アウディ、「アウディ フォーラム セミナー」開催
スマートグリッドについてグーグル・ジャパン名誉会長・村上氏が語る

セミナーにはグーグル・ジャパンの名誉会長 村上憲郎氏(右)が出席し、ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 編集長 小野由美子氏の司会で進められた

2010年4月21日開催



 アウディ ジャパンは4月21日、同社ショールームの「アウディ フォーラム東京」において「Audi Forum Seminar Presentated by THE WALL STREET JOURNAL.」と題したセミナーを開催した。

 このイベントはウォール・ストリート・ジャーナルとの共催で行われたもので、グーグル・ジャパンの名誉会長 村上憲郎氏の講演をウォール・ストリート・ジャーナル日本版 編集長の小野由美子氏の司会のもとで行われた。

わかりやすくスマートグリッドを語るグーグル・ジャパンの名誉会長 村上憲郎氏村上氏は自らを“ペリー・ムラカミ”としてスマートグリッドの黒船になると言う

Googleの目指す、環境対策と電力生産の効率化
 村上氏の講演は、グーグルが目指す環境対策と電力生産の効率化について。まずグーグルのビジネス概要について説明した。グーグルでは検索サービスのほか、さまざまなクラウドサービス、youtubeのような巨大データを預かるサービスも提供し、そのために巨大なデータセンター、そしてデータセンターを運営するための電力が必要になる。そこで村上氏は「IT自身が環境にやさしいグリーンなものにしていかないといけない」と訴える。

 データセンターの消費電力の指標としてPUE(Power Usage Effectiveness)がある。データセンター全体の電力量をコンピュータ類が使っている電力量で割ったもので、業界団体では2011年に1.2を切ろうという目標がある。グーグルのデータセンターでは1.2をほぼ達成、ベルギーの最新データセンターでは、1.1に近くになっていると言う。

 いっぽう、電力を生産する側では、ソーラー、風量、地熱といった小規模な発電が増えている。それらはコントロールが難しく、賢い送電網として「スマートグリッド」が必要とされている。しかし、村上氏はアメリカと日本の送電網の違いを指摘し、「日本の電力会社は素晴らしい仕事をされている。上流は今のままでいい」としてアメリカとは異なる日本型スマートグリッドを提唱する。

 日本型スマートグリッドは、すでに完成された上流の送電網はそのままに、屋上の太陽光発電といった小口発電の管理を行うもので、それをインターネットと接続し、家庭の消費電力の見える化を進めていくというもの。

 日本型スマートグリッドの中には、電力の地産地消のほか、電気自動車やプラグインハイブリッド車の電池経年管理なども想定され、グーグルが提唱する「Google PowerMeter」も組み入れ、インターネットを介した人と人のコミュニケーションから、人と物、物と物のコミュニケーションが進んでいくとしている。

 村上氏は、電力会社がスマートグリッドにあまり乗り気ではないとしながらも、自動車メーカーや、ハウジングメーカー、家電メーカー、太陽光パネルメーカーが後押ししてくれる現状を説明した。

グーグルのビジネス概要。これを実現するためには巨大なデータセンターが必要グーグルは巨大データセンター運営のためにも、クリーンエネルギーの未来を構築するように務めているというGoogle Power Meterを動かすのに必要なスマートメーターの一例

スマートカーになれば自動車向けエリア広告も強化できる?
 村上氏は、自動車の今後についても触れ「スマートグリッド社会における自動車の乗り方は、色々な可能性がある。それに対して、電力を供給する側のビジネスチャンスが生まれてくる。電力会社も若い社員が新しい電力会社像を考えているころだろう」と述べた。

 また、一方で現在のITとグリーンの関係についても語り、IT出身者がテスラ・モーターズを設立したことを挙げ、「シリコンパレーがグリーンになったと言われている。IT関係者が、グリーン分野へ雪崩を打って参入している」と話す。「ITから見るとデジャブ。レシプロエンジンがメインフレームで、電気自動車がパソコン」と説明し、今後、電気自動車を含めたグリーンといった分野へ参入が進む可能性も示した。

 最後に、スマートカーの未来像について村上氏は「クルマがインターネットに依存し、渋谷を走っていると、百貨店から『今、駐車場が1時間無料、充電もします。しかし、5000円以上購入してくださいね。しかもある商品は10%引き……Supproted by Google』といったメッセージが届き、そこで広告収入が入ることで私もハッピーになる」と話して会場を沸かせ、講演を終了した。

文化でユーザーに還元するイベント
 今回のイベントは、「アボリジニー現代美術展」の会場のすぐ横で行われ、来場者はセミナーだけでなくアートも同時に楽しむことができた。

 アウディ ジャパンは、セミナー開催の狙いとしてイベントを通じて文化でユーザーに還元するということを掲げるが、感度の高い人たちに対して、アウディというクルマの魅力や先進性を訴えていくこともあると思われる。

 すでに発表された新型「A8」の海外仕様にグーグルのオンライン地図サービス「Google Maps」「Google Earth」が使える点や、そのサービスの国内導入といった点と、今回のイベントは関係ないと言うが、アウディがスマートカーや、EV時代に必要となるスマートグリッドについて関心があることは、示されたこととなる。

 なお、アウディ フォーラムでは内容や講師は未定だが、7月と11月に開催を予定している。

アウディフォーラムの一角に、アートに包まれた特設の講演会場が設けられた講演の後もTTロードスターの“アートカー”を囲んで歓談が行われた

(正田拓也)
2010年 4月 23日