ピレリ、グリーンパフォーマンスタイヤ「Cinturato P7」説明会
環境性能とエネルギー効率を重視した「P7」の進化形

Cinturato P7

2010年1月発売



 ピレリ ジャパンは、同社がグリーンパフォーマンスタイヤと位置づけ、1月から発売している「Cinturato P7(チントゥラート P7)」の説明会を開催した。

 Cinturato P7は、P7の後継として開発された中・大型セダン向けのタイヤ。環境負荷を軽減し、低転がり抵抗による経済性と、ウェット路面のブレーキ性能やグリップ力などの安全性を重視したCinturatoシリーズのトップモデルになる。16~18インチのCinturato P7が発売されたことで、コンパクトカー向けの「Cinturato P4」(13~15インチ)、中型車までをカバーする「Cinturato P6」(14~16インチ)とあわせ、Cinturatoシリーズが完成したことになる。


ピレリ ジャパン マーケティング&サプライチェーン部長 ジョバンニ・アンジェロ・ポンツォーニ氏

 説明会においてピレリ ジャパン マーケティング&サプライチェーン部長のジョバンニ・アンジェロ・ポンツォーニ氏は、「世界のタイヤのトレンドとしてエコノミーという流れがあり、自動車のトレンドも同様で、OEMタイヤとしてもそれらの要求を満たす必要がある」と言い、ピレリタイヤがそれら顧客ニーズに適するものであると語る。

 欧州においては、新車の走行距離1kmあたりのCO2平均排出量を130g以下にすることを目標としており、その中でタイヤによるCO2排出に寄与する割合を20%とし、自動車メーカーからは現状より10%の低減を要求されていると言う。また、タイヤにおけるラベリング表示も2011年11月から導入され、そこでは転がり抵抗とウェットブレーキ性能を表記するほか、タイヤから発する騒音についても規定。現行の規制に比べ、4dB低下させることを求められている。

世界のタイヤ市場は右肩上がりで伸びてきたものの、2009年の経済危機によりいったん縮小した。しかしながら、景気の回復とともにまた伸びていくと予測している今後は低価格車(ULCC:Ultra Low Cost Car)市場が大きく伸びていくと予測する
欧州市場では、転がり抵抗の低減、ウェットブレーキ性能の向上とともに、騒音の低下も要求されている特化した性能だけでなく、すべての性能で満足するような商品を求められている

 また、消費者の好みが変化してきており、コンシューマー製品において、独自の突出した性能を持つものから、品質を低下させることなくすべてを1つの製品に盛り込んだものが求められる時代になっており、携帯電話から多機能なスマートフォンへの変化を例として挙げていた。この流れは自動車でも同様で、Cinturato P7はピレリの回答だと述べる。

ピレリジャパン プロダクト マーケティング ディレクター 市川仁氏

 Cinturato P7の詳細については、ピレリジャパン プロダクト マーケティング ディレクターの市川仁氏より説明が行われた。市川氏は、ピレリのハイパフォーマンスタイヤである「P ZERO」について触れ、ランボルギーニのスーパーカーには全車種P ZEROが装着されていると紹介。その上で、グリーンパフォーマンスタイヤのCinturatoシリーズは、メルセデス・ベンツやアウディなどの中大型セダンから、フォルクスワーゲンやフィアットの小型車までをカバーするものだと言う。

 Cinturato P7は、そのCinturatoシリーズの中でもトップモデルに位置づけられ、P ZEROで培ったパフォーマンス技術と、新たに開発した低転がり抵抗技術を採用している。たとえばCinturato P7の持つ4本溝は、P ZERO由来のもので、ウェット性能の向上に寄与。AOF(アロマティック・オイル・フリー)コンパウンドは環境負荷を低減すると言う。

Cinturato P7のポジショニング。P ZEROほどハイパフォーマンスではないものの、高性能セダンからコンパクトカーまで、ボリュームゾーンをカバーするP ZEROのパフォーマンス性能と、Cinturatoシリーズの環境性能が組み合わされている

 安全性と低転がり抵抗を実現するために、アラミドとナイロンの融合体の繊維であるナノフィラーをタイヤの構造部に採用し、タイヤの接地面積を高速域まで維持。0km/hを100とした場合、100km/hで95%、200km/hでも87%の接地面積を実現し、この安定した接地形状が、安全性の向上や転がり抵抗の低減に寄与する。また、この設置面積はウェット時も維持され、水深7mmの場合で、0km/hを100%とすると、35km/hで85%、70km/hで55%になり、80km/hのときの排水量は30L/s(225/50 R17の場合)になると言う。

 剛性コントロールも行われており、高い剛性を確保しつつも、サイプ(細溝)で走行音と乗り心地を改善。発熱もコントロールすることで耐摩耗性も優れたものになっているとする。

 P7との比較では、ウェット時のハンドリング性能は106%、摩耗後では115%の性能を発揮し、ドライ路面ではブレーキ力が新品時105%、摩耗時104%になる。このように性能は上げつつ、転がり抵抗を20%低減。その結果、市街地での燃料の消費量を4.2%抑制し、90km/hの一定速走行時においても3.8%の改善が行われた。一般的な使用では、2%ほど改善する結果が出ているとのこと。

コンピューターシミュレーションによってパターンや構造が解析されている。構造解析は有限要素法によると言う設置面積の変化。200km/hにおいても87%を確保P ZEROに由来する4本の溝。これにより高い排水性能を実現
ウェット路面での設置面積の変化。ドライほどではないが、高い値を維持すると言う高いランドシー比率(山と溝の割合)によって、高剛性を確保し、均一な摩耗と低い転がり抵抗を実現。結果、耐摩耗性も高いものにウェット路面でのP7との比較。摩耗後ではすべての面で、P7を上回っている
ドライ路面でのP7との比較。ドライでは新品時のほうが差が開いているようだブロックのピッチの配分を工夫することで、騒音も軽減。P7比で、-1dB転がり抵抗は20%減少し、重さも8%減少した
燃費の比較。多くの場面で、P7よりも良好な値となっているCinturato P7は、車外騒音について2012年の欧州規制値をすでに下回っているCinturato P7が標準装着される車。BMWの1シリーズや3シリーズ、メルセデス・ベンツのEクラスなど、幅広い車種に標準装着されている

 Cinturato P7は、パフォーマンス面でP7を上回りつつ、燃費にも優れるため、順次タイヤサイズが追加されていくことで、ハイパフォーマンスタイヤの代名詞でもあったP7を置き換えることになるだろう。

サイズ一覧

インチサイズ備考
16インチ205/60 R16 92V 
205/60 R16 92H発売予定
205/55 R16 91H 
205/55 R16 91V 
205/55 R16 93V Extraload発売予定
205/55 R16 91W 
215/55 R16 93V 
215/55 R16 93W 
215/55 R16 97W Extraload発売予定
225/55 R16 95V発売予定
225/55 R16 95W 
225/55 R16 99W Extraload 
225/55 R16 99Y 
225/55 R16 99Y Extraload 
17インチ225/55 R17 97Y 
235/55 R17 99W 
205/50 R17 93W Extraload 
205/50 R17 93V Extraload 
225/50 ZR17 94H RF Extraload発売予定
225/50 R17 94V発売予定
225/50 ZR17 94V RF Extraload発売予定
225/50 ZR17 98W Extraload 
225/50 ZR17 94Y 
225/45 R17 91W 
225/45 R17 94W Extraload発売予定
225/45 R17 91Y発売予定
235/45 R17 94Y発売予定
235/45 R17 97W Extraload発売予定
245/45 R17 95W 
245/45 R17 95Y 
245/45 R17 99Y Extraload 
18インチ225/45 ZR18 91V RF発売予定
225/45 ZR18 91W RF発売予定
225/40 ZR18 92W Extraload発売予定
245/40 ZR18 93Y 
245/40 ZR18 97Y Extraload 
255/40 ZR18 95V RF発売予定
255/40 ZR18 95W RF発売予定

 説明会では、実際の試乗車も用意された。試乗を行ったのは、アウディ A5カブリオレ 3.2 FSI quattroで、これは標準装着タイヤとしてCinturato P7が使われている。試乗したのは短時間であり、P7と直接比較を行ったわけではないものの、静かでしなやかなタイヤであるとの印象を受けた。機会があれば改めて、P7との比較などは行ってみたい。

試乗会に取りそろえられた試乗車。すべてがCinturato P7を装着アウディ A5カブリオレもCinturato P7を標準装着しており、タイヤサイズは245/40 R18。静かでしなやかな感触を確かめることができた245/40 R18のトレッドパターン。横溝の配置が不等ピッチになっていることが分かる。4本溝の配置からは、排水性のよさがうかがえる

(編集部:谷川 潔)
2010年 3月 9日