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全日本ラリー第1戦ラリー三河湾が開幕、2025年のモリゾウチャレンジカップに挑戦する3人の女性ドライバー
2025年3月1日 06:10
日本最高峰のラリーレース、全日本ラリー開幕
2月28日~3月1日の3日間にわたって開催される全日本ラリー第1戦ラリー三河湾。2024年から新城ラリーに代わり開催されるようになった愛知地区のラリーで、蒲郡市を中心に競技が行なわれている。
この日本最高峰となるラリーシリーズに設定されているのが、モリゾウチャレンジカップという若手育成クラス。ラリー競技は公道を走るということもあり、シムレースなどで経験を積むことが可能なサーキットレースと異なり、成績に経験の占める割合が高い。そのためベテラン勢の能力が相対的に高く、若手が成績を積み上げるのは、なかなか難しい。
そういった意味で、2020年に続き2024年にチャンピオンを獲得した新井大輝選手は、若手として飛び抜けた能力を持った選手とも言えるのだが、正直ベテラン勢の強さが光る競技となっている。
モリゾウチャレンジカップは、そんな状況のなかで年齢制限を設定することで若手を台頭しやすくし、世界へ向けてチャレンジするラリードライバー、コドライバーを育てようとするもの。カップ名からも分かるように、ラリー好きとして知られるモリゾウ選手ことトヨタ自動車 豊田章男会長の思いから始まったもので、2024年は原則25歳以下で、2025年は女性のみ原則35歳以下とすることで若手のドライバー、コドライバーに加え、女性ドライバー、女性コドライバーの参戦を促したものになっている。
2月28日のセレモニアルスタート前に、そのモリゾウチャレンジカップに参戦する女性ドライバーのなかで、3人の女性ドライバーへの取材機会が設定された。
モリゾウチャレンジカップが広げた女性ラリードライバーの参戦機会
共同取材に対応したのは、TOYOTA GAZOO Racing WRJから参戦する平川真子選手、TEAM KANEMATSUから参戦する兼松由奈選手、FIT-EASY Racingから参戦する関あゆみ選手の3名。いずれも本誌で藤島知子さんによる参戦記を掲載してきた競争女子「KYOJO CUP」の経験者で、競技レースの経験を持つ選手たちになる。
関あゆみ選手は今回マシンが間に合わず、残念ながら開幕戦には参戦していないが、ラリーは初経験になるという。サーキットレースとラリーの違いについては毎回のコンディションの違いを挙げ、「ラリーはもちろん、サーキットの楽しみ方もあるんですけど。ラリーはまず(ペース)ノートっていうのをコドライバーと作成して、そこから自分で1つずつ作り上げていく。そこで走ったとき、タイムが出たときにすごく達成感があります」と語る。
また、スペシャルステージではなく街中を交通ルールに従って走るリエゾン区間では、ファンとの距離が近く、それも楽しみだという。
兼松由奈選手は、チーム名がTEAM KANEMATSUとなっているようにチーム運営も行なうチームオーナー兼ドライバー。YouTubeでラリーの魅力も発信しており、ラリーを戦いながらファンを増やしている。兼松選手は、「レースの特徴はみんなでヨーイドンと戦うことで、ラリーは1人、1人、1台ずつ走るので自分との戦い。コドライバーとの信頼関係が、結構タイムとかその日の自分のコンディションにもつながってくる。そういうところが特徴で、面白いところかなと思ってます」と捉えており、それぞれ異なる面白さを紹介してくれた。
平川真子選手は、兄にル・マン24時間を優勝したことでも知られる世界的ドライバーである平川亮選手を持ち、2024年シーズンはKYOJO CUPで上位争いに加わりシリーズ4位に入ったことから、レース好きにはよく知られているドライバー。ラリーも2022年から挑戦しており、ラリージャパンにも参戦した。
平川選手は、ラリーとサーキットレースの違いについて「サーキットは反復練習のように何周も何周も走って技術を磨いていくんですけど、ラリーは反復練習とかができないので、その分ペースノートが1番大事なんだなっていうのを最近学んできていて。ペースノートをどれだけ作り上げられるかっていうのと、チームとコドライバーとの信頼関係がすごい大切なんだなっていうのが違いだなって思います」という。
ちなみにほぼ同じ時間帯に、WEC(世界耐久選手権)第1戦カタールに挑むTOYOTA GAZOO Racing WECチームのリモート取材会があり、GR010 HYBRID 8号車のドライバーとして挑む平川亮選手に話を聞く機会があった。妹の真子選手へのコメントを聞いてみると、小林可夢偉チーム代表兼選手から「お兄ちゃん節をお願いします」と振られた平川亮選手は、「写真は(SNSで)見たんですけど、29番の。とりあえず写真のクルマのまま終われるよう、まずは完走をがんばってお願いします」と、ぶつかったりせずにレースを終え、完走を目指すことをエールとして贈った。
モリゾウチャレンジカップが参戦規定を広げたことにより、女性ドライバーの参戦機会が広がった。モータースポーツはクルマを使って競技を行なうスポーツだが、それぞれの参加者が能力を限界まで引き出して戦うスポーツであり、体力や経験、参戦するカテゴリーへの深い理解が要求される。シーズンを通してどのような結果になるか、女性のエントリー枠を拡大したモリゾウチャレンジカップの動向には注目が集まるところだ。