SUPER GT最終戦、エヴァンゲリオンレーシングは19位に終わる
年間ランキングは、ドライバー・チームとも10位

完走レースとしてワースト順位の19位となったエヴァンゲリオンレーシング

2010年10月23日、24日開催



 10月23日、24日、ツインリンクもてぎ(栃木県芳賀郡茂木町)で2010 AUTOBACS SUPER GT第8戦「MOTEGI GT 250km RACE」の決勝が開催された。レース結果などは別記事で紹介しているとおり。本記事ではCar Watchの読者に人気の高い、エヴァンゲリオンレーシングの各セッションの詳細、マシン、ドライバー、レースクイーンのフォトギャラリーなどをお届けする。

 エヴァンゲリオンレーシングは第5戦のSUGOで3位表彰台を獲得するも、第6戦の鈴鹿はリタイヤ、巻き返しを図りたかった第7戦の富士が中止となったため、シリーズチャンピオンの可能性はなくなった。最終戦は有終の美を飾るべく臨んだが、完走したレースではワーストとなる19位でシーズンを締めくくることとなった。


練習走行が始まった

公式練習(10月23日、9時5分~10時50分)
 晴天の下、最終戦がスタートした。最初のセッションは土曜朝の公式練習。まずはセッティング能力の高い松浦選手を中心にマシンをセットアップしていく計画だ。松浦選手がコースイン、5周目に1分57秒817のタイムを出すが、グリップレベルの低さに苦戦。何度もピットインをしてセッティングを変更するが傾向は変わらず、タイムは1分57秒394止まり。嵯峨選手に交代し再確認をしたが状況は同じで、タイムは2分を切ることができない。結局、松浦選手が出した1分57秒394がこのセッションの最速で、GT300クラストップの1分55秒055から2秒以上遅れるという不安な公式練習となった。


予選1回目。へアピンを攻める嵯峨選手

公式予選1回目(10月23日、13時~13時50分)
 今回の予選方式はノックダウン方式。1回目の予選は基準タイムをクリアすればノックダウン予選に進むことができる。不調だった午前中の公式練習から大幅にセッティングを変更、基準タイムは2人とも楽々とクリアしたが、グリップの低さは解消されず、タイム的には松浦選手が開始早々の4周目に記録した1分57秒905にとどまった。

ノックダウン予選(10月23日、14時55分~)
 迎えたノックダウン予選。セッティングを変更し、参加24台中上位16台が通過できるセッション1は松浦選手、10台が通過できるセッション2は嵯峨選手、残った10台でグリッドを争うセッション3は松浦選手で挑むこととなった。

 セッション1が始まった。松浦選手は3周目に1分57秒台、4周目に1分56秒台と徐々にタイムを縮め、5周目に1分56秒355を出し、15番手タイム。ギリギリでセッション1を通過したが上位進出は厳しそうな雰囲気となった。

 セッション2はニュータイヤを投入し嵯峨選手がアタックを開始。残念ながらタイムは伸びず1分56秒551の15位。セッション3に進むことはできなかった。予選後にデータを詳しく解析し、タイヤがコンディションに合っていないと判断。同じタイヤでスタートする決勝はファーストスティントを短めとし、後半のスティントを別のタイヤで挑み、追い上げを図る作戦とした。


セッション1。V字コーナーに進入する松浦選手セッション2。S字を抜ける嵯峨選手

ピット&イベント
 前戦が中止となったため、ツインリンクもてぎには例年以上の観客が集まった。土曜のピットウォークからピットロードは人があふれるほどの大賑わい。グランドスタンド裏のステージにも多くのファンが集まった。前戦で応援シートが用意されるはずだったが、レース自体が中止となったため、最終戦でエヴァンゲリオンレーシング応援シートが用意された。セッションの合間には、応援シートにドライバー、レースクィーンも登場し、集まったファンを大いに盛り上げてくれた。

 毎レース、エヴァンゲリオンレーシングの人気は高く、ピットウォークでも、キッズウォークでもカメラの砲列が集まっていた。今回も3人のレースクイーンが登場。綾波レイ役の水谷望愛さん、式波・アスカ・ラングレー役の千葉悠凪さん、真希波・マリ・イラストリアス役の和泉テルミさんの3人は終始笑顔を振りまいていた。

土曜のピットウォークから多くのファンが集まった販売コーナーにもレースクィーンが登場ステージで笑顔を振りまく3人
日曜のピットウォークも超満員ドライバー2人とレースクィーンで記念撮影撮影の合間も笑顔が溢れる
嵯峨選手は綾波レイの髪飾りがお気に入りピットウォークでサインに応じる嵯峨選手
応援シートに登場しファンと交流したドライバーとレースクィーン

決勝(10月24日、14時~)
 決勝開始の1時間前に8分間のウォームアップ走行が行われる。その後ピットがクローズされ、ピットオープンになると各マシンはピットアウトし、1周回ってスターティンググリッドに着く。

 ここで31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラにアクシデントが発生した。ウォームアップ走行に備え嵯峨選手がマシンに乗り込む。メカニックがマシンをガレージからピットロードに押し出すと、ガレージの床にわずかだがオイルが漏れていた。

 漏れていたオイルはミッションオイルと判明。あわててマシンを確認すると、マシンから漏れて出ているのではなく、給油時にこぼれたオイルらしい。一通りのチェックをしてウォームアップ走行に送り出した。

 コースに出た嵯峨選手は1周でピットに戻ってきた。そのマシン後方からは白煙が……マシンが停止すると炎が見え、メカニックがあわてて消化器で火を消す事態となった。幸いにもすぐに消火活動は終わったが、ピット全体が緊張に包まれた瞬間だった。マシン自体からはオイルは漏れていなかったが、カウル内に残ったオイルが排気系の熱で炎上したようだ。もしスタート後に炎上していれば、そのままリタイヤとなった可能性が高いだけに、不幸中の幸いとも考えられる。

 グリッドへマシンを移動するピットオープンまで数分しかない。間に合わなければ最後尾からピットスタートとなってしまう。メカニックがリアまわりのカウルを外し、懸命に作業を行った。ピットオープン、作業を終えた31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラは、無事スターティンググリッドに着くことができた。普段はグリッドウォーク、スタート前のセレモニーを華やかに迎えるだけだが、グリッドに着いたマシンは再びリアカウルを外し、スタート直前まで確認作業が続けられた。

ファーストスティントを担当する嵯峨選手ピットに押し出したところでオイル漏れを発見。確認作業をするメカニックウォームアップ走行で煙りを出し戻ってきた31号車
漏れたオイルに引火。ピットは騒然となるすぐに消火作業が行われ大事には至らなかったグリッド上でもギリギリまで作業が続けられた
グリッドウォークにも多くのファンが集まった

無事に本来のグリッドからスタート。フォーメーションラップを走行する31号車

 直前のアクシデントもなんとか乗り越え31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラは53周の決勝レースをスタートした。予選と同じタイヤを使用するため、嵯峨選手が担当するファーストスティントは我慢の走りでポジションキープ。早めにタイヤ交換を行い、松浦選手が担当する後半のスティントで追い上げを図る作戦だ。

 スタート直後の1コーナーは順位をキープして15位で通過したが、1周目が終わったところで17位まで後退。2周目には20位までポジションを落としてしまった。9号車 初音ミク X GSRポルシェのペナルティで1つ順位を上げたが、すぐに9号車 初音ミク X GSRポルシェに抜かれ再び20位に後退した。

2周目の3コーナーで28号車に抜かれ18位に後退した
51号車、62号車にも抜かれ20位に後退ペナルティを受けた9号車が背後に迫ってきた元々予選2位と好調の9号車は徐々に差を詰め…
あっさり抜いていった

 徐々に順位を上げ16周目には16位まで浮上、上位の各車がピットインを開始し11位までポジションを上げたところで20周でピットイン、松浦選手が後半のスティントで巻き返しを開始した。

ペースダウンした88号車を抜き17位に浮上各車がピットインを開始するまでは17位をキープ

トラブル続きだったが、リタイヤすることなく完走した

 タイヤ交換をした効果もあり、松浦選手は1秒ほどラップタイムを上げ、上位陣と遜色ない1分58秒台前半で周回を続けたが、25周目に突然「エンジンが吹けない」と無線が入った。タイムも3.5秒ほど遅くなったため緊急ピットイン。ECUのトラブルによる燃圧低下が原因と判明。その後、メカニックの敏速な交換作業により再度コースに送り出す事ができたが、作業に2周費やしたことから完全に戦線から離脱した。

 松浦選手はその後もGT300のトップクラスと遜色ないタイムで快走したが、完走したレースの中では今期ワーストの19位でチェッカーフラッグを迎えることとなった。今シーズンのドライバーランキング、チームランキングともに10位で最終戦を終えることとなった。

ドライバーとチーム代表のコメント

嵯峨宏紀選手
 不運なトラブルから決勝前フリー走行ができず、タイヤの温度が上がっていない状態でのレース序盤では苦戦してしまいポジションを大きく落としてしまいました。今季最後のレースということで、前回の鈴鹿戦の雪辱を含めよいレースにしたかったのですが、不完全燃焼のレースになってしまい残念です。ただ、今季1年間でのマシンのポテンシャルは飛躍的に向上したのは明らかであり、来期以降へ向けての期待の持てる一年を過ごせたのではないかと思っています。

松浦孝亮選手
 シリーズ最終戦ということでかなり気合を入れて行ったのですが、今回持ち込んだ状態が、セットアップ・タイヤ含め少し自分達の思ったものと違っていました。決勝までうまくペースを掴めずにいましたが、決勝レースにはセット変更して望んだ結果、そのセットがすごくよくレースのペースはわるくなかった。ですが、燃料ポンプが壊れてピットに入ることになり、周回遅れになってしまったので残念です。

 表彰台は菅生1回だけになってしまいましたが、“31号車”としては、これまでよりも確実に早くなった1年だったのではないかと思います。1年間皆様応援ありがとうございました。

apr代表 金曽裕人氏
 今シーズンはチャンピオンを狙える布陣として嵯峨選手、松浦選手のコンビで挑んだ。すべてが噛み合ったときのパフォーマンスは高く、随所に速さを見せつけたが、クラッシュや今回の様なトラブルで結果に繋がらない事が多いシーズンであった。しかし確実な進歩が見られ、強豪ひしめくGT300でシリーズ10位は昨年よりも上々。来期に関して期待値の大きい進歩であったと言える。しかしもっと高いパフォーマンスをご期待くださった皆様には申し訳なく思うとともにさらなる発展をお約束致します。1年間ご声援ありがとうございました。

フォトギャラリー
 ここではエヴァンゲリオンレーシングのマシン、レースクイーンの写真を掲載する。画像をクリックすると、フルHD解像度(1920×1080ピクセル)などで開くので、その迫力の写真を楽しんでほしい。


(奥川浩彦)
2010年 11月 1日