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BMW、PHEV仕様の新型「M5」公開 システムトータル727PS/1000Nmのモンスターマシンに

2024年10月2日 発売

1998万円

新型「M5」の発表会をブランドストア「FREUDE by BMW」で開催

約70kmのゼロエミッション走行可能

 ビー・エム・ダブリューは10月2日、ハイパフォーマンスセダンの新型「M5」を発売した。価格は1998万円。同日、麻布台ヒルズにあるブランドストア「FREUDE by BMW」において発表会を開催し、ビー・エム・ダブリュー 代表取締役社長の長谷川正敏氏があいさつを行なうとともに、BMWブランド・マネジメント・ディビジョン プロダクト・マーケティング プロダクト・マネージャーの御舘康成氏が製品概要について紹介した。

 BMW Mが開発したM5は、プレミアムセグメントにおける高性能セダンとして1984年に初代モデルが登場し、今回発表の新型M5は第7世代となる。BMW Mが開発するMモデルには2つのカテゴリーがあり、1つはレーシングカーの技術を採用して市販車でありながらサーキットでの本格的な走行を可能としたMハイ・パフォーマンス・モデル、もう1つは公道における高いスポーツ走行性能とプレミアムカーとしての快適性の両方を兼ね備えたMパフォーマンスモデルであり、新型M5はMハイ・パフォーマンス・モデルに位置付けられる。

新型M5のアンベール

 全面改良された新型M5は、V型8気筒4.4リッターMツインパワーターボエンジンに、M5としては初めてとなるM専用プラグインハイブリッドシステム「M HYBRIDシステム」を搭載し、先代モデル同様にM専用の4輪駆動システム「M xDrive」を組み合わせる。

 エンジンは最高出力430kW(585PS)/5600-6500rpm、最大トルク750Nm/1800-5400rpmを発生し、これに容量22.1kWhのバッテリ、145kW(197PS)を発生する電気モーターを組み合わせた。クロスバンク型のツインターボエンジンは、1/1000秒を争うサーキット走行直結の技術の1つであり、ツインスクロールターボ2機を向かい合うシリンダーの排気管を敢えてまたいで配置することで、ターボに排気のパワーが遅れずに干渉することなく理想的な間隔で加わるため、鋭いレスポンスとスムーズな力強い加速を実現しているという。

V型8気筒4.4リッターMツインパワーターボエンジンは最高出力430kW(585PS)/5600-6500rpm、最大トルク750Nm/1800-5400rpmを発生。これにモーターを組み合わせ、システムトータルの最高出力は535kW(727PS)、最大トルクは1000Nm

 また、BMW Mモデル専用に開発された8速Mステップトロニックトランスミッションのハウジングに電気モーターを組み込み、BMWグループが特許を取得したプリ・ギアリングにより、電気モーターが発生するトルクを高性能6気筒ツインターボエンジン相当の450Nmまで増強させることが可能となり、システムトータルの最高出力は535kW(727PS)、最大トルクは1000Nmとした。電気のみでの走行も可能で、約70kmまでゼロエミッション走行を可能にしている。

 M xDriveはインテリジェント4輪駆動システムのBMW xDriveとアクティブMディファレンシャルをベースとし、Mモデル専用に開発された制御システム「ドライビング・ダイナミクス・コントロール」によって制御。さらに車両の安定走行をサポートするDSC(ダイナミッック・スタビリティ・コントロール)が装備されており、日常の安定した走行からサーキット走行まで対応する。基本設定は「DSCオン・4WDモード」で、Mダイナミック・モード(MDM、4WD Sport)ではリアアクスルへの駆動トルク配分が増加し、リアホイールのスリップ許容量が大きくなることでより多様なハンドリングを楽しめるという。さらにDSCオフ時に選択可能な後輪駆動「2WDモード」も用意する。

 エクステリアではM専用エアロバンパーやガーニッシュ、夜間走行時にBMWブランドの象徴である造形を印象的にライトアップするBMWアイコニック・グローを備えたM専用ブラックキドニーグリル、5シリーズより75mmワイドなフロントフェンダー、Mカーボンリアスポイラー、専用デザインのディフューザーが施されたM専用リアバンパー、Mスポーツエギゾーストシステム、5シリーズより48mmワイドなリアフェンダーなどを特徴とした。

ボディサイズは5096×2156×1510mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは3006mm
エクステリアでは5シリーズより75mmワイドなフロントフェンダー、48mmワイドなリアフェンダーなどが特徴的。タイヤはハンコック「VENTUS S1 evo Z」を装着
プラグインハイブリッドなので外部給電も可能

 また、インテリアでは先代モデルに比べてボタン類が大幅に削減され、無駄を省いた洗練された印象を付与。BMWカーブド・ディスプレイは最新の12.3インチのインフォメーションディスプレイと14.9インチのコントロールディスプレイで構成され、インストルメントパネル中央からドアトリムを立体的なクリスタル面が貫くBMWインタラクション・バーを標準装備し、Mカラーのアンビエントライティングをはじめ、ドライバーの好みの走行モードに応じて室内空間をアーティステックに演出する。

新型M5のインテリア

「今まで経験したことのないハイパワーのモデル」

ビー・エム・ダブリュー株式会社 代表取締役社長の長谷川正敏氏

 発表会で登壇した長谷川社長は、新型M5について「ドライビングモンスター」と評するとともに、「M5は日本でも非常に人気が高いモデルで、世界販売台数を見ますと、昨年は1年間で20万台を超える販売台数を記録しております。一昨年が約17万台だったことを踏まえますと、非常に大成長しているセグメントの1つです。私も古くからサーキット走行を楽しんでおりまして、実はレースにも参戦した経験がございます。そういった意味でどこか心の中ではMモデルに関しては人一倍思い入れが強い。私自身、前世代のM5(F90)のステアリングを握っておりますが、そういった意味でも思い入れの強いモデルです。そのM5が新しくなるということで、私も非常に興奮しております。史上初めて電気の力を加えることで、今まで経験したことのないハイパワーのモデルになっています」とコメントした。

ビー・エム・ダブリュー株式会社 BMWブランド・マネジメント・ディビジョン プロダクト・マーケティング プロダクト・マネージャーの御舘康成氏

 また、製品概要について説明した御舘氏は、BMW Mモデルユーザーの最も深い喜びはサーキット直結のテクノロジーを日常で駆ることとしつつ、M5ユーザーは医者、弁護士、公認会計士、あるいは企業の役員が多く、激務の1日を終え、その最後にMモデルのエンジンの咆哮を聞き、正確無比なステアリングや一体感のあるドライビングを楽しんでいる人が多いといい、「あたかも自分のキャリアを自在にコントロールしていける、そんな前向きな気持ちに、強い気持ちになれる、そういった声を聞きます。私たちはこのサーキット直結のテクノロジーというこの価値に誇りを持ち、この新型M5においてもそのようなお客さまの期待に応え、超えていくためにこの商品を企画しました。その1つの挑戦がM5として初めての電動です」と語る。

 そのパワートレーンについては、「V8はラグジュアリーカーのエンジンという印象を持たれてるかもしれません。実はその通りで、日常でなめらかな回転を実現する一般的なエンジンは高回転域で排気干渉を起こし、高回転でパワーが出しにくいという特性があります。それを克服するために、BMWは独自の技術として向かい合うバンクに意図的に排気を飛ばすことによって、高回転領域でのパワーを落とさず爆発的な加速力を実現する、まさにレーシングフィールド直結の技術をこのM5にも搭載しています」。

「そして今回、そのBMWが誇るV8エンジンとモーターを搭載したハイブリッドモデルとを融合させています。実は一般的にエンジンとモーターを高いレベルで組み合わせるのは非常に難しいところがあります。ご存知の方も多いと思いますが、エンジンは回転が上がるにつれてパワーのトルクが増加していきます。モーターはその逆で、回転の前出しが1番力強く、回転が上がるにつれてパワーが落ちていく。そのため、世の中のハイブリッドは、例えばエンジンで弱い低回転部分をモーター化し、あるいは環境に配慮してエンジンはあえてダウンサイジングするといったエンジニアリングが行なわれています。しかしそれではこの電動化をより高い性能、未来を駆けぬける歓びにつなげることはできない。そこでM5は、このV8エンジンをダウンサイズすることなく搭載した上で、モーターについてはトランスミッションに内蔵されたコンパクトなモーターでありながらも、こちらもBMW独自の技術であるプレギヤリングによって450Nmまで最大トルクを高めています。つまり、最高性能のV8エンジンに対して、高性能6気筒エンジンに相当するトルクを持つモーターを妥協することなく融合。それによって未来のパフォーマンスを実現する。まさに火花が散るようなコラボレーションが新型M5のハイライトです」と語った。

 これにより、新型M5は0-100km/h加速3.5秒、レースフィールドで最も重要になる80-120km/h加速2.2秒という高性能を実現している。

エンジン出力
BMW独自の技術であるプレギヤリングによって450Nmまで最大トルクを高めた
0-100km/h加速は3.5秒、80-120km/h加速は2.2秒
重量物をすべてホイールベース内にレイアウトすることで前後重量配分の適正化と低重心化を実現

 一方でリアルなモータースポーツでは電動化には課題があるとし、その弱点は車重が重いことにあるという。これについて御舘氏は、「パワーを上げるだけではレースに勝てないということはよく存じ上げていらっしゃると思います。そこにもう1つのBMWとしての挑戦があります。まずはレイアウトで、重量増加につながるバッテリは完璧にホイールベースの内側にレイアウトされていて、このようなレイアウトはBMW独自のものです。われわれBMWは、今から12年前の2012年に、世界のどこよりも早く革新的な量販電気自動車コンセプトであるBMW iを発表します。そこで重量を克服するというのが、駆けぬける歓びに対して最大の挑戦であるということを理解しています。そのため現在のBMWのラインアップでは、そのバッテリの搭載がいわゆるヨー慣性モーメントの悪化につながらないようにできるだけ重心点に近くに搭載する、このような他のどのメーカーにもない特別なレイアウトを取れる構造になっています」と力強くアピールした。

標準ルーフに対して30kgの軽量化を実現するCFRP製ルーフは、日本仕様では標準装備される

 なお、御舘氏は最後に新型M5の価格について触れ、「新型M5の車両本体価格は1998万円。お気づきになった方もいらっしゃるかと思いますが、この価格は先代モデルのF90と同じ価格で、これだけのパフォーマンス、これだけの新たな挑戦をし、価格を据え置きました。そこにはいくつかの理由があります。1つはこのBMWのハイパフォーマンス電動化の未来を紡ぐこのクルマに、多くの方に乗っていただきたいということ。われわれは経験上、車両価格が2000万円を超えるとお客さまの層が変わることを知って、いわゆる先ほど申し上げた職業の方が中心となり、なかなか会社勤めの方には手に入れにくい価格になります。もう1つは、やはり電動化のコストをお客さまにチャージすべきではない。先ほど私が電動化の唯一で最大の弱点はクルマが重いことだと言いました。正確に言います、クルマが重くてバッテリコストがバカ高いということです。われわれは電動化を環境整備のためにやらなければいけないからやるのではないんです。電動化をやりたいからやる。その未来の駆けぬける歓びのためのコストチャージをお客さまにするべきではない」と説明している。

価格について