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トヨタ・コニック・アルファ、モバイル運転免許証の利用を想定した実証実験を実施
2025年3月12日 10:00
- 2025年3月14日より実証実験実施
トヨタ・コニック・アルファは、人手不足など社会課題の解決や、オンラインを活用したユーザーの利便性や体験価値の向上を目的として、人とクルマとサービスを繋ぐ新たな顧客体験を想定した実証実験を3月14日より九州大学伊都キャンパス内で実施する。
本実証実験では、国際標準規格のISO/IEC 18013-5/7に準拠するモバイル運転免許証「mDL(Mobile driving license)」と、広帯域無線通信規格「UWB(Ultra Wide Band)」、省電力無線通信規格「BLE(Bluetooth Low Energy)」の活用を想定し、実際にクルマやスマートフォンを利用したフィールドでの実証を通して、実用化に向けた技術検証および課題の洗い出しを行なう。実証実験で利用するシステムのソフトウェアおよびハードウェアの開発、実証実験を実施する場所など環境の確保は株式会社イマーゴが担当する。
利用するクルマはトヨタのシエンタで、車内に「クルマウォレット」と名付けられた実証実験用のシステムと、スマートフォンや外部のシステムとUWBおよびBLEで通信を行なうためのアンテナを設置。また、スマートフォンにはモバイル運転免許証を想定した情報とデジタルキーを格納。そして、レンタカーの受け取り、車内からのファストフード店への商品注文とドライブスルーでの商品受け取り、ガソリンスタンドでの給油を想定した一連の動作を実際に行ないながら、利用者側と事業者側双方の視点からシステムを評価する。
レンタカーの受け取りは次のような流れとなる。
利用者があらかじめモバイル運転免許証(に相当する情報)とクルマのデジタルキーを格納したスマートフォンを持ってクルマに近付くと、クルマがスマートフォンに格納されているデジタルキーを認識して自動的に解錠される。今回の実証実験で利用するシエンタでは、デジタルキー対応を擬似的に実現している。
乗車すると、クルマウォレットがスマートフォンとUWBとBLEを利用してスマートフォンに格納されているモバイル運転免許証を読み取り、利用者が運転する資格を保有しているか、利用者が運転席に着席しているのかを確認する。その確認が取れたらレンタカーの受け取り操作を行ない、デジタルキーでエンジンを始動して運転開始となる。
同時に車内では、スマートフォンの位置をUWBで正確に特定し、正しい利用者が運転していることを検知することでなりすましを防止する。実証実験では、この一連のサービスを正しく利用できるかを検証する。
ファストフード店の商品注文とガソリンスタンドの給油は次のような流れとなる。
まず、利用者がクルマウォレットを操作してファストフード店に商品を注文。店側には、注文商品とともに、利用者の位置や、いつ店舗に到着するのかといった情報が転送され、それに合わせて商品を作ることになる。
利用者が店舗の敷地に入ると、店舗側のシステムとクルマウォレットがUWBとBLEで通信を行ないつつ、正しい注文者が到着したことを通知し、商品の受け渡しを行なう。商品代金はあらかじめ利用者が登録した決済手段で自動決済する。
ガソリンスタンドでの給油では、UWBでクルマがガソリンスタンドの敷地に入ったことを検知し、クルマウォレットにガソリンスタンド専用アプリを表示する。利用者は、そのアプリから燃料の種類、窓拭きやゴミ捨てなどのオプションサービスの有無、決済手段などを指定。すると、その情報がガソリンスタンド側のシステムに転送され、店はその情報をもとに指定された給油とサービスを行なう。こちらも指定した決済手段による自動決済が行なわれる。
ファストフード店とガソリンスタンドについては、それぞれの店舗に設置されるシステムを想定したタブレットを用意してクルマウォレットとの間でUWBとBLEで通信を行ない、サービスを正しく提供できるかを検証する。
なお、今回の実証実験で利用されるスマートフォンには、mDL形式のモバイル運転免許証情報そのものは格納せず、mDL形式のモバイル運転免許証を想定した仮想データを格納して行なわれる。これについてトヨタ・コニック・アルファは、mDL形式の情報を正しくやり取りできることは昨年末に別の検証を行なって確認済みのため、実証実験でmDL形式のモバイル運転免許証情報を格納しても問題なく利用できると説明する。
また、実証実験で利用されるUWBやBLEを利用した無線通信の仕様については、業界団体「Car Connectivity Consortium(CCC)」で規格化されているデジタルキー向けの無線通信技術に準拠した仕様で実現。そのため、将来CCCが定める規格に準拠したクルマが登場した場合には、今回の実証実験のシステムも問題なく動作すると想定しているという。
トヨタ・コニック・アルファは今回の実証実験について、直接商用サービスへの実装を目指すものとしては位置付けておらず、将来のクルマとデータを繋げるサービスを実現するための技術検証であるとし、実用化の目途も定めていない。また、モバイル運転免許証についても、国内ではまだ法整備も含めて実用化されておらず、環境も整っていない。
それでも、CCCに準拠したクルマが増えつつあるとともに、モバイル運転免許証や関連の法整備も含めた周辺環境が整うのはそう遠くない未来であり、それに向けて様々な技術検証を重ねつつ、周辺業界の賛同も得ながら、近い将来のサービス提供に繋げていきたいと見通しを示した。