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ウィラーグループが鉄道事業に参入、京都丹後鉄道が4月1日誕生
沿線地域の活性化を主軸に初年度黒字転換をめざす
(2015/1/29 20:45)
- 2015年1月29日開催
1月29日、高速バス事業などを手がけるウィラーグループは、鉄道事業を行う新会社「WILLER TRAINS株式会社」を設立し、4月1日より京都丹後鉄道(略称:丹鉄)の運行を開始することを発表した(本社は京都府宮津市に予定)。
京都丹後鉄道は、第三セクターの「北近畿タンゴ鉄道株式会社」が運行していた京都府宮津市から福知山市に至る宮福線(宮津駅~福知山駅)と京都府舞鶴市から兵庫県豊岡へ至る宮津線(西舞鶴駅~豊岡駅)の運営を引き継ぐ形で運行会社として設立された。これは、北近畿タンゴ鉄道が2013年10月から上下分離方式(路線の保有と列車の運行を別の会社で行う方式)による鉄道事業再構築に向けて運行会社の公募をしたところ、ウィラーグループに決定したもので、鉄道の運行と線路や施設などの整備・運営をWILLER TRAINSが行い、施設の保有などは引き続き沿線の地方自治体などが組織する第三セクター会社の北近畿タンゴ鉄道が行う。4月1日の移管時点では運賃などは据え置かれる見込み。また、現在の北近畿タンゴ鉄道の社員は希望者についてはWILLER TRAINSに移動し、さらにウィラーグループから5名が移籍、地元での新規採用として25名を採用するという。
記者会見でWILLER TRAINS 代表取締役 村瀬茂高氏は、経営ビジョンとして「現在の地方交通は、個々の業者は熱心にやっているが、乗り換えなどの連続性が不便。ストレスのない自由な域内移動を実現するため、我々が「高次元交通ネットワーク」と名付けたシームレスな交通ネットワークとまちづくりが連携することで地域の価値を向上し、都心で生活する若い人が移り住みたくなるまちづくりを目指す。鉄道は大量輸送と定時制があり、地域にとって明るさや活力を与えるシンボリックなもの。従って、いかに地元に愛されて溶け込むかをブランディングしていくのが重要。鉄道の経営だけでは地域の人口が減少している現状では先がない。従ってウィラーグループのカスタマー部門などを沿線に移転することで沿線地域の雇用の創出や、まちづくり、運輸・交通業界のプロフェッショナルを育成する教育の場を地域の教育現場と連携し投資を行うことで、地域の活性化を行い利用者数の増加を図る。さらに、ウィラーグループが得意とする先進的なIT技術を導入することでワンストップサービスを実現し、利用しやすさにおいてイノベーションを起こす。もちろん、鉄道会社として、安全・安心であることは最も大切であり、北近畿地域の基軸なる鉄道を目指したい。初年度は黒字転換及び売り上げ12億円(運賃、鉄道の広告、物販による収入)、利用人員210万人を目標に掲げる」と述べた。
また、記者から沿線についてどう思うか?という質問に対し「こんな風光明媚で綺麗なところで生活できるのは素晴らしい。ただし、やはり交通などは不便。しかも仕事が少なく給与格差があるので若い世代の人口が少なく採用しようと思っても人が居ない。しかし、沿線の地域の人々は地元だけではなく広域的な意識があり、精力的に協力してくれるためここならば地域の変革が可能だと思う」と経営に対してやる気を見せた。また、ウィラーグループということで、高速バスとの連携する施策を行うのか?という問いに関しては「現時点では、鉄道会社として関西国際空港やJRとの連携が重要」と語った。
京都丹後鉄道の具体的な施策として、宮津線を宮津駅を起点に「宮豊線」と「宮舞線」に分割し2路線体制から3路線体制にする(宮福線は維持)。これは、宮津駅~豊岡駅を「宮豊線」、宮津駅~西舞鶴駅を「宮舞線」とすることで、路線名の分かりやすさを狙ったもの。
また、丹後神野など7駅を地域住民が分かりやすいように改称する。さらに1日乗り放題などの企画乗車券は「家族がみんなで楽しめる鉄道」をコンセプトに地域住民が利用しやすいように花見時期や祭事に併せて新規19、継続6と25もの商品を発売する予定。一部は2月1日よりウィラートラベルで予約販売を開始する見込み。
北近畿タンゴ鉄道は、2014年3月期の決算で経常損失が8億円前後と厳しい状況にあるが、村瀬氏は「確約はできないが初年度を黒字にするためにさまざまな施策を行っていく」と語った。高速バス業界においては、ユニークな施策でシェアを拡大してきたウィラーグループだけに、鉄道事業で今までのノウハウをどう活かしていくか注目したい。