首都高中央環状線、3号渋谷線~4号新宿線間が開通
大橋JCT~西新宿JCT間が開通、2013年度の全線開通を目指す

来賓によるテープカットとくす玉割りで開通した

2010年3月28日開通



 首都高速道路は3月28日、中央環状線(C2)山手トンネルの、3号渋谷線(大橋ジャンクション[JCT])~4号新宿線(西新宿JCT)区間「中央環状新宿線」を開通させた。

 16時の開通に先立ち、山手トンネル内の代々木換気所付近で開通式を開催。多数の国会議員や都議会議員、大橋JCTの用地の地権者らが参列し、開通を祝った。

都心環状線を通過する車両を、中央環状線に分散する(2008年の見学会でのプレゼンテーションより)

中央環状線の約8割が開通
 中央環状線は都心環状線(C1)の外側に位置する環状線。湾岸線の葛西JCTから7号小松川線、6号向島線(堀切JCT)、6号三郷線(小菅JCT)、川口線(江北JCT)、5号池袋線(板橋・熊野町JCT)を経由して4号新宿線(西新宿JCT)までが、2007年までに開通しており、今回は西新宿JCTから大橋JCTまでの4.3kmが開通した。

 2013年度には大橋JCTから湾岸線(大井JCT)までの中央環状品川線が開通して中央環状線の完成となるが、28日の開通で、全長47kmの中央環状線の約8割が開通したことになる。

 都心環状線の大半の通行の大半は、都外からその反対側へ通過するための車両。中央環状線とその外側の東京外環自動車道、圏央道のいわゆる「3環状」は、この通交を回避・分散するために整備されている。今回の開通により、東名高速道路、3号渋谷線から常磐・東北自動車道方面へ通過する車両が、都心環状線を回避できるようになる。

 これにより首都高全体の渋滞が3割減ると見込む。熊野町JCT~西新宿JCTの開通で渋滞2割減の効果があったとのことなので、今回を合わせて半分に減ることが期待されている。

 交通渋滞の削減は走行車両によるCO2排出量削減にもつながり、今回の開通による削減量は3万4000トン、日比谷公園の200倍の面積に植林したのと同じ効果がある、と首都高速道路は試算している。

 中央環状新宿線は、2007年に開通した熊野町JCT~西新宿JCTと同様、全線が環状6号線(山手通り)の地下に建設され、「山手トンネル」呼ばれている。高架を走る3号渋谷線と山手トンネルは約70mの高低差があるが、この2つをつなぐ大橋JCTは狭い用地でこれを実現するべく、2重の立体ループ構造を採る。排出ガスや騒音を防ぐため、大橋JCTの地上の構造物はすべて外壁で覆われ、浄化装置付きの換気装置を設けている。

 また、大橋JCTの建設は、我が国で初めて東京都による地区再開発と連携して行われた。大橋JCTの脇に2棟の高層ビルを建て、住居と商業用に提供するほか、JCTの構造物の屋上などを公園として整備した。

 西新宿JCTが都心方向から来たクルマを山手トンネルに入れない構造になっているのに対し、大橋JCTでは都心方向からも、東名高速道路方向からも入れるようになっている。急カーブ、急勾配が続き、道路の接続も複雑な大橋JCTでは、自然光に近い照明を採用し、方向ごとの色で標識や路面の案内を統一するといった工夫がこらされているほか、内部を24時間カメラで監視し、消火設備や非常口を充実させ、専用の自動車・バイク隊が非常時に対応するようになっている。

大橋JCTの模型。黄色く左下から右上に走るのが3号渋谷線。青と赤の線でできた大橋JCTが、右上で3号渋谷線と交わっている中央環状新宿線につながる。中央環状新宿線は、写真下のほうに伸びる品川線と2013年度につながる大橋JCTとその周辺の模型。中央のループ状の構造物がJCT。この中を高速道路が通る。その脇の2棟の高層ビルと、JCT上部の公園が都市計画で整備される山手トンネルは多くの鉄道と交差する
式典が行われたのは山手トンネル(中央環状新宿線)代々木換気所付近。内回りの初台南入口と、富ヶ谷出口の間に位置する式典会場から内回り車線を大橋JCTへ向かう。右に見えるのが富ヶ谷出口山手トンネル内は見通しの悪いカーブがある
大橋JCT手前で車線が1本に減る大橋JCTへの手前に2枚ある急カーブ連続区間の警告標識。大橋JCTの図案は漫画家の江川達也氏が原案を描いた
大橋JCTの入口。新宿から3号渋谷線に向かうと、右側が東名、左側が都心環状線(都環)だが、大橋JCT内でのクルマが進む方向は逆になるのに注意まず天井に車線を示す標識が現れる分岐部へのアプローチ。カーブと勾配の警告が出る
分岐すると方面別に車線が色分けされる。標識の色と同じ色の車線へ進めばよい仕組み大橋JCT内の路面。3号線から山手トンネルへ下る車線を、下から上へ見上げている。カメラに内蔵された電子水準器である程度水平を取って撮影したので、路面に大きくカントが付いているのが分かる

 

開通式典の会場は、山手トンネル外回りの代々木換気所付近の本線上に作られた

ドライバーにやさしい道路
 式典会場となったのは、山手トンネルの代々木換気所付近の本線上。今回の開通区間である西新宿JCT~大橋JCTの、ほぼ中間に位置するところ。初台南と富ヶ谷の両出入口の間でもある。多数の来賓や参加者、報道陣はクルマやバスで大橋JCTなどから本線に入った。

 9時30分から始まった式典では首都高速道路の長谷川康司 代表取締役会長が、主催者として挨拶した。中央環状線の役割、山手トンネルと大橋JCTの概要と開通による効果を説明し「東名高速 用賀から東北道 川口までの渋滞ピーク時の所要時間が、C2経由で58分から40分に短縮。C1経由でも6分短縮される。2013年に品川線が開通すれば、首都高の渋滞はほぼ解消される」との見通しを示し、これらが環境面に好影響を及ぼすことをアピールするとともに、用地を提供した地権者、困難な課題を克服した工事関係者、大橋JCTの再開発で連携した都と目黒区の関係者に感謝の意を表した。

 また、同社 東京建設局の飯島敬秀 局長は、山手トンネルと大橋JCTの工事について説明し、4.3kmの間に6本の鉄道と多数のライフラインが通る地下での工事に際し、全区間でシールド工法を採用したことなどを説明した。

 このほか、国土交通大臣政務官の三日月大蔵氏と、東京都の菅原秀夫副知事が祝辞を述べ、菅原氏は「道路は人・モノが集積される東京の生命線。都の交通を整備することが日本の経済活性化、国際競争力強化につながる」と述べ、今後もインフラ整備への投資を増やす積極予算の姿勢を明らかにした。

首都高速の長谷川会長首都高速 東京建設局の飯島局長
国土交通大臣政務官の三日月氏東京都の菅原副知事

 式典の最後には、山手トンネルのイメージキャラクターを務めるタレントの近藤真彦氏が登場。山手トンネルと大橋JCTを走行した感想を「安全への配慮、明るい照明、見やすい標識など、本当にドライバーのことを考えてくれている、ドライバーにやさしい道路」と述べ、「渋滞が緩和され、追突事故が減り、環境にもよいと、いいことずくめのトンネル。どしどし使っていただきたい」とアピールした。

式典終了後、内回り車線に移動してテープカットを行い、関係者らの車両による“通り初め”が行われた。右の写真のプリウスには近藤真彦氏が乗っている
16時には大橋JCTと山手トンネルが開通。まず東名高速側からパトカーに先導された一般車両が大橋JCTに流入(左と中の写真)。15分ほど後には山手トンネル方面からの車両が、大橋JCTから3号線への出口に姿を表した(右の写真)
下の道路が3号線から大橋JCTへの入口、上が大橋JCTから3号線の東名方向への合流部3号線を挟んで大橋JCTを見る。手前の道路が3号線で、向こう側が東名方面。その上、手前にクルマが向かってくる赤い車線が、山手トンネルから3号線都心方向へのランプ大橋JCT前から3号線を東名方向に見たところ。写真中央、右車線(都心方向)の中央寄りの分岐が大橋JCTへの入口。都心から大橋JCTへよりも、東名側から大橋JCTへ入る車両が目立った

(編集部:田中真一郎)
2010年 3月 29日