アウディ、A5ベースのSUV「Q5」
クワトロシステムと7速デュアルクラッチ変速機を搭載

2009年6月2日発売
569万円~



 アウディ・ジャパンは5月21日、ミッドサイズSUV「Q5」を発表した。発売は6月2日で、価格は「2.0 TFSI quattro」が569万円、「3.2 FSI quattro」が660万円。

 同社としてはQ7に続く2つめのSUVだが、ミッドサイズSUVセグメントには初参入であり、BMW X3やメルセデス・ベンツ GLKクラスをライバルとする。

テールライトもLEDこのところのアウディのアイデンティティとなっているLEDのウィングライトをQ5も備える

 

発表会でのベッシュ社長(右)と、Q5のプロダクトマネージャーであるドミニク・グラス氏

 同社は5月21日、都内で発表会を開催。アウディ・ジャパンのドミニク・ベッシュ社長はQ5を「Q7で培ったSUVのノウハウと、アウディのスポーティーな車作りのDNAの融合」と表現し、アピールポイントとして「SUVの機動性と機能性を高く実現しながら、軽快な走りと快適な乗り心地を持つ」「競合車を上回る燃費の良さ」「クーペのようなラインを持つデザイン」の3つを挙げた。

 Q5の主要スペックは次のとおり。

 アウディ Q5BMW X3メルセデス・ベンツ
GLKクラス
2.0 TFSI
quattro
3.2 FSI
quattro
xDrive25ixDrive30i
全長(mm)463545854530
全幅(mm)190018551840
全高(mm)166016751685
ホイールベース(mm)281027952755
最低地上高(mm)205200185
重量(kg)18701930180018301860
エンジン2リッター
直列4気筒
DOHC直噴ターボ
3.2リッター
V型6気筒
DOHC直噴
2.5リッター
直列6気筒
DOHC
3リッター
直列6気筒
DOHC
3リッター
V型6気筒
DOHC
最高出力(kW/PS)155/211199/270160/218200/272170/231
最大トルク(Nm/kgm)350/35.7330/33.7250/25.5315/32.1300/30.6
トランスミッション7速デュアルクラッチAT6速AT7速AT
10・15モード燃費(km/L)10.69.19.28.49.0
ハンドル位置
ラゲッジルーム容量(L)540~1560480~1560450~1550
価格569万円660万円570万円645万円675万円

 車体サイズをA4 アバントと比較すると、全長は-70mm、全幅は+75mm、全高は+195mmとなる。

 エンジンとトランスミッションをフロントアクスル上に縦置きするA5、A4のプラットフォームをベースに、SUV向きの足まわりを与えたもの。5ドアボディーに4輪駆動の「quattro(クワトロ)システム」を装備したモデルのみラインアップされる。

 エンジンは2リッター直列4気筒DOHC直噴ガソリンターボと3.2リッターV型6気筒DOHC直噴ガソリンを搭載。トランスミッションはデュアルクラッチATの7速Sトロニック。トルセンデフをセンターデフとする4WDシステムは、通常は前後4:6でトルクを配分するが、状況に応じて2:8~6:4の範囲で変化する。サスペンションは前5リンク、後トラペゾイダルとA4と同形式だが、SUV向けのチューニングが施される。

発表会場に用意された3台のQ5。手前の白が2.0 TFSIのS-lineパッケージ、左奥の青が2.0 TFSIのオフロードパッケージ、右奥の銀が3.2 FSIのS-lineパッケージオフロードパッケージはアンダープロテクターなどを装備。ルーフラックは標準で装備するが、自転車を固定するバイシクルホルダーはオプションS-lineパッケージは専用バンパーとボディー同色サイドシルを纏う
CMのひとコマ。自転車をルーフ上に乗せた姿がコミュニケーションイメージとして使われる発表会場に展示されたQ5ケーキ
A4アバントよりやや大きいがSUVとしてはコンパクトA4と同じ足まわりとパワートレーン7速デュアルクラッチトランスミッションを搭載する
ルーフラックを検知してESPのモードを自動的に切り替えるボタン1つでクルマの性格を変えるアウディドライブセレクトS-lineパッケージやオフロードパッケージを用意する

 アクティブセーフティデバイスとして「ESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)」を備えるが、Q5には通常モードのほかにオフロードモードを備える。オフロードモードではESPの介入を遅らせ、オフロード走行に適した設定になる。また急な下り坂で車速を一定に保つ「ヒルディセントアシスト」を備える。

 さらにルーフレールにラックが装着されたことを検出すると、ルーフ上に重量物が載っていることを想定したESP制御に切り替わる。これに対応する専用ラックがQ5全車に標準で付属する。ルーフラックの最大積載荷重は100kg。

 このほかダンピングコントロール、ステアリングレシオ、スロットルコントロール、トランスミッションのシフトスケジュール、エンジンコントロールをセットで、「COMFORT」「AUTO」「DYNAMIC」「INDIVIDUAL」の4種類に変化させる「アウディドライブセレクト」をオプションで用意する。

2.0 TFSIの2リッター直列4気筒ターボエンジン3.2 FSIの3.2リッターV6エンジン2.0 TFSI S-lineパッケージのコクピット
シフトレバーの後ろにMMIの操作系を備える。シフトレバー左にあるのがサイドビューのスイッチ。シフトレバー右の「A」マークはアウディ・ホールド・アシストのスイッチ。これをONにしておくと、信号待ちなどでブレーキペダルから足を離しても車が静止し、アクセルを踏むと解除される7速SトロニックはMTモードを備え、パドルシフトでも操作できる
S-line専用ステアリングMMIの7インチディスプレイ後席
ラゲッジルーム電動テールゲートはオプションオフロードパッケージの車内
SDカードスロットを2つ備え、カード内の音楽を再生できるフロントアクスル上のパワートレーンQ5のボディーシェル
7速Sトロニックquattroシステム
サスペンションフロントは5リンクサスペンションリアはトラペゾイダル
デパーチャーアングル25度、登坂能力31度とSUVとしての実力も備える急な下り坂を安全に降りることができるヒル・ディセント・コントロール
2.0 TFSIのエンジン性能曲線3.2 FSIのエンジン性能曲線
ドミニク・グラス氏

「SUVだが、スポーツリムジンの運転体験を提供したい」
 Audi AGからQ5のプロダクト・マネージャーであるドミニク・グラス氏が来日し、発表会でQ5について説明した。

 グラス氏はQ5のエクステリアを「スポーティー」と表現。SUVながらA4やTTと同じようなプロポーションを持っており、短いオーバーハング、クーペのようなルーフライン、前後フェンダーのブリスターライン、Cd値0.33といったディテールをその要素として挙げた。

デザインのテーマは「スポーティー」。クーペのようなフォルムにSUVとしての力強さを組み合わせる。Cd値は0.33

 また装備のMMIマルチメディアインターフェースは、日本市場のために開発した第3世代であることをアピール。ETC、VICS、地上波デジタル放送といった日本だけのシステムに完全に対応しつつ、「直感的にすぐ操作できることを重視した」MMIの特長を磨いたと言う。また、これも日本独自のサイドアンダーミラーに対応する装備として「サイドビュー」を開発。左ドアミラー下のカメラからの画像をMMIのディスプレイに映す仕組みにより、デザインを損ねるサイドアンダーミラーを廃した。

 インテリアはSUVらしく多機能で、アレンジしやすくしたとしている。後席は4:2:4の分割可倒式で、テールゲート近くのリリースレバーで倒すことができる。また後席を前方に100mmスライドさせることもできる。

 このところのアウディ車らしく、ダウンサイジングコンセプトによる環境性能もQ5のアピールポイントとして挙げ、燃費の向上にはパワートレーンだけでなく、パワーステアリングポンプやエアコンの最適化、低抵抗タイヤやエネルギー回生システムの採用も貢献しているとした。

 グラス氏は本誌の取材に対し「A4、A5と同じプラットフォームだが、SUVに期待されるオフロード性能を持つようチューニングした。一方で、オンロードのQ5はスポーツリムジンの運転体験を提供できる」と、オン/オフどちらでも走行性能が高いことをアピールした。

日本市場のために開発された新しいMMIはVICS、ETC、地デジに対応。オプションでバング&オルフセンのオーディオシステムを選べる
後席は4:2:4の分割可倒式。100mmの前後スライドも可能
オプションで電動パノラマサンルーフが用意される
新開発のパワーステアリングポンプなども環境性能の貢献している2段階でバルブのリフト量を変えるアウディ・バルブリフト・システムは走行性能と環境性能を両立。2.0 TFSIに装備される

予想以上に厳しい輸入車市場
 ペッシュ社長は輸入車市場とアウディ・ジャパンの状況を説明した。

 これまでの発表会では国内輸入車市場にはやや楽観的な予測を提示してきたベッシュ社長だが、今回は「プレミアムインポートカーマーケットの落ち込みは、当初の予想以上に厳しい」と“下方修正”。年初から掲げている「過去最高の年間販売台数16691台」の目標は修正こそしなかったものの「見通しは厳しくなった」とした。

 しかしアウディはこの環境でも、落ち込み幅を競合中最小限の12%に食い止め、この結果輸入車市場でのシェアは拡大。年間目標の17%のシェアは達成できる見込みとした。

 また、環境基準達成車への買い替え促進策に触れ、プレミアムインポーターでは最多の19車種が対象となることもアピールした。これにはQ5も含まれる。

 Q5の2009年末までの販売目標は700台。プレミアムミッドサイズSUVセグメントでのシェア25%を目指す。

予想以上に輸入車市場の状況は厳しい今後もさらに厳しい状況が続くがアウディは落ち込みを最小限にとどめている
台数の落ち込みを最小限にしたことで、シェアは拡大した年初の目標は見通しが厳しくなったが、まだ修正はしないアウディ・ジャパンが持つ買い替え促進策の対応車は19に上る
Q5と競合車の比較。出力も燃費も競合車を上回る半年で700台を売る

 

フォトギャラリー

(編集部:編集部:田中真一郎)
2009年 5月 22日