「フォルクスワーゲン ポロTSI」長期レビュー 第5回:DIYで“プチ2011年モデル”化 |
都心の高層ビルの駐車場に堂々と乗り入れるポロ。今月はガソリン代よりも駐車場代のほうが高いかもしれない |
ポロがうちにやってきて4カ月が経過した。街中でも新ポロの数が増え、クルマに乗れば数時間で1~2台は必ずすれ違うくらい出回っている。
先月、燃費が改善傾向としたが、今回も前回同等の燃費を記録した。最近は忙しいせいもあり、短距離走行が中心だったのだが、かろうじて低燃費を維持している。
■クルマでの外出が多くなった今月の燃費
次第に寒くなっていく11月、ポロの燃費は先月とほぼ同じ14.95km/L。寒くなったことと雨の日があったことで、ポロでの外出が多くなった。遠出は少なかったため、走行距離自体は減っている。
給油日 | 走行距離(km) | 給油量(L) | 燃費(km/L) |
2010/9/9 | 366 | 34.7 | 10.54 |
2010/10/11 | 517 | 35.3 | 14.64 |
2010/11/17 | 490 | 32.8 | 14.95 |
日々の燃費を振り返ってみると、エアコンを使わないとき、信号待ちが多発するような状態の燃費は11~12km/L。少し遠いところまで比較的空いた道で行くと16~18km/L。その平均が14km/Lという感じである。10度を切るような寒い日の場合、若干巡航時の燃費が悪い印象を受けるが、気温との関係はもう少し寒くなった時期にはっきりするだろう。
なお、現在の走行距離は3700km程度。詳しくは後述するが、燃費という意味ではまだまだ発展途上の走行距離なのだという。実際、数値には表せないのだが、1カ月前に比べてエンジンの回転がなめらかになり、あまり踏まずに前に出るような気もしているし、アクセルオフの惰性での走行の伸びも違うような気もする。
■新車から1度も変えていないエンジンオイル
長期レビューといえば、消耗品の交換なども綴っていくものだが、残念ながらポロの消耗品の交換サイクルはかなり長くまだ何も交換に至っていない。
たとえばエンジンオイル交換は1万5000kmごと。これは新車であっても同じで、パーツ代などが無料になるサービスプログラムを利用した場合はこの距離にならないと交換とならない。万一、1万5000kmまでの間にオイルが減ったらその分を補充してくれるだけだ。
そこで、ロングライフなポロのオイルを点検してみると、量は問題ないものの、色の変化が気になった。真っ黒というまではいかないものの、汚れているように見える。新車時のオイルの状態を記録しておかなかったので正確な変色具合は分からないが、手元にある補充用の純正オイル(VW 504 Long Life 5W-30 カストロール製)と、ポロのオイルを白いコピー用紙に垂らして比べたところ、色の違いは一目瞭然だ。
ちなみに、新車時に入っているオイルはフォルクスワーゲンの「VW 504 00」規格に合致したロングライフオイル。ディーラー以外での入手は容易ではなく、どんなに安く入手しても、1リッターあたり2000円は下らない高価格オイルだ。
オイルの色だけを見ていれば心配になってしまうが、廃棄オイルの問題を踏まえて長期利用に耐えるオイルであることと、そういった交換サイクルを想定して設計されたエンジンのため、これで全く問題はないと考えたい。
しかし、問題ないとはいえ、この距離で新オイルに交換した場合にどれだけ変化があるか興味がある。今後、エンジンオイルについて何か工夫をしてみようと思う。
エンジンオイルのキャップを開けたところ。カムシャフトが直接見えない構造 | 使用中のオイル(右)と新品オイル(左) | 補充用に用意しておいた純正オイル500ml |
■エコドライブ チャンピョンシップで、低燃費運転を体験
10月30日、フォルクスワーゲンの主催の「エコドライブ チャンピオンシップ in ジャパン」が開催された。取材を優先したために競技には参加しなかったのだが、主催者のご厚意で、予備車のポロで試走させていただいた。
言い訳しておくと、予備車は走行1000kmとおろしたての新車で、完全にエンジンが冷えた状態からスタートするという不利な条件。もちろん一般競技者たちと条件が違うために競技者リストには入っていない。
競技者と同じコースを走った燃費は、17.5km/L。48分の制限時間内に完走した。ほぼDレンジ、エアコン利用は6割くらい(途中緊張で消し忘れもあり)、アイドリングストップ2回での走行で、この成績だ。不利な条件を考慮すれば“まずます”の成績との評価をいただいた。
しかし、普段からポロを常用しているという点がからすれば“下手”なのかもしれない。審査委員によれば、今以上に燃費を伸ばすコツとしては、Nレンジによるコースティング(滑空)を活用する技術を磨くことだと言う。
AT車のNレンジの走行は一部車種で構造上問題があることもあるが、ポロのDSGはMTベースのため、構造上の問題はなし。安全の問題もABSなどの装備もあってほぼ問題なしと言えるだろう。
ただ、ポロはDSGが7速まであり、エンジンのフリクションロスが少ないことなどから、Dレンジ、アクセルオフ、燃料カット作動でも惰行はかなり伸びる。わずかな燃費の差を争う競技でもなければ、手軽さを犠牲にしたり燃料カットにならないNレンジ走行をするメリットはないというのが筆者の考えだ。コースティングは燃費改善には有効な点もあるが、自動化されるまで待って、それを使うのがベストと考えている。
なお、エコドライブチャンピョンシップで競技に使われたポロは、試乗などで走行距離が伸びた個体を揃えた。主催者が競技前に試走したところ、筆者が試乗した1000km走行の予備車と、競技に使った走行距離の多い8台とは燃費の伸びが違ったとのことだ。
実際、走行距離が多いポロを試乗すると、自分のポロよりもエンジンがいっそう滑らかに回る気がする。筆者のポロは現在、3700km程度。燃費はまだまだ伸びるという期待が持てた。
予備車に乗せていただき、燃費計測をさせていただいた | 「エコドライブ チャンピオンシップ」のコース。いつか個人的にリベンジしたいところだ |
最後の最後に坂道、丘の上のゴールまでに平均燃費が0.5km/Lは下がった | ポロでは、アクセルオフで燃料カットが働いているときに瞬間燃費は85.0km/Lを示す。エンジンが十分に温まっていないと燃料カットは働かないようだ |
■うちのポロも旧型? 気になる2011年モデル
さて、2011年が近づくにつれ、いよいようちのポロも“旧型”になってしまったようだ。ポロの2011年モデルでは若干の仕様変更があった。
2011年モデルでは、メーカー装着のカーナビ「RNS510」が選べるようになり、「TSIハイライン」は「バイキセノンヘッドライト(オートハイトコントロール機能付)/スタティックコーナリングライト/ヘッドライトウォッシャー」が装着可能になった。バイキセノンヘッドライトにはLEDポジションランプがあるため、装着すれば、フロントまわりの印象が大きく変わる。
また、2009年発売の1.4リッターのNAのポロに装備され、2010年モデルの「TSIコンフォートライン/ハイライン」にはなかった助手席側のシートアンダートレーが再び標準装備になっている。2010年モデルにトレーがないのは、カーナビの機器収納スペースを確保するためという話もあったのが、実際には2010年モデルはただ空洞ができただけ。2011年モデルで元に戻すなら、2010年モデルにも付けておいて欲しかった。
なお、それ以外に2011年モデルとの差異はないようだ。外見では全く区別がつかないようで、2010年モデルを買ったばかりのオーナーはひと安心といったところだろう。
エコドライブ チャンピオンシップで用意された競技車「TSIハイライン」のうち1台はバイキセノンヘッドライト装備車だった。LEDのポジションライトが印象的 | メーカー装着のカーナビ「RNS510」を装着すると、助手席下には地デジ受信のためのB-CASカードスロットが置かれる | 「RNS510」を装着したポロGTI |
■“2011年モデル”仕様へ、助手席のトレーを増設
外見の差はないとはいえ、2011年との差異が気になりだしたら止まらない。輸入車(特にドイツ系)ではよくある年式の“サバ読み”改造をしてみようと企てた。といっても助手席トレーの装着で、外からは全く分からない極めて自己満足な改造だ。
ディーラーからパーツを取り寄せ、交換するだけど思っていたのだが、少し工夫が必要な作業になってしまった。
取り寄せたパーツは以下のとおり。
パーツ名称 | 品番 | 価格 |
トレイ | 6R0-882-601-C-82V | 1万1655円 |
ガイドフレーム | 6Q0-882-599-9B9 | 3045円 |
ガイドピース | 6Q0-881-203 | 2個で378円 |
スクリュー | N-909-187-01 | 4個で208円 |
これらのパーツのうち、スクリューは純正のビスで、サイズが合えば市販ビスでも代用可能。純正品を使うメリットはT-20のヘクスローブ(トルクス)ドライバーで回すようになっており、作業性が向上することと純正と同じ仕上がりになることだ。
ガイドピースは、ガイドフレームにはめ込み、トレイの動きを制限する部品であるが、取り寄せたガイドフレームには最初からガイドピースが装着されていたため不要だった。実際に部品を取り寄せる際は、このパーツ番号を頼るよりもディーラーのメカニックさんとよく相談したほうがよいだろう。
作業にはT-20のヘクスローブドライバーが必要になる。本来はシートを外して作業するようになっているのだが、12山の三重四角穴付ボルトに対応するソケットが必要なのと、大掛かりになると思ったので、シートを外さずにチャレンジしてみた。通常のT-20のドライバーでは長すぎて下から作業できず、T-20のビットとエクステンション、オフセットラチェットなどを揃えた。
手順は、下から短めのT-20ドライバーを手探りで入れて3個所のビスを外し、元のカバーを外す。その後、ガイドフレームを装着して6個所をビス止めし、トレイを押しこんで終了となる。言うのは簡単だが、カバーを外す段階から、下からビスの先に手探りでドライバーを当てなければならない。ガイドフレームの装着はビスを締めるので、緩めるよりもさらに面倒である。
もし、シートアンダートレイを装着したいと思う読者の方がいるなら、シートを外して作業することを強くおすすめする。シートごとひっくり返してやれば、先の長いドライバーで一気に作業できるからだ。
なお、筆者の作業で問題があった点は、入手したガイドフレームの一部がシート側のカバーとうまく噛み合わず、カッターで整形する必要があったこと。ガイドフレームをよくみると2006年出荷となっており、時期によって細かい形状が異なっていると思われる。
今回、トレイの増設で収納が少ないポロの弱点が少し緩和された。少し地味だが、収納が少なくて困っているなら、パーツを取り寄せて装着する価値がある。助手席下の収納だが、運転席からもアクセス可能でわりと便利な収納だ。
(正田拓也)
2010年 11月 22日