マレーシアに上陸したエヴァンゲリオンレーシング
SUPER GT第4戦セパンで8位入賞

エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラが、マレーシアのセパンサーキットに登場

2010年6月20日決勝開催



 6月20日、マレーシア・クアラルンプール近郊のセパン・インターナショナル・サーキットで2010 AUTOBACS SUPER GT 第4戦「SUPER GT INTERNATIONAL SERIES MALAYSIA」の決勝が行われた。レース全体については既報のとおりだが、海外へ初上陸した注目のエヴァンゲリオンレーシングの詳細をお届けしよう。

 前戦の富士スピードウェイから参戦を果たしたエヴァンゲリオンレーシングの2戦目は、赤道直下、灼熱のマレーシア。高温多湿でドライバーにもタイヤにも厳しいサーキットであった。

公式練習(6月19日、10時~11時45分)
 31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラに乗る2人のドライバーはベテラン松浦孝亮選手と、若手の嵯峨宏紀選手。松浦選手はセパンサーキットの走行経験があるが、嵯峨選手は初めての走行となる。チームは経験のある松浦選手がメインにマシンセッティング、タイヤテストを行う計画を立てた。

 まずは松浦選手がステアリングを握り、コースオープンと同時にピットアウト。積極的に周回を重ね、足まわりと空力のセッティング、タイヤ選択などを行った。ここでドライバーを嵯峨選手に交代、コースに慣れることに重点を置き、より多く周回する作戦を進めた。

 本来は午後に行われる予選に向けたアタックシミュレーションを行いたいところだが、嵯峨選手のコースへの習熟を優先したので、このセッションの最速タイムは松浦選手が序盤に記録した2分12秒434。GT300クラスで13番手のタイムだが、予定したプログラムは消化できたので順調な滑り出しとなった。

ライトを点灯しタイムアタックする松浦選手

公式予選(6月19日、14時15分~15時5分 スーパーラップ16時20分~)
 今回の予選方式は前戦と同じスーパーラップ方式だ。全車走行する予選1回目の上位8位までがスーパーラップに進出できる。スーパーラップは予選1回目の8位のマシンから1台ずつタイムアタックを行い、スターティンググリッドの上位8台を決める。コースインして2周でタイヤを暖め、3周目にタイムアタック。2周で確実にタイヤに熱を入れ最適なところへ持って行くことが重要だ。また、アタックラップは1周なので、ミスをすると大きく順位を落としてしまう。

 予選1回目、セッション開始と同時に嵯峨選手がコースイン。上位陣と互角のタイムで走行を終え松浦選手に交代した。徐々に路面状態もよくなり、各チームがタイムの出やすいソフト目のタイヤでアタックを開始する。松浦選手もソフト目のタイヤを履きコースイン、渾身のアタックで2分10秒052の4番手タイムを叩き出し、スーパーラップ進出を果たした。

 迎えたスーパーラップだが、チームはあえて上位を狙わない作戦を採った。スーパーラップに進出したチームは、ここで使用したタイヤをそのまま決勝でも使用するルールだ。決勝の作戦はコース経験のある松浦選手がスタートからできるだけ長く引っ張り、嵯峨選手が後半の短いスティントを担当する。そのためにはハード目のタイヤを選択する必要がある。予想どおり、熱の入りにくいハードタイヤなので、2周のウォームアップでは温まり切らず、2分10秒741で8番手タイムとなった。この結果はチームとしては想定内、初日はほぼ予定どおりにプログラムをこなし満足な結果となった。

ピット&イベント
 セパンサーキットでも国内レースと同様、ピットウォーク、キッズウォーク、グランドスタンド裏でのレースクイーンステージなどのイベントが行われた。

 土曜日の観客はやや少なめ。ピットウォークも国内レースほどの混雑はなかった。特にキッズウォークは、ピットロードにゆとりがあるほどだった。海外にも関わらずエヴァンゲリオンレーシングの人気は高く、多くのファンが集まり、盛んにカメラのシャッターを切っていた。

 決勝の行われた日曜日になるとグッと観客も増え、ピットウォークにもレースクィーンステージにもファンが殺到した。エヴァンゲリオンレーシングの人気はGT500クラスのトップチームを凌ぐほどで、ピット前に集まるファンの数は、ほかのピットを圧倒していた。ここマレーシアでもエヴァンゲリオンの人気は高く、アニメのポスターにサインを求めるファンがいるなど、エヴァンゲリオンレーシングの注目度は国内だけでないことを感じさせた。

土曜日はキッズウォークが始まってもピットロードの人は少なめ。だがエヴァンゲリオンレーシングのピット前にはファンが集まってきた徐々にファンが増えてきた。キッズウォークなのになぜか子供がいないあっと言う間にカメラの砲列に囲まれた
親子連れも来て、子供と記念撮影なぜか伊沢選手が記念撮影に現れた式波・アスカ・ラングレー役の千葉悠凪さん(左)と綾波レイ役の水谷望愛さん(右)
日曜日のピットウォークは多くのファンが殺到したポスターにサインするアスカレイもサイン
サインしたポスターを手に記念撮影地元メディアも数多く撮影に訪れた嵯峨宏紀選手もピットウォークに参加し記念撮影
グランドスタンド裏でのレースクイーンステージは大人気
ピットで整備される31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラ
セパンバージョンのチームシャツ。モデルになってくれた松浦選手。次戦ではデザインの違うシャツが用意される決勝直前。マシンに乗り込む松浦選手
エンジン始動。コースオープンを待つ松浦選手いよいよコースイン
8番グリッドに置かれたエヴァンゲリオンRT初号機aprカローラグリッドでもレースクイーンの二人の人気は高かった

フリー走行(6月20日、10時45分~11時15分)
 決勝日、朝のフリー走行は、この週末で最も強烈な日差しが降り注いだ。まさに灼熱のセパンだ。まずはスタートドライバーを務める松浦選手からコースイン。決勝を想定した燃料搭載量とタイヤを組み合わせてマシンの状態をチェック。2分11秒484で全体の8番手、まずまずのタイムを記録した。

 続いて嵯峨選手にドライバー交代。嵯峨選手もプログラムどおりの走行を続けマシン状態をチェック。決勝でのパフォーマンスを重視して進めてきたが、ここまで大きなトラブルもなく決勝への期待が膨らむ内容となった。

16時に決勝レーススタート

決勝(16時~)
 決勝レースは例年より遅めの16時スタート。少しでも涼しい時間での走行という配慮だが、それでも気温は30度を超え、ドライバーにもタイヤにも厳しいレースが予想された。

 フォーメーションラップを終えいよいよスタート。セパンの1~2コーナーは深く回り込む低速のS字コーナーで、2コーナーは下り勾配もありアクシデントが発生しやすい。松浦選手はスタートダッシュを無難に決め、順位をキープして1コーナーの進入したが、5号車 マッハGOGOGO車検408Rにインに入られ9位に後退した。

 1コーナーは各車接触もなく通過したが、2コーナーのブレーキングで前方を走る5号車 マッハGOGOGO車検408Rが19号車 ウェッズスポーツIS350に追突、2台ともスピンしコースを塞ぐ形となった。もし松浦選手が1コーナーで強引に5号車を抑えていたら、追突され最後尾に落ちたのは31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラだったかもしれない。

 松浦選手は1周目の2コーナーは何かが起こると予測し慎重に進入。目の前を走る5号車のタイヤスモークに反応しとっさにアウト側にマシンを逃がし、軽い接触だけで難を免れた。しかし、このアクシデントの影響で先頭集団6台と7位以降の後方集団の間に大きなギャップができてしまった。

2コーナーのアクシデントで先頭集団6台と後方集団の間に大きなギャップができた31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラは後方集団の2番手につけた

 後方集団の先頭は74号車 COROLLA Axio apr GT、松浦選手はすぐ後ろの8番手につけた。松浦選手はピットインを遅らせる作戦なので、序盤は無理をせずタイヤを温存させる走行だ。3周目にストレートスピードに勝る66号車 triple a Vantage GT2が先行、6周目には最後尾から猛烈な勢いで順位を上げてきた2号車 I.M JIHAN CO.LTD・APPLE・紫電にも抜かれ10位に落ちるが、ここは我慢のレースだ。

66号車 triple a Vantage GT2に抜かれ9位後方から2号車 I.M JIHAN CO.LTD・APPLE・紫電が迫ってくる

 8周目に66号車 triple a Vantage GT2にドライブスルーペナルティが出て9位に浮上するが、後方から迫ってきた86号車 JLOC ランボルギーニ RG-3に抜かれ再び10位。15周目にはスタートでトップを走っていた11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP F430がタイヤを傷めズルズルと後退、松浦選手が背後に迫ったところで11号車がピットインし9位に浮上。

 さらに19周目の最終コーナーで2号車 I.M JIHAN CO.LTD・APPLE・紫電と43号車 ARTA Garaiyaが接触してスピン。43号車 ARTA Garaiyaはそのままピットイン、2号車 I.M JIHAN CO.LTD・APPLE・紫電はエンジンの再始動に手間取り大きく遅れた。これで松浦選手は7位に浮上、我慢の走りが功を奏してきた。

86号車 JLOC ランボルギーニ RG-3に追い上げられるタイヤを傷め徐々に順位を落とす11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP F430に追いついた背後に迫ったところで11号車はピットイン

 20周を過ぎると先行した86号車 JLOC ランボルギーニ RG-3もタイヤを傷めペースが落ちてきた。24周目にはドライブスルーペナルティを受けた66号車 triple a Vantage GT2が後方から追い上げてきて、27号車 NAC 衛生コム LMP Ferrariも含め4台による6位争いが激化した。松浦選手は66号車 triple a Vantage GT2に抜かれるものの86号車 JLOC ランボルギーニ RG-3を抜き返し7位をキープした。

86号車、27号車、66号車との6位争い66号車には抜かれたが……86号車を抜き7位をキープ
ピットアウト後は66号車、46号車に続き8位

 レースも中盤に差し掛かり各車ピットインが始まる。前が空いた松浦選手はここから猛プッシュし、限界まで引っ張りピットイン直前には3位までポジションを上げ、33周目に嵯峨選手にステアリングを託した。ピット作業時にこぼれたガソリンの処理に手間取り、嵯峨選手は8位でコースに戻った。

 39周目、バックストレートで2位争いをする33号車 HANKOOK PORSCHEと74号車 COROLLA Axio apr GTが接触。33号車がマシンを止め嵯峨選手は7位に。また、タイヤ無交換作戦が裏目に出て急激にペースダウンした66号車 triple a Vantage GT2も抜き6位までポジションを上げた。

 次のターゲットは5位を走る46号車 アップスタート MOLA Zだ。嵯峨選手は徐々に差を詰め背後に迫る。シリーズランキングトップの46号車は手強く、数周にわたりチャンスを伺いバトルを繰り広げる。45周目、嵯峨選手はバックストレート手前の14コーナーで46号車のインを刺すが、ラインを塞がれイン側の縁石に乗って単独スピン。これにより88号車 リール ランボルギーニ RG-3と3号車 HASEMI SPORT TOMICA Zに抜かれ8位に後退した。

タイヤ無交換の66号車を抜き6位浮上5位を走る46号車との差を徐々に縮めたが……

 それでも嵯峨選手は最後まで諦めず、前を行く88号車 リール ランボルギーニ RG-3との差を詰める。もう少しでロックオンというところでチェッカーとなり、予選順位と同じ8位でゴールとなった。

スピンして8位に落ちるが、最後まで88号車を追い詰めた8位で完走した31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラ

 8位入賞でドライバーズポイントを3点獲得しトータル11ポイント。ランキングは11位となった。次戦のウェイトハンディは22kg。シリーズトップの7号車 M7 MUTIARA MOTORS雨宮SGC 7と46号車 アップスタート MOLA Zは40ポイントで80kgのウェイトハンディを積む。ウェイトハンディで有利な次戦SUGOと8月の鈴鹿で表彰台をゲットして、年間ランキングでも上位進出を期待したい。

 次戦は7月24日、25日にスポーツランドSUGO(宮城県柴田郡村田町)にて開催される。

 選手、チーム代表のコメントは以下のとおり。

松浦選手
 「今回は予選から調子がよく、4番手でスーパーラップに進出することができた。決勝日の朝、ガソリンを想定量積んだ状態でマシンの確認をしたところ、前戦の富士よりもマシンのフィーリングがよく、期待できる状態ではあったが、いざレースが始まってからは43号車 Garaiyaや74号車 COROLLA Axioよりコンマ2~3秒遅く、思っていたペースで走ることができなかった。まわりがポジションを落としていくところを着実に捕え、いくつかポジションアップができたあとに、嵯峨選手が46号車 MOLA Zを抜きにかかりスピンしてしまい、結果8位で終わってしまった。けれど、攻めた結果だからこれは仕方のないこと。菅生に向けてポジティブな要素はたくさん見つけられたから、次戦こそ表彰台に乗りたいです」

嵯峨選手
 「未知のコースということで、少しずつタイムを上げて行くことが目標でしたが、レース本番になってようやく自分の走りができてきたように思っています。もう少し早くコース攻略ができていればもっと戦略に幅を持てたので、その点では足を引っ張ってしまったと感じています。ただマシンは今回のレースで常に競争力が高い状況にあったので、自分の好きなコースでもあるSUGOラウンドでは期待してほしいと思っています」

apr代表 金曽裕人
 「予選順位と同じ8位でレースを終えたが、チームのパフォーマンスを最大限に生かすことができたレース内容であった。作戦的にも松浦選手、嵯峨選手のパートをロスなくベストタイミングで繋ぐことができ、ドライバー同士の力量もかみあっていた。残念ながらスピンによって4位チェッカーができなかったが、チャレンジした結果であり不満はない。このレースを見ても、マシン/ドライバーは完全にTOPが見えるパフォーマンスを発揮しており、次戦SUGOも非常に期待ができ今から楽しみである」

エヴァンゲリオンレーシング フォトギャラリー

(奥川浩彦)
2010年 6月 29日