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英国製折りたたみ自転車「ブロンプトン」、誕生50周年記念イベントで新モデル「Gライン」「50周年記念モデル」公開

2025年9月3日 開催
ブロンプトン誕生50周年記念イベントが開催された

 英国ロンドン生まれの折りたたみ自転車「Brompton(ブロンプトン)」は、1975年に発明者のアンドリュー・リッチー氏によって、「都市に住み、都市で働き、都市で遊ぶ人に最適な自転車」として開発されたフォールディングバイクだ。折りたたむと3分の1サイズになり、どこへでも持ち運べることから世界中の自転車好きに注目され、すぐに「街の魔法のじゅうたん」と呼ばれるようになった。最初の自転車が製造されてから47年後の2022年には100万台の生産を達成した人気モデルに成長しており、50周年を迎えた2025年、それをお祝いするイベントが東京の旗艦店である「ブロンプトン東京」(渋谷区神宮前)で9月3日に開催された。個人でもブロンプトンを1台所有するオーナーの1人として、筆者も参加してきた。

 ちなみにブロンプトンの名称は、古い鉄道アーチの中の最初の工房の目の前にあった「ブロンプトン教会」が由来。当時「ボロレーン」と呼ばれたブレントフォード工場では、全て手作りで月に60台を製造していて、ユーザーは3速か5速のハブギヤを選択できたという。都市のために作られたブロンプトンは、1991年までには英国内に56軒の店舗を構えることができ、輸出も開始。現在では世界47か国で販売され、年間9万台以上という生産台数の70%以上が輸出されている。製造段階で自動車1台よりも6.2tも少ない二酸化炭素で製造され、自動車1台分のスペースなら42台のブロンプトンを折りたたんで駐車できるという大きなメリットがある。

1975年にスタートしたブロンプトンの歴史を紹介する資料
さまざまな都市や地域でブロンプトンは使われてきた

 製品はBrompton.com、世界1500の認定販売所、およびロンドン、ニューヨーク、シンガポール、パリ、アムステルダム、上海、北京、ミラノ、ハンブルク、ミュンヘン、バレンシア、メルボルン、テルアビブ、東京などの取扱店で販売されている。

東京を自転車中心の都市に変えたい

ブロンプトンの歴史などを紹介するウィル・バトラー=アダムスCEO

 このイベントのために来日したのは、プロジェクトのリードエンジニアの1人で、現在はリッチー氏から最高経営責任者の役割を引き継いでいるウィル・バトラー=アダムスCEOだ。トークセッションでは、「われわれは1975年から50年間ブロンプトンを作り続け、全世界で100万人以上のユーザーに自転車を届けてきましたが、大事なのはお金儲けではなく都市で生活する人に幸せを届けることでした。人間は東京やロンドン、上海などの大都市で生活を進化させてきましたが、果たしてそれで幸せが得られているでしょうか。犠牲にしたものも多いはずです。窓の外を見ると、東京にはクルマ優先の世界が広がっていますが、それをなんとかして変えたい。都市生活に自転車を取り戻したい。50年かけてブロンプトンはそれを変えようと努力し、他のどんなブランドよりも変化を与えてきたと自負しています」とあいさつした。

 また、「20年前、自転車に関する環境としては東京もロンドンも同じでしたが、今ではロンドンや北京、アムステルダムなどの状況がよくなり、東京は置き去りにされています。例えば東京には青いラインの自転車レーンがありますが、とても危険なのでそこを子供を乗せたママチャリが走れるわけがありません。日本でもっとも自転車を多く使うのはお母さんで、そうした母親が安心して自転車に乗る環境を整えれば、後から多くの人が自転車に乗る環境が整うと思います。変えるためには自転車中心の社会に変える“野心”とそれに付随した“ビジョン”が必要で、そのためには日本に4万~5万人いると聞いているブロンプトンオーナーの助けが必要なのです」と熱く語った。

新たな「Gライン」と「50周年記念モデル」も

新型Gラインを紹介するウィル・バトラー=アダムスCEO

「次の50年に向かうにあたって、株主は短期の利益ではなく、長期的に環境にインパクトを与えることを望んでいます。そのためにはイノベーションが必要ですが、その1つが今回紹介する『Gライン』です」と、ウィル・バトラー=アダムス。

 Gライン(54万5600円~56万7600円)は、オフロード走行可能な大径20インチタイヤや油圧ディスクブレーキを装着した新型モデルだ。「Gラインを使えば、今まで都市部だけだったブロンプトンがより遠くに行ける可能性を示しています。来年、私はGラインでアフリカを3000km旅する予定です。人生は短いので、それを目一杯楽しむための存在になっています」と続けた。

 もう1台紹介されたのが、創業50周年を記念した特別モデル「1975エディション Cライン」(40万400円)。世界で1975台の限定モデルは、ヘリテージと現代のクラフトマンシップを融合したもので、ロンドンの工場で働く52名の熟練ブレイザー(溶接職人)によって手作業で仕上げられるという。独特なカラーリングと共に、各部に「50」のモノグラムが配され、ポストにはシリアルプレートがレーザー刻印される。

50周年を記念した特別モデル「1975エディション Cライン」を高く掲げて紹介するウィル・バトラー=アダムスCEO
フレームのブロンプトン50のロゴとともに、サドルやバッグ、泥除けなど各部に50のモノグラムが入る

 トークセッションを終えたウィル・バトラーCEOは、マイブロンプトンを駆って新型Gラインの試乗体験に参加。国立競技場や神宮外苑の並木道を抜けるコースを走った後は、参加者らとの記念撮影に臨んでいた。

国立競技場や神宮外苑の並木道に向かうウィル・バトラー=アダムスCEO(ピンクのシャツにサングラス姿)と参加者ら
参加者らと共に記念撮影に臨むウィル・バトラー=アダムスCEO(中央)