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【メディア4耐 2023】さまざまなアクシデントと奇跡が起こった4年ぶり9月の4時間レース。Car Watchチームは完走19位
2023年9月12日 14:14
- 2023年9月9日 開催
「第33回 メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」(通称:メディア4耐)が9月9日に開催され、2023年は4年ぶりに9月開催&4時間フルのレースが戻ってきた。Car Watchチームは19位完走。成績は上位ではないものの盛りだくさんの出来事と奇跡の1日だった。
ワンメイク耐久レースが完全復活
使用するクルマはレース名のとおりマツダの「ロードスター」で、一切の改造を許されない各車同一仕様のワンメイクレース。しかも、エンジンを整備することもタイヤ交換もなく、マツダが油脂類まですべてイコールコンディションで用意したND型のロードスターに乗り、純粋にドライバーの腕と戦略のみで戦う。
レースに使うロードスターの仕様は1.5リッターの6速MT仕様。エンジン、トランスミッション、排気系はノーマルで無改造。コンディションに差が出ないよう、マツダによって毎年メンテナンスがなされている。
専用装備としては、マツダ製専用ロールバー、ビルシュタイン製車高調整機構付きダンパー、ブリヂストン「POTENZA Adrenalin RE004」(195/50R16)、エンドレス製ブレーキパッド「MFE1」、ブリッド製専用フルバケットシート(助手席レス)、CUSCOレーシングハーネス 6Points FHR(HANS専用)。油脂類はエンジンオイルにGulf ARROW GT30、ギヤオイルにGulf PRO GUARD Gear Oil 75W-90 GL5、ブレーキフルードにENDLESS S-FOURを統一して装備する。
4時間のレースで使えるガソリンは満タン+20L携行缶の合計60L。この制約のなか、いかに速く多く走れるかの勝負となり、ガス欠なく完走するためには速さだけでなく燃費も追及した走りが求められる。
ちなみに2019年まで9月開催、16時決勝スタートの4時間耐久レースだったが、2020年は9月開催は守り切ったものの2時間30分に短縮して無観客レース。2021年は翌年3月に延期して、季節違いと無観客短縮レース。そして2022年は12月に延期開催となるが、12時スタートという昼間開催で観客ありの4時間耐久レースとなった。そして、今回、新型コロナウイルスの影響が始まってから初めての9月開催と16時スタートで夜間までの4時間レースが復活した。
そして、4時間のレースの過酷さに拍車をかけるものが天候。暑さはもちろん、当日は筑波サーキットのある茨城県下妻市は雨の予報はないものの、朝から時折りのにわか雨と、公式予選の前にはコースが完全に濡れるほどの雨が降り、このまま順調なレース運びにはならない予感がしていた。
優勝経験ドライバーを新たに起用。期待が高まる
Car Watchチームの1日は朝7時の公式車検からスタートした。今回のドライバーは、編集長小林、モータージャーナリストの日下部保雄氏、初回挑戦から皆勤賞のISHIKAWA氏、そして前回「助っ人」に来ていただいた加藤彰彬氏。さらに編集部から、過去メディア4耐で優勝経験のある編集部塩谷が参加した。ルールではドライバーは4~5名で、1人の連続運転時間は50分まで。
ただし加藤氏のような「助っ人」ドライバーは合計40分までという規定もある。「助っ人」は実行委員会から認定された実績あるドライバーで、分かりやすく言えば「めちゃくちゃ速い人」ということになる。
ちなみに編集部塩谷が優勝したのはCar Watchチームではなく、当時、編集部塩谷が所属していた別媒体の編集部。そのチームは現在も参戦し、強豪チームとして知られている。そのなかで何年も参戦したのだから、長いブランクがあるとはいえ期待が集まる。
朝イチで公式車検を済ませ、公開練習では編集部塩谷も走行を重ね、仕上がりを確認していく。そして、予選前に給油をし、各車満タンとして重量を合わせ、いよいよ公式予選へと向かっていく。
コース上もコース外もイベント多数
ここで、メディア4耐が開催された当日の筑波サーキットの様子をお伝えしたい。2020年からはコロナの影響でイベントも縮小して開催していたが、今回はマツダファン・サーキットトライアルやロードスター筑波サーキットミーティング2023、ビースポーツ ロードスター・マスターズ、コース同乗体験などコースイベントもしっかり詰まったコロナ以前にものに戻った。
コース外では出展ブースや芝生席でのイベントなどがそろい、広島が本拠のマツダならではの広島の郷土愛あふれたHirosimaマルシェは見もの。広島県のキャラクターである瀬戸内海のカキをモチーフとしたブンカッキーも応援に駆け付けた。
中でも“お好み焼きのソースといえば”のオタフクソースがサポートする広島お好み焼きの試食コーナー。「試食」とされているためサイズは小ぶりだが、広島お好み焼きのおいしさを堪能するには十分。もちろん無料。そして量の少なさは、ほかのお店の味も堪能できることになる。
ほかにマツダのコーナーではキッズ整備体験のコーナーもあるほか、入手困難だというマツダ車の焼き印の入ったもみじ饅頭も販売。
出展コーナーではモータースポーツ関連のグッズなども豊富。レーシングギアを取り扱うstand21では、頭部保護のHANSを展示、F1でも使われているという最高級クラスのHANSの軽量さを手にとって試せる。また、各社に装備したシートでおなじみのBRIDEはシートを展示。女性をはじめ小柄な体系の人向けのシートも座って試せる。
また、エンドレスはブレーキパッドのお買い得品を取りそろえる。マツダ車だけにとどまらない品ぞろえなので、掘り出しものが見つかる可能性も。
マツダのMZRacingでは毎回マツダのグッズを用意しているが、今回はなんと、当時の広報誌「POLE POSITION」の貴重なデッドストック品を販売。当時のモータースポーツ車両が表紙で、メディア4耐以降では富士スピードウェイで9月17日に開催されるMAZDA FAN FESTAでも販売される予定とのこと。ただし、在庫が残っていればの話だ。
波乱の予選へ
コース上では、メディア4耐の予選は11時20分から行なわれた。直前には雨が降り路面はしっかりと濡れた状態。しかし、走行が開始されると同時に太陽が顔を出し、予選中にドライに変化することも予想された。まずは各車1分20秒を超えるようなスローなペースで走行を開始し、次第にタイムを上げてくる。
予選は燃費制限がないので飛ばしてもいいが、タイヤは1日を通して1セットなので、決勝に向けてタイヤを温存する必要もある。Car Watchチームの予選のドライバーは日下部氏。路面を探りながら走行を始めるが、途中でスピン。タイヤバリアに接触してしまったのだ。
日下部氏によれば、ダンロップコーナーを過ぎた立ち上がりで水に乗ってしまい、元に戻せるかと思ったが回ってしまったとのこと。右フロントでタイヤが当たってる音がしたためピットインし、応急のテープを貼るなどしてコースに戻ったが、今度は右コーナーで左後ろから異音がしたため再度ピットイン。破損した左リアのバックランプを外して走行してみたが、うまく走行できないのですぐにピットに戻った。
タイムの方は計測した周回があったため、最下位は逃れたものの21台中19位と後方へ。今回の決勝の目標はタワーにカーナンバーが表示される8位、としただけに、かなり苦しい状況になってしまった。
メディア4耐ではマツダE&Tがメンテナンス体制を敷いているため、応急でリアバンパーの交換やボディパネルの一部修正を行ない、決勝レースに臨める状態にしていただいた。パネル修正の際にボディを叩いたため、ボディカラーにぴったり合った純正タッチアップペイントで色の補修までしてくれる念の入れようで、後ろをヒットしたわりにはあっという間にきれいな姿に戻った。
順調にスタートしたが、再び、トラブルが襲う
決勝レースは16時スタート。スタートに先立ち、ドライバーズミーティングのあとはすぐにコース上で選手紹介が開始されるという、特に第1ドライバーにはクルマを降りるまで3時間ほど気の休まる時間がないタイトなスケジュール。
山口県出身のギタリスト、田川ヒロアキさんのギターによる国歌演奏を行なったあと、いよいよ本選がスタートする。
決勝は少し遅れた16時15分にスタート。CarWatchチームは19位からのスタートとなり、第1ドライバーの編集長小林が順調に飛ばし、1周目で16位、2周目で14位までアップした。この順位は、ハンデを消化するチームがピットインした段階で最下位クラスにいったん落ちるためで、見た目の順位アップは喜んでいられない。
そして、CarWatchチームも助っ人参加のハンデがあるため、どこかのタイミングで設定された60秒の停車をしなければならない。ハンデ消化のピットインではドライバー交代もクルマの整備も一切できない。ちょうど前を走るクルマにひっかかったタイミングでハンデを消化しながら約50分走行し、11位となるなか第2ドライバーへ交代した。
走行を終えた編集長小林は「これまでの自分は燃費がわるい走行だったが、今回は燃費を意識して6.1km/Lで走行、5速まで使える余裕もできた。参加して10年。何か見えてきたものがある」とのこと。
第2ドライバーは日下部氏。順調に周回を重ねていき、一時的に8位となりコントロールタワーに「64」の数字が表示するものの、日下部氏の走行が残り15分というところで突然のスローダウン。
日下部氏によれば「ピットロードを過ぎたあたりで、急に、アクセルを踏んでも出力が上がらなくなった。よく見たら水温が上がっていた。もうピットロードを過ぎてしまったので、壊れてしまわないように1周して戻った」とのこと。
無線で日下部氏から水温上昇の連絡を受けていたピットでは、すぐにお世話になったばかりのマツダE&Tのスタッフに応援を要請。クルマが戻るとともにすぐに対応が開始されようとしていた。
ところが、レース中はクルマの修理も含め、ピットクルー登録している人しかクルマには触れない。マツダE&Tのスタッフが対応しようとしたらオフィシャルに止められてしまったのだ。
しかし、ここで奇跡が。今回のピットクルーを担当する人たちはレース経験だけでなく、メンテナンスも日ごろからこなしている人。後方からマツダE&Tの人が“天の声”でサポートし、すぐにベルト切れによるウォーターポンプ動作不良と確認し、交換作業に入った。
ふだんから整備は自分でする人でも、全く経験のない作業はできないし、ましてレース中の限られた時間で行なうことは難しい。ところが、ピットクルー担当者はなんとベルト交換の経験があり、マツダE&Tから予備のベルトを受け取ると、10分強という時間でレースに復帰させてしてしまったのだ。
助っ人加藤氏の速さを活かせない展開に
修理でのピットインと同時に、第3ドライバーの加藤氏にスイッチ。修理後は加藤氏によって反撃に出ようとしていた。周回数が減ることになり、燃費の点でも有利になったため、加藤氏は1分12秒883というタイムを出して、終盤までのファステストラップを維持する猛追を開始した。
まずはベルト交換後でもあり、クルマの状態をチェックしながら1分14秒台から15秒台で走行し、問題ないと分かってからすぐにペースを上げて最下位脱出への希望をつなぐ。決勝スタートから2時間を経過したタイミングで、走行では最下位となるものの先頭から10ラップ遅れ、次のクルマまで5ラップというところまで追い上げた。
ところが、ここでコースアウトするマシンがあり、セーフティカーが入った。
残念ながら反撃もここまで。セーフティカーは加藤氏の制限時間近くまで入り、助っ人の速さをフルに活かせない展開になってしまった。
本来ならすぐにピットインする方法もあるが、次の交代で給油というタイミング。このままピットインした場合、燃料がまだ減っていないため、一度しか許されない給油なのに携行缶の20Lすべて投入することができないというもどかしい状況。そこでコース上にとどまることを決め、制限時間いっぱいまで走行してピットインして交代した。
順調に周回を重ね、結果的に最下位は逃れる
第4ドライバーのISHIKAWA氏への交代でのピットインでは給油も行なわれ、無事に20Lすべてを投入できた。給油の3分間の停車のあとにコースに戻ったが、コースアウトしたクルマがあったため最下位は逃れたものの、さらに1つ上まで抜かすには5周分の遅れを取り戻す必要がある。
ISHIKAWA氏は慎重に運転し、順調に走行。「楽しませていただきました。最後のドラマを作るために無事、お渡しすることができた」とISHIKAWA氏が走行後に話したように、何事も起きずに第5ドライバーの塩谷氏にバトンを渡した。
編集部塩谷にバトンを渡す前にはコースアウトした44号車カーアンドドライバーロードスターが復帰して猛追、1周後方まで迫っていた。そして編集部塩谷のペースは猛追するマシンにおよばず、チェッカーまでラスト2周というところで抜かされてしまう。
最終結果は19位。最下位は逃れる
今回の優勝は13号車 ENGINE ROADSTERで周回数は176、タイムは4時間41秒015。2位は74号車 REVSPEED ロードスターで周回数176、タイムは4時間46秒813、3位は99号車 CT&WEB CARTOPロードスターで周回数176、タイムは4時間1分2秒467となった。
ファステストラップは2号車 NHK×GT×Driven×C!ロードスターで149周目に1分12秒628を記録した。
われらがCarWatchチームのCarWatchチーム ロードスターは最下位でチェッカーを受けたものの、最終結果を見てみると、抜かされた44号車はペナルティで5周減算となり、チェッカーを受けていない1台もあって21台中19位、周回数は162、タイムは4時間1分46秒519となり、最下位は逃れた。
表彰式では、自身も12号車 人馬一体ロードスターで走ったマツダ 取締役専務執行役員兼CTOの廣瀬一郎氏が登壇。「人馬一体ロードスターで走ることができ、心の底から楽しく、無線で楽しいと叫んでいた」とし、このレースを「ずっと続けたい」と語り、次回2024年9月21日開催を発表した。
また、廣瀬氏は持続可能性の観点から、レースは人の知恵で人よりも遠くへ走ることを追及したものだと位置づけ、カーボンニュートラルで続けるため、カーボンニュートラル燃料の検討をすることを明らかにした。
いろいろなことがありすぎたが、ケガなく無事にレースは終了
今回のCarWatchチームはさまざまなことがありながらも、チェッカーを受けるまで完走し、誰もケガなくレースを終えられたことは何より。予選、決勝とさまざまなことがあったにしては上出来の終わり方ではないだろうか。
そして、今回、アクシデントのなかにも、ピットクルーが修理のスキルを持ち合わせていたことや、予選後の修理とともに手厚いサポートをしてくれたマツダE&Tには感謝してもしきれないくらいだ。
結果は19位となったものの、チームの雰囲気は十分に力を出してやり切ったという満足感であふれていた。次回も9月開催。Car Watchチームとしてぜひまた筑波サーキットに戻ってきたい。