三洋電機、新型電動ハイブリッド自転車「エネループ バイク」
平地走行でも充電可能なエコ充電モードを搭載

新型eneloop bike

2010年4月21日発売
15万7290円



 三洋電機は3月2日、新型電動ハイブリッド自転車「エネループ バイク(eneloop bike)」を発表するとともに、東京都新宿区の国立競技場において発表会&試乗会を開催した。エネループ バイクのサイズは、26型と24型があり、価格はいずれも15万7290円。発売日は4月21日。

新型エネループ バイクのラインアップ

品番サイズ(車輪径)電動機標準装備バッテリー重量
CY-SPL226(W)ホワイト26型直流ブラシレスモーター/出力250Wリチウムイオン電池25.2V-7.6Ah約25.3kg
CY-SPL226(R)ワインレッド
CY-SPL226(S)シルバー
CY-SPL226(L)ダークブルー
CY-SPL224(W)ホワイト24型約24.6kg
CY-SPL224(R)ワインレッド

 エネループ バイクの特徴としては、人の力では通常の自転車と同じく後輪を駆動し、モーターによるアシストは前輪を駆動する全輪駆動方式を採ることと、自転車に乗ったままで発電し充電する回生充電機構「ループチャージ」を持つことが挙げられる。新型エネループ バイクでは、この回生充電機構を進化させ、より航続距離を延ばした。

新型エネループ バイクの走行距離

モード標準装備バッテリー
(CY-EB80K 25.2V-7.6Ah)
別売バッテリー
(CY-EB100K 25.2V-9.5Ah)
パワーモード約36km(旧規定:約73km)約45km(旧規定:約91km)
オートモード約45km(旧規定:約126km)約56km(旧規定:約158km)
エコ充電モード約55km(旧規定:データなし)約68km(旧規定:データなし)

※旧規定は2010年3月以前の測定方式。2010年4月以降は新規定の表記が業界統一で使われる

三洋電機コンシューマエレクトロニクス取締役副社長 家電事業部長 和田隆氏

 発表会の冒頭、三洋電機コンシューマエレクトロニクス取締役副社長 家電事業部長 和田隆氏は、「三洋電機では大きく3つのカテゴリーに分けて事業を進めている」と語り、充電池や太陽電池の「クリーンエネルギー」、ドラム式洗濯機や水資源浄化システムの「水資源の節約と浄化」、空気清浄機などの「空質浄化CO2排出量削減」を挙げた。とくにエネルギーに関しては、繰り返し使えるエネルギーデバイスを強化すると言い、同社の掲げるコンセプト「クリーンエナジーループ」を紹介。

 クリーンエナジーループは、エネルギーを“創る(創エネ)”“蓄える(蓄エネ)”“活かす(活エネ)”からなるエコサイクル構想で、電動ハイブリッド自転車のエネループ バイクにはこれらの要素がすべて含まれていると言う。また、同社では電動ハイブリッド自転車に用いられる充電池(二次電池)はもちろん、モーターや制御技術などのキーデバイスを自社で持つのも強みだとした。実際、三洋電機は自社の太陽電池を用いたソーラー駐輪場を同社洲本工場や、徳島県庁内に設置し、エネループ バイクを組み合わせての実証実験を行っている。この徳島県庁の実証実験ではシステムフル稼働時のCO2削減効果が、火力発電と比べ473kg/年、自動車使用と比べ9.93t/年になったと紹介し、三洋電機の持つコア技術を活かしたエナジーソリューションを展開していくとした。

三洋電機の目指す方向性とコア技術を3つのカテゴリーに分類繰り返し使うというライフスタイルの象徴となる充電池のエネループエネループを利用したさまざまな製品群
エネループ バイクは、創エネ、蓄エネ、活エネのすべての要素が盛り込まれている電動アシスト自転車のキーデバイスを自社でそろえられるのが強みエネループ バイクはデザインも含め評価されていると言う
三洋電機のHIT太陽電池発電パネルを用いたソーラー駐輪場同社洲本工場や、徳島県庁内でソーラー駐輪場の実証実験が行われている徳島県庁の実証実験では、年間で杉743本分にあたるCO2削減効果があると言う
三洋電機コンシューマエレクトロニクス家電事業部 企画統括部 サイクル商品企画部 谷口哲哉氏

 新型エネループ バイクについては、家電事業部 企画統括部 サイクル商品企画部の谷口哲哉氏が説明。谷口氏は電動アシスト自転車の市場について触れ、「2008年に電動アシスト自転車の出荷台数が原動機付き自転車(原付バイク)を抜いたことは大きな話題となったが、2009年になりその差はさらに拡大している」と、シティコミューターの主役が交代しつつあることを示し、よりユーザーの声に応えるための新型エネループ バイクであると言う。

電動アシスト自転車の市場。2008年には原動機付き自転車を抜き、2009年にはさらにその差が開いた

 新型エネループ バイクでは、従来機種の特徴である走行安定性に優れた「両輪駆動方式」はそのままに、より効率よく回生充電できる「エコ充電モード」と、充電切れを知らせるとともに、あと1Ah分の走行ができる「パワーリザーブ機能」を搭載。

 エコ充電モードは、従来の下り坂でのブレーキ時のほか、走行の楽な平地でも充電を行うモードで、走行感に極力影響を与えないような制御を行っていると言う。7km/h以上での走行時に充電が行われ、走行状態にもよるが1km走行で約300mほどの充電(15km/hでの走行時に必要な60Wほどの仕事率で、15Wほどを充電に使う)を行う。このエコ充電モードでは、パワーモードの約1.5倍の距離を走行でき、バッテリー容量比で業界最高クラスの走行距離である約55kmを実現したと言う。


エネループ バイクの3つの特徴

 パワーリザーブ機能は、充電切れを明確に知らせる機能で、バッテリー残量状態を細かくセンシングし、残り1Ahになったところでいったんモーターによるアシストを終了。電源スイッチを長押しすることで、残り1Ahを使用できるというもの。従来は点滅などでバッテリー残量を知らせていたが、この方式だと見逃す人も多く、より分かりやすいものにしたと言う。オートバイでは燃料が少なくなった際、いったんガス欠になり、リザーブタンクに切り替えることで再び走行できる機種がほとんどで、同様の考え方を電動アシスト自転車に持ち込んだものと言えるだろう。1Ahは、標準バッテリーの約1/8の容量にあたり、パワーモードでは約4km、エコモードでは約6kmが走行できる。

 そのほか自転車としての基本機能では、ギアに内装3段変速を搭載し、22kgの荷物まで積載可能なクラス25のステンレス製リアキャリアを装着。フロントフォークはスチール製だが、メインフレームにはアルミニウムの中で最も高強度な7000系アルミニウムを用いているなど、軽量化に配慮したものになっている。


平地でも回生充電を行うエコ充電モードを新搭載。これにより走行距離も延びた
充電残量が残り少なくなったことをより明確に知らせてくれるパワーリザーブ機能エネループ バイクでは前輪をモーターでアシストし、後輪は人の力で駆動する自転車としての基本機能も充実させた

 エコ充電モードに関する充電デモと試乗会も行われた。充電デモでは、新型エネループ バイクをローラー台に乗せ、電力の使用状態をモニターに表示。パワーモードでは通常走行時に充電が行われないのに対し、エコ充電モードでは充電状態に移行することが示された。

エコ充電モードのデモ。写真はパワーモードで、赤いゲージはモーターアシスト量を示す。ペダルをこぐ力に応じてアシストが行われる。発進時はとくに強いアシストが行われ、赤いゲージが左へ延びているのが分かるエコ充電モード。平地での走行をシミュレーション。新型エネループ バイクでは、下り坂のブレーキ時だけでなく、平地でも回生充電が行われるようになった。水色のゲージが充電量を示す
試乗会は、国立競技場の2階エリアを使って行われた

 試乗会は、国立競技場の2階エリアや1階エリアへのスロープを使っての試乗となっており、平地でのエコ充電モードの走行感や、坂道でのアシスト力を確かめられるようなコースを設定。発進時や坂道でのモーターによるアシストは、前輪のモーターを使ってアシストすることもあり独特の走行感。とくに坂道では前から補助される感覚を受けながら、楽に坂道を上っていけるものだった。エコ充電モードによる平地での回生充電も、回生充電が行われている際の重さもそれほどなく、回生充電を行わないときと比べれば、タイヤの転がりにやや抵抗が増えるような印象を受けるくらい。ペダルをこぐ力に対する負荷を感じ取れるようなものではなかった。


エネループ バイクのキーデバイスである発電動機(ダイナモーター)。前輪ハブに取り付けられている。右側が前方向発電動機を左側から見たところ。ケーブル類は左側にまとめられている後輪ハブ。ハブ内に3段の変速機が収まる内装変速。シマノ製のNexus(ネクサス)を搭載。後輪は通常の自転車と変わるところはない
左手側のグリップ基部に取り付けられたコントローラー。電源のON/OFFや走行モードの変更が行える右手側のグリップ基部には3段変速の回転式変速スイッチが設けられる。後輪ハブと同じくシマノ製のNexusクランク部。クランクとつながるフロントギアの内部にこぐ力を検知する、トルクセンシング機構が納められている
標準装備の充電池。リチウムイオンバッテリーが用いられ、容量は25.2V-7.6Ah。別売の大容量タイプに交換することもできる自転車のロックはステアリングヘッドのハンドルロック「くるピタ」と、シートステー部のダブルロックを備えるサドル部。26型は750~930mm、24型は740~920mmの高さにサドル高さを調整できる
クランク部とフロントギアの構造展示。スプリングが内蔵されているのが分かる。このフロントギア部でこぐ力(トルク)を検知する
前輪ハブの構造展示。ヘリカルギアが用いられているのが分かるエネループ バイクとともに展示されていた充電器(右)。左は6Ahのリチウムイオンバッテリー

 アシスト自転車の市場は2009年が前年比で116%、三洋電機に限って言えば150%ほどになったと言い、2010年は業界で2桁の成長を見込んでいることから、業界平均以上の伸びを実現したいとした。

(編集部:谷川 潔)
2010年 3月 2日