明した。