日産、「リーフ」は376万円、補助金で299万円に 4月1日から予約開始、発売は12月。自社製急速充電器も |
日産自動車は、電気自動車(EV)「リーフ」を12月に発売し、4月1日から予約を受け付けると発表した。あわせて価格を376万円と発表した。
横浜のグローバル本社で開催された発表会では、同社の志賀俊之 最高執行責任者(COO)と片桐隆夫 常務執行役員が出席し、発売日程を発表。2009年12月から同社のWebサイトで行われている先行登録では9300台が予約されていることを紹介しつつ、初年度の目標販売台数を6000台とした。
志賀COO(左)と片桐常務 | Web先行登録では9300台。大半を一般客が占める。一般客を年齢別で見ると、最も多いのが40代、次いで50代 |
■燃料代込みならガソリン車と同価格
リーフの価格は376万円~だが、現在の経済産業省のクリーンエネルギー自動車等導入促進補助事業が続けば、約77万円が補助され、299万円~になる。なお補助金額は「EVの元になったガソリン車(基準車)と、EVの価格差の半分」となっている。EV専用に開発されたリーフの基準車は、日産社内で計算した同クラスのガソリン車とのことで、まだ経産省の認定は受けていない。加えて自治体などの補助金を使えば、さらに安くなる。
299万円でも、日産が想定する同クラスのガソリン車の価格244万円より高いが、6年間保有した場合の燃料代は、リーフが約8万6000円、ガソリン車が約67万円と試算。車両価格との合計はリーフが307万6000円、ガソリン車が311万円とほぼ同等となり、「リーフの電気代はガソリン代より圧倒的に有利。その差額で、車両価格の差は埋められる」(片桐常務)。なおこの試算の前提は、電気代が9.17円/kWh(東京電力の夜間電力)、ガソリン代が148円/L、燃費16km/Lで、どちらも月に1000km走行した場合。
これに加えて日産では、様々な金融商品を用意し、リーフを購入しやすくする。その1例として、購入時にガソリン車と同じ価格240万円を支払い、6年間で9100円/月の分割払いというプランにすれば、電気代1200円/月と合わせて、月々の支払が10300円となり、ガソリン車の1カ月の燃料代とほぼ同じになるプランを紹介している。
リーフの概要。ティーダより少し大きい | 価格は376万円~ | 補助金を繰り入れると299万円~に |
同クラスとのガソリン車との価格比較。維持費を考慮すればほぼ同価格との試算 | ガソリン車と同じ購入価格で、ガソリン代相当の月々の支払いとなるプラン | 将来は4R事業も価格低減に貢献する |
この価格を実現できた要因として、志賀COOは「開発初期の段階から、EVを普及させるために手頃な価格を目標としてきた」「バッテリー、モーター、インバーターといったコアコンポーネントを内製した」を挙げた。
日産はEVで使用したバッテリーの再利用、リサイクル、再販売のための住友商事との合弁事業「4R」を準備しているが、志賀COOは、将来的にはこれも「購入時の費用負担軽減につながる」「フィージビリティスタディが進んで、残価を設定できるようになれば、さらに安価になる」と述べた。
4Rを見込んだバッテリーの残価設定と、それに基づいた値引きはリーフでは行われていないが、4Rがユーザーからリーフのバッテリーを買い取れるような仕組みを検討中と言う。
■急速充電器を内製、戦略的充電ネットワークを形成
リーフを日常的に使う上で気になるのはやはり電源の問題。既報のとおりリーフにはEV専用のITシステムが搭載され、日産のグローバルデータセンターと常時接続して、最新の充電設備の位置をドライバーに知らせるなどのアシストを行う。この常時接続の通信料も、5~6年分が車両価格に含まれる予定だ。
また、世界で50以上、日本では6つの自治体と、EV普及に関するパートナーシップを締結。充電インフラの整備にも力を入れているが、日産自身も、充電インフラの拡充に乗り出す。
全国約2200の日産ディーラーに200V普通充電設備を置くほか、約200のディーラーに急速充電器を置く。この約200という数字は、設置店舗から半径40kmの円でほぼ日本全体を覆えることから、決められた。これらの充電設備は、15日に関係企業で設立したCHAdeMO(チャデモ)協議会の規格を採用し、日産以外のEVでも使えるハードウェアとするが、「課金方法の問題も含め、他メーカー車に開放するかどうかは検討中」とした。
さらに、急速充電器は日産で内製したものを採用。リーフの生産設備と、標準部品や技術を応用したたため、価格を従来製品の約半額に下げられたという。秋には市販もする予定。
このほかリーフ購入時に、充電設備工事の工事をディーラーが取次ぐワンストップサービスも行う。これは一戸建て住宅を中心にしたものだが、集合住宅についても「実証実験中」(志賀COO)と言う。
EV専用ITシステムで充電をサポートする | 2200のディーラーに普通充電器を設置 | 200のディーラーに急速充電器を置く |
日産が内製する急速充電器 | 急速充電器のプラグやプロトコルはCHAdeMO規格準拠 | |
充電設備工事の取り次ぎも | アフターサービスは専門教育を受けたスタッフを配備 | 試乗ツアーを夏から行う |
■ZEVのリーダーに向けて、5000億円の投資
全世界で量販されるリーフだが、供給体制の要は、キーデバイスであるバッテリー。日産はNECと合弁でバッテリー生産会社のオートモーティブ・エナジー・サプライを設立。、リーフ用のバッテリー生産だけでなく、外販も計画している。
計画では、当初、日本の座間向上で年間6万5000基、最終的には全世界で年間50万基のキャパシティを確保する。志賀COOは「車両の組み立て能力は大きな障害にならない。バッテリーの供給能力が50万台規模で準備できれば、市場の状況やお客様の動向によって地域での増産に期待できる」と、リーフとバッテリーの供給体制をアピール。
「ゼロ・エミッション車(ZEV)のリーダーになることは、日産のコミットメントであり、その達成に向けて、ルノーと共にあらゆる取り組みを行っている。アライアンスレベルでグローバルに5000億円規模の投資を行う」と述べた。
日本はもとより、世界中でパートナーシップを締結 | リーフの生産体制 |
(編集部:田中真一郎)
2010年 3月 30日