フォルクスワーゲン、「エコドライブ チャンピオンシップ in ジャパン」開催 大雨の悪天候の中、世界大会へ挑戦する日本代表選手が決定 |
フォルクスワーゲン グループ ジャパンは10月30日、「フォルクスワーゲン エコドライブ チャンピオンシップ in ジャパン」を、千葉県木更津市のかずさアカデミアパークとその周辺で開催した。フォルクスワーゲン「ポロTSIハイライン」を使い、周囲の約34.4kmの公道を走行し、燃費と走行マナーなどを競った。
今回の優勝者には、2011年にドイツで開催予定の世界大会へ日本代表として参加する権利が与えられた。
■エコドライブチャンピオンシップ
事前の応募によって選ばれた48名の“選手”が参加、まずブリーフィングを受けた。審査委員長でもあるフォルクスワーゲン グループ ジャパン マーケティング本部 部長の正本嘉宏氏から開催意義の説明がなされるとともに、競技説明を今回の競技長であるNPO法人モビリティ21の藤原猛史氏が行った。
正本氏は「技術だけで燃費改善やCO2削減をするには、かなり厳しい領域まで進化してしまい、数%の燃費改善もたいへん。一方で、ドライバーのちょっとした心がけひとつで燃費が20%くらい上がる」と、エコドライブの必要性を強調。フォルクスワーゲンのエコドライブの特徴については、「エコドライブはスロー走行でアクセルを踏まないと思われがちだが、クルマを運転する楽しさと融合させ、クルマを楽しみながらエコに貢献していくこと」と話した。
競技について競技長の藤原氏は、あくまでリアルな燃費を追求し、ふだんの交通の中で、いかにエコドライブをするかという考えの元で実施するとし、「周りのクルマの流れ、信号、天候、運転を含むトータルをマネジメントするコンテンストになる」と説明するとともに、細かなルール、走行コースなどの説明が行われた。
開催について説明するフォルクスワーゲン グループ ジャパンのマーケティング本部 部長の正本嘉宏氏 | 競技長のNPO法人モビリティ21の藤原猛史氏がコースを説明する | フォルクスワーゲンが唱えるエコドライブ10箇条 |
競技コースは全体で34.4km。そのうち高速道路が15.7km。制限速度どおりに走行し、信号で停車する時間を見込んで約45分かかるコースで、ルールとしての制限時間は48分間。制限時間より遅いと減点、逆にスピード違反などの行為も減点となる。また、この日の天候は雨で、燃費を稼ぐあまりにエアコンを利用せず、窓ガラスが曇ったまま運転することも減点となる。「曇らせないためのエアコン操作の工夫も、競技者の技のうち」と説明された。
燃費については、競技に使用する「ポロ TSIハイライン」の車載燃費計の数値で判断し、燃費が同一の場合には走行時間の短かった競技者が優位となる。速く走行したほうが優位という理由について、藤原競技長は「フォルクスワーゲンのエコドライブの考え方である、トロトロ走ることをおすすめしていないことが理由」と説明した。
今回の競技は8台のクルマを利用したが、いずれも使い始めばかりの低走行車ではなく、ある程度距離を走ったクルマが用意された。8台とも12カ点検、オイル交換を大会直前に済ませてある。ガソリンの搭載量はエコドライブの目的からは外れるが、競技という性質から同一条件を重視、走行ごとに満タンにしていた。
各車には審査委員が同乗するが、審査委員の体重で差が出ないよう、体重の軽い審査委員が乗るクルマには水タンクなどのおもりが積み込まれた。
各競技車には審査委員が同乗する。いずれの委員もエコドライブのインストラクターなど、その道のプロとのこと | 審査委員はチェックシートを持って同乗する | 審査委員の体重に合わせて、錘が乗せられる。このクルマは砂袋と水タンクで厳密に体重を合わせた |
■静かにゆっくりと競技スタート
エコドライブの競技だけに、スタートは非常に静かでゆっくりとしたもの。高台にある施設にスタート地点が設けられたため、発進時に少しだけアクセルを踏み、下り坂をうまく惰性で下っていくところからスタートした。
コースは、曲がりくねった一般道→高速道路→60km/hが出せる直線の一般道→曲がりくねった一般道というもので、道中はアップダウンも多い。競技者たちは思い思いのテクニックを駆使して、エコドライブに挑戦した。
午前と午後に別れ、4分おきに出発、台風接近という最悪のコンディションの中、48名の挑戦者のチャレンジが順次行われた。
走行時間の合間には、モータージャーナリストの石井昌道氏によるトークショーやフォルクスワーゲン車の最新技術を解説する「フォルクスワーゲンアカデミー」、ポロGTI、シロッコR、ゴルフRなどの試乗も行われ、競技の間でも楽しめるようになっていた。
■優勝者の燃費は台風接近の大雨という条件で20.0km/L
競技者たちの燃費は、雨天による路面の走行抵抗増大、向かい風による抵抗など、不利な条件が重なったものの、最高燃費は20.0km/Lがマークされた。20.0km/Lを出した競技者は2名いたが、規定によって2位よりも5秒ほど走行タイムの短かった工藤真輔さんが優勝となった。
公式に記録が行われた44台のうち、19km/L台が17名、18km/L台が14名、17km/L台が13名。台風接近という悪条件のため、エアコンをかけっぱなしの参加者もいる中で、いずれもポロ TSIハイラインの10・15モード燃費である20km/Lの8割を超える数値を記録した。
なお、今回のコースは事前の試走などから、晴天時であれば20.0km/Lを超える競技者が続出することが見込まれていたと言う。
■石井氏による講演会や表彰式
すべての競技者が走り終えた後は、場所を変えてモータージャーナリストの石井昌道氏によるエコドライブについての講演が行われた。
石井氏は、数々のエコドライブに関するデータを示し、効果的なアイドリングストップ時間、緩やかすぎる加速は低燃費対策として意味がないこと、60km/h低速走行の燃費がよいクルマが多いこと、60km/hを超える速度での巡航において、燃費低下率は車種によって大きく異なることなど、実データをもとにした分かりやすい解説を行った。
減速の基本は早めのアクセルOFFとし、運転スキルが必要と前置きした上で「ギアをニュートラルにするコースティング(滑空)も効果が大きい」と説明するとともに、発売予定の「トゥアレグ ハイブリッド」に自動で滑空を行う機能が搭載されることも明らかにした。
講演の後には表彰式が行われた。燃費、走行時間や減点などを総合し、10位までの競技者が表彰されたほか、特別賞や、報道陣から参加した競技者の優秀者が表彰され、フォルクスワーゲンのドイツ本社から来日したクリスティアン クラウセン氏より記念品や優勝の盾などが授与された。
今回、優勝した工藤真輔さんは、2011年に開催予定の世界大会への出場が決定。会場からは大きな拍手が贈られた。
■優勝者はエコドライブのベテラン
優勝した工藤真輔さんは大阪府在住の27歳。北海道で過ごした学生時代、3代目ゴルフCLD、ゴルフGTIに乗っていたことがあり、学生ゆえの燃料費節約のため、いかに燃料を節約するか工夫していたと言う。それが今でも身についているという、エコドライブの“ベテラン”だ。
その当時の燃費記録は、ゴルフGTIの燃料計で記録した20.0km/L。今回の応募はインターネット上の告知で知り「エコドライブ自慢」部門で応募した。
工藤さんはエコドライブを「クルマの流れがあり、それを乱さないこと」と考えており、今回もそれを実践した。
走り方の工夫としては、競技開始前にエアコンをかけて車内を乾燥させ、競技中は窓に風を当てるだけでエアコンOFFのままでガラスの曇りを避けたことのほか、ほとんどがDレンジで必要なところだけシフトアップ/ダウンしたとのこと。また、車内では審査委員と2人きりの気まずい空気を避けるために、ラジオをかけておいたことなどが明かされた。
すでに結果を家族や友人に報告したが、家族は普段からエコランの実践を知っており、家族からは「優勝する気がしてた」と言われたそうだ。
なお、来年の世界大会へ向けての抱負は「楽しんできたい」とのこと。大会で使用が予想されるMT車の運転も問題ないそうで、日本代表選手の活躍に期待が持てそうだ。
■世界大会は2011年開催
世界大会は2011年に開催が予定されているが、具体的な日程は決まっておらず、実際にエコドライブチャンピオンシップを実施したのも日本が初。今後各国でエコドライブチャンピオンシップが開催され、各国の代表が選出される見込みだ。
なお、日本の大会はDSGを搭載したポロ TSIハイラインを使用したが、世界大会での使用車種などの詳細はまだ決まっていない。燃費を競う大会のため、ドイツ本国で販売されるディーゼルエンジン搭載のTDIモデル、MT仕様が予想されると言う。
(正田拓也)
2010年 11月 1日