フォーミュラ・ニッポン第5戦鈴鹿リポート
第1戦以来のドライコンディション

1コーナーをトップで駆け抜ける小暮選手。2位に落ちたデュバル選手にトレルイエ選手が外から並びかける

2009年7月12日決勝開催



 2009年フォーミュラ・ニッポン第5戦の決勝レースが、7月12日、鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開催された。過去3戦は雨のレースだったが、第1戦以来のドライコンディションでの決勝となった。スタートで予選2位の小暮卓史選手(NAKAJIMA RACING)が、ポールポジションのロイック・デュバル選手(NAKAJIMA RACING)を抜き独走態勢を築くが、レース後半でミッショントラブルが発生。トップを奪い返したロイック・デュバル選手がそのまま走りきり優勝した。第2戦の鈴鹿、第4戦の富士に続き3勝目を挙げたロイック・デュバル選手は、シリーズポイントでもブノワ・トレルイエ選手(LAWSON TEAM IMPUL)を抜きトップとなった。

今期3勝目でシリーズポイントでもトップに立ったデュバル選手
ミッショントラブルで2位になった小暮選手
表彰台は確保したが、リーダーズレッドをついに明け渡したトレルイエ選手

 全8戦で行われる2009年全日本選手権フォーミュラ・ニッポンは、前半4戦を終えた時点でトレルイエ選手が27ポイントでトップ、デュバル選手が1ポイント差の2位と、3位の塚越広大選手(HFDP RACING)の15ポイントを大きく引き離している。チームで見ると初戦こそLAWSON TEAM IMPULのトレルイエ選手が勝っているが、その後はNAKAJIMA RACINGが3連勝と勢いに乗っている。ポイントではNAKAJIMA RACINGが38ポイント、LAWSON TEAM IMPULが29ポイント。NAKAJIMA RACINGがこのまま独走態勢を築くのか、他チームの巻き返しがあるのか、後半戦を占う、注目の1戦がスタートした。

 スタートで飛び出したのは予選2位の小暮選手。予選1位のデュバル選手を抜きトップで1コーナーへ飛び込む。2位はデュバル選手、3位には予選6位のトレルイエ選手がジャンプアップした。以下、4位に塚越選手、5位に松田次生選手(LAWSON IMPUL)、6位は予選11位のアンドレ・ロッテラー選手(PETRONAS TEAM TOM'S)と続き、予選5位の石浦宏明選手(Team LeMans)は8位に順位を落とした。

 ここで2年連続シリーズチャンピオンの松田選手にフライングスタートの裁定が降り、ドライブスルーペナルティとなる。さらに塚越選手、伊沢拓也選手(DOCOMO DANDELION)、ロッテラー選手、リチャード・ライアン選手(DOCOMO DANDELION)もフライングのペナルティを受け大きく順位が変わった。10周終了時点の順位は、小暮、デュバル、トレルイエ、石浦、平手、立川、国本、大嶋、松田、ロッテラー、塚越、伊沢、ライアンとなる。トップ2台と3位のトレルイエ選手の差は10秒以上に広がり、NAKAJIMA RACINGが独走態勢を築いていく。

 13周目、最後尾から追い上げた松田選手が8位の大嶋和也選手(PETRONAS TEAM TOM'S)に迫った。スプーン立ち上がりから、オーバーテイクシステムを使い、シケイン進入でインに飛び込み8位に上がった。上位陣は順位の変動はないが、43周の決勝のほぼ半分、21周目終了時点でトップの小暮選手が2位のデュバル選手を7.7秒引き離し独走態勢へ。2位のデュバル選手と3位のトレルイエ選手の差も22秒と大きく広がった。

 レースは折返しとなり各車タイヤ交換、給油を行う。一足先にピットインした、7位の国本選手がピットアウトしてきた立川選手を交わし6位へ。さらに5位の平手選手の背後に迫る。スプーン立ち上がりでオーバーテイクシステムを使いシケインで並びかけるが平手選手がインをキープ。逆にシケイン立ち上がりから平手選手がオーバーテイクシステムを使いメインストレートを逃げる。国本選手は、昨年マカオグランプリで日本人2人目の勝者となり期待されたが、前半戦はパッとしない成績に終わっていた。だが、今回は各所で熱い走りを見せ、今後の活躍が期待できるレース展開を見せた。

 後方でも、12位に落ちた塚越選手がスプーン立ち上がりからオーバーテイクシステムを使用して大嶋選手に肉薄、シケインを2台併走で抜け、立ち上がりで11位に上がった。全車ピットインを済ませ、トップの小暮選手は2位以下を10秒以上引き離して独走態勢。2位と3位の差も27秒と大きく広がった。

 33周目、トップを走る小暮選手が突然のスローダウン。ギアが4速にスタックしラップタイムが8秒以上遅くなる。残り10周、場内が騒然となる中、10秒以上あった差があっと言う間に縮まり、34周目のバックストレートでついにトップが、チームメイトのデュバル選手に交代となった。

 小暮選手はピットインはせず、速度の落ちるヘアピンを大外を回るなどして走行を続ける。逆に3位のトレルイエ選手は32周目に38秒以上あった差を一気に縮めるべく自己ベストを叩きだす。二人の差は30秒、23秒、17秒、11秒と縮まり、残り6周、2人の差は6秒となった。2位交代は時間の問題だ。

 ところが、S字を立ち上がる小暮選手のマシンが突然シフトチェンジを始めた。パドルシフトの電気系が原因だったのか、突然の復活で息を吹き返した。残り4周、単独走行の小暮選手はオーバーテイクシステムのLEDを点滅させグランドスタンド前を通過する。気合いの走りでファステストラップをたたき出し、5秒まで縮まったトレルイエ選手との差は徐々に広がった。

 表彰台争いは決着したが、後方では5位争いを平手、国本、松田の3選手が、8位争いを立川、ロッテラーの2選手が繰り広げていた。5位争いは平手選手がややリードを広げ、国本選手と松田選手の6位争いとなった。数周に渡り130R、シケイン、1コーナーと競り合ってきた二人が、いよいよ最終ラップのバックストレートへ。

今回のレースを盛り上げた国本選手5位争いをする平手選手と国本選手最終ラップ、逆バンクで競り合う国本選手と松田選手。130Rをクラッシュとなる
レース後パドックに運ばれた松田選手のマシン

 インをキープしたい国本選手に対し、松田選手がアウト側から並びかける。130Rの飛び込みを前に国本選手がほんの少しラインをアウトに振る。国本選手の右リアタイヤと松田選手の左フロントタイヤが接触、国本選手がスピンしアウト側のガードレールに吹っ飛び、松田選手もコースアウトした。幸い二人とも怪我はなかったが、善戦した国本選手の若さが出たシーンだった。

 トップに立った後も安定した走りを見せたロイック・デュバル選手が優勝。今期3勝目でシリーズポイントでのトップに立った。2位は小暮選手、3位にはトレルイエ選手が入った。4位にはスタートで出遅れた石浦選手が入り、5位は若手の平手選手、6位にはロッテラー選手の追撃を交わした立川選手が予選最後尾から粘りの走りで入った。最終順位は以下のとおり。

1位 ロイック・デュバル
2位 小暮 卓史
3位 ブノワ・トレルイエ
4位 石浦 宏明
5位 平手 晃平
6位 立川 祐路
7位 アンドレ・ロッテラー
8位 伊沢 拓也
9位 塚越 広大
10位 大嶋 和也
11位 国本 京佑
12位 松田 次生
13位 リチャード・ライアン

4位に入り、安定した実力を見せた石浦選手国本選手とのバトルを制し5位をキープした平手選手「振り向けば立川」、粘りの走りで6位に入った立川選手

 次戦は8月8日、9日にツインリンクもてぎで第6戦が行われる。NAKAJIMA RACINGの独走か、他チームの巻き返しか、シーズンの決着が見えそうな1戦になりそうだ。

 

(奥川浩彦)
2009年 7月 13日