ヤマハ、電動原付「EC-03」を9月に発売
電動2輪の世界トップシェアを目指す

EC-03とヤマハ発動機の柳弘之社長(中央)

2010年7月14日発表
2010年9月1日より順次発売
25万2000円



 ヤマハ発動機は電気スクーター「EC-03」を、9月1日より首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉、群馬、栃木、茨城、山梨)で、10月1日より全国で発売する。価格は25万2000円。エコカー補助金の対象となり、最大2万円が補助される。

 同社は7月14日、都内で発表会を開催した。

シンプルでコンパクトな車体構成
 EC-03は原動機付自転車(原付)1種に分類される2輪車。最高出力1.9PS(1.4kW)、最大トルク0.98kgfm(9.6Nm)のモーターで後輪を駆動する。モーターはプラネタリーギアのリダクションユニットやコントローラー、ドラムブレーキと一体にされて後輪内に収めらた、ホイール・イン・モーター方式を採る。

 このパワーユニットは「YIPU(ヤマハ・インテグレイテッド・パワーユニット)」と称され、後輪内に収まるように薄型に仕上げられている。後輪は片持ちスイングアームを介してバックボーンフレームに取り付けられており、ホイール・イン・モーター方式では必然的にバネ下重量が増加することになる。

 同社は原付1種の速度域や使われ方であれば、このバネ下重量でも問題にならず、むしろチェーンやベルトといった駆動系の部品や潤滑油が不要になり、シンプルでメンテナンスしやすい車体構成を作れるメリットを採った。

EC-03。スリム、コンパクト、シンプルなベーシックモデル風のスタイリング。ホワイトとベリーダークオレンジメタリック1(ブラウン)が用意される
ハンドルまわりは左のスイッチ類と中央のデジタルメーターのみとシンプル。イグニッションキーはハンドルポストの付け根に。操作は現行のスクーターと全く同じで、アクセルは右グリップ、右レバーが前ブレーキ、左レバーが後ブレーキ

 

 バッテリーはリチウムイオン充電池。同社の電動アシストサイクル「PAS」などでも採用されている三洋電機の18650セルを112本、8並列14直列で接続し、電圧50V、容量14Ahを実現している。エンプティからフルまでにかかる充電時間は約6時間で、1充電当たり30km/h定地走行で約43kmを走行可能としている。

 同社が2005年に発売したEC-02やPassol Lではバッテリーを取り外して充電することができたが、EC-03では取り外せない構造になった。これは、容量を増やすためとしている。しかし、シートの下に充電器とケーブルを搭載しており、アース付きの100Vコンセントさえあればすぐに充電できるようになっている。

 バッテリーの劣化は、500回の充電で70%まで容量が落ちると想定されている。バッテリーの交換は、手数料込みで7万5000円程度になる予定。

 車体サイズは1565×600×990mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース1080mm。重量はバッテリー搭載時で56kg。マンションのエレベーターにも持ち込めるサイズとなっており、油汚れが少ないことも手伝って室内保管が可能になっている。


シートを開けると充電ケーブルが格納されている充電ケーブルは2mほどの長さバッテリーユニット。18650セルが112本格納されている
モーターとリダクションギア、ドラムブレーキを一体化したリアアクスル

 

まさに電動原チャリ
 EC-03の用途として想定されているのは、近距離の移動で、まさに現在の原付1種スクーターの代替手段と言える。スクータータイプのユーザーを調査したところ、月間走行距離が300km以下のユーザーが80%を占め、さらに100km以下が全体の半分以上を占める。つまりほとんどのユーザーが1日当たり5~15km程度を走行しており、EC-03の43kmという航続距離は、ほとんどのユーザーの要求を満たせる。

 同社では、給油やオイル交換の手間がかからず、メカニズムがシンプルなためメンテナンスが容易で、深夜や早朝でも騒音を意識せずに使えることをアピール。

 さらに電動ならではのなめらかで力強い走行もEC-03のメリット。短い距離ながら試乗したところ、現在のスクーターのベルト駆動CVT特有の空走感(エンジンの回転のみ上がって車速が伴わない感覚)がなく、アクセルコントロールとなる右側グリップをひねったら、その分だけ前にすぐ進むダイレクト感が味わえた。

 

都市機能の分散化などにより、2輪車の有用性が高まる多くのスクーターユーザーの走行距離は、月に100km以下薄型パワーユニット、プラグイン充電方式などがEC-03の特長
パワーユニットはモーターとリダクションギア(遊星減速機)、ドラムブレーキを一体化リチウムイオンバッテリーはシート下に搭載
充電器を車体に搭載している独自の制御システムを採用

 

柳社長

電動2輪のバリエーションを拡大
 同社の柳弘之社長は発表会で、中期成長戦略として「新興国低価格モデル」「アセアン向け2輪車」「次世代環境対応エンジン」「スマートパワー」の4分野に、2010年から2012年にかけて重点的に投資すると発表した。

 このうち「スマートパワー」は、「環境性能に優れた次世代動力源」と定義されており、具体的には電動パワートレーンや燃料電池、ハイブリッドパワートレーンのことを指す。

 また同社は環境対策や都市の改善において、2輪車の環境性能や、近距離での使いやすさが顕著になり、存在感が高まると予測。日本へのEC-03投入を皮切りに、2011年には台湾、欧州でも電動2輪車市場に進出し、世界の電動2輪車市場でのトップシェアを目指す。

 またEC-03は2010年代半ばまでに業務用などのバリエーションを3~4機種発表。2020年に向けて高性能モデルや低価格モデルの開発を進め、電動2輪車の性能向上とともにラインアップ拡充を図っていく。

 日本市場では地方自治体との連携や新しい販売手法で電動2輪の普及を図る。またエンドユーザーには試乗する機会を提供することで浸透を図る。

同社の中期成長戦略「Frontier2020」は4分野に投資環境問題や大都市化により、2輪車の有用性が高まる電動車両だけでなく、船外機も電動化
電動2輪車の2010年の最大の市場は中国だが、そのほとんどは鉛電池の機能が制限されたもの。まずは日本、台湾、欧州に投入し、将来は中国への進出も電動2輪車のバリエーションを拡充する

(編集部:田中真一郎)
2010年 7月 15日