フォーミュラ・ニッポン第4戦富士リポート
3戦連続で雨の開催となる中、ロイック・デュバル選手が優勝

第2戦と同様、雨を制したロイック・デュバル選手

2009年6月28日決勝開催



 2009年フォーミュラ・ニッポン第4戦の決勝レースが6月28日、富士スピードウェイ(静岡県小山町)で開催された。第2戦、第3戦に続き雨となったレースは、途中セーフティーカーの導入があるなど、難しいコンディションの中、ポールポジションからスタートしたNo.31ロイック・デュバル選手(NAKAJIMA RACING)が、終始安定した走りで優勝した。2位にはNo.37大嶋和也選手(PETRONAS TEAM TOM'S)が入り、今期ルーキーで初の表彰台を獲得した。3位にはNo.40リチャード・ライアン選手(DOCOMO DANDELION)。ドライバーズポイント1位のNo.2ブノワ・トレルイエ選手(LAWSON TEAM IMPUL)がリタイヤに終わり、優勝したデュバル選手はトレルイエ選手に1ポイント差に迫った。

 前日の予選は猛暑の中で行われ、デュバル選手が初ポールポジションを獲得した。予選2位は第3戦もてぎで表彰台に立った石浦宏明選手(Team LeMans)、3位は平手晃平選手(ahead TEAM IMPUL)と若手が続いた。日曜朝のフリー走行まで路面はドライコンディションだったが、ピットウォークが始まった昼頃から雨が降り始め、レースがスタートする2時半には強い雨となっていた。

 第4戦からオーバーテイクシステム(OTS)の使い方が変更になった。従来は決勝レース中しか使用できなかったが、今回から日曜朝のフリー走行で2回の「試し打ち」が可能となった。レース中だけの使用ではマシンセッティングに反映できないことを考慮したもので、OTSの効果を高めるための施策だ。エンジン開発を行うトヨタ自動車の永井氏によると「OTSの使用はエンジンの耐久性に影響するので2回までと制限した」とのこと。

 雨の影響でレースはセーフティーカー先導によるローリングスタートとなり、4周目からバトルが始まった。1コーナーは予選順位のまま通過したが、コカコーラコーナーの進入でルーキー塚越広大選手(HFDP RACING)が、昨年のチャンピオン松田次生選手(LAWSON IMPUL)を抜き4位に上がった。さらに次の周の1コーナーでアンドレ・ロッテラー選手(PETRONAS TEAM TOM'S)がチームメイト大嶋選手のインに飛び込み7位に、7周目の最終コーナーではブノワ・トレルイエ選手(LAWSON TEAM IMPUL)がライアン選手を抜いて9位に、8周目の13コーナーでロッテラー選手が小暮卓史選手(NAKAJIMA RACING)を抜き6位に、10周目の1コーナーでは塚越選手がブレーキングミスでコースを外れ4位から6位に後退、14周目の最終コーナーで小暮選手がコースを外れ大嶋選手が7位になるなど各コーナーで激しくバトルが展開された。15周目、トレルイエ選手がストレートでスローダウン、15周目終了時点の順位は、デュバル、石浦、平手、松田、ロッテラー、塚越、大嶋、小暮、ライアン、トレルイエ、立川、国本、伊沢となる。

スタートはセーフティーカー先導となった4周目からレースは始まった5周目の1コーナーでチームメイト大嶋のインと刺し7位に上がった“雨のロッテラー”

 トレルイエ選手はミッショントラブルでピットへ、ほぼ同時にチームメイトの松田選手もヘアピン進入でスローダウンしコースイン側のエスケープを走行、300Rでマシンは停止しリタイヤ1号となった。26周目の100Rでコースを外した平手選手にロッテラー選手が並びかけ、ヘアピン立ち上がりでパスして3位に浮上した。ロッテラー選手はこの時点でトップ独走のデュバルとほぼ同タイムで走行。“雨のロッテラー”を見せつけた。

17周目のヘアピンでコースを外れスロー走行する松田300Rでマシンは停止。燃料ポンプのトラブルでリタイア1号となるセーフティーカー導入。立川、ロッテラー、デュバルと続く

 34周目のヘアピンで伊沢選手がスピンしコース上にマシンを停止、これによりセーフティーカーが導入された。これでレースが大きく動くことになる。トップを独走していたデュバル選手は30秒弱のマージンを失い、デュバル選手をはじめ多くの選手がピットインして給油する中、ロッテラー、大嶋、ライアン、立川の4選手はそのままコースにとどまった。無給油作戦だ。

 第2戦の鈴鹿では、無給油作戦を行った国本選手が最終ラップにガス欠となったが、今回は雨でラップタイムが遅い上、セーフティーカースタート。さらに途中にセーフティーカー導入と燃費を稼げる要素が重なった。雨によるペース次第で無給油作戦が成功する可能性がある。

 独走していたデュバル選手は3位だったロッテラー選手と6位の大嶋選手の間でコースに戻った。セーフティーカーは立川選手の前に入ったので、最後尾の立川選手、トップに立ったロッテラー選手、その後はデュバル、大嶋、ライアン、石浦、平手、塚越が並ぶことになる。

 セーフティーカーがラップ遅れの立川選手を前に出し最後尾に着くように指示。ここでセーフティーカーが間違ってトップのロッテラー選手も前に出し、最後尾に着くように指示を出す。ロッテラーはセーフティーカーの横に並んで、間違ってるとアピールするが、結局前に出ることとなる。直後にセーフティーカーは間違いに気付き、全車を前に出して隊列を整え直すこととなった。

 ロッテラー選手はここで作戦を変更。ヒヤヒヤの燃費走行を行う中、スプラッシュ&ゴー(わずかな作業のみでピットインタイムを短くすること)で給油してトップに戻ることにした。ピットインし、5秒でピットアウト、すぐにコースに戻ろうとするが、丁度セーフティーカーとデュバル選手がストレートに到着し、ピットレーン出口が赤信号となり最後尾に着くことになってしまった。もしセーフティーカーが間違った指示をしなければ、ロッテラー選手とデュバル選手の一騎打ちが見られただけに残念な展開となった。

 39周目からレースは再開。この時点の順位は、デュバル、大嶋、ライアン、石浦、平手、塚越、小暮、立川、国本、ロッテラー。無給油作戦の大嶋選手とライアン選手が大幅に順位を上げた。

 雨は最後まで降り続いた。塚越選手が平手選手に並びかけたり、ロッテラー選手が小暮選手を攻めてコースを外れたりとバトルは続いたが、デュバル選手だけは44周目にファステストラップをたたき出すほど他を圧倒する走りで独走し、2位に40秒の大差を付けて優勝した。2位の大嶋選手から6位の塚越選手までは、順位の変動こそなかったが、最後まで僅差の争いとなった。

終始安定した走りで優勝したデュバル選手小さく手を上げながらウィニングラップを周回するデュバル選手
2位に入り、ルーキー初表彰台を獲得した大嶋選手
3位はリチャード・ライアン選手
若手の石浦選手(写真左)、平手選手(写真中)、塚越選手(写真右)が4、5、6位
表彰台に立つ3選手と優勝チームの中嶋悟監督

 デュバル選手は今期2勝目でポイントリーダーのトレルイエ選手のリタイヤもあり、1ポイント差に迫った。大嶋選手は今期ルーキーで初の表彰台を獲得、前戦で活躍した塚越選手と並び、シーズン後半の活躍が期待できる。

 最終順位は以下のとおり。
デュバル、大嶋、ライアン、石浦、平手、塚越、小暮、ロッテラー、立川、国本

 第5戦は2週間後、7月11日、12日に鈴鹿サーキットで開催される。はたして、梅雨明け1週間前の鈴鹿は雨になるのか、夏の猛暑になるのか。残り4戦も激しいバトルを期待したい。
 

(奥川浩彦)
2009年 6月 30日