フォルクスワーゲン、「シロッコ」発表会
数カ月でエコカー減税車発売を目指す

2009年5月25日発売
392万~447万円



 フォルクスワーゲン グループ ジャパンは、3ドアスポーツクーペ「シロッコ」を5月25日に発売、同日、都内で発表会を開催した。シロッコの詳細は関連記事を参照されたい。

 発表会には、独Volkswagen AG デザイン部から、シロッコのエクステリア・デザインを担当したアンドレアス・ミント氏が来場、シロッコのデザインを解説した。

イメージカラーはバイパーグリーンメタリック初代シロッコ(左)と
キャンディホワイト
ライジングブルーメタリックディープブラックパールエフェクト
マフラーは左2本出しドアミラーはターンシグナルランプ内蔵。シグナルランプの上下で塗り分け、薄く見せている
2.0 TSIのホイールTSIのホイール
2.0 TSIにのみ装着できるオプションのパノラマガラスルーフ。外からはフロントガラスが天井まで伸びたように見える。スライドはしないが後端がチルトアップする
2.0 TSIの電動レザーシート。写真のシート色はトリュフ。クーペとしては快適な後席もシロッコの魅力のひとつ。「後席は重要なポイント。初代シロッコの成功要因の1つは完全な4シーターであったことだから。3代目も4人がしっかり座れる妥協のないシートを備えた」(ミント氏)
2.0 TSIのレザーシート(ブラック)
TSIはアルカンターラ+ファブリックシートでブラックのみとなる「リアウインドウは内側からはバイクのヘルメットをかぶったように見える。スポーティーで包まれた安心感を出している」(ミント氏)
TSIのインパネシフトパドルやファンクションスイッチを備えるステアリング。下端を平らにしたD字型でスポーティー感を出している
シフトレバーにもクロームを多用。ブーツの白いスティッチがやはりスポーティーペダルはアルミ調
ラゲッジスペースはトノカバー付分割可倒式の後席を倒してラゲッジスペースを広げたところ
2.0 TSIの2リッターターボエンジンTSIの1.4リッター ツインチャージャーエンジン

 

ステージ上の実車でデザインの詳細を説明するミント氏

 ミント氏はVolkswagenのデザイン戦略が「ユニーク」「ピュア(チャラチャラしていなくてシンプルで分かりやすいこと)」「タイムレス(時が経っても受け入れられる)」「(社会的)責任」から成り、そのために「ロジカル」で「アイコニック(100m離れたところから見てもフォルクスワーゲンと分かる)」「マッシブ(どっしり感)」「質の高さ」といった「デザイン言語」を採用している、という大枠からシロッコのデザインについて切り出した。

 デザイン言語の具体例はビートルの丸いヘッドライト、ゴルフの水平基調のグリルや太いCピラーで、こうしたものはシロッコにも活かされている。

 次に1950年代から現代にかけてのスポーツカーのプロポーションの変遷を見せて、シロッコはオーバーハングはフロントが長くリアが短く、キャビンが前の方にある現代的なプロポーションであることを説明。

 極端に寝たボンネットやフロントウインドウ、低いルーフで重心を低く見せ、ボンネットからサイドウインドウ下端につながる線と、テールランプからサイドウインドウ下に伸びるライン、ボディサイド下部の強いえぐれが、リアフェンダーの張り出しと4輪の踏ん張りを強調しているとした。

 またレーシングカーライクな外観のサイドミラーは、サイドウインドウにタイヤの跳ね上げや空気が当たりにくい形状になっており、窓の汚れや騒音を減らす効果があることを説明し、「Volkswagenではデザインとエンジニアリングは対立するのではなく、連携協調している」とアピールした。

ステージ上でシロッコのデザインをスケッチしながら、アクセントとなる部分を説明。ボディー後端まで伸びる長いルーフ、切り立ったリアエンド、サイドウインドウのグラフィックとその下のラインはシロッコのシンボルマーク(右)にも使われるポイント
ウェストラインと下部のえぐれから成るシロッコのサイド部分の造形を協調したイラストドアミラーの造形はエンジニアリングとデザインのたまもの。ミラーの縁の溝は、雨などを横に流して反射面やサイドウインドウへの付着を防ぐ「雨どい」丸いライト、水平なグリルなどが、フォルクスワーゲンのアイコニックな部分
スポーツカーデザインの変遷。50年代(左)はグリーンハウスが後ろ寄りで、オーバーハングは前が短く、後ろが長い。60年代(中)はグリーンハウスが前進し、オーバーハングは前が長く、後ろが短くなった。現代(右)はこれをさらに推し進めた形に
ジウジアーロのコンセプトカー「マセラッティ・ブーメラン」(1972年)のデザインテーマを量産車に応用したのが初代シロッコ(右)と説明した。初代シロッコは実用性も人気の要因だった(右)。
ところでフォルクスワーゲンのクーペは、2代目と3代目のシロッコの間に「コラード」というのがあった。なぜ3代目の先祖としてコラードの名が出てこないのかとミント氏に尋ねたところと「コラードはボディーもエンジンも大きすぎ、値段も高かったので、シロッコほど受け入れられなかった。この新型車にシロッコの名を復活させたのは、コラードからダウンサイジングしたという意味でもある。コラードを復活させるつもりはない」とのこと

 

スポーティーでエコなのがシロッコ

エコカー減税資格取得を目指す
 発表会にはフォルクスワーゲン グループ ジャパンのゲラシモス・ドリザス社長も登場。前日に終了したニュルブルクリンク24時間レースにガソリン車、CNG車合わせて5台のシロッコが出場し、どちらもクラス優勝、ガソリン車は総合15位に入ったことを報告。シロッコのスポーティーな部分をアピール。新型シロッコが欧州では「伝説的」なスポーティーカーである初代シロッコの復活である一方で、「単に古き良き時代を忍ぶクルマではなく、今日の新しいスポーツクーペのあり方を示す」製品であるとした。

 また、5月の連休にはETCの休日特別割引で高速道路が混雑したこと、先週から多くの新車が発表されていることなどをあげて、不況の中にも自動車に明るい兆しが見えているとし、同社もシロッコのようにポジティブな製品を出すことで、自動車産業を元気づけたいとした。

ゴルフ(5代目)GTIとのサイズを比較する丸岡氏アダプティブシャシーコントロールは2.0 TSIが備えるTSIとDSGのパワートレーンで環境性能を改善
コーナーリングライトやオプティカルパーキングシステムを備える。オプティカルパーキングシステムのセンサー自体は超音波だが、ディスプレイで視覚的に確認できるので「オプティカル」の名前が付いているTSIと2.0 TSIの価格と、主な装備の違い
国内クーペ市場では、輸入クーペは国産クーペよりも安定しているクーペに必要なのはプレミアム性と走行性能、スタイリングフォルクスワーゲン グループ ジャパンの2010年燃費基準達成車

 さらに、同社ではシロッコを始め16車種が2010年燃費基準を達成しているものの、低排出ガス車認定を受けられないためにエコカー減税が適用されないことについて「フォルクスワーゲンはドイツの燃費基準で設計しており、日本とは基準が違う。しかし日本の基準がクローズアップされているので、日本の基準を満たせるようドイツに働きかけている。4つ星(2005年排ガス基準75%低減)を目指しているが、あと数カ月いただきたい」と、日本のエコカー減税対象となるべく動いていることを明らかにした。

 フォルクスワーゲン グループ ジャパンでシロッコのプロダクトマネージャーを担当するマーケティング本部の丸岡直樹氏は、「ゴルフより全高を下げ、トレッドを広げたロー&ワイドなスタイル」「エモーショナルなデザインに機能的でゆとりのあるインテリア」「ドライビングプレジャーとエコ」をシロッコのポイントとしてあげ、2010年燃費基準を達成し、予定されているエコカー買換減税の対象となる環境性能もアピールした。

 また国内のクーペ市場について、国産クーペは浮沈が激しく安定しないのに対し、「輸入クーペは毎年約1万台のコンスタントな販売が見込める」こと、「クーペの購入者はハッチバックより年齢層が高い」ことなど、再参入に値するジャンルであると説明した。

 ドリザス社長はシロッコの年間販売目標台数を「2000台」とした。

(編集部:編集部:田中真一郎)
2009年 5月 26日