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TGRラリーチャレンジ利府、利府町長 熊谷大氏がWRC東北招致をトヨタへの感謝とともに宣言

TOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジ第6戦利府のスタートフラッグを振る 利府町長 熊谷大氏

 トヨタ自動車は7月23日、宮城県利府町のグランディ・21(宮城県総合運動公園)をベースにTOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジ第6戦利府を開催した。利府町をベースにしたラリチャレの開催は、2022年に続いて2度目。利府町や周辺自治体の協力もあり、ラリチャレ史上最大規模のベースエリアを確保しての開催となった。

 ラリチャレ利府の開催にあたって、大会名誉会長である利府町長 熊谷大氏があいさつ。熊谷町長は開催のあいさつにあたり、東日本大震災で亡くなった人への思いと、復興への後押しを行なったトヨタへの感謝を語ったほか、将来的なWRC(世界ラリー選手権)東北開催について言及した。

大会名誉会長 利府町長 熊谷大氏あいさつ

大会名誉会長 利府町長 熊谷大氏(右)

 関係者のみなさま、スタッフのみなさま、第2回TGRラリーチャレンジin利府 の前日に東北地方の梅雨明けが発表されました。本日の大会にかけるみなさまの思いが天に通じたのだと思います。

 遠方または近郊からのご参加、誠にありがとうございます。今回は会場をグランディ・21、宮城県総合運動公園に移し、広々とご利用いただいております。関係者のみなさま、本当にご協力ありがとうございます。

 東日本大震災から12年、昨年は10年を経て復興のめどが立ち、世界中のみなさまのご支援で私たちが立ち直り、ラリー大会を開催できるまでになりました、と言及をいたしました。

 あの当時を振り返ると、ここグランディ・21は震災と強い関係性がございます。

 1つは国際支援部隊、各国の力強い援助の拠点となった場所であり、もう1つは震災で犠牲になられたみなさまのご遺体の安置所としての機能が当時はありました。

 一方で、悲しい別れ、対面、ご遺族、変わり果てた家族や親族、友人とつらい出会いの場所であり、慰霊の場所でもありました。

 他方、無力感にさいなまされた我々が、海外から、また日本の国内から多くの助けをいただき、大変頼もしく、力強い存在でもこの場所はありました。

 その間の利府町は、空とグランディ・21との間に飛び交うヘリの爆音や車両の音がいたしまして、数多くのみなさまにはいまだに胸に残る、その音が胸に残る町でもあります。

 あまりにひどくて筆舌に尽くしがたい状況で、誰もが言葉を失い、被災した仲間にかける言葉もありませんでした。

 自分を見失いそうで、勇気や希望をどのようにどこで見出したらいいのか分からないとき、トヨタ自動車株式会社のみなさんは、復旧復興のその先を、工場、トヨタ自動車東日本を建設することで示してくれました。

 そこに言葉はありませんでした。

 荒野のような被災地に、お金や寄付や食べ物や服や下着や家電ではなくて、生産すること、真面目に仕事と向き合うこと、技術を学ぶこと、そして製品を作り、みんなが喜んでくれる「ものづくり」という日本の伝統で、その手を、支援の手を差し伸べてくださいました。

 まさしくトヨタグループのみなさんの主座である「産業報国」「自分や会社のためということを超えて、困っている人々や地域のために」を実践してくださいました。そこに言葉はなく、ただただトヨタのみなさまの姿勢、極めて誠実に、誠を通して物事を遂行しようと努める美しい心が、気持ちがありました。

 私は震災から12年を経て初めて言葉を見つけたような気がします。その言葉は「ありがとう」です。私たちが悲しいとき、何も語らず、話さず、言葉にもせず、寄り添っていただきましてありがとうございます。

 私たちが苦境に立たされ、人を否定された気持ちになっているとき、何も語らず、話さず、言葉にせず、寄り添っていただきありがとうございます。

 私たちの傷が深く、疑心暗鬼になり、ひどい言葉を口にしても、何も語らず、話さず、言葉にせず、寄り添っていただいてありがとうございます。

 私たちの傷口がふさがれはじめ、笑顔の準備ができたとき、何も語らず、話さず、言葉にせず、 そっと寄り添っていただきありがとうございます。

 おかげさまでコロナ禍も乗り越えTGRラリチャレの2回目を迎えることができました。

 2回目を開催するにあたり、記念すべき1回目のモリゾウさん(当時、トヨタ章男社長、現会長)の言葉。今日はモリゾウくんが来てくださっていますが、言葉を大切にしたいと思いますし、その言葉によって私たちは新しい指針を示していただいたと思っております。

 モリゾウさんは、地元河北新報さんのインタビューに答えて、こう述べてくれました。

「いつか東北地方でWRCを開きたい」。

 ラリータウン、ホストタウンとしての利府町、モナコとほぼ同じ人口規模で、アクセスの優位性、海、食事。何よりも私たち利府町は、世界の3大スポーツを2つ、FIFAワールドカップ、そしてオリンピックをこのグランディ・21で経験いたしました。国体、FIFAワールドカップ、オリンピック、ラリチャレ、そして世界ラリー選手権。

 みなさん、「難しいよ」と思われた方もいらっしゃると思います。私はそうは思わないんです。

 実はこのラリチャレの成功の願掛けをしに、東京出張行ったときに平河天満宮にお参りしに行ってきました。そうしたら、平河天満宮に7月、文月の命の言葉というのが配られていました。なんと豊田佐吉さんの言葉です。

「人間のやったことは、人間がまだやれることの百分の一にすぎない」。

豊田佐吉氏の言葉を紹介する熊谷 利府町長。左はモリゾウくん

 人間にはまだ多くの可能性が秘められているということ。私たちがやろうとしている人間の可能性を、天から豊田佐吉さんに「がんばれよ」と言われたような気がいたしました。

 WRCは、私たち利府町だけでできるものではありません。本日は、周辺自治体の首長のみなさまにも参加していただいております。ラリー大会の素晴らしさを近隣市町村と共有をさせていただき、WRC開催の一歩を踏み出してまいりたいと思います。

 目的地は遠いかもしれません、でも1人ではありません。コドライバーがいればたどり着けると思います。

 ぜひみなさん、世界の人々に、国々に、みなさんに。支援のお礼「ありがとう」を届けることを手伝ってください。

 最後になりますが、今日は利府の夏を一杯楽しんで、リフレッシュして、美しい走りで町内を走ってください。

WRC東北開催の可能性は?

 熊谷町長があいさつで言及したWRCの東北大会。日本のWRC開催については豊田市が契約を得ているものの、数年後については当然ながら未定となっている。熊谷町長に聞いたところ、すぐにというのは無理だが、ラリーチャレンジの開催などを通じて経験値を高めていきたいとのこと。

 東北には魅力的な林道が多数あり、複雑に入り組んだ海岸線沿いの道など世界でも有数の景観を誇る道路もある。東日本大震災で大きな被害を受けた地域だが、現在の(早くても数年後だが)風景が世界に発信されることで、震災からの復興も世界へ向けて大きくアピールできるし、熊谷町長の語るように世界へ向けて感謝の意を伝えることもできるだろう。

 現時点では夢の開催案に過ぎないが、仙台港や仙台国際空港という国際的なゲートウェイの存在は、大量輸送を伴う国際大会を開きやすい環境である。本格的な開催には、多くの住民や自治体、組織の理解が欠かせないが、TGRラリーチャレンジの開催は、そうした理解の広がりの一助になっているのは間違いない。

大会を盛り上げていた、リーフちゃんとモリゾウくん