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ラリーチャレンジ利府に、室伏広治スポーツ庁長官参戦 熊谷町長はモリゾウさんへのありがとうを語る
2024年9月29日 13:50
ラリーチャレンジ利府開催
9月29日、2024年で3回目となるTOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジ利府が開催されている。ラリーチャレンジはエントリー層向けのラリーとしてトヨタ自動車が始めたもので、開催地によっては最大エントリー枠に達するなど人気のモータースポーツ。各地の風景を楽しみながらモータースポーツを楽しむことができ、モータースポーツツーリズムの代表的な参加型競技となっている。
ラリチャレ利府は、町内にあるグランディ・21(宮城県総合運動公園)を中心に行なわれ、本年は金メダリストでもある室伏広治スポーツ庁長官が参戦。コドライバーは全日本ラリー選手権を9度獲得している、日本を代表するラリードライバーの勝田範彦選手が務めている。
ラリチャレ開会式では、大会名誉会長である利府町長 熊谷大氏があいさつ。昨年のラリチャレ利府では、WRC(世界ラリー選手権)東北開催の意気込みを語った熊谷町長だが、本年はWRC招致の実現に向けて、さらに一段階進んでいることを明らかにするとともに、多方面に感謝の意を述べた。
大会名誉会長 利府町長 熊谷大氏あいさつ
ようこそ利府町へという歓迎の意味を込めて、ごあいさつをさせていただきたいと思います。TGRラリーチャレンジ大会in利府にご参加してくださったみなさま、本当にありがとうございます。今年もクルマにまつわるイベントも数多く用意いたしまして、子供たちから大人まで楽しめる内容となっておりますので、心おきなく楽しい時間を過ごしていただきたいと思います。
昨日、周辺のイベントでありますKDDIさん、auさん、そしてイオンモールさんと利府町でコラボした事業「おもいでケータイ再起動」というガラケーに収められた写真をプリントアウトするというイベントがありまして、ラリーカーの展示とともに数多くのお客さまがいらっしゃっていました。
その中で、音声データの復元というものもございまして、東日本大震災で犠牲になられた方の生前の声が復元されたりしていて、むせび泣いたりしていらっしゃる方もいらっしゃいました。
言いようのない悲しみの中、懐かしさのあまりに見せた涙なのか私には分かりかねますが、日常の中でもまだまだ震災は終わっていないことが印象として伝わってまいりました。
今年の1月に能登地方で巨大な地震があり、8月には南海トラフ地震臨時情報が発出され、全国的に大雨・洪水・台風・ゲリラ豪雨被害が続き、復旧途中の能登地方で再び悲劇が繰り返されています。被災されたみなさまにお見舞い申し上げますとともに、犠牲になられた方たちに哀悼の誠を捧げさせていただきたいと思います。
私たちは東日本大震災の教訓を活かし、義援金の募金、支援物資やトイレカーを送り込み、すぐ対応させていただきました。
何よりも重要なのは人的支援です。傷ついた方々のすぐそばにいること、隣にいて座ること、適度な距離感で寄り添うこと。人にとって人が何よりの薬であることを私たちは学びました。震災前、今まで誰も教えてくれなかった人生の教訓だと思います。
それを経験的に教えてくださったのは、何といっても豊田章男会長率いるトヨタ自動車のみなさんです。
震災当時の日本、産業界を襲っていた6重苦。超がつくほどの円高、高い法人税、自由貿易の不徹底、高い電力価格、厳しい労働規制と環境規制にさいなまされており、日本を脱出して工場を海外に移転させる企業が相次ぎました。
その逆境の中、トヨタ自動車東日本を被災地に立地していただき、事業を通して雇用を生み出し、税金を納めることで被災地の復興に寄与していただいたトヨタのみなさん。昔、人々の間には温かい共感が流れていたものだと詩人の茨木のり子さんは歌いましたが、まさしくその共感を思い出させてくださいました。誠にありがとうございます。
当時、モリゾウさんの口から発せられた特別な言葉、「東北は、中部、九州に続く第3の拠点だ」という宣言が、どれだけ弱った被災者に力を与えてくださったかは計り知れません。
明日を見せていただいて、ありがとうございます。ご恩は決して忘れません。
おかげさまで私たちは未来に顔向けできるようになりました。昨年のラリー大会で、将来のWRC東北開催をみなさんの前で宣言をさせていただきました。
それに伴い利府町は、昨年の末にスポーツのまち宣言を発出いたしまして、町のスポーツ推進計画を策定しました。計画内にモータースポーツの振興をしっかりと書き込み、力強く計画を推進するために役場内にスポーツ振興課を新設いたしました。
利府町はみなさんの笑顔を力に変えて未来を準備いたしております。WRC、「大きなチャレンジだね」と言われます。昨年も申しましたが、私はそうは捉えておりません。着実に考えられると思っております。
昨年参加されたエントラントのみなさんは、昨日のレッキ、コースの試走で利府町内を走られたとき、たった1年で利府の街並みがガラリと変わったこと、変わっていることに気がついていただけたのではないでしょうか?
そうです。リーフはTGRラリーや利府ラリー大会、オートテスト、今後はゴーカート、クラシックカーミーティングやデコトラの集まり、モータースポーツといったクルマの持つ可能性や魅力を最大限に活用し、特色ある町作りに取り組み、地方創生の起爆剤として街を大きく前進させています。
おかげさまで利府はまだまだ小さく、課題もあり、町としてのしつらえも十分ではありませんが、たった一つ堂々と胸を張って言えることがあります。
それは利府町には明日がありますということです。人口減少社会の局面にある日本で、多くの自治体が空き家、空き店舗、シャッター通り、過疎化に悩み、隣の方が引っ越した、亡くなった、また1人いなくなった、お店も撤退したまま次の話がない 。そのまま老朽化して学校も統廃合、子供会も解散、明日がしぼみ、寂しく力が衰える姿ばかりが目立っています。
それに対して利府町は、たとえ隣の人が引っ越してもすぐに新しい住人が移り住んできて、新しいお店は次々とオープンし、人も雇用も町内会も拡大傾向にあります。
明日どんな人に会えるのか、新しいお店はどんなお店なのか、新しい住宅地は何という名になるのか、明日をワクワクして期待して迎えることができる町におかげさまでなりました。
今日のラリチャレでは、室伏長官はじめ多くの方がエントリーしてくださり、半年前の4月にはモリゾウさん自ら利府町立第2小学校の5年生に向けてカーボンニュートラルの出前授業をしてくださいました。
学校の校庭で行なわれたモリゾウさんのドリフト走行のデモランには、児童が代わる代わる5人乗車し、モータースポーツの醍醐味を経験いたしました。おそらく第2小学校の児童生徒全員はトヨタ自動車に将来就職したいと、自動車関係の仕事に就きたい、モータースポーツ関連に関わりたいと希望し、大いに勉強に励んでいることでしょう。
モリゾウさんは授業の最後に、「ありがとうございますという言葉をお互いに言って授業を終えましょう」とおっしゃっていました。
私もモリゾウさんに準じて、みなさんにありがとうと言わせてください。
みなさんが東日本大震災の最大被災地である宮城県のラリー大会に参加してくださることで、あのときの苦しみを忘れさせてくださり、ありがとうございます。
あのときの明日をも知れぬ寂しさを忘れさせてくださり、ありがとうございます。
人は悲しみや傷ついたことに対して共感することによって美しさを取り戻すことを思い出させてくださりまして、ありがとうございます。
深い傷を負ったとしても、傷を磨き続ければ光り輝き始めることを教えてくださり、ありがとうございます。
何よりも私たちを忘れないでいてくださいまして誠にありがとうございます。今日は思う存分、未来へ向け、利府の町を駆け抜けてください。今日はどうもありがとうございます。
トヨタ自動車 早川茂副会長&室伏広治スポーツ庁長官あいさつ
大会名誉会長 熊谷町長のありがとうの思いを受けて、ラリチャレを主催するTOYOTA GAZOO Racingとしてトヨタ自動車 副会長 早川茂氏があいさつ。早川氏自身、アマチュアラリードライバーとして参戦。モリゾウ選手がスーパー耐久鈴鹿に参戦していることから利府に来られないことを伝えるとともに、熊谷町長が設定したSS(スペシャルステージ)に言及。森郷SSなど、熊谷町長の思いについて語った。
モリゾウ選手は参加しないものの、モリゾウ選手とともに東日本大震災被災地訪問などを行なってきた室伏広治スポーツ庁長官を紹介。今回、勝田範彦選手をコドライバーに、初めてラリーに参加されるという。
室伏長官は、スポーツの可能性について言及。モータースポーツによって地方創生を含め、日本を盛り上げていく起爆剤になることを語った。
また、熊谷町長のあいさつにあるとおり、この東北の地にはトヨタ自動車東日本がある。トヨタ自動車東日本 取締役社長 石川洋之氏は、東北の復興に対して一過性でない取り組みを選んだ経緯を振り返り、東北の地で仕入れ先を含め本当にいいクルマづくりをすること、モータースポーツを盛り上げていくことが現在の2つの柱であると述べた。
ラリチャレ利府には、近隣の自治体の首長も訪れており、ラリーによる経済効果や町おこしを体感。熊谷利府町長によると、いろいろな人にラリーを見てほしいのだという。東北でのWRC開催の道は遠いかもしれないが、熊谷町長は夢に向け、まずはラリチャレ利府の盛り上がりを近隣に広げていこうとしているようだった。