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【メディア4耐 2024】カーボンニュートラル燃料や市販NR-Aロードスターを使った2024年、過去最高の7位を獲得
2024年9月24日 12:04
- 2024年9月21日 開催
カーボンニュートラル燃料と市販NR-Aを使い、前回と異なるレース環境
同一のマツダ ロードスターを使ったワンメイクレース「マツダ メディア対抗ロードスター4時間耐久レース(メディア4耐)」が、9月21日に筑波サーキット(茨城県下妻市)で開催された。今回はカーボンニュートラル燃料(CNF)を使うことや、ギネス世界記録への挑戦がある中、Car Watchチームは過去最高となる7位でレースを終えた。
35回目の開催となるメディア4耐だが、今回、大きなトピックはCNFの利用。これまでは普通のガソリンだったが、特別に用意したCNFを使ってレースを行なった。前回大会の最後にマツダ 取締役専務執行役員兼CTOの廣瀬一郎氏が持続可能性の観点からCNFの使用を検討するとしていたが、1年で実現した形となる。
CNFはドラム缶で輸送し、横田瀝青興業の「どこでもスタンド」を使って給油。タンクローリーなどと直結して給油できる機械で、2024年の能登半島地震でも現地で活躍したという。
加えて、レース展開に大きな影響があるのは車両をロードスターの市販のNR-Aグレードへと変更したこと。2023年まではレース用にフロアカーペット、助手席や内装材などを省略したレース仕様のND型ロードスターだったが、今回は市販のNR-Aグレードにロールケージを装着し、タイヤや油脂類を統一したクルマとなった。レースに影響するところでいえば、前年までに比べて内装材や助手席の分だけ重くなったと言うこともできる。
そのため、これまでとは違った走行が求められる。CNFは通常ガソリンのようにレースを行なうと、これまでよりも燃費がわるいことが事前に通知されていたが、目安は示されていたものの、実際にパワー不足になるのか、パワーはあまり変わらないが燃費がわるくなるのかなどは走ってみなければ分からない。
燃料の量はこれまでと変わらない60L。例年、残量ギリギリで走っていることからも同じように走ってしまえば最後までCN燃料が持たないことは明白。それでも、仮に4時間で筑波サーキットを180周した場合で368.1kmを走ることになるので、6.14km/L以上の燃費で走るということは変わらない。
実際には燃料計の誤差などもあってもう少し上の燃費を目指す必要があり、順調にレースが運べば周回数が増えてさらに燃費が厳しくなる。今回は雨の予報もあってレーススピードも控え目になる時間帯があるとすれば周回数が減ることも予想され、もう少しアクセルを踏み込んでも完走できる可能性もある。
市販NR-Aグレードを使い、装備も統一のワンメイク、そしてギネスへ挑戦
そのほかは基本的に変更はない。各車統一の装備としてはタイヤはブリヂストン「POTENZA Adrenalin RE004」(195/50R16)、エンドレス製ブレーキパッド「MFE1」、CUSCOレーシングハーネス 6Points FHR、油脂類としてエンジンオイルにGulf ARROW GT30、ギヤオイルにGulf PRO GUARD Gear Oil 75W-90 GL5、ブレーキフルードにENDLESS S-FOURという組み合わせは前年までのままだ。
さらに統一装備としてCUSCO製「NR-A専用 SAFETY21 ロールケージセット」、ビルシュタイン製ダンパー(NR-A純正装備)、ブリッド製専用フルバケットシート「ZETA IV」などが備わる。
また、ワンメイクレースとしてエンジン、トランスミッション、排気系には一切触れることができないというルールもあり、各チームの差が出るのはドライバーの腕、ドライバー交代と給油タイミングの選択、タイヤ空気圧となる。
そして、35回に渡ってワンメイクレースをしてきたことから、今回、「最も長く続いている自動車のワンメイクレースシリーズ」としてギネス世界記録にも挑戦。ギネス世界記録の公式認定員も会場の筑波サーキットに訪れた。
併催イベント多数、恒例の広島お好み焼きの試食コーナーも実施
9月21日当日のサーキットは、メディア4耐だけでなく併催イベントも開催。コースではマツダファン・サーキットトライアル、ロードスター・パーティレースも開催された。
メディア4耐の車両が助手席装備の市販NR-Aになったことにより、コース同乗体験がこれまでのマツダの市販車からメディア4耐に出場する車両そのものになり、各チーム、同乗者を乗せてコースを周回した。Car Watchチームではモータージャーナリストの日下部保雄氏によるドライブで試乗を楽しんでもらった。
サーキットではそのほか、恒例の広島お好み焼きの試食コーナーも設置。広島のオタフクソースのキッチンカーが来場者にお好み焼きをふるまった。
マツダオフィシャルショップでは数々のマツダグッズの即売のほか、NA型ロードスターのモデルカーの試作パーツを展示。これは、NAロードスターの仕様違いのパーツを組み合わせて、全17の仕様を再現するセットで、2025年春ごろまでに発売予定。ステアリングホイールをはじめ仕様違いを忠実に再現したセットで、当時装着されていたタイヤも種類ごとにトレッドパターンまで再現している。
ほかにも、開発ドライバー用のVR体験など、ほかでは体験できないものも用意、eスポーツステージトラック、スロットカー体験、キッズ電動バイク体験教室もあった。
また、即売コーナーでは協賛・協力企業としてMZ Racingやブリッド、エンドレスなどがブースを構えたほか、Hirosimaマルシェとして広島県の特産品コーナーを出展。普段は広島でしか買えない限定品も用意された。
いよいよ走行開始、CNF燃料使用のNR-Aロードスターの走りはいかに?
今回、Car Watchチームのロードスターをドライブするのは編集長小林のほか、モータージャーナリストの日下部保雄氏、パーティーレーサーで当チーム皆勤賞のISHIKAWA氏、パーティーレーサーのもう1人の石川琢也氏、さらにeモータースポーツ出身の川上奏氏の5名。
チーム初参加となった川上氏はeモータースポーツから実際のレースへの参加をサポートするマツダのチャレンジプログラムに参加しており、eモータースポーツの世界では優秀な成績を収めている選手。メディア4耐では、これまでの実績から速い人を「助っ人」選手として走行時間を制限するハンデを設けているが、川上氏はメディア4耐初参戦ながらいきなり「準助っ人」認定を受けている。
今回、新しいクルマと新しい燃料を使用することもあり、本戦前日の20日に練習走行の機会が設けられ、本戦当日も午前中に公式練習が行なわれた。
そして12時30分からはいよいよ予選。「助っ人」「準助っ人」ドライバーは参加できないため、Car Watchチームからはモータージャーナリストの日下部氏が参戦、20分の予選をドライブした。
決勝では合計60Lという燃料の制限があるが、予選ではいくら燃料を使ってもよい。タイヤを温存する必要もあるため、多少は自重する必要はあるものの、予選はかなり飛ばす戦いとなる。
給油は予選前に1度満タンにして、燃料を抜き取って軽量化するなどの不正がないように封印。そして、予選後は本戦に向けて再度満タン(40L)にして、途中給油用の携行缶にも20Lを入れる。
クルマと燃料の違いでどのようなタイムになるかは手探りの状況ではあったが、蓋を開けてみると予選トップのレブスピード『R会』ロードスターの梅田剛選手が1分11秒623というタイムを出し、前年までのトップは11秒台前半だったことと比べると若干遅い程度。Car Watchロードスターは1分13秒449で15位となった。
予選を走った日下部氏に感想を聞くと、市販車になって「クルマは重さを感じる」とのこと。「コーナーの入りはスムーズに入っていくが、途中から(重さで)ふわっと流れていく。それを考慮してドライブすると手前で減速が必要になる」とし、予選の時間内は試行錯誤を行なっていたという。
決勝スタート、順位を死守してスタート
決勝の第1ドライバーは編集長小林。各車の選手紹介のセレモニーのあと、16時7分にいよいよ4時間の耐久レースがスタートした。
15番グリッドからのスタートとなったが、最初の1コーナーの飛び込みでも順位を死守、最初の周は12位で戻ってきた。その後、順調に順位を上げていった。しかし、喜べないのがメディア4耐。前年成績優秀だった10チームには90~270秒までの指定時間、ピットに停車するハンデがある。しかも、最初の30分以内に消化する必要があるため、いきなりピットインするチームもあるからだ。
また、各車とも燃費を気にして走行タイムは控え目の1分17~18秒台あたり。モニター上の順位では5位までアップさせた編集長小林は35周目で第2ドライバーの日下部氏に交代した。ドライブを終えた編集長小林は「目標だった燃費の6.4km/Lを維持するというミッションは達成できた」と、競り合う状況以外では燃費走行ができたと語る。
2番手の日下部氏は9位でコースに戻り、その後、周回遅れの渋滞もあるなか8位、7位と順位を上げながら安定した走行を見せた。
日下部氏に状況を聞くと、乗り換えた直後にDSC(Dynamic Stability Control)のモードが通常のONになっていたとのこと。そのままだとコーナーの入りなどで制御が強く効いてしまい、加速が制限される。そこで、レースに適したチューニングが施された「トラックモード」に変更して走行を継続した。DSCのスイッチはドライバーから見てロールケージで隠れる場所にあり、すぐに変更することが難しかったのだという。
そうしたことがありながらも、日下部氏のドライブが終わるか終わらないかというところで雨が振り出し、第3ドライバーのISHIKAWA氏に交代した。
雨でペースダウン、燃費はいかに?
交代直後から雨が強くなり、各車1分25~26秒にペースダウン。ISHIKAWA氏は安定したドライブを見せて8位から9位くらいで走行した。
ISHIKAWA氏によれば、雨が降り続く途中でグリップの低下が見られたため、ほかのクルマと同様にペースを落としたとのこと。また、走行中にトラックモードが有効に機能している状況があったという。
ISHIKAWA氏のドライブを終えたところで給油タイム。給油の場合は通常のピットストップの1分に加えて3分の合計4分間のストップが必須となる。
無事に20LのCNFが入ったところで、第4ドライバーは同じ苗字の石川氏がコースイン。雨が降り続くなか11位で走行。石川氏によれば「路面が刻一刻と変わっていくので、合わせることが難しかった」。雨の中でのトラックモードはONにして走行したと言い、「何回も動作し、特にダンロップコーナーでは助けられた」とのこと。
なお、第4ドライバー石川氏のドライブ中に雨が上がり、路面が乾いてきて各車ペースアップ。1分25秒台から20秒台へとタイムを縮めている。また、そのなかでも石川氏は燃費も6.7km/Lまでアップさせ、ラストスパートへと望みをつないでくれた。
最後の最後でガス欠続出、Car Watchは7位でチェッカー
最後は第5ドライバーの川上氏へと望みを託す。路面が乾いていくなかで1分20秒を切るクルマがではじめると、川上氏もついていく。終盤になると、ハンデを消化したチームが上位に上がってくるなど実際の順位が分かってくる一方、周回が違うクルマが入り乱れてきて、コース上のドライバーからは順位が分かりにくくなってくる。
ピットとの無線連絡のなか、パスすべきクルマやそうでないクルマを指示していく。なかでも後続のクルマとは数秒間隔で詰められ、惜しくもパスされる場面もあったが、パスされたあともほぼ同じペースで食いついていくところはさすがの川上氏。11位から12位あたりを走行していたが、最後で劇的な展開が起こる。
燃費レースでもあるメディア4耐だが、最後にガス欠でスローダウンということはよくあり、Car Watchチームも過去2回、最終ラップでガス欠という失態を演じている。
今回、クルマも燃料も変わるだけでなく、燃料計の癖もわずかに変わっているとの情報もあり、各車とも燃費に関しては注意をしていたはずだ。ところが、最後の最後でスローダウンが続出。Car Watchロードスターを抜いたはずのクルマもスローダウンし、コース上で停止したため失格となってしまった。これは最後まで先行車に詰め寄った川上氏の実力もあってのことだ。
順位は瞬く間に変わり、Car Wathロードスターはいったん8位でチェッカーを受けたものの、前の周回のクルマでコントロールラインまで戻ってこれないクルマがあり最終的に7位となった。
結局、出走20台で終盤まで全車順調に走行を重ねていたものの、最後にチェッカーを受けたのは15台。チェッカーを受けない5台中、ポールポジションをとったレブスピード『R会』ロードスターを含む2台は完走扱いとなったものの、3台はコース上で力尽きてしまい失格という結果となった。
優勝はベストカーXおと週ロードスター、Car Watchは入賞をわずかに逃す
優勝はベストカーXおと週ロードスターで175周、タイムは4時間1分2秒121。2位はTEAM ahead ROADSTERで175周4時間1分5秒056。3位はcarview!ロードスターで174周、4時間1分12秒060。ファステストラップは2位のTEAM ahead ROADSTERが166周目に記録した1分12秒659となった。
また、4位にマツダ 代表取締役社長兼CEO 毛籠勝弘氏もドライバーとして加わった人馬一体ロードスター、5位はJ-Waveポテンザロードスター、6位はル・ボラン スポーツロードスター、そしてCar Watchロードスターが7位となった。
残念ながら表彰式は6位までの参加となったが、Car Watchチームのこれまでのタワーに表示という目標を達成し、次は6位で表彰式参加という目標ができた。来年も参戦予定なので、ぜひ応援をお願いしたい。