アウディ、「RS 5」発表会開催
非日常の世界へ行ける、もっとも美しいクーペ

9月に代表取締役社長に就任したばかりの大喜多寛氏とRS 5

2010年9月13日開催



 アウディ ジャパンは9月13日、同日発売した2ドアクーペ「RS 5」の発表会を東京 表参道のアウディ フォーラム 東京で開催した。また、同時に発売したオープン4シーターの「S5 カブリオレ」も会場に展示された。

 RS 5は、2ドアクーペ「A5」の最強グレードに位置するハイスペックモデル。シリンダーVバンク角90度のV型8気筒DOHC 4.2リッター直噴の自然吸気エンジンは、最高出力331kW(450PS)/8250rpm、最大トルク430Nm/4000-6000rpmを発生。レブリミットは8500rpmと、かなりの高回転型ユニットであることが伺える。0-100km/hに必要な時間はわずか4.6秒で、その10.9秒後には200km/hに到達する。10・15モード燃費は7.8km/L。

 シリンダーブロックやクランクケースにアルミ合金を用いたほか、鍛造クランクシャフト、鍛造スチール製のコンロッド、高強度アルミニウムの鍛造ピストンなどの採用により、高い強度を誇るとともに軽量化にも成功した。これによりエンジンの重量を216kgとしている。

 こうしたハイチューンエンジンに仕立てあげられる一方で、惰力走行中や減速時など、エンジンへの負荷が少ない際に電力エネルギーを回生する回生システムのほか、エネルギー消費を抑えるために低フリクション化を図ったオイルポンプなどを装備し、環境にも配慮する。

ふくよかな前後ブリスターフェンダーを採用するクーペボディーのRS 5
シングルフレームグリルはRS 5のエンブレムが装着されるヘッドライトハウジング内はウェーブデザインとし、ポジショニングランプはLEDを採用するボディーカラーと異なるカラーを採用するドアミラー
前後とも9J×19インチのアルミホイールに265/35 R19サイズのタイヤを組み合わせる。オプションで20インチアルミホイールも用意される
120km/h以上でせり上がり、80km/h以下で格納される電動昇降式のリアスポイラーを装備

 トランスミッションは7速デュアルクラッチAT「Sトロニック」を採用した。7速Sトロニックはアウディの現行ラインアップでも採用されるが、今回高出力&高回転型エンジンを搭載したRS 5に対応するべく、ツインクラッチなど回転部品の強度を高めるとともに、オイル管理システムの見直しなどが図られたと言う。これにより、大トルクに対応するほか、ギアボックスの許容最高回転数を9000rpmまで引き上げている。

 新世代クワトロシステムの中核を担うのは、最大で前輪に70%、後輪に85%のトルクを配分するクラウンギア式のセルフロッキングセンターデフと、理想的なトルクを4輪に伝えるトルクベクタリングシステム(インテリジェントブレーキマネージメントシステム)。

 セルフロッキングセンターデフは、デファレンシャル単体の重量は4.8kgで、シンプルかつ軽量な構造とした。トルクベクタリングシステムは、ハンドリングの限界付近でもニュートラルな挙動を維持することを目的に開発されたシステムで、FFモデルで採用される電子制御アクスルディファレンシャルロックを4WDモデル用に改良したもの。

 これらにより、従来モデルと比較して動力の伝達効率やレスポンスが向上するとともに、アンダーステアが低減していると言う。

 また、ハイパワーをロスなく路面に伝達するため、9J×19インチのアルミホイールに265/35 R19サイズのタイヤを組み合わせたほか、フロントにアルミニウムモノブロック構造の8ピストンブレーキキャリパーを奢り、ストッピングパワーを高めている。

 インテリアではシルクナッパレザーを使用したRS専用のスポーツシートのほか、油温表示やラップタイム計測などができるDIS(ドライバーインフォメーションシステム)、リアルカーボンを材質としたデコラティブパネル、バング&オルフセン サウンドシステム、地デジチューナー付きHDDカーナビなどを搭載し、プレミアム感とスポーティさを演出する。

インテリアカラーはブラックを基調とし、シート/ドアトリムはブラックまたはパールシルバーのいずれかから選択できる。メータートリムはピアノブラックとしたほか、デコラティブパネルにはカーボンを材質に使用RS 5のロゴが入る3本スポークのステアリングは、太巻きグリップのパーフォレーテッドレザーがあしらわれる。アルミ調のパドルシフトも装着される9000rpm、320km/hまで刻まれるメーター
トランスミッションは7速デュアルクラッチATのSトロニック地デジチューナー付きHDDカーナビ(40GB)キッキングプレートにもRS 5のロゴが入る
ドア部にもカーボンのデコラティブパネルを採用するサイドサポートが張り出し、ホールド感の高いレザースポーツシートを採用。ヘッドレスト部にRS 5のロゴ入り
トランクはホイールハウスの張り出しがなく、十分な広さを確保する

大喜多寛 代表取締役社長

9月に就任したばかりの大喜多代表取締役社長によるプレゼンテーション
 RS 5のプレゼンテーションは、9月1日に同社の代表取締役社長に就任したばかりの大喜多寛氏により行われた。

 開発コンセプトは「The Perfect Blend of Performance and Design」(デザインとパフォーマンスの完璧な融合)。「ハイパフォーマンス」「極めた美」「上質な空間」がポイントだと言う。

 ハイパフォーマンスにおいては、V型8気筒DOHC 4.2リッターエンジンと7速Sトロニックを採用したことについて触れ、「この組み合わせはアウディで初」と言い、熟練工が手作業で組み立てるエンジンは「ハイパフォーマンスと高効率を高次元でバランスする」と、その特徴を述べる。

発表会では大喜多氏がRS 5のエンジンサウンドを来場者に“奏でる”パフォーマンスを実施。トランペットとの共演により、そのエンジンサウンドの迫力が増していた

 また、新開発のクワトロシステムについては「タイヤ2つで駆動を伝えるモデルより、基本的に駆動力が伝わるし、安全性にも安定性にも寄与している」と述べるとともに、今後動力源がバッテリーや電気に変わろうとも、タイヤ4本でクルマが走る以上はクワトロシステムが理想的と強調する。

 デザインについては、ダイヤモンドルックのシングルフレームグリルを採用したフロントマスクのデザインについて「ハイパフォーマンスをそのまま表現した」と述べたほか、ボディーサイドに流れる3本のプレスライン、アーチ形状のルーフラインなどを例に挙げ、「こうした凝ったデザインは普通のコストではできない」「デザイナーのワルター・デ・シルバが『自らの作品の中で最も美しいクーペ』と言うように、本当に美しいクーペに仕上がった」(大喜多氏)と、その仕上がりの高さに自信を覗かせる。

 インテリアは、RS専用デザインのレザーシートを採用したことや、スイッチ類などを操作しやすい位置に配置したことのほか、9000rpmのタコメーター/320km/hまで刻まれるスピードメーターによって「メーターを見ただけでワクワクする」とその特徴を述べ、以上のことから「RS 5は日常から非日常の世界へ行くことができ、スポーツを楽しむようにドライビングを楽しめる」と紹介した。

 今回の発表会では、「RS 5のオーナーが最初に感じる特権」(大喜多氏)として会場内でRS 5のエンジンをかけるパフォーマンスが行われた。一般的に室内の発表会でエンジンがかけられることはあまりないが(排気ガスが充満するため。今回は排気管がマフラー付近に設けられていた)、それだけエンジンサウンドに自信を持っていることの現れと言えるだろう。

開発コンセプトRS 5の3つの特徴点V型8気筒DOHC 4.2リッターエンジンと7速Sトロニックの組み合わせはアウディ車で初だと言う
RS 5は新開発のクワトロシステムを採用デザインを担当したワルター・デ・シルバ氏も、「自らの作品の中で最も美しいクーペ」と自画自賛RS 5の価格は1204万円。年間100台の販売を目指す

アウディ ジャパンとして2010年に過去最高の販売台数を目指す
 なお、今回の発表会は、大喜多氏が代表取締役社長に就任して最初の新車発表会であることから、アウディ ジャパンの現況報告が行われたほか、大喜多氏の抱負も述べられた。

 1月~8月の同社の国内販売は、前年比で18%増の1万1000台となり、とくに小型車を中心に販売が好調だったと言う。この伸び率はメルセデス・ベンツの10%、ビーエム・ダブリューの13%増と比較しても「プレミアム・インポートカーブランドの中でリードしている結果」だと述べる。

 また、2006年からの年間販売台数の推移を見ると、2006年の1万5018台から3年連続でプラス成長していることを明らかにした。とくに、リーマンショック後の2009年も、2008年と比較して1万6040台から1万6171台に増加したと言い、これは商品に魅力のあったことのほか、試乗する機会を増やしたことなどが効を奏したのではないかと分析する。

 また、2010年度については、1990年にアウディ ジャパンとして過去最高を記録した1万6691台という結果を抜き、記録を作りたいとの意気込みも述べられた。すでに1万1000台を販売していることから、「このまま順調に推移すれば記録を抜ける」と予想するが、日本市場における車両の需要と供給がバランスとれていないことから、9~12月の販売台数は昨年比で若干落ちるかもしれないとの見方を示した。

前社長のドミニク・ベッシュ氏が掲げた成長戦略を引き続き継続すると言う

 また、アウディ ジャパンとしての今後の成長戦略は、前社長のドミニク・ベッシュ氏が掲げた「ブランドイメージをさらに際立たせる」「メトロポリタンストラテジーに焦点を当てたディーラーネットワークの開発」「オーナーシップエクスペリエンスと顧客満足度の向上」の3つを引き続き柱にしていくとした。

 大喜多氏は、「日本のマーケットのニーズを本国に伝え、日本のマーケットに合ったモデルを発売するという仕事はむろんのこと、ドイツ車が持っている“走りの楽しさ”を日本で広げていきたい。それが使命」と、今後の抱負を述べた。

1月~8月の日本での市場動向競合のプレミアムブランドよりも高い成長率をみせる
2010年度はアウディ ジャパンとして過去最高を記録した1万6691台越えを目指す

プレミアム4シーターカブリオレ「S5」も展示
 会場には、同日発売された4シーターカブリオレ「S5」も展示された。S5は最高出力245kW(333PS)/5500-7000rpm、最大トルク440Nm(44.9kgm)/2900-5300rpmを発生するV型6気筒 DOHC 3.0リッター直噴スーパーチャージャーエンジンを搭載したほか、後輪左右にかかる駆動力の配分を、路面状況にあわせて変化させる「リアスポーツディファレンシャル」、エンジン、ステアリング、サスペンションの特性を設定できる「アウディ ドライブセレクト」などを装備。トランスミッションはデュアルクラッチATの7速Sトロニックで、駆動方式は4WDのクワトロシステム。

 インテリアは専用のS スポーツシートやバング&オルフセン サウンドシステムなどを採用し、スポーティかつエレガントな仕上がりをみせている。

(編集部:小林 隆)
2010年 9月 14日