「ダンロップ・サーキット・レッスン」に参加してきた プロドライバー3名による直接指導でドラテク向上 |
ダンロップ(住友ゴム工業)は10月16日、福井県のタカスサーキットでドライビングレッスン「ダンロップ・サーキット・レッスン」を開催した。
ダンロップ・サーキット・レッスンは、サーキット走行を前提にドライビングのスキルアップを目的に行われているもので、今年は2回目の開催となる。また、このダンロップ・サーキット・レッスンが開かれた翌日にはダンロップのスポーツタイヤ「DIREZZA」ユーザー向けのタイムアタックイベント「DUNLOP DIREZZA CHALLENGE(ダンロップ ディレッツァチャレンジ)」も開催しており、DIREZZAユーザーにサーキット走行を積極的に楽しんでもらおうという同社の意図が伺える。
今回、Car Watchはダンロップ・サーキット・レッスンにスカイライン GT-R(R32)で参加してきたので、その模様をリポートする。
タカスサーキットは、北陸自動車道 福井IC(インターチェンジ)からおよそ25km日本海側に進んだ場所にある。
コース全長1503.69mのミドルコースで、339.76mという長いバックストレートを持つほか、曲率が変わる複合コーナーがいくつかあり、なかなか難しそうなコースレイアウトとなっている。以下、写真を使ってコースを紹介しよう。
レッスンでは自動車雑誌などで活躍する大井貴之氏をはじめ、レーシングドライバーの青木孝行選手、山田英二(ターザン山田)選手が講師役を務めた。
まずはじめにドライバーズブリーフィングが行われ、当日のスケジュール説明が行われた。この日のスケジュールは次のとおり。
・フリー走行1(グループ分け/15分)
・レッスン1(ブレーキング特訓/20分)
・レッスン2(コーナリング特訓/15分)
・フリー走行2、3(レッスン後の自主練/15分×2本)
最初に15分枠のフリー走行を行い、タイムによってグループ分けが行われる。グループはタイムの速い順に1~3グループに振り分けられるため、同レベルの参加者とブレーキングおよびコーナリングレッスンを受けることができる。そして最後に特訓の成果を確認できるフリー走行枠が2コマ用意される。
そのほか、ブリーフィングではピットロードが狭いためぶつけないよう注意が必要であること、2コーナー後のストレートエンドに設けられる3コーナー(カゲヤマコーナー)が事故が多いので注意が必要であること、タカスサーキットでもっとも攻略しがいがあるポイントがトップスピードコーナーであることなどが紹介された。
まず1回目のフリー走行。初めて走行するコースなので、少々緊張しながらコースイン。1周目はコースを確認しながらタイヤを温める。そして2周目から全開にするわけだが、やはり予想どおりというか、複合コーナーの攻め方がまったく分からない。何度周回しても、1コーナー、(複合ではないが)少し下っていてブレーキングポイントが少々荒れているカゲヤマコーナー、バックストレート前のグリップエンドコーナー、そしてトップスピードコーナーであたふたしてしまう。
そうこうしているうちに、1回目のフリー走行が終了。筆者のベストタイムは1分10秒090で、グループ3に入ってその日のレッスンを受けることになった。
レッスン1は、ブレーキングのスキルアップを目的とした特訓が行われた。タイムの速かったグループ1、2は最終コーナー途中にパイロンが置かれ、そのパイロンを目標に止まる課題を、筆者が属するグループ3は、バックストレート立ち上がりからトップスピードコーナー手前に置かれたパイロンで止まる課題が与えられた。この課題は何度も繰り返し行われ、走るごとに講師陣が無線機を使って評価してくれる。
冒頭で紹介したとおり、バックストレートは長いのでおよそ120km/hのスピードからのフルブレーキングとなる。講師陣からは「パイロンはあくまで目標物であり、大事なのはどのくらいのポイントからフルブレーキングすれば目標のポイントで止まることができるかを身につけること」との指示が与えられていたが、パイロンの奥で止まったり手前で止まったりと、安定しない。しかもヒール・アンド・トゥを使わず、単純にブレーキを踏むだけにもかかわらずである。恥ずかしながらブレーキの感覚が身についていない証拠だ。
しかし、何度も同じことを繰り返しているうちに、段々と「このあたりでブレーキを踏めばパイロンで止まれる」というポイントが講師陣のアドバイスによって分かってくる。上達してくると、今度はヒール・アンド・トゥを使いながらのブレーキ練習を行い、「車体が安定していないのでもっとリズムよく」との指摘をもらいながら、上達していくことを実感できた。
一般的なフリー走行会では、筆者のような素人だとレコードラインが分からないうえにブレーキングポイントが手前だったり奥だったりするので、いつまで経ってもタイムが上がらない。その点、このレッスンは実に実践的である。
また、コース外で解説していた大井氏は、「ABSが効くか効かないかくらいのブレーキングを身につけたい」「ノーズが中(イン)に向くようにブレーキすることを心がけよう」といった、より具体的なアドバイスを参加者にしていた。
1回目のチャレンジ。手前で止まりすぎた | ||
2回目のチャレンジ。カラーコーンを越えてしまった。ブレーキの感覚がまったく身についていない証拠 |
次のレッスンはコーナリングの特訓。グループ3はグリップエンドコーナーで練習後に最終コーナーでも行われた。
まずは、4コーナー(ゲッチャンコーナー)の立ち上がりからスタートしてS字をクリアしながらグリップエンドコーナーに侵入し、立ち上がりで終了するという内容。コーナー手前のブレーキングポイント、進入速度、ラインの取り方が適正かどうかなどをコーチ陣がチェックしてくれる。
グリップエンドコーナーも複合コーナーのため、攻略の糸口がなかなか見出せない。コーナー立ち上がりで加速しようとするもトラクションがうまくかからないでいた。そうした中で青木選手から指摘されたのは「コーナー手前で進入速度を落としすぎているため、立ち上がりで早めにアクセルを開けすぎている」ということだった。そこでブレーキングポイントをコーナー進入後に遅らせたところ、よりスムーズに立ち上がることができた。
コーナリング特訓のAコースはグリップエンドコーナーを使用。講師は青木選手 | コーナリング特訓のBコースはトップスピードコーナーを使用。講師はターザン山田選手 |
そしてトップスピードコーナーでの特訓。ただでさえバックストレートでトップスピードが乗っての進入となるので、難しいことこのうえない。グループ3の特訓では、バックストレート途中からスタートし、最終コーナーを立ち上がったところで終了となる。
練習当初はアンダー出しまくりでしっちゃかめっちゃかだっだが、山田選手からのライン取りの変更指示(立ち上がりはもっとインベタでいくなど)によって少しずつリズムがよくなってきたことを実感できる。指示を受けるまではトップスピードコーナーでイン側に早くつきすぎてしまい、鋭角な最終コーナーをうまくクリアできないでいたが、トップスピードコーナーでブレーキングしながらアウト側にポジションをつけ、最終コーナー手前からイン側につくことで、実にスムーズにクリアできるようになった。
大井氏によれば、「最終コーナーでブレーキングを早めに終わらせすぎるため、フロントの荷重が抜けてしまって姿勢を作れていない人がけっこういる」との指摘のほか、「最終コーナーは立ち上がりを絶対にミスしないように心がける。その上でコーナー進入速度、ブレーキングポイントを調整していったほうがよい」と参加者に指示を送っていた。
Bコースで受講中。トップスピードコーナーと最終コーナーをクリアするのが実に難しい |
さて、こうした練習を経て行われたフリー走行の前に、参加者のクルマを講師陣が直接ドライブする同乗走行会も行われた。筆者のクルマをドライブしてくれたのは、ターザン山田選手だ。
ターザン山田選手は全日本GT選手権(SUPER GTの前身)やスーパー耐久で活躍してきたほか、チューニング誌主催のタイムアタックなどでも活躍する実績のあるドライバー。助手席に座ってそのドライビングテクニックを盗もうとするが、豪快なブレーキングにただただ驚くばかりで、テクニックを盗むどころではない。しかし、コーナーへのアプローチや、どのくらいの進入速度が適正なのかといったことがとても参考になった。
ターザン山田選手によれば、GT-Rは車重が重いため、何周か全開で走ったら必ずクーリング走行も忘れないように行うこともアドバイスしてくれた。ちなみにターザン山田選手のタイムは1分6秒410だった。
コーナリング特訓後は各グループに分かれてフリー走行。走行を待つ参加者向けには、同乗走行が行われた。Car Watch号はターザン山田選手だった | 同乗走行へ向かう青木選手 | 特訓を終え、しばし休憩中のCar Watch号 |
グループ1のフリー走行が終わったところで昼休み。無線機を返却し、お弁当を受け取る | 昼休み中に即席レッスンも行われていた。疑問点を講師に聞くと、コース図を使ってていねいに教えてくれる |
そしていよいよフリー走行だ。タカスサーキットの攻略ポイントとなるグリップエンドコーナーやトップスピードコーナーでの特訓を活かすべく、コースイン。
コースに慣れてきたこともあるが、講師陣からいただいたアドバイスや、ターザン山田選手の同乗走行の感覚がしっかり身についていることが実感できる。結果はフリー走行1回目から2秒以上縮まり1分7秒764となった。
自由に走れるフリーのサーキット走行会も楽しいが、こうした実践的なアドバイスをもらえるレッスン・イベントはためになるとともに上達への近道であることを実感できた。
午後はグループ2、3のフリー走行。午前にフリー走行を終えたグループ1は同乗走行となる | 同乗走行へ向かう大井氏 | 青木選手と同乗走行 |
同乗走行を終え、走行後のアドバイスを行うターザン山田選手 | 3回目のフリー走行中。この頃には全員のペースが上がっていた |
参加者に話を聞いたところ、「普段からタカスサーキットを走っており、ダンロップ・サーキット・レッスンが地元で開かれることから参加した。サーキット走行では必ず周回しなければならないが、レッスンでは特定のコーナーを繰り返し練習でき非常に役に立った」「あこがれのターザン山田選手と同乗走行できてうれしかった。クルマのセッティングに対してのアドバイスがあり、今後の参考になった」との声があったことから、サーキット初心者の人、サーキットでのタイムアップに伸び悩んでいる人はもちろん、上級者のさらなるスキルアップに役立つことは間違いないだろう。
以下、レッスン修了後に各講師陣に感想を聞いたのでまとめておく。
●ターザン山田選手
初めてダンロップ・サーキット・レッスンの講師を務めたが、参加者のレベルが思ったより高くビックリした。走りの上達のコツは、コースに対するイメージを持つこと。自分は奈良に住んでいたので、鈴鹿サーキットに通ってイメージを作り上げた。こういう講習会に参加したり、上手な人と一緒にサーキットに行くのが効率よくうまくなるポイント。
●青木選手
ダンロップ・サーキット・レッスンは、昨年から開催したもので、ずっと講師を務めている。最初は参加者が少なかったこともあり、マンツーマンのレッスンをしていたが、待ち時間が長すぎるなどの意見があり、全員に無線機を渡す今のスタイルに変更した。この方式だと、自分が走っていないときでも他人に対するアドバイスを聞くことができ、走りの参考になると思う。
●大井氏
昨年から始めたダンロップ・サーキット・レッスンは、やっと知られ始めたところ。今シーズンはこのタカスサーキットで終わるが、来シーズンも続けてやっていきたい。多くの人に走ることの楽しさを知ってほしい。レッスンがDUNLOP DIREZZA CHALLENGEの前日に組まれているため、DUNLOP DIREZZA CHALLENGEの練習として参加する上級者と、初めて参加する初心者がいる。その両方が楽しめるようなレッスンにするため、今後も工夫を重ねていきたい。
なお、10月17日にはDUNLOP DIREZZA CHALLENGE第4戦が行われ、全4戦の地区予選が終了。これで各地区予選での4クラス上位3名が決定し、11月23日にスパ西浦モーターパーク(愛知県)で行われる決勝大会に駒を進める。ハイレベルな争いが繰り広げられること間違いないので、時間のある方はぜひ見学しに行ってみてはいかがだろうか。
今シーズンのダンロップ・サーキット・レッスンはタカスサーキットが最後となる。ダンロップの宮川氏によると、年内には来シーズンのスケジュールを出したいとのことなので、興味のある方はダンロップのWebサイトをチェックしてみてほしい。
3回目のフリー走行が終了し、レッスンメニューの終了となった。多くの車がボンネットを開いて、車を休めていた | 最後に講師陣からコメントがあった | 今回のレッスンを主催したダンロップタイヤ営業本部の宮川義宏氏 |
アンケートを書いて終了となる | 講師にサインをもらう人もいた。写真はターザン山田選手 | こちらは青木選手 |
(編集部:小林 隆)
2010年 10月 21日