首都高、2010年度事業計画説明会
山手トンネルの開通で全体の渋滞は減少したが、中央環状は増加

山手トンネル(3号渋谷線~4号新宿線)の開通には大きな効果が見られた

2010年6月30日開催



 首都高速道路は6月1日、2010年度(2010年4月~2011年3月)の事業計画説明会を開催した。この事業計画説明会では、10月に開通する神奈川6号川崎線(K6)殿町~大師JCT(ジャンクション)、昨年度の3月28日に開通した中央環状線(C2)山手トンネル(3号渋谷線~4号新宿線)の開通効果、「お客様第一」の経営理念にもとづいた取り組みが、経営陣から語られた。

首都高速道路 代表取締役会長 長谷川康司氏

 首都高速道路 代表取締役会長の長谷川康司氏は、「山手トンネルの開通は大きな効果があった。新宿から羽田までの部分は渋滞は3割ほど減り、首都高全体でも渋滞が減ったが、増加した部分もあった」と言い、その代表手的な場所が、3号渋谷線下りと、中央環状線(C2)山手トンネルの新規開通部分とのこと。

 また、「首都高も民営化して5年目を迎えている。お客様本意の仕事をしなくてはならない。コスト意識を高めて少しでも余分なコストを削減し、新しい仕事に積極的にチャレンジしている。お客様の指摘に対してきちっと取り上げて、改善するべきものは改善してきた」と言い、ユーザーの声による改善効果などが紹介された。

 詳細については、代表取締役社長 佐々木克己氏から紹介された。今年度のトピックとなるのが、神奈川6号川崎線の開通で、神奈川1号横羽線(K1)と湾岸線(B)が接続される。

 この川崎線の開通に向けて、10月までにさまざまなイベントを用意する。佐々木社長は「川崎線は地域に貢献する路線である。地域に訴えかけていきたい」とし、地元小学生を対象に公募を行っているキッズパトロール隊を設けることなどを紹介。予定されているイベントも下記のとおりで、Jリーグ 川崎フロンターレ戦の冠スポンサーとなったのもその一環だと言う。

・神奈川6号川崎線開通までの予定イベント

日時イベント名対象内容
6月20日父の日イベント工事関係者工事関係者の親族対象の現場見学会
6月30日首都高講座一般工事現場見学
7月28日首都高講座一般(親子)工事現場見学
8月夏休み親子現場見学会地元(親子)地元の小学生親子対象の現場見学会
8月一般向け現場見学会一般一般公募による希望者を対象とした現場見学会
9月25日川崎線エキサイトマッチ川崎フロンターレ vs. ガンバ大阪戦の冠スポンサー
10月一般開放デー一般開通区間を一般公開
10月開通式典関係者関係者により式典を開催
首都高速道路 代表取締役社長 佐々木克己氏

開通効果は高いが一部渋滞が増加した山手トンネル
 佐々木社長は、山手トンネルの開通効果についても言及。「山手トンネルの開通によって、4号新宿線 西新宿JCT~5号池袋線 熊野町JCT間は1日3万1000台の、3号渋谷線 大橋JCT~4号線間は1日4万台の交通量増加になった。都心環状線(C1)の交通量は谷町~霞ヶ関間で2万台減り、渋滞長も約2割減少した」と詳細な数字を挙げた。

 そして2013年度に開通予定の中央環状品川線の工事も順調であるとし、「今のところおおむね順調で、進捗率は27%。JR大崎駅あたりまでは到達したのではないか」(佐々木社長)と語った。この品川線が開通することで、山手トンネルの開通で増えてしまった、3号渋谷線の下り方向の渋滞は減るだろうと言う。ただ、品川線まで開通すると湾岸線、3号渋谷線、4号新宿線から流入してくる車両を、5号池袋線の熊野町JCT 1車線で流す必要がある。現時点でも渋滞が増えているポイントだが、根本的な解決策は熊野町JCT~板橋JCT間の4車線化になると言う。

 現在この区間は、山手トンネルからの1車線、5号池袋線からの2車線が合流して3車線となっている。この3車線が上下2層構造となっており、テニスのラケットのような橋脚で支えている。付近が住宅密集地であることから、箱崎JCTにおいて実施されたバイパス路線を作ることができず、ラケットをデカラケに拡充して内部の高架路盤を4車線化するのだと言う。都市計画決定は終了しているものの、現在の料金制度で償還予定の予算が組まれていないため、この実施は距離別料金制度など新料金制度に依存することになる。

 その距離別料金制度については、「首都高も新聞やテレビなどで動向を知る状態で、正直分からない」(佐々木社長)と言い、国会での承認後、6つの地方自治体の承認を得てからになる。ただ、現状国会での審議は始まっておらず、このまま何も決まらず時間がたてば、3割引で休日500円となっている料金は、来年度は予算処置が切れるため2割引になる。そのため、年度内には何らかの方針が出るだろうとの見通しを示した。

「お客様の声」による改善策を積極的に実施
 首都高には、ユーザーからの問い合わせを受ける窓口として、Webサイトからは「グリーンポスト」が、電話からは「首都高お客様センター」が用意されている。グリーンポストからは、1年で1086件ほどの問い合わせがあり、首都高お客様センターには1日で2000件、多いときでは5000件ほどの問い合わせがあると言う。そのほとんどは、所要時間に関する問い合わせだが、道路の改善要求もあり、意見を元に改善を実施している。

 説明会ではその改善例も示され、C1の浜崎橋JCTの分流区画線の変更、標識/看板類の見やすさの改善などが行われた。6月には神奈川2号三ツ沢線の三ツ沢出口の改良も行われ、出口渋滞解消に向けた街路工事が完成する。

「お客様の声」による改善。浜崎橋JCTの区画線を変更した1号羽田線の天王洲カーブには、大型の注意喚起看板を設置
湾岸線の扇島出口は西日で見づらいとの声が寄せられたため、逆光対策標識板を設置して夕刻でも文字が読み取りやすいようにした。文字の部分に小さな穴が多数開けられていて、読み取りやすくなっている6月に完成する三ツ沢の出口工事。出口後の一般道の車線を2車線へと拡幅し、渋滞を抑制する

 佐々木社長は、「これからの首都高は環境と景観をどういう風に取り入れていくかが大切だ。都市の中で首都高は重要な景観になっており、環境への取り組みは我々として大事な部分だと意識している」と語り、今年度から「景観向上アクションプログラム3カ年30個所(第II期)」に着手し、より周囲の自然と調和するよう首都高の改善を行っていく。

(編集部:谷川 潔)
2010年 6月 2日