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【メディア4耐 2021】延期で3月開催となった耐久レース、Car Watchチームは完走14位
2022年3月22日 12:27
- 2022年3月19日 開催
毎年恒例のメディア対抗レースが半年延期されて無事に開催
マツダ「ロードスター」のワンメイクレース「第32回 メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」(メディア4耐)が3月19日に開催された。当初2021年9月に開催予定だったものが、新型コロナウイルス感染症の拡大状況によって延期されて開催されたもの。われらがチームCar Watchロードスターは前回と同じ14位で完走した。
32回目を迎えた今回のレースは、延期のため通常の9月と違って3月開催。レースの時間も2020年9月開催の第31回と同様に2時間30分の短縮レース。そのほかのイベントなども割愛されての実施となったため、今回はスタート時刻を早めて13時30分スタートで夜間走行なしと、今までにないレース環境となった。
走行するロードスターは前回から仕様などの変更はなく、基本的にはノーマルの車両に共通のレース向け装備を行なったワンメイクレース。自動車関連メディアによる対抗戦となり、チームCar Watchは2012年の第23回から参加して今回は10回目の参加となる。
また、第31回に引き続き無観客での開催。ロードスターのパーティーレースの合同テストや、「マスターズ」と称した40歳以上によるロードスターレースも同時開催されたため、メディア4耐の参加者以外にも入場者はいるものの、通常よりもさらにサーキット来場者の少ない寂しいものとなった。
それでも、メディア4耐そのものの参加台数は前回を上まわる19台となったほか、レースそのものも途中、熱いバトルが繰り広げられるなど大いに盛り上がりをみせた。
レースのレギュレーションなどは短縮開催となった第31回と同様、満タン40Lで途中給油はなし。そのため、給油タイミングという重要な駆け引きの要素が減ってしまい、よりドライバーの“腕”による要素が高くなる。それに加えて、これまでになかった3月開催ということで、気候の違いも影響してくる。特に気温については、残暑の残る9月ではレーシングスーツを着用するドライバーは暑さとの戦いでもあったものがだいぶ楽になると思われた。また、体調面では花粉の季節ということもあって、一部ドライバーから不安の声も聞かれた。
クルマと仕様は前回と同じ
前回となる第31回はタイヤがブリヂストン「POTENZA Adrenalin RE004」に変わってはじめてのレースだったが、今回はPOTENZA Adrenalin RE004のまま変更はない。もちろんレースを控えて新品に交換されている。
そのほかの装備に変更はない。ロードスターは1.5リッターの6速MT仕様で、チームCar Watchの64号車は2015年にND型ロードスターになってから全く同一の個体。毎年、マツダによってメンテナンスが施されて、要所要所のパーツ交換がなされている。細かな整備状況までは知らされていないが、今回はトランスミッションまわりに手が入っている可能性が高く、シフトフィールがだいぶしっかりしたものに変化していた。
統一された装備を紹介しておくと、マツダ製専用ロールバー、ビルシュタイン製車高調整機構付きダンパー、エンドレス製専用ブレーキパッド、ブリッド製専用フルバケットシート(助手席レス)、CUSCOレーシングハーネス6Points FHR(HANS専用)、エンジンオイルGulf ARROW GT30、ギヤオイルGulf PRO GUARD Gear Oil 75W-90 GL5、ブレーキフルードENDLESS S-FOUR。エンジン、トランスミッション、排気系は純正品で無改造。もちろん、チームによって改造などは許されておらず、全車に統一された整備が施されたままの状態で走らなければならない。
1つだけクルマの仕様でチームごとに差をつける点があるとすればタイヤ空気圧の調整。300kPaの状態でクルマが渡されるが、どの数値にして、どのようなタイミングで空気圧の調整をするかは重要な戦略の1つとなる。
大ベテラン日下部保雄氏の加入で引き締まるチームCar Watch
第32回のドライバーは、これまで10回のチームCar Watchにフル参加のモータージャーナリスト 岡本幸一郎氏とパーティーレーサーの石川和也氏、それに加えて副編集長の小林、さらに今回は本誌でもおなじみのベテランモータージャーナリストの日下部保雄氏を加えた4名。チーム監督は新たに編集部 塩谷が務める。
日下部氏の加入により、ベテランのレースに関するさまざまな知見が活かされることが期待できるとともに、岡本氏の“師匠”にあたる大先輩の加入によって、チーム内の適度な緊張感のアップや、チーム内のモチベーションアップも期待される。
チームの目標は前回同様の8位完走。リーダータワーにゼッケン「64」を光らせる、ということが目標となる。前々回は9位とあと一歩のところまできていたが、前回は14位と後退。依然として高い目標であることに変わりはない。
また、前々回は9位完走ということで、前回は1分間のハンデがついていたが、今回もチームや参加ドライバーの実績を考慮して1分間のハンデがついてしまった。1分間のハンデといっても、ピットストップのため、実際にはピットロードへの出入りを含めてそれ以上のタイムロスになる。
無給油の短縮レースということで、戦略としては無給油で2時間30分を走り切るよう燃費に注意しながらミスなく周回を重ねていくこと。ハンデ消化のピットストップもレースの団子状態を避けてクリアラップを刻みながら追い上げていくためには、どのタイミングでハンデを消化するかも戦い方の1つになる。
路面はウエットでスタートしたレース当日
当日のタイムスケジュール
・8時~8時30分:公開練習(計測なし)
・10時5分~10時25分:予選
・13時30分~16時:決勝レース
レース当日は朝から晴れたものの、前日は夜遅くまで雨ということもあって路面はウェット。8時ちょうどからのフリー走行ではやっとレコードラインが乾きはじめるというコンディション。
フリー走行を行なった岡本氏からは「ところどころドライで唐突に滑る。ただし、このまま予選になってもなんとかなるレベル」というコメントも飛び出した。岡本氏は2007年にマレーシアのセパンでスコールのなかで耐久レースを走ったことがあり、そのときの2時間の雨中走行で得たものがあるという。
イベントや他のレースも少ないため、今回はあまり時間をあけずに続けて予定が進んでいく。公式予選は10時5分スタートから20分間。例年どおり岡本氏の走行によるものとなる。
予選走行後の岡本氏は「予選の前半はクルマやタイヤの調子がよく、後半はドライバーがなれてくる」というジレンマの中で走行。「前半は100点満点ではないが、大きなミスをせずに2週ほどタイムを出せたのがよかった」と振り返るものの「タイヤの空気圧を再調整して走った後半、いいタイムが出せそうな周回で痛恨のシフトミスをしてしまった」と残念がった。
結局、予選は12位。ベストラップは15週走ったうちの4周目に出した1分11秒596。ちなみにポールポジションはカーナンバー74のREVSPEED・R会ロードスターで1分9秒881だった。
決勝レースは13時30分から16時まで。天気予報では夕方に雨が降る可能性があるとしており、予報内容も刻一刻と変化し、レース中の雨の可能性も高い。岡本氏は天候についても「雨が降ったら本当にうまい人が前にいくと思うので、それはそれでたのしみですね」と意味ありげな笑みを浮かべならコメントした。
そして、決勝前のブリーフィングを経て12時30分ごろ各車ともコース上へ。チーム紹介をスターティンググリッドで行なったあと、いよいよ決勝へ向けてスタート、第1ドライバーである副編集長小林が乗車、クルマをスタートさせ、ローリングスタート形式で13時28分いよいよ決勝レースがスタートした。
1分間のハンデ消化後にセーフティカー
スタート直後に1分間のハンデを消化する予定を立てていたチームCar Watch。予選12位でスタートし1周目には10位で戻ってくるなど順位を上げたが、その直後にハンデ消化のためのピットインを行なった。
当初は1周もせずにピットインする予定だったが、スタートからの流れがうまくいき、速めの速度の集団についていけそうと感じたこと。しかし、すぐに前後が詰まる団子状態になってしまったため、迷いながらピットインした。
1分間のハンデ消化後にコースに戻ると、そこに周回は違うもののポールをとった74号車がいいペースで走行中だったため、しばらく付いて走行するも、燃費が目標の6.0km/Lを下まわってしまったため、少しペースをダウン。やはりトップチームのドライバーは、エンジンを高回転までまわさずに速いペースで走れるから凄い。
ところがその直後に最終コーナーでコースアウトするアクシデントが発生。イエローフラッグが出てセーフティカーが導入された。ハンデの消化をイエローフラッグまで遅らせれば、ハンデの影響が抑えられたのにと悔やまれるが、この運もチームCar Watchの実力のうち。過去にもピットストップ直後にセーフティカーが導入されることもあったからだ。
セーフティカーがコースから外れてレース再開すると、すぐに第2ドライバーの日下部氏に交代した。
ドライブを終えた副編集長 小林はハンデの消化を早まったことを後悔するも、途中、速いクルマに合わせて燃費が悪化してしまったことに触れ「セーフティカーで6.7~6.8km/Lまで燃費を戻せてよかった」とし、「次につなげられてほっとした」と無事に走りきれて安心した表情を浮かべていた。
燃費とジレンマのなか、順位を大きく上げることは難しく
第2ドライバーはメディア4耐の参加は2年ぶりだという日下部氏。走行後「1コーナーのラインは、立ち上がり重視のラインを探っていたが、試しているうちに時間がたってしまった」と約40分の走行時間がすぐに終わってしまったと振り返る。
日下部氏は他車のピットインの兼ね合いもあって一時は上位につけるも、14位前後で走行、最後は11位まで上げ、燃費も6.0km/L前後で維持し、第3ドライバーの石川氏に交代した。
石川氏はロードスターパーティレースのベテランで、スタートしてまもなく1分14秒台のベストラップを記録し13秒台まで上げるものの、その後はペースを抑えて走行。走行後、石川氏によれば「ペースを上げていくなかでクラッチが滑る感じがあり、匂いもあったので、トラブルにならないような走行に切り替えた」という。
石川氏は10位でピットに戻り、ラストスパートを岡本氏に託した。
ラストは恒例の岡本氏、最後は燃費の壁にぶつかる
チェッカーまで走り切る予定の岡本氏に交代後、ロードスターの燃費計は5.8km/Lと計算上では燃料が足りなくなる恐れがある数値となるが、なぜか燃料計の針は燃費値からみれば少し余裕がある残量を示している。
燃費計はインジェクターの燃料噴射量から計算され、累計噴射量の積み重ねで大きな誤差につながる可能性もある。一方の燃料計はガソリンタンク内の浮きから油面を計測するため、走行の振動にさらされ前後左右にGがかかるタンクの油面から正確な残量を測ることが難しい。
ピットではどちらの数値を信用するかの決断を迫られるが、他チームのロードスターはペースを上げるクルマが続出、1分11秒台や1分12秒台で周回するクルマが目立ってきた。そこで、ピットでは燃費に余裕があるとの決断をし、まずはペースを上げる指示を出した。
しかし、直後に「燃料計の針がぐっと下がった」と岡本氏から報告。再び燃費維持に切り替えた。幸いにして順位が1つ後のクルマは2ラップの差があり、順位が後退する恐れはないと判断し、ペースを落としてガス欠リタイヤだけは避けて、完走を目指すことにした。
チームCar Watchが燃費に悩むころ、コース上では上位チームのラストスパートが繰り広げられていた。特に74号車のREVSPEED・R会ロードスターと27号車のTipo/Daytonaロードスターのバトルは盛り上がり、ピット観戦している他チームからも歓声が上がっていた。
そして、チェッカーまで数分と迫ったころ、空から雨粒が落ちてきた。
最後は14位でチェッカー、約半年後の次回に期待
わずかに雨粒は落ちてきたものの、チェッカーが降られるまでぎりぎりまで天候は持ちこたえ、雨の影響をほとんど受けることなくレースは終了。
優勝は55号車のSYE頑固一徹ロードスターで、112周の周回を重ね、タイムは2時間30分45秒981。ファステストラップは74号車 REVSPEED・R会ロードスターで、102周に1分10秒743を記録した。2位は813号車 J-Waveポテンザロードスター、3位は12号車でマツダ開発者の人馬一体ロードスターとなった。
われらがチームCar Watchは14位完走。振り返ってみると燃費の計算が不十分な点があったものの、過去2回起こしているガス欠という事態だけは避けられた。レース終了後、どの程度ガソリンが残っていたか正確なところはわからないが、ぎりぎりのところまでガソリンを使い切った思われる。
表彰式ではマツダから次回となる第33回のメディア4耐が開催されることが明らかにされた。開催時期は通常どおり9月で、約半年後に迫っている。次回も参加予定のチームCar Watchの活躍に期待してほしい。