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市販パワートレーンでニュル24時間に挑むトヨタ「GRヤリス DAT」、開発担当の久富圭氏は「路面の追従性をいかに確保するか」
2025年6月22日 11:32
市販パワートレーンでニュル24時間に挑むトヨタ「GRヤリス DAT」
6月21日16時(現地時間、日本時間21日23時)から22日16時までニュルブルクリンク24時間レースの決勝が開催されている。このニュル24時間に6年ぶりに挑んでいるのが、トヨタ自動車とルーキーレーシングが組んだ「TOYOTA GAZOO ROOKIE Racing(以下、TGRR)」。参戦マシンは、109号車GRヤリス DATと110号車GRスープラ GT4 Evo2になる。
GRスープラは2019年にもニュル24時間への参戦歴はあるものの、GRヤリスは初のニュル24時間になる。また、このGRヤリスは進化型GRヤリスで、その際に新搭載されたGR-DAT(8速AT)仕様となっており、2ペダルのATマシンでの参戦となる。
GRヤリスはこれまでスーパー耐久で鍛えられてきたが、日本国内のサーキットとはまったく異なるニュルブルクリンクで、さらに24時間レースという過酷な状況でこれまでの挑戦が試されることになる。
とはいえ、このGRヤリス DATは市販のGRヤリスからレースに参戦するための法的適合が主なところで、直列3気筒1.6リッターターボ+DAT(8速AT)+4WDという構造はまったく変わっていない。
GRヤリス DAT ニュルブルクリンク仕様の開発責任者であるGAZOO Racing Company GR統括部 ZR GR4主任 久富圭氏によると、ニュルブルクリンク24時間レースに合わせて変更した点は主に足まわりになるという。
ニュルブルクリンクは高低差が激しく、一般の山道を200km/h以上でレースを行なっているようなものだ。路面もうねっている部分があり、そこにいかにタイヤを接地させていくかが24時間戦う上でポイントになる。
久富氏は、「基本的に足まわり部品を中心にテストをさせていただいて。具体的に言いますと、アブソーバーだとか、サスペンションのジオメトリなど、一番最適なところはどこなのかというのを見てきました」と語り、「路面の追従性をいかに確保するか」に悩んできたという。
また、ニュルは路面そのもののμ(ミュー、摩擦係数)が日本国内のサーキットと比較して小さいのが特長となり、端的に言うとグリップ力の小さい路面になる。
具体的には「富士スピードウェイなどと比べると、Max横軸はコンマ2Gから3Gくらい目減りしたようなグラフになります」といい、それに合わせたセッティングが必要になっているとのこと。
高低差や上下Gの変動も大きいことからエンジンやトランスミッションのオイルまわりが気になるところだが、油圧とか音などをチェックしながら見ていくとのこと。実際に、ニュルブルクリンク24時間レースに挑んでいるGRヤリスには計測器は多数搭載されているそうだ。
現在ニュルは4時過ぎ、12時間経過してGRヤリスは完走へ向けて走行中
ニュル24時間レースは開始後1時間過ぎに停電からの赤旗中止があったものの、午前4時を過ぎて順調にレースが行なわれている。市販パワートレーンで挑むGRヤリス DATも走行を続けており、完走へ向けて1周1周を積み重ねている。
GRヤリスの搭載するG16E型エンジンはすでに名機と呼ばれ始めているが、ニュル24時間を完走することができれば、そのよさはさらに裏付けられるだろう。しかも、今回はMT仕様ではなくAT仕様。一般に部品が多くなるATは、MTに比べ耐久性や信頼性の確保が難しく、高い技術力が要求される。つまり、レースのために特別にチューニングしたものではなく、号口(ごうぐち、トヨタ用語で市販製品のこと。トヨタ自動車のオリジンである豊田自動織機由来の言葉)そのものであり、街中を走っているGRヤリスはレースの法規対応さえ行なえばニュルを走る実力を持っていることになる。
トヨタ自身が手がけて開発したGRヤリスが、どこまで本格的なスポーツカーに成長していくのか、それが試されるニュル24時間への挑戦だ。



