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首都高、10月開通予定の川崎線 殿町~大師JCT間の現場を公開 湾岸線と神奈川1号横羽線を接続。車道では世界初のMMST工法を使用 |
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首都高速道路は5月27日、10月に開通する首都高 神奈川6号川崎線 殿町~大師JCT(ジャンクション)間の現場見学会を、報道陣向けに開催した。
神奈川6号川崎線は、湾岸線とアクアラインが接続する川崎浮島JCTから神奈川1号横羽線方向に伸びる道路。これまで殿町出入口が終点となっていたが、10月には横羽線の大師出入口と共用する大師JCTに接続し、神奈川5号大黒線と同様に湾岸線と神奈川1号横羽線が接続されることになる。
ただし、大師JCTは現在横浜方面のみへの接続のため、横羽線上りから川崎線への接続と川崎線から横羽線下りへの接続のみとなる。また、大師JCTはそのまま大師出入口へ接続しているため、大師出入口と川崎線は直接流入、流出ができる。この開通により、主に川崎市街とアクアラインや羽田空港とのアクセスが向上するほか、湾岸線で事故などが発生した際の迂回路として横羽線を利用しやすくなる。
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神奈川6号川崎線の位置関係と10月の開通区間 | 大師JCTの構造 | |
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10月の開通により、川崎線と横羽線の横浜方面が接続する | 大師出入口から川崎線に乗り降りすることもできる | 大師出入口から横羽線の横浜方面への乗り降りはすでに開通済み |
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開通のメリット |
■MMST工法を採用する大師トンネル
10月に開通する区間は、延長2kmとなるが、そのうち1.1kmが大師トンネルと呼ばれる地下部分となる。大師トンネルは、用地の問題から700mほどが国道409号の真下を通っており、そのため一部を除いては、地上から掘る開削工法ではなく、シールドマシンで地下を横に掘り進めるシールド工法を採る必要があった。しかしトンネルが地上から5~13mほどと浅いところを通る上、限られた用地の中で道路のほかにガスや水道などが通る共同溝も作る必要があったため、通常の巨大なシールドマシンを用いることはできない。そこで車道では世界で初めてMMST(マルチマイクロシールドトンネル)工法を採用している。
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MMSTとは、コンパクトなシールドマシンでトンネルの外側になる部分を掘り、その内側にコンクリートや鉄筋を入れることでトンネルの外殻とし、その内側を掘削するというもの。そのため、通常はシールド掘削部分は丸い天井のトンネルとなるが、MMST工法で掘った大師トンネルは、シールド掘削部分も四角い天井となる。縦長と横長の2種類の長方形のシールドマシンを用いており、縦型シールドマシンは3.2×7.9m(幅×高さ)で、トンネルの側面となる部分を掘削。横型シールドマシンは8.8×3.9m(幅×高さ)で天井部分と床部分を掘削している。
掘られたトンネルのサイズは高さが約23~24m、幅が約26~28m。MMST工法で掘った部分は約540mだ。その空間の中に、浮島行と大師行の2本の道路と、ガス・水道と言った共同溝が配置される形となる。さらに、殿町から地下に入った時点では、浮島行と大師行が隣り合っているものを、トンネル内部で交差させ、大師JCTに入る時点では2階建て構造になる複雑な構造となっている。ちなみに上段が浮島行、下段が大師行だ。
今回の見学会では、大師JCTから浮島行の道を通って、大師トンネルの途中まで歩くというもの。さらにこの日は地元小学生らが、舗装前の道路に絵を描くという催しも行われていた。
■セグメント部分が見られる壁面
大師JCTからトンネルに入る。大師JCT付近は開削工法によるもののため、外壁はコンクリートとなっている。また、入り口付近は、通常の蛍光灯タイプの照明のほかにメタルハライドランプという照明もつけられている。これは蛍光灯よりも明るい照明で、屋外からトンネル内に入ったときに、目が暗さに慣れるまでの間、より明るさを確保するためのもの。奥に進むと少しずつメタルハライドランプの数が減っていき、最後は蛍光灯だけになる。また、消火器や泡消化栓、非常口などが設置されている。消化設備は50m間隔、非常口が250m間隔で設けられると言う。そのほか、まだ設置されていなかったが、トンネル内はテレビカメラにより監視され、また、ラジオを送信するケーブルが配され、火災などの緊急時はラジオを通じて状況報告や避難誘導が行われる。
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大師JCTから大師トンネルに入る。開通した際のクルマの進行方向も同じだ | 真ん中の蛍光灯の両側にあるのがメタルハライドランプ。入口に近いほど数が多い | 消化器と泡消火栓。上のパイプから水が送られる |
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非常口は250m間隔で設けられる | 非常口に入ると避難経路などが記されている | 天井から突起が出ているが、ここにラジオの送信アンテナとなるケーブルが吊される |
奥に進むと分岐がある。右側はさらに国道15号方面まで川崎線が延長する場合に使われるもの。民営化の際に計画がなくなったため、現時点で使われる予定はない。
記者らは左側を進むと左に大きくカーブしたところで、鉄骨の骨組みが組まれた巨大な空間に出る。ここがちょうど国道409号の真下で、大師出入口付近になる。この穴は地上から掘り下げられた開削工法による部分で、この穴からシールドマシンを下ろし、国道409号の下を掘り進めたわけだ。
そしていよいよシールドトンネル部分に入る。確かに山手トンネルのように丸い天井ではないが、それまでの開削工法の部分とも違い、外壁はコンクリートではなく、鉄板がむき出しになったような状態になっている。この金属の部分がシールドマシンが作ったセグメントが見えている形だ。床から2mくらいまでが白く塗装されているが、これはドライバーの視線誘導のためのもの。トンネル入口からずっと同じ高さで塗られている。
さらに天井には道に沿って2つ、雨どいのようなものがずっと天井に取り付けられている。これは天井が3つのセグメントを繋いで作っているため、その継ぎ目から雨水が染み出して路面に落ちるのを防ぐものだと言う。
進行方向にむかって左手にはコンクリートで作った構造物があるが、これは非常用の避難通路。さらにその外側には共同溝が用意される。そこから300mほど進むと、左側にあった避難通路がなくなり、車道部分が左側に寄って、余った右のスペースに工事用の仕切りが立てられている。その仕切りの隙間から覗くと、大師行の道が下のフロアに降りていく道を見ることができた。つまりここで、殿町側で縦分割だった双方向の車線が、横分割に変わるわけだ。
ちなみに非常用通路は手前で終わってしまっているが、250m先には、直接地上へと繋がる非常口が用意されると言う。
ここまでで見学は終了となり、来た道を折り返す形になったのだが、大師行の道路に関してもほぼ同程度の完成具合だと言う。今後、照明や非常電話、消化器などの設備、道路の舗装などを行って開通になる運び。なお、開通日時が10月のいつになるのかは、現時点で未定だ。
(鈴木賢二)
2010年 5月 28日