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英国の自転車「ブロンプトン」に乗って大阪・関西万博を訪問してみた
2025年5月27日 13:29
英国製の高級折り畳み自転車「ブロンプトン」に乗って、大阪・関西万博を訪ねませんか? とのお誘いが、輸入代理店「ブロンプトン ジャパン」の広報担当者さんから届いた。2012年製の古いブロンプトン所有者の筆者としては、様々なバリエーションを展開している同社の最新モデル(Mk6)に試乗できるというまたとない機会を提供してくれるのだから、瞬時に参加の返事を入れた。
試乗コースは、1970年大阪万博「EXPO’70」のタイムカプセルが設置されている大阪城公園から、約20km先のEXPO2025の会場までというので、近年体力の衰えを感じつつある筆者でも走行距離的には全く問題ない。
ブロンプトンとは
ブロンプトンを知らない方も多いかもしれないので、まずはその紹介を。創立者はロンドン在住のアンドリュー・リッチー氏で、1975年に自宅の寝室で初めてフォールディングバイク(折り畳み自転車)の試作モデルを製作し、1981年には最初のMk1モデル30台を製品化した。その改良・進化型がMk2で、フレーム構造や折りたたみ機構を再設計したことで、量産化への足掛かりに。1987年にはブロンプトン・バイシクル社を正式に設立。1990年以降は現行モデルに近いMk3を送り出し、素早くコンパクトに折りたたむことができる機能と走行性能を両立したことが認められ、イギリス国内だけでなく世界中で愛用されるようになった。
ブロンプトンは特に都市部での移動に最適で、日本に入ってきたのはこのモデルから。折からの自転車ブームで都内でもちょくちょく見かけるようになったのだが、ネックとなったのはそのプライス。当時でも20万円近かったMk3の価格はなかなかのものですぐに手に入れることはできず、結局筆者が購入したのは、次のMk4モデル。しかし一度手に入れてしまうと、その完成度の高さに感心し、惚れ込んでしまうのだ。
EXPO’70からEXPO’2025へ
万博訪問日の早朝、大阪城公園に集まったのは、メディア15名、一般参加者26名のライダーたち。大阪城本丸の前には1970年のEXPO’70のタイムカプセルが設置してあり、ここをEXPO2025の会場へ向かうスタート地点に選んだのは賢い選択だ。
ブロンプトン・ジャパンがこの日のために用意した試乗車は、最新スタンダードモデルの「Cライン」(約26万円〜)、軽量パフォーマンスモデルの「Pライン」(46万7500円)、超軽量チタンモデルのTライン(85万2500円)、多用途グラベルモデルのGライン(20インチオフロードタイヤ装着、約42万円)の4車種。今回の参加者の中には旧知の編集者さんや元同僚の記者さんがいたので、それぞれを取っ替え引っ替えしながら乗ることができたので、モデルごとの違いがよく分かり、とっても楽しい試乗となった。
今回参加したイベント「ブロンプトン アーバンチャレンジ イン 大阪2025」は、英国モデルに試乗しつつ、UKパビリオンを訪問するというプログラムだったので、筆者はスーツを着用し、足下はスーツと同じ紺色のnew balance1500(made in ENGLAND)で決めてみた。
参加証となるユニオンジャックとブロンプトンのロゴが入った真っ赤な手拭いを身につけて集合写真を撮影したのち、全車が一斉に走行開始。先頭を走るのはブロンプトン・ジャパンの合田みつひろ氏で、長く伸びる車列の途中にはアーバンチャレンジのスタッフ中西なつみさんらが入ってくれ、確実にルートを引っ張ってくれるので安心して走ることができる。
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コース上にあるチェックポイントの中之島公会堂、淀川河川敷、常吉大橋公園にはデジタルスタンプラリーのQRコードが設定してあり、最初の大阪城公園を含めた4つを集めれば、無事ゴールに辿り着くという方式。淀川の自転車用堤防道路を走る時点では雨が降り始め、コンディションは悪化したものの、自転車自体のよさとマスツーリングの楽しさが相まって、みんな笑顔でペダルを漕ぐ姿がとてもいい。1時間半ほどで、東ゲート前にある万博駐輪場に無事到着(事前予約が必要)。日焼けした関西弁丸出しの係員さんに(ご苦労様です)促されながら自転車を置き、会場へ向かった。
多くのお客さんが入場待ちをする列(待ち時間はかなり長そうだ……)の横にあるガラガラの優先入場口でセキュリティチェックを受け、スルリと会場入りを果たす(一般の方、スミマセン)。目指すUKパビリオンは真反対側にあり、歩くと20分ほどかかるというので、電気バスの「e-Mover」に乗ってみた。停留所で降りると目の前にはあの木造大屋根リングがそびえていて、その先に目的地である白いブロックを積み上げたようなUKパビリオンがあった。
UKパビリオンでトークセッション
館内で披露されるコンテンツは、英国の文化や工業製品の過去と未来をマスコットの「PIX(ピックス)」が紹介していくというもの。筆者が先日取材したばかりのアストンマーティンも、メインスポンサーとしてしっかりと紹介されていた。
当然今回乗ってきたブロンプトンも英国製。スペシャル仕様など多くの車両や関連グッズが展示された会場で行なわれたトークセッションには、われわれライダーだけでなく自転車に乗らずに通常ルートで参加したメディアら110名が参加した。テーマは今回の万博の「命輝く未来社会のデザイン」に関連した「未来のコミュニティとモビリティ」だ。
パネリストとして登壇した大阪万博英国政府代表のキャロリン・デービッドソン氏は、イギリス国内での自転車の実践的な利用方法を紹介するとともに、自転車専用ルートへの接続性などをさらに改善する必要性があると主張。ブロンプトン・チーフマーケティンオフィサーのクリス・ウィリングハム氏は、同社の50年の歴史と都市生活における自転車の価値を紹介し、クルマ中心からヒト中心の都市設計への転換を提案した。また、ブロンプトン・ジャパンのカントリーマネージャー矢野大介氏は、自転車コミュニティの価値とともに、新規開通道路での自転車レーン設置義務化を提案。さらにパリやチューリッヒでの事例を挙げて、自転車に優しい都市設計の重要性と、将来のビジョンを紹介した。
現在、東京や大阪など大都市の道路には、青いカラーで識別される自転車レーンを設置し始めているけれども、実際に走ってみると明確な境界がないので、結構危なっかしい場面に遭遇することが多い。筆者のメインフィールドである自動車は電動化による環境対策を懸命に行なっている真っ最中だが、安心して走れる自転車用道路がどんどん設置されていくことになれば、今以上に利用者が増え、地球にやさしい世界が実現するのは確かなのだ。