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第36回メディア対抗ロードスター耐久レース、初の富士スピードウェイ開催は雨模様でCar Watchは12位完走

2025年10月3日~4日 開催
CarWatchチームの面々。プラカードを持っていただいたのは観客の方、ありがとうございました

 10月4日、富士スピードウェイでマツダの「ロードスター」を使ったワンメイクレース「第36回 メディア対抗ロードスター耐久レース(通称:メデ耐)」が開催された。2024年にギネスに認定された歴史ある大会となるが、今回から場所を筑波サーキットから富士スピードウェイに移して開催。同時に「マツダ ファンフェスタ」の1コンテンツとしての開催となった。

 レースの時間も4時間から3時間に変更となり途中給油も廃止。これまでのノウハウを活かしにくいレース展開となったが、われらのCar Watchチームは無事12位で完走できた。

愛称が「メデ耐」へ、場所も時間も名称も変更になった2025年

チームCarWatchの64号車CarWatchロードスター

 これまで35回は、4時間耐久レースとして「メディア4耐」という愛称で親しまれてきたが、今回からは3時間に短縮するとともに無給油となり、愛称も「メデ耐(めでたい)」へ変更、場所も筑波サーキットから富士スピードウェイになるなど、大きな変更となった。

 従来の走行ノウハウも、富士スピードウェイに合わせて練り直し。特に富士スピードウェイのレーシングコースをレーススピードで走ったことのない選手にとっては未知の体験となる。燃費や給油やドライバー交代のタイミングのほかに、今回はコースの走り方という点でも大きな挑戦となる。

 一方、クルマは2024年大会と同じ市販のNR-Aグレードのロードスターで装備も同一。燃料も2024年同様のCNF(カーボンニュートラル燃料)となっていることから、クルマの走行性能という点では2024年と同じだ。

タイヤはブリヂストン「POTENZA Adrenalin RE004」、エンドレス製ブレーキパッド「MFE1」を装着して、ブレーキフルードにENDLESS S-FOUR。ダンパーはNR-A純正装備のビルシュタイン
CUSCO製「NR-A専用 SAFETY21 ロールケージセット」、ブリッド製フルバケットシート「ZETA IV」にCUSCOレーシングハーネス「6Points FHR」を装備する

 装備もワンメイクの名のとおり統一しており、NR-Aグレードのロードスターに統一装備として、タイヤはブリヂストン「POTENZA Adrenalin RE004」(195/50R16)、エンドレス製ブレーキパッド「MFE1」、CUSCO製「NR-A専用 SAFETY21 ロールケージセット」、シートはブリッド製フルバケットシート「ZETA IV」、CUSCOレーシングハーネス「6Points FHR」、ダンパーはNR-A純正装備のビルシュタイン製となっている。

 さらに油脂類も統一しており、エンジンオイルは「Gulf ARROW GT30」、ギヤオイルは「Gulf PRO GUARD Gear Oil 75W-90 GL5」、ブレーキフルードは「ENDLESS S-FOUR」という組み合わせは昨年と同じ。エンジン、トランスミッション、排気系はノーマルのままだ。

エンジンはノーマルでレース用にテーピング類を施すのみ。エンジンオイルにGulf ARROW GT30、ギヤオイルにGulf PRO GUARD Gear Oil 75W-90 GL5を使用する

 これらの装備は一切触れず、「ドライバーの腕」「ドライバー交代のタイミング」「タイヤ空気圧」だけの勝負となる。前回までは給油による「長時間ピットイン」という順位が変わる要素もあったが、今回からはそれもなくなった。

想定どおりにいかなかった練習走行

 速く走ることはもちろんだが、メデ耐は常に燃費との戦いとなる。決勝レースで使用できる燃料は、予選終了後に満タンにした40Lのみ。これで決勝の3時間を走り切らないといけない。前回から燃料がCNFに変わり、実燃費の変化を手探りながらなんとか乗り切ったものの、コースが変わってそのノウハウはリセット。新たに富士用のノウハウを蓄えなければならない。

 メデ耐の日程は前日の3日金曜に練習走行が60分間、予選が当日の朝8時から20分間、そして決勝は15時~18時の3時間。予選は出られる人が限られるので、前日練習の30分であらかじめ考えていた想定が合っているか試してみないといけない。

 練習走行では、コース上で最速タイムを出すことではなく、決勝レースを想定した走りをして、燃費計の動きを見ることに集中。ところが、想定よりもよい燃費が出たため、本番でガソリンを余らせないために、もう少しアクセルを踏めることが判明。そのため練習走行のタイムも最下位だった。

 しかし、それが分かったのは練習走行後。もう少しアクセルを踏んだ走行がどう燃費に影響するのかを試すことができなかった。あとは予選参加のドライバー以外は本番まで、練習走行よりももう少しアクセルを踏み込んだ走行イメージを脳内に描くしかなかった。

 ところが、天気予報では、翌日は雨。決勝レースの時間帯はしっかり降るという予報となっていた……。これで燃費走行が必要なのかも、分からない状況になった。

本番当日、雨で滑りやすい路面のなか、予選は10位

 本番当日は早朝から車検を行ない、8から20分間の予選が行なわれた。ここでCarWatchチームのメンバーを紹介しておくと、ドライバーは5人。編集長の小林がスタートを走り、その後、モータージャーナリストの日下部保雄氏、マツダ・スピリット・レーシング・チャレンジプログラムの3期生の瀬川彰斗氏、ロードスターのパーティレーサーで当チーム皆勤賞のISHIKAWA氏(石川和也氏)、最後は今回CarWatchチーム初参加のモータージャーナリスト山田弘樹氏。監督は2024年ドライバーとして過去最高位に貢献してくれた石川琢也氏で戦う。

 特に第3ドライバーの瀬川氏は、マツダのプログラムでeモータースポーツから実車のレースを目指す選手で、今後の活躍が期待できるレーシングドライバー。CarWatchチームでは、昨年も同プログラムの選手に走ってもらい過去最高位に大きく貢献してもらっているので2025年も期待できる。

 そんな期待が集まるなか予選は山田氏が担当。予選の8時台はちょうど雨が降り出したところで、路面がいやな滑り方をするタイミング。とはいえ、条件がわるいのはCarWatchチームだけではなく全車共通。そんな状況のなかで各車タイムアタックに挑んでいる。

予選走行中

 CarWatchチームのベストラップは2分27秒218となり、21台中10位で予選を終えた。走り終えた山田氏によれば、路面はよく滑り、特にタイヤのグリップが重要なセクター3の路面は「難しかった」とのことだ。

ウェットの路面に苦しみながらも10番目のグリッドを確保

 なお、予選トップを獲得したのは27号車のTipo/Daytona ROADSTERで、タイムは2分25秒182。ドライバーはCarWatchの試乗記でもおなじみの橋本洋平氏だった。

予選トップでポールポジションは27号車のTipo/Daytona ROADSTER

マツダファンフェスタ2025のイベント多数

 予選を終えたあとは、15時の決勝スタートまで時間がある。その間、ドライバーズミーティング、開会式、そしてスタート前は早めにグリッドに付くため、ゆっくりしている時間はない。戦略的にも、雨が降り出してウェットのレースになることが予想されるため、ペースが落ちれば総走行距離が減り、その分の目標燃費も変わってくるため、その場合の作戦を練っておかなければならない。

こちらはアクセサリーメーカーなどの展示。奥には各地のマツダ販売会社も

 そんなドライバーと監督の忙しさとは別に、コース外ではイベントが多数行なわれた。特にイベント広場では、この日お披露目された2.0リッターエンジン搭載モデル「MAZDA SPIRIT RACING ロードスター」と「MAZDA SPIRIT RACING ロードスター 12R」についてのトークショーが行なわれた。司会のピストン西沢氏はトークショーの前に試乗したといい、MAZDA SPIRIT RACING ロードスターを「正常進化」、MAZDA SPIRIT RACING ロードスター 12Rは「別物」と評価した。

マツダファンフェスタ2025は多数のイベントを実施していた。ステージではトークショーなどさまざまなコンテンツが催された
2.0リッターエンジン搭載モデル「MAZDA SPIRIT RACING ロードスター」と「MAZDA SPIRIT RACING ロードスター 12R」ついてのトークショーの真っ最中。ピストン西沢氏が試乗の感想を語り、マツダからは開発や製造の裏話が明らかにされた
2.0リッターエンジン搭載モデル「MAZDA SPIRIT RACING ロードスター 12R」(左)と「MAZDA SPIRIT RACING ロードスター」(右)
推奨されるパーツなども紹介

 また、例年メディア対抗のレースでは飲食のブースも出展するが、今回はマツダのファンイベントということで広島にまつわるお土産や飲食のコーナーも充実。特にお好み焼き店には長蛇の列ができた。

広島流のお好み焼 みっちゃん総本店が出店。長い列ができていた
広島のお土産も多数。ファンフェスタ用の特別な販売もあり

 各メーカーなどのブースではマツダ車向けのパーツなどの展示を行なっていたが、NEXCO東日本はCX-80の高速パトロールカーを展示。現在のところ宇都宮の基地に1台配置して管轄内のパトロールで活躍しているそうだが、今回はマツダファンフェスタということで静岡県の富士スピードウェイまで遠征、NEXCO東日本のCX-80を披露した。

メーカーブース。これはレイズでホイール装着例
レイズのラインナップ。並んでいるのはすべてマツダ車用
横浜ゴムのイチオシは2025年発売の新スタッドレスタイヤ「アイスガード8」
ダンロップはあらゆる路面にシンクロするというオールシーズンタイヤ「SYNCHRO WEATHER」
トーヨータイヤのブース
フジツボは各種マフラーを展示、初代RX-7を展示
ブリヂストンはカフェブースを設置
静岡までやってきたNEXCO東日本のCX-80。実際に運用している車両を持ち込んだ
マツダ販売会社もブース展示、ワークショップ系が多かった
スプーンを叩き出しで作成
フェイスペイントをしてくれるブース
ミニカーで街を表現。ほぼすべてマツダ車(OEM含む)で占められている
塗装クイズ。マツダの赤は何層にも分けて塗るが、塗り重ねの順に並べるクイズ
緊急脱出のためのガラス割り体験のブース。普通のハンマーでは割れない側面のガラスも、専用の脱出道具のハンマーでは簡単に割ることができた

 また、各地のマツダ販売会社もブースを出し、さまざまなワークショップなどを実施したほか、往年のユーノスコスモのレストア車両を展示した京滋マツダには人だかりができた。そのほか、過去のマツダ車の展示などもあり、催しが充実し、訪れたマツダファンの方々は楽しんでいたに違いない。

京滋マツダが展示したユーノスコスモ。
エンジンは2ローターの仕様
サイドのマーカーも点灯
内装も当時を再現して革の貼り直しなどをした
車両展示ではおなじみのマツダ・787B
KUDZUマツダDLM(DG-4)
RX-7・254
そのほかのクルマも展示。一部はサーキットを走行した

いよいよ15時に「メデ耐」の決勝レースがスタート

 午後になるとドライバーズミーティング、開会式、そして公式ライブ配信の取材とあわただしくスケジュールをこなし、決勝レースが始まる前にはグリッドにCarWatchチームの64号車を着けた。

ドライバーズミーティング中
チームに戻っても、戦い方についての意思合わせ
開会式ではポールポジションをとったTipo/Daytona ROADSTERを操る橋本洋平氏(中央)と、実行委員長の鈴木俊治氏(左)とマツダ取締役専務執行役員兼CTOの梅下隆一氏(右)が並んだ
Car Watchチームの5人のドライバー

 決勝を待つ間は雨が一瞬やんでいたものの、スタートが近づくにつれて雲行きが怪しくなっていく。第1ドライバーを務める編集長小林は、開会式では「6位が目標」などと余裕の発言を見せていたが、決勝直前には「心臓が止まるほど緊張してます」という言葉を残して決勝へと向かった。

出走前のインタビューに答える編集長小林

 決勝はいつものローリングスタート形式で行なわれ、15時ちょうどに予定どおり決勝レースがスタートした。

いよいよコースへ
スターティンググリッドに着けたCarWatchロードスター
各車、本番前の最後の調整中
まもなくスタート
フォーメーションラップを開始するころには雨も強くなってきた

 第1ドライバーの編集長小林は1ラップ目はスターティンググリッドと同じく10位で戻るも、その後8位にアップ。ただし、これは最初にハンデ消化でピットに戻るチームがあったためで、早くも実質的な順位が分からなくなっていく……。

ローリングスタートで決勝レースがスタート
第一コーナーに向かう全車
ウェットコンディションのなか様子を見ながら走行

 そして数周を回ったところで雨が強くなるとともに濃い霧が発生。富士スピードウェイは標高が高いところにあり天候は変わりやすいのだが、早くも富士の洗礼を受けたかたちになった。編集長小林によれば、ガラスが曇ってしまいそのときだけエアコンを付けたとのこと。

開始後すぐに富士スピードウェイは濃い霧に包まれた
後方が全く見えず、視界のわるさがわかるだろうか

 しかし、その霧もすぐに収まり、雨が降る中でレースが進む。雨や霧という悪条件のなかでも事故もなく、セーフティカーも入ることなくレースは進行。小林編集長はほぼ8位をキープして後続にバトンタッチ。

ウェットのなかを周回を重ねる
ドライバー交代でピットへ
走行を終えた編集長小林がコースの状況を語り、すぐに次の戦略に活かす

第2ドライバーへチェンジ、8位を維持

 約45分の制限いっぱいまで編集長小林がドライブし、第2ドライバーの日下部氏にバトンを渡した。走行を終えた編集長小林を交えてすぐ作戦会議。雨の状況のなか、DSC(Dynamic Stability Control)の制御をうまく活用し、危なげなく走行できたという。

第2ドライバーはモータージャーナリストの日下部保雄氏が乗り込む。

 交代した日下部氏は8位でコースに復帰したあとはドライバー交代などで順位が変わり、次第に順位をあげて最後は4位を走行し、次のドライバーにバトンを渡した。

 日下部氏によれば、雨で滑りやすくタイヤの温まりがわるかったという。走行しているうちに雨も弱まってきて、エンジンの回転を少しずつ上げていき、コーナーのギヤを迷っているうちに交代の時間になってしまったとのこと。日下部氏もDSCを使っていて、比較的ラクに周回を重ねることができたという。

日下部氏が走行中。16時前ではあるが雨雲に覆われて薄暗くなっている
日下部氏が走行を終え、第3ドライバーの瀬川氏へ交代

第3ドライバーの瀬川氏が安定した走行を見せる

 第3ドライバーの瀬川氏は、実は今回、準助っ人ドライバー認定を受けている。これはメデ耐の実行委員会が実力から判断したもので、予選に出場できず、決勝もスタートとゴール以外で走行できるという条件付き。つまり、それだけの実力が認められているということ。

期待のかかる瀬川氏がコースへ

 第3ドライバーとしてCarWatchロードスターに乗ってコースに出ると、危なげなさを全く感じさせない安定した走行で周回を重ねる。順位も4位を維持したまま順調に走行を重ねた。

4位をキープ。雨が弱まり、コースコンディションもよくなっていく
モニターで4位を確認
瀬川氏からISHIKAWA氏へ交代
走行を終えた瀬川氏

 瀬川氏によればとにかく安全に走ったとのこと。雨がやんで路面の状態もよくなっていたため、グリップするラインを見つけながら走っていったという。コントロールできる範囲でしか走っていないといい「安全に行き過ぎた」という後悔も見せながらも、4位をキープしながら確実にタイムを刻んでいったことから、今後の活躍が期待できそうだ。

日が暮れ、雨と霧でペースを崩したまま12位完走

 しかし、順調だったのはここまで。瀬川氏から第4ドライバーで準助っ人ドライバー認定のISHIKAWA氏に交代したあたりで再び雨。同時に日が暮れてコースの照明が点灯、さらに霧が発生したことで、極端に視界が悪くなってしまったのだ。

ISHIKAWA氏が乗るとすぐに雨が強くなってきた

 ここでペースを崩し、なかなかタイムが出ないなか、少しずつ順位を落としていく。ISHIKAWA氏によれば照明と霧に加えて、後ろを走るクルマがハイビームで走行して視界は真っ白。わるい条件がすべて重なってしまった。無理をして走るレースではないので慎重な走行を重ねていく。

 しかし、CarWatchロードスターの燃費計が示す燃費は改善傾向にあったため、ピットでは第5ドライバーの山田氏が、乗車前に残りの燃料を想像しながらどこまで攻めていいかを監督と話し合う。

周囲はかなり暗くなり、雨の中、周回を重ねてゴールへ向かう

 残り40分弱で山田氏に交代、いよいよゴールに向かってラストスパート。14位でコースに戻った山田氏はペースアップを試みるが、再び雨が降り出し、ほかのクルマもペースアップを狙うなかでなかなか順位が上がらない。

 そして、最後は12位でチェッカーを受けた。走行時間は3時間3分47秒122、周回数は63、ベストラップは2分39秒512。トップを走るクルマの直前にいたため、完走車中でもっとも長い走行時間を記録。なかなかチェッカーを受けないため最終周でトラブルか? と一瞬心配したが、無事に完走となった。

優勝はレブスピード『R会』ロードスター
最後にチェッカーを受けたCarWatchロードスター

 終了となる18時の約30分前には燃料警告が点灯していたが、最後は警告が点滅するまで使い切り、燃費計の表示では8.3km/Lで終了した。

走行後のモニター。CarWatchロードスターは12位

 優勝はレブスピード『R会』ロードスターでタイムは3時間57秒729、周回数は65。ベストラップは2分32秒031。2位はJ-Waveポテンザロードスター、3位はENGINE ROADSTER。4位カー・アンド・ドライバーロードスター、5位Tipo/Daytona ROADSTER、6位にマツダのチーム人馬一体ロードスターとなった。

優勝したレブスピード『R会』ロードスター
2位のJ-Waveポテンザロードスター
3位のENGINE ROADSTER

 ファステストラップは2分29秒762を記録したENGINE ROADSTER。雨のレースとなったため、ほかのチームはベストラップが2分30秒台となるなか唯一の2分20秒台。幸いだったのは、わるい条件のなかでもセーフティカーが出動することなく、21台中20台が完走するなど、無事にレースを終えられたことだ。

 今回は目標の6位に届かなかったが、コンディションがよいとは言えないなか、無事故で完走できたことは何よりの成果。来年も参戦し、再び6位以上を目指したいと思うので、来年もぜひ応援をお願いしたい。