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世界初の水素燃焼サウナ、トヨタとハルビアがフィンランドで発表 一般に体験可能なデモも実施
2025年7月31日 15:41
- 2025年7月30日 発表
世界で初めて開発された水素燃焼サウナ
トヨタ自動車と世界的なサウナ&スパメーカーであるハルビア(Harvia)は7月30日、ラリーフィンランドの開催されているフィンランド ユバスキュラ市において水素を燃やしてサウナルームを加熱する水素燃焼サウナを世界初公開した。
トヨタ自動車は水素の「つくる」「はこぶ」「つかう」といった普及における過程で、水素を反応させて電気エネルギーを取り出すFCEV(Fuel Cell Electric Vehicle、燃料電池車)、水素を燃やして運動エネルギーを取り出すH2ICE車(Hydrogen 2 Internal Combustion Engine、水素内燃機関)の「つかう」部分において世界トップクラスの技術力を有している。FCEVにおいては「MIRAI(ミライ)」を実用化し、H2ICEにおいてはスーパー耐久など厳しいレースの過程で最高峰の技術を手の内化しようとしている。
今回、その水素を燃やす技術において、フィンランドの世界的サウナ&スパメーカーであるハルビアと水素燃焼サウナを共同開発。ラリーフィンランドにおいて発表会を行ない、7月31日からはラリーを訪れる観客向けに一般体験会も実施していく。
近年日本においてもサウナは市民権を得ており、「サ活」という言葉でサウナを楽しむ人が増えている。スーパー銭湯によるサウナや、サウナを中心とした施設なども多く作られている。
そして、サウナの本場と知られているのがフィンランドになる。
ハルビア CEOのMatias Järnefelt氏によると、フィンランドではクルマの数よりサウナの数が多いという。具体的には、「フィンランドの運輸庁のようなところの統計によると、フィンランド全体で約280万台のクルマがあります。フィンランドの人口が600万人弱(日本の外務省によると約556万人[IMF2023年])となるので、2人に1台くらいの割合になります。サウナの数は300万個あります」と語り、多くの人がサウナを所有している現状を語ってくれた。
フィンランドは環境先進国として知られているが、国としては2035年、ユバスキュラ市としては2030年のカーボンニュートラルを目指している。ユバスキュラ市長のTimo Koivisto氏は、意欲的なカーボンニュートラルへの取り組みの中でサウナのカーボンニュートラルの取り組みはトラフィック(交通)と同様に大切だと位置付けていた。
このサウナの水素燃焼化への取り組みは、トヨタのWRC(世界ラリー選手権)チームであるTGR-WRT(TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team)の本拠地がユバスキュラ市にあることがきっかけとなっている。
トヨタは2023年8月3日にユバスキュラ市にラリーチームの新開発センターを設立することをラリーフィンランドに合わせて発表。その際に水素自家発電施設などカーボンニュートラル社会への基本合意を、TMF(トヨタ・モビリティ基金)、ユバスキュラ市と締結しており、「チームのWRC活動の中心を担うと同時に、ユバスキュラ地域内の様々な路面のテストコースを活用し、トヨタの欧州における『もっといいクルマづくり』の新たな拠点となる」と明らかにしている。
その後、この基本合意を受けてユバスキュラ市、TGR-WRT、TMFで非営利団体のCefmof(Central Finland Mobility Foundation)を設立。このCefmofでは、中央フィンランド地域のカーボンニュートラル実現に向け水素活用を推進しており、「Experience(体験)」と「Innovation(革新)」により「Ecosystem(本来は生態系、転じて経済環境として使われている)」形成を目指している。
このCefmofの活動もあり、ハルビアとトヨタでサウナのカーボンニュートラル化である水素燃焼サウナストーブの開発へとつながった。
この水素サウナストーブの構造としては、燃料としてポータブルタイプの高圧水素カートリッジにため込んだ気体水素を使用。この気体水素を空気とともに燃焼させることで熱を得ている。
水素を使うメリットとしては、カーボンニュートラルであることはもちろん燃焼時に空気中の酸素と反応しH2O、つまり水が生成される。この水は燃焼熱で水蒸気となり、熱だけでなくあるていど湿り気のあるサウナ空間が生成される。
同時に問題点としては、空気中の窒素と反応してNOx(窒素酸化物)が生成されることが挙げられるのだが、これは水素の燃焼をコントロールして極力発生量を減らすようにしているという。水素は石油系燃料に比べても空燃費が大きく、そもそもの発生量が小さい。さらに燃焼温度を下げ(これは、ICEでEGRを使う考え方と同じ)、火炎も短くすることで窒素との反応面積を減少し、結果的にNOx抑制をしているようだ。
このサウナストーブには、ハルビアの技術が活かされており、サウナストーブ上のサウナストーンに水をかけてのロウリュも可能。より水蒸気を多量に発生させて、積極的に発汗することもできるようになっていた。
トヨタは日本においてはFCEVをモビリティの面から積極的に普及させていこうとしているが、フィンランドにおいてはモビリティに加え、クルマより保有数が多いサウナでの水素普及に取り組み始めた。
ハルビアのMatias Järnefelt CEOは、フィンランドではまきを燃やしてのサウナストーブが多いといい、それがCO2を発生させると同時に水分も発生して、癒やしの効果もあるという。そうした柔らかいサウナが多く、水素サウナであれば発熱時に水蒸気も発生することから、高く評価しているとのこと。
日本におけるサウナは電気ストーブ式が多く、そのためカーボンニュートラルについては日本の電力事情に左右され、サウナとしては乾燥系の熱気になっているのはご存じのとおり。日本のサウナのこだわりとしては、世界的に品質の高い水があるだけに、サウナの後に入る冷水が多く議論されている。水素サウナであれば、水蒸気を含む柔らかいサウナ(ユバスキュラ市長はmoist[モイスト、湿った、湿気のある]と表現)を日本でも実現でき、人気も出るのではと感じた発表会だった。
街づくりに水素を活かす場所としては、ウーブン・バイ・トヨタの手がけるウーブンシティが知られており、水素パイプラインの設置予定もあることから、富士の見える場所に水素サウナなどあると面白くなりそうだ。










