「ブリヂストンTODAY」で航空機用タイヤの特別展示開催中
世界最大の旅客機用タイヤなどを展示

航空機用タイヤを特別展示中の「ブリヂストンTODAY」館内

2009年5月25日~7月下旬
入館無料



 ブリヂストンの運営するゴムとタイヤの博物館「ブリヂストンTODAY」は、東京都小平市にあるブリヂストン東京工場/技術センター内に設けられ、常設展示としてブリヂストンの歴史が展示されているほか、ブリヂストンの製造するさまざまなタイヤや、タイヤの構造・製造工程を知ることができるようになっている。

 そのブリヂストンTODAYでは、7月下旬まで航空機用タイヤの特別展示を行っており、その模様を取材した。

 ブリヂストンTODAYは、西武国分寺線と西武拝島線の乗換駅である小川駅から歩いて5分ほどのところにある。駐車場も用意されており、青梅街道と府中街道の交差点に近いことから車で訪れる際にも便利だ。

ブリヂストンTODAYの最寄り駅となる西武小川駅。西武新宿駅からの直通電車を使えば、急行でおよそ40分ほど西武小川駅東口のロータリー。ここから東に5分ほど歩けばブリヂストンTODAYに到着するブリヂストンTODAYは小川駅東口の交差点のすぐ側にある。府中街道に面しており、車で行く際にも便利
ブリヂストン東京工場/技術センター。ブリヂストンTODAYはこの一角を使っているブリヂストンTODAYの入口。東京工場/技術センターの受付に立ち寄らずに、直接訪れてかまわない
館内を案内していただいた副館長伊東功氏。伊東氏の横にあるのがボーイング777用のタイヤ

 展示は、1階、2階、地下1階の3フロアで行われ、航空機用タイヤの特別展示を行っていることから、訪れた際には天井からボーイング777の一部を模したバルーンが吊り下げられていた。館内を案内してくれた副館長の伊東氏によると、ブリヂストンTODAYは、2001年の3月1日にオープンしブリヂストンの70周年記念事業の一環として設立されたのだと言う。地元の小学生の社会科見学に利用されることも多く、ここ数年は、年間1万2000人~1万3000人ほどが訪れるとのこと。

 今回航空機用タイヤの特別展示を行ったのは「航空機用タイヤを製造するメーカーは数社存在しますが、大型民間旅客機用タイヤを製造するメーカーは、世界中でブリヂストンとミシュランの2社のみ。普段は近くで目にすることのない航空機用タイヤを知ってもらいたい」ということもあって企画された。

 展示されているタイヤは、JALのボーイング777で使われている実物。ボーイング777は、世界中で使われている中型旅客機で、主脚(後方の脚)1脚あたり6輪のタイヤが使われているのが、どれも同じように見える旅客機の中でも分かりやすい識別点となっている。

 実際の展示もその主脚を模したもので、主脚の片側3輪が直列に展示されていた。サイズは50×20.0 R22で、タイヤ外径50インチ、タイヤ幅20.0インチ、ホイールサイズが22インチという巨大なもの。そのほか、世界最大の旅客機であるエアバスA380のタイヤも単体展示されており、こちらは52×21.0 R22というさらに巨大なものだった。また、軍用航空機タイヤが展示されており、伊東副館長によると有志の方に協力展示してもらったタイヤだと言う。おそらく第2次世界大戦で使われた零戦のタイヤではないかということだったが、詳しいことは分からないとのこと。

 タイヤの構造展示の個所でも航空機用タイヤを展示。航空機用タイヤはすり減ったらトレッド面を張り替えて再使用するリトレッド技術によって再使用されており、およそ350回のフライトでリトレッドされると言う。トラックやバス用タイヤでもリトレッドは行われており、一般的にトラックやバス用タイヤでは1回のリトレッドが行われるのみだが、航空機用タイヤでは内部構造の強化により3回ほどリトレッドされている。このリトレッドを行うことで、すり減ったタイヤをすぐに破棄することなく再使用でき、環境負荷を減らし、コストの低減にもつながっている。

館内に入ると、巨大な航空機用エンジンのバルーンが目に入る。実物大で作成されている。右に見えるのがブリヂストンの創業者である石橋正二郎氏のパネル展示石橋正二郎氏の業績やブリヂストンの初期の歩みについて記されている。ブリヂストンの創業は1931年。日産自動車と合併したプリンス自動車工業の前進であるたま電気自動車とのかかわりなど興味深い話が多く記されている今回のメイン展示となるボーイング777に使われている航空機用タイヤ。主脚の描かれた後方のパネルと組み合わせる形での展示。1脚あたり6本使われており、3本直列に展示されていた
世界最大の旅客機として知られるエアバスA380用のタイヤ。飛行機も大きいが、タイヤも52×21.0 R22とそのサイズは巨大だ軍用航空機タイヤというプレートともに展示されていたタイヤ。詳細はブリヂストンでも不明とのこと。旧ブリヂストンロゴがタイヤのサイドに記されているボーイング777用タイヤの構造展示。内部には多くのベルトが使われている
基本構造はラジアルタイヤ。上層のベルトにはアラミド繊維を使用した強化用のアラミドコードプロテクターが使われているアラミドコードプロテクターのアップ。通常のベルトは直線状の繊維の筋が走っているが、ジグザグとなっているのが大きな特徴。これは、航空機の着陸の衝撃に耐えるためで、直線状のものだと着陸のショックで切れる可能性があるため。ジグザグにすることで周方向の繊維に余裕を持たせている

 航空機用タイヤ以外の常設展示については、その一部を以下に写真で紹介する。航空機用タイヤを間近に見られる機会はめったにないので、ブリヂストンTODAYに足を運び、その大きさや特殊な構造を実際に確認してみてほしい。なお、営業時間や休館日などについては、ブリヂストンTODAYのWebサイトを参照のこと。

航空機用タイヤと同様に構造展示されていた一般的なラジアルタイヤ。カーカスと呼ばれるベルトの繊維が周方向と鉛直方向に配置され、その上層を周方向に繊維の走るベルトで締め上げる。カーカスの繊維がタイヤを横から見たとき外周方向に放射状に走るため、ラジアル(radial)タイヤと言うPOTENZA RE-01の構造。高速に、そして、コーナーリング時の高荷重に対応するため、ベルトの上層にキャップと呼ばれる部分が追加されている。タイヤの内部構造は用途によって大きく異なり、それが性能に反映されている多数のカーカスで構成されたトラック・バス用のバイアスタイヤ。乗用車など多くのジャンルでラジアルタイヤが主流だが、バイアスタイヤもまだ使われている。カーカスの繊維の目が斜めに組み合わされているため、バイアス(Bias)タイヤと言う
ブリヂストンの生産する空気入りタイヤとして最大のもの(右)と、最小のもの(中央上)との対比展示。最大のものは特殊なダンプカーに、最小のものは台車に使われている。トレッドの平なタイヤ(中央下)は、リニアモーターカーに使われているタイヤタイヤのトレッドパターン展示。タイヤのトレッドパターンは、ドライ路面やウェット路面のグリップ、騒音などの性能を考えてデザインされている。この展示はそんなトレッドパターンの違いを見せてくれるトレッドパターンそれぞれに詳細な解説が付いている
スポーツ用タイヤであるPOTENZAシリーズのトレッドパターンの変遷。懐かしいと思う人も多いのでは?
“タイヤ1本の接地面積は約はがき1枚分”を実際に見ることができる現在は“F1タイヤと言えばブリヂストン”だが、F1参戦の歴史は1997年に始まる。わずか10年でF1を席巻したわけだ。このマシンはリジェ無限 JS-41で、F1参戦前にタイヤのテストのために使用したものF1用タイヤや、インディ用タイヤなどを多数展示。実際に持って重さを実感できる。同じものが複数あるのは、団体の見学客に対応するためとのこと
地下の展示ルームでは、ブリヂストンのビルで実際に使われている免震ゴムを確認できる先ほど見えた窓をのぞくとビルの構造部を見られる。柱と柱の間に挟まっている黒いものが免震ゴム。このゴムの働きで地震の際の揺れを吸収する別の柱にはダンパーが入っており、揺れを抑制する働きを持っている。S字状のダンパーのほか、奥にはスプリング状のダンパーを見ることができる

 

(編集部:谷川 潔)
2009年 6月 11日