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ボッシュ、ル・マン24時間で水素燃焼エンジンを展示 2週間でディーゼルを水素燃焼に変更
2025年6月15日 19:12
ル・マン24時間レースでは、レースに関連するさまざまなメーカーがブースを出展している。世界最大級のサプライヤーであるボッシュもその1社。ボッシュはモータースポーツにも多数の製品を供給している。
日本のSUPER GTでは、ECU(Engine Control Unit MS 7.4)、高圧燃料ポンプ(High Pressure Fuel Pump HDP5)、インジェクター(High Pressure Injection Valve HDEV 5.2)、マルチディスプレイ(Display DDU 10)、パワーボックス(Power Box PBX 190)、ワイパーモーター(Wiper Direct Actuator WDA)を供給。厳しいモータースポーツシーンでの信頼性、モータースポーツに必要なイコールコンディションをサポートしている。
このル・マンでもそうしたモータースポーツ用ECUなどの展示を行なっていたほか、ディーゼルエンジンを水素燃焼エンジンにコンバージョンしたエンジンを展示。展示エリアの中央に設置するなど力を入れていた。
エンジンの仕様としては、2.3リッター直列4気筒の直噴エンジン。コンプレッサーとターボチャージャーの2ステージブーストシステムを搭載し、最高出力110-125kW/3500rpm、最大トルク360-400Nm/1750rpm発生する。前述したようにディーゼルエンジンをコンバージョンしたもので、空気供給量を大幅に上げるなどの工夫が行なわれている。
これは水素の燃焼において必要となる空気量が、ガソリンや軽油と比べて多量になるための対策。ガソリンエンジンの空燃比が14.7、ディーゼルエンジンはそれよりもリーンな領域で燃焼しており、負荷によって異なるものの20くらいの領域とも言われている。
一方、水素の空燃比は34.3で、従来のエンジンに対して1.5倍から2倍の空気量がストイキ燃焼において必要となる。これはそれだけの空気量をエンジンに送り込む必要があり、ボッシュはそのためにコンプレッサーとターボチャージャーを用意した。
また、インジェクターも水素対応のものに変更。ボッシュはコモンレールディーゼルエンジンの世界的インジェクターメーカーとして知られており、世界的レベルの技術力を背景に水素インジェクターを開発した。そのほか、VVL(Variable Valve Lift)機構も増設。ガソリンに比べて7倍燃えやすいと言われている水素の燃焼を状況に応じてコントロールしていく。
そして驚くべきことは、このディーゼルエンジンを水素燃焼エンジンに変更するためにかかった時間が2週間ということ。担当者によると2週間あれば、水素燃焼エンジンとして動作するため、現在のディーゼルエンジンをカーボンニュートラルである水素エンジンにできるとのことだ。
ただ、エンジンを実際に見るとVVLの部分などは削り出しのブロックが用いられており、時間は2週間でできるかもしれないが、価格や工数は……といったところ。水素エンジンには解決すべきことも多いが、ディーゼルエンジンコンバージョンで対応できる可能性をボッシュはしっかり見せていた。





