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トヨタレンタリース沖縄、TSLとともに「かんばん方式」導入で沖縄のレンタカーをより便利に 待ち時間を劇的改善
2025年5月16日 12:07
全国トヨタ車両販売店代表者会議で紹介された、レンタカー店へのかんばん方式導入
沖縄本島では海開きも終わり、本格的な観光シーズンが始まっている。沖縄に出かける際の楽しみと言えるのが、レンタカーによる沖縄のドライブ。沖縄は美しい海や道が多くあり、公共鉄道と言えるのが沖縄都市モノレール「ゆいレール」のみなのでクルマでのドライブに最適なところだ。北海道と並んで、レンタカー需要が高い地域になる。
そのため、那覇空港に到着した観光客の多くは、レンタカーを借りるためにレンタカー店のシャトルバスに並ぶ、タクシーでホテルに向かう、ゆいレールで沖縄中心部に向かうという流れに大別される。タクシーでホテルに向かう、ゆいレールで沖縄中心部に向かう場合は、以降の流れはスムーズだが、レンタカーの場合は利用客が多いためレンタカー店に到着してからの待ち時間がどうしても発生してしまう。そのため各社はさまざまな工夫をしながら待ち時間を短縮、レンタカー利用客の利便性を向上するために努力し続けている。
トヨタレンタリース沖縄もそんな沖縄のレンタカー会社の1つで、那覇空港近くには「トヨタレンタカー那覇空港店」「トヨタレンタカー那覇空港シーサイド店」「トヨタレンタカー那覇空港ビジネス店」の3店舗を展開し、レンタカー需要に応えている。そのうち、那覇空港ビジネス店はTRBM(トヨタレンタカービジネスメンバー)専門で法人会員向け。一般の観光客は那覇空港店もしくは那覇空港シーサイド店を利用することになるだろう。
今回、那覇空港シーサイド店を訪れ、トヨタレンタリース沖縄が取り組んでいるレンタカーオペレーションの改善、つまり観光客にとっての利便性の向上の取り組みについて、同社 営業本部 OJTシステム改善室 次長 鷹觜大介氏にうかがった。
もともと取材のきっかけは、1月29日に開催された「全国トヨタ車両販売店代表者会議」でトヨタレンタリース沖縄が、トヨタ販売物流方式(TSL:Toyota Sales Logistics)とともに行なっている取り組みとして紹介したことに興味を持ったことにある。記者自身、沖縄はそれなりに訪れており、いつも迷うのはレンタカー店選び。空港に近いレンタカー店は利用客も多いため避けてしまうこともあり、ゆいレールでおもろまち駅まで行って借りるということをしたこともある。しかし、インバウンドの関係でゆいレールも激混みとなっており、今は空港近くのレンタカー店を予約状況を見ながら借りているしだいだ。
トヨタレンタリース沖縄が、全国トヨタ車両販売店代表者会議で発表していたことを簡単に紹介すると、沖縄のレンタカー需要の増大に伴いトヨタレンタリース沖縄の売上は増加しているものの、沖縄県のレンタカー事業者は増加しており、貸渡件数的には競争が激化しているという。「もっとお客さまのご要望に応えたい一方、単純に保有を増やしてお客さまを長時間お待たせすることは避けたい、現状の人員で、高いお客さまと従業員の満足度を維持しつつ、多くのお客さまにサービスを提供したい」という思いから、改善活動を開始したという。
そのための取り組みが、「レンタカー貸出時の発車場のオペレーションに“かんばん方式”を導入」というもの。かんばん方式の導入により、クルマや情報を円滑に流すことが可能となって、日あたり貸渡件数が増加したという。
鷹觜氏によると、現在、那覇空港店、シーサイド店、ビジネス店の3店舗でクルマを共有して使用しており、貸し出し可能台数は約2500台以上になるという。
86台の駐車枠をかんばん方式で効率運用
シーサイド店は2022年3月開店。それ以前はレンタカーの需要のほとんどを一般客向けの那覇空港店で受けていた関係もあり、コロナ禍以前における観光のハイシーズンには利用客の来店から出発まで最大2時間以上かかったこともあるという。
シーサイド店の開店以降は2店舗で分担しており、最大待ち時間を大幅に短縮。「最大でも10分程度」と鷹觜氏は言い、「シーサイド店では、ピーク時に30分で70組が来店することもあります」と、現在のオペレーション改善による出発能力増大を語る。
沖縄の観光利用のレンタカーイメージとしては、空港に到着後、レンタカー会社のバスに乗り込むというものだろう。シーサイド店では大型観光バスを用いることもあり、その際にはシーサイド店に到着した観光バスから利用客が一斉にチェックインに向かうこととなる。それが「30分で70組」という需要になっており、そのお客さんたちが最大でも10分程度で出発していく。
お客さんの利用の流れとしては、到着後、セルフチェックイン機「RaCCU(ラクー)」で利用のチェックイン。それをすませてから、カウンターに行って受付をして鍵と書類を受け取る。
その後、書類に記された駐車番号の位置へ向かい、鍵を使ってクルマを解錠しスタート。沖縄の観光に向かってシーサイド店を出て行くことになる。
スムーズな流れが構築されているが、このスムーズな流れを実現するには駐車場にレンタカーが必要な時間に必要な台数きちんと入庫してあること。30分で70組を受け入れる、出発待ち時間を短くするには、その準備が大切になる。
シーサイド店では、A列からJ列まで1~9の番号が駐車枠に振られており、86台の駐車枠(A列はランクアップ車両用でA1~A5まで。通常運用はB1~J9の81台)を用意している。
クルマはストックヤードから次々に駐車枠に入庫しており、スタッフの動きを見ていると、入庫後はバインダーを返却。次のバインダーを受け取ってストックヤードに向かい、必要なクルマをピックアップして駐車枠に入庫していた。
鷹觜氏によると、このバインダー(と、そのバインダーに止められた書類)がかんばんとなっており、このかんばんを回すことで必要な場所に必要な台数入庫できたか分かるようになっているという。
具体的には3つのゾーンに分けられている。かんばんは駐車場の入庫スタッフのエリア、事務室内の入庫指示スタッフのエリア、お客さんに鍵を渡す受付エリアの3つを行き来する。スタート地点は入庫指示スタッフのエリアで、次に準備する車両クラスの指示書をバインダーにとじて事務室と駐車場エリアの窓の一部に設けられたかんばん置き場に置かれる。
そのかんばんを入庫スタッフが駐車場側で受け取り、必要なクルマを必要な位置に入庫。入庫を終えたら次のかんばんを受け取って次の作業へ。
入庫完了かんばん置き場に置かれたバインダーは、このエリアに置かれることで入庫が完了していることが分かる。その後、受付エリアに運ばれる。この書類をお客さんに渡し、お客さんが書類を持って駐車場へ行き、レンタカーがお客さんの手によって出発していく、というサイクルになっている。
TSLのサポートで構築されたレンタカー店のかんばん方式
このかんばん方式導入にあたって必要となるのは、お客さんがどのクルマでいつ出発するのかということを分かりやすく把握できていること。もちろん、ある時間帯でどのくらいのお客さんが来ることも把握できていれば、人の配置などさまざまなことの対応も可能だ。
かんばん方式導入以前は、それらが組み入れられた「駐車管理システム」の画面を見ながら駐車場への入庫を行なっていたという。鷹觜氏は、「以前は、指示に従ってみなさん画面を見て、移動する人のカン・コツで入庫していました。数が出るのが、C1(ヤリスなどコンパクトカークラス)とW2(ノア・ヴォクシーなどミニバンクラス)になります。なので、それ以外のクラスは事前に入庫しておいて、C1とW2をぐるぐる回すというスタイルで運用していました」と言い、少量の台数が出るものを事前に駐車場に入庫しておき、C1とW2を経験値で回していた部分があるという。
そのため、A1からJ9まで86台の駐車枠があってもある程度の台数が埋まっていて、フルに使うことが難しかったとのこと。たとえば、10台くらいをあらかじめ使ってしまっていると、実質使えるのは71台分。「ピーク時に30分で70組」というシーサイド店において、お客さんを待たせてしまう可能性があったという。
これをかんばん方式の導入によって、一目で駐車枠に入庫すべき台数が把握でき、かんばんが縦に並んでいることから、入庫要望のかんばんを上から入れ、入庫スタッフは下から抜くことで順番を正規化。かんばんの入ったボックスは、FIFO(First In First Out)バッファのような役割を担い、「先入れ、先出し」が自然に成り立つ。
さらなるメリットとして、先ほども触れたように「あらかじめやっておく」というような作業が発生しないこと。やるべき作業の分量が見える化されていることで、「駐車場が一杯になっていないと不安な状況がなくなった」(鷹觜氏)と、必要な作業だけすればよいようになった。
その結果、「今は70組が何回か続いても、問題ない状況になった」(鷹觜氏)とのことで、86台の駐車枠を効率よく使えるようになっているほか、スタッフの仕事の適正化もできているという。
現在はストックヤードの位置の適正化を図っており、「ここに行けばこのクルマがあるという状況」を作り出すよう工夫しているという。入庫スタッフが迷いなくストックヤードに行くことで、動線を短くして、入庫時間を短縮。従来は7分~8分で1サイクルの入庫時間が、4分で1サイクル回るようになった。歩く距離も短くなり、当然ながらお客さんに待ってもらう時間も短くなる。常に仕事のプロセス改善を行なっている。
このような仕組みを作り上げることをサポートしているのが、冒頭で触れたトヨタ販売物流方式を作り上げるTSLのチーム。トヨタではTPS(トヨタ生産方式:Toyota Production System)と呼ばれる、生産ラインのムダを省いた高効率な生産方法がよく知られているが、このTSLは販売面やそれに伴う物流面の効率アップを目指した組織になる。
現在は、トヨタ自動車の会長となっている豊田章男氏が立ち上げ、販売店をトヨタ自動車としてサポート。販売に必要なシステムの構築などを行なっている。最近では、生産から納車まで1台1台を見える化したJ-SLIM「Japan-Sales Logistics Integrated Management System」が知られている。
トヨタレンタリース沖縄の導入している「駐車管理システム」は、トヨタレンタリース沖縄が独自に導入したシステムで、NECとともに構築。新たに導入したレンタカーのかんばん方式をTSLチームがサポートし、一緒に作り上げてきたとのことだ。
カラクリも導入してカイゼンを続けるかんばん方式
ちなみに全国トヨタ車両販売店代表者会議で発表されたときには、かんばんは本棚のような場所に横に並んでいたが、今回の取材時には上から入れて、下から取り出すという縦方向に並んでいた。これについて鷹觜氏は、「カイゼンを加えた」とのこと。縦方向にかんばんを並べることで、下からかんばんを取り出せば、上のかんばんは重力で下に移動する。横に動かしていくより小さな力でかんばんは移動し、右が新しい、左が新しいという迷いもなくなる。言わば生産現場で使われる「カラクリ」といったアイデアが新たに採り入れられていた。
小さなことではあるが、「1秒1円にこだわる」「くふうと努力を惜しまない」といったトヨタフィロソフィーに基づく、人起点の設計思想や現地現物で作業を見極めるといった、トヨタらしさが現われている部分だった。
ちなみに那覇空港周辺にあるトヨタレンタリース沖縄3店舗のお勧めの使い分けだが、TRBMなど法人メンバーであればビジネスメンバー店の一択。那覇市内が目的地であれば、那覇市内に出やすい那覇空港店。一方、沖縄北部の美ら海水族館や、南部のニライ橋・カナイ橋などであれば高速の入口に近いシーサイド店になるだろうか。
とくにシーサイド店では、シーサイド店手前にある瀬長交差点の慢性的な渋滞があり、ここをどう判断するかがポイント。どちらにしろ高速に乗るので同じだと考えればシーサイド店だし、那覇市内で観光してから向かうと考えれば那覇空港店になるだろう。
ただ、この慢性的な渋滞も現在建設が進められている小禄道路の開通で、高速道路が那覇空港と直結すれば劇的に状況が変化するのは間違いない。鷹觜氏は、小禄道路の開通にも言及し、その効果に期待を寄せていた。
沖縄は本格的な観光シーズンが始まっているが、沖縄に行く際は待ち時間を劇的に短縮したトヨタレンタリース沖縄のオペレーションを体験してみていただきたい。














