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水平対向エンジンを低く搭載するため4WD機構を変更、新4WD配置の「スバル ボクサー ラリー spec.Z」

スポーツカーであるBRZをターボ+4WD化した「スバル ボクサー ラリー spec.Z」

 全日本ラリー第3戦YUHO Rally 飛鳥 supported by トヨタユナイテッド奈良が5月8日~10日の3日間にわたって奈良県を舞台に開催される。全日本ラリーは2戦を終え、新井大輝/坂井理崇組のR2R×YAHAGI GR Yaris Rally2が2連勝。ランキング2位も勝田範彦/保井隆宏組のGR YARIS Rally2となっており、GRヤリス ラリー2がポテンシャルの高さを示している。

 スバルはこの全日本第3戦にスポーツカーであるBRZをターボ+4WD化した「スバル ボクサー ラリー spec.Z」を投入。新井敏弘/安藤裕一組で巻き返しを図る。

スバルがシンメトリカルAWDと呼ぶ、4WD機構のレイアウト。左右でシンメトリーな構造となっており、前輪の接地荷重も高い

 このBRZターボ4WDの構想は、スーパー耐久でその一端が披露され大きな話題となっていた。というのも「シンメトリカルAWD」と呼ばれる通常のスバルの4WD機構では、BRZのボンネットの中に水平対向エンジンやトランスミッションが収まらないと考えられていたからだ。

 スバルがシンメトリカルAWDと呼ぶ、同社独自の4WD機構は水平対向エンジン+トランスミッションを車体中央に配置し、トランスミッション後部で前輪の駆動力と後輪の駆動力を配分。前輪の駆動軸をトランスミッション下部を通ってエンジンの直後にあるクラッチの斜め下あたりに配置する構造となっている。

 これにより、エンジン、トランスミッション、駆動軸が一直線に並び、クルマの中でも重量物となり、クルマの運動に大きな影響を及ぼす構造物の左右の重量が基本的に同様となる。重量だけだとバランスと表現されるが、左右方向では中央から折り返したような構造となるため、各重量が中心軸から等距離にありモーメント力も等質化。シンメトリー(対称)と呼ばれる状態を作り出しており、シンメトリカルAWDとして訴求されている。

 このスバル4WDの構造は、前輪軸にしっかり荷重がかかることから、前輪の荷重抜けが起こりにくく、滑りやすい路面でも前輪がしっかりグリップし、運転の不安感が少ない。さらにシンメトリーな構造になっていることから、万が一滑ってもクルマが勝手に巻き込むような運動が極めて起こりにくく、運転での対処もしやすい。スバル車が雪道に強いと多くの利用者に支持されているのは、根本的なクルマの構造がほかの多くのクルマと異なっていることに由来している。

 もちろん一方で欠点もあり、一つは水平対向エンジンという高さ方向が低いエンジンにもかかわらず、4WD機構が2階建て構造で折り返しているため、ボンネット高を下げづらいこと。もう一つは、前輪軸がクラッチの斜め下に位置するため、エンジンのオーバーハングが発生しやすいことになる。エンジンのオーバーハングは前輪へのしっかりした荷重と直結しており美点でもあるのだが、デザイン面や搭載面での制約ともなっている。もっとも現在はSUVデザインがトレンドともなっているので、SUVタイプのクルマであれば大きな問題になることはない。

 ただ、ボンネット高の低いスポーツタイプのクルマであれば事情が異なってくる。そのため、トヨタ(GR)86/スバル BRZではエンジン高の低い水平対向エンジンのメリットを最大限に活かすことができるFRレイアウトを採用。2階建て構造の4WD機構を廃したFRとすることで、シンメトリーで低重心なスポーツカーパッケージを実現していた。

運転席側に近づいた形で搭載されている水平対向エンジン
オーバーハングも小さくレイアウト。ヨー慣性モーメントを小さくしようとしている
ライバルとの比較

 そのBRZを4WD化するというのであれば、通常のスバルの4WDトランスミッションを搭載することは物理的に難しく、「一体どのように解決するのだろう?」と話題になっていたわけだ。

 スバルの解決方法は、BRZをターボ+4WD化した「スバル ボクサー ラリー spec.Z」において、前輪への駆動配分は2階建て構造をやめ、トランスミッションの横からエンジンのある前方に戻し、前輪のデフギヤはエンジンの下に置くこと。これにより、前輪への駆動軸はシンメトリー構造と異なってしまうものの、エンジンの下に前輪軸を配置することができコンパクトな駆動系を実現できる。エンジンのオーバーハングという問題も解決でき、前軸への荷重もエンジンの重さがしっかりかかるものになる。

 エンジン搭載位置も操縦席に極めて近いものとなっており、重量物をクルマの中央に寄せており、運動性能を上げようとしている意図が読み取れる。

 これによりヨー慣性モーメントを小さくでき、向きを変える際のエネルギーを低下。スバルがライバルとしているGRヤリス ラリー2よりも重心高が低く、ヨー慣性モーメントを小さくできているとしており、特に曲がりくねった道の多い全日本ラリーでは高いポテンシャルを持つという。

 気になるのは、シンメトリーレイアウトではないため、右に曲がるときと左に曲がるときの差、直進性などの低下だが、世の中の多くのクルマでシンメトリーレイアウトを実現できているのは希有な存在で、大きな問題とならないのかもしれない。

 どちらかと言えば、コンパクトなエンジン、トランスミッション、デフといった配置に、高熱を発するタービンが加わっており、熱的問題を解決できるかがポイントとなるのだろうか。

 いずれにしろ、新井敏弘/安藤裕一組が新たなマシンを得て、GRヤリス ラリー2とどのように戦っていけるのか。今週末の全日本ラリー第3戦飛鳥には大きな注目が集まっている。