「CEATEC 2010」で、三菱と日産がEVについて講演 三菱自動車工業の益子社長と、日産自動車の山下光彦副社長 |
幕張メッセで開催中のCEATEC JAPAN 2001 |
2010年10月5日~9日開催
(5日:特別招待日、6日~9日:一般公開日)
入場料:1000円(一般)、500円(学生)
※事前登録で無料、9日は無料
幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区)において、IT・エレクトロニクスの展示会「CEATEC JAPAN(シーテック ジャパン) 2010」が10月5日開幕した。開幕後のゲストスピーチとして、三菱自動車工業の益子修社長が「電気自動車が切り拓く"自動車の次の100年"」、日産自動車の山下光彦副社長が「電気自動車の時代 ~EVが創り出す未来~」と題した講演を行った。
“ゲスト”スピーチの名のとおり、エレクトロニクス業界の展示会においては、自動車メーカーは他業界となる。EV(電気自動車)化で先を走る2社は、それぞれエレクトロニクス企業へのシフトを思わせるスピーチとなった。
どちらもEVに関する講演であり、インフラの整備や、EVに積む大容量の電池はスマートグリッドに組み入れるべきという点など、共通した点も多かった。
三菱自動車工業の益子社長 |
■EVは過去の蓄積を否定しかねない製品
三菱の益子社長は冒頭、「自動車産業は、IT、エレクトロニクス技術に支えられて大きく発展してきたが、電気自動車となると、また、その意味合いが変わってくる」「電化製品の仲間に入るだけでなく、将来はエネルギーシステムやITネットワークに組み込まれることが考えられる。CEATECに参加の業界との連携が、ますます考えられる」と、EVは単に走行エネルギーを電気にシフトするだけではないという考えを述べた。
益子社長は現在の自動車業界を取り巻く状況を説明。「需要減少の理由はあるが、増加の要素はない」としたほか、「新興国」と「環境」というキーワードを挙げ、それぞれを克服することが必要と説いた。
なかでもEV「i-MiEV」の開発は「環境」という課題を克服するためだと言い、1960年代の後半から研究を行い、過去、大気汚染、地球温暖化というテーマで開発を進め、i-MiEVの世代では「脱石油」への対応も視野に入れて開発を行ったと明かした。
開発の過程では、早い時期にリチウムイオン充電池の可能性を信じて、開発を進めたことや、電力会社との実証走行実験を展開、延べ30万kmにおよぶ走行を行ったことや、海外でも実証実験を行ってきたと言う。
今後は海外展開を行い、今年度中に左ステアリング車を欧州市場やPSAに向けて提供する。2011年度にはアメリカ向けにも展開を進めるとした。現在までの普及の例としては、タクシーへの採用などを挙げた。大容量の充電池を積むi-MiEVならではの取り組みでは、自然エネルギーの蓄積を補助するというスマートグリッドへの参加を挙げた。
一方で益子社長はEVへのシフトについて、「長年にわたって取り組んできたエンジンの振動騒音対策や排出ガス対策の技術がいらなくなる、エンジンのノウハウが不要になるかもしれない大きなリスクをはらんだ取り組み」と述べ、「決して心地のよいものではないが、この変化に耐えなければ、明日の競争には勝てない」と現在の意気込みを話した。
また、「社会の経済の大きな変化の中で、電気自動車が生まれた。過去の蓄積を否定することになりかねない商品。変わることをおそれない勇気が必要、変わり続けることが、個人、企業の繁栄」と考えを述べた。
日産自動車の山下光彦副社長 |
■エネルギーの起源、太陽光をダイレクトに活用
三菱の益子社長に続いては、日産の山下光彦副社長が登壇。「リーフ」と充電インフラについて講演した。
山下氏が唱えるリーフの特徴は「ゼロエミッションモビリティー」。EVであることから、走行中に排出するCO2や排気ガスが存在せず、リサイクル樹脂やリサイクルアルミを使用、バッテリー、モーター、インバーターといった主要部品のリサイクル率を100%にしたこと、クルマ全体のリサイクル可能率は99%になっていることなど、数字を強調した。
開発のポイントとして空力特性を挙げ、空気抵抗を極限まで抑えた点を強調した。そのほか、情報提供型のコクピットは、EVを走行させる上で必要な情報が取得できるとし、航続距離の表示などが得られると言う。
また、ITサポートとして、充電の遠隔操作や、エアコンの遠隔操作を挙げた。日産のカーウイングスを経由して操作できるようになっており、必要なら深夜電力での充電や、熱い時や寒いときなど、走行前に空調を動作させることで、走行エネルギーを節約するなどの機能も持つと言う。
一方、日産がリーフの普及に向けた取り組みも紹介した。走行パターンを調査し、それに対応した充電ネットワークを構築、適材適所の急速充電と普通充電の組み合わせ例などを挙げた。山下氏は結論として「いかに充電設備を整えて、使いやすくするのが、重要になってくる」とし、EVを走らせるためのインフラの重要性を説いた。
山下氏は次に、コミュニティ・スマートについて触れ、太陽光発電とEVのバッテリーでエネルギーの自給自足の実現について説明した。天候によって大きく左右される太陽光発電は使いにくいエネルギーとし、これを使いこなすためには、EVに搭載される大容量の電池で蓄積するなど“エネルギー・スマート”の考え方が必要とした。
コミュニティ・スマートへの取り組みとしては、実証実験としては、横浜市において実証実験を進め、2010年4月から米GE社と覚書を締結、共同研究を行っているとし、グローバルでも約70のパートナーシップを締結しているとした。
(正田拓也)
2010年 10月 6日