日産、ゼロ・エミッション社会に向けた取り組み 新しい形のモビリティ「NISSAN New Mobility CONCEPT」も公開 |
日産自動車は11月1日、報道関係者らを対象に、同社の「包括的なゼロ・エミッション社会に向けた取り組み」に関する説明会を行った。その中で、EVによる新しい形のモビリティの提案として「NISSAN New Mobility CONCEPT」を公開した。
グローバル・ゼロエミッションビークル事業本部 執行役員 渡部英朗氏 |
日産自動車グローバル・ゼロエミッションビークル事業本部 執行役員 渡部英朗氏によれば、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次報告書に基づく試算では、2050年までに新車のCO2を2000年比で90%削減する必要があると言い、そのためにも日産ではEVをニッチなものではなく、広く普及させる必要があるとの方針を述べた。
同社ではアイドリングストップ車やクリーンディーゼル、ハイブリッド車など、従来の内燃機関の燃費向上にも注力しているが、EVのようなゼロ・エミッションモビリティに関しては「ゼロ・エミッション事業本部」を設けて取り組んでいる。これは、EVが従来のクルマとはまったく違った一面を持っているからで、従来の組織の枠を越えた対応を可能にしたと言う。
ゼロ・エミッションと燃費向上の2つの方法でCO2削減に取り組む | ゼロエミッション事業本部を設置 | 日産とルノーでEV生産能力を年間50万台にする |
■ゼロ・エミッション社会に向けた包括的取り組み
日産では、ゼロ・エミッション社会に向けて、単にクルマの開発だけでなく、EVを中心とした包括的な取り組みを行っていると言う。EVの普及にはインフラの整備も重要であり、世界各国の政府や電力会社、電気メーカーなどすでに80以上のパートナーシップを締結。国内においては11月末までに全国の日産ディーラー2200店舗において普通充電器を2基ずつ設置。さらに急速充電器も全国で200基設置すると言う。
またEVで利用したバッテリーの2次利用についてもすでに事業化を進めている。住友商事との出資による会社で「フォーアールエナジー株式会社」を2010年9月14日に設立。EVで使われるバッテリーはかなり高性能なもので、EVとしては使い終わった後の再利用(Reuse)は可能だと言う。さらに電圧や容量を変えての再製品化(Refabricate)、原材料を回収するリサイクル(Recycle)、バックアップ電源用などとしての再販売(Resell)を行うことでリチウムイオンバッテリーを有効活用するとともに、コストの低減を目指す。
EVの開発だけでなくバッテリーや充電器、インフラまで包括的にゼロ・エミッションに取り組む | 世界80以上の政府や会社と提携 | 11月末までに約2200店舗の日産ディーラーに充電器を配置予定 |
バッテリーの2次利用によりコスト低減を目指す | リーフではバッテリー以外でもリサイクル可能率を向上 |
■スマートグリッドの実現
EVによるスマートグリッド実現に向けた取り組みについても説明がおよんだ。リーフではEV専用の情報通信システムを全車に搭載すると言う。これは従来のカーウィングを利用した渋滞情報などの提供に加え、EVならではの機能として、残りの電気残量で走行可能な距離を視覚的にカーナビに表示したり、最新の充電スポット情報を自動で更新したり、また、電気が安くなる夜間を利用して充電するタイマー充電機能などを持たせたりしている。
これは、クルマを降りているときでも、車両の状態を確認したり操作したりできる機能も持つ。携帯電話やPCからバッテリーの充電状態の確認や、出発前にエアコンをオンにすることもできる。
こうした通信を活用すれば、自宅のPCや携帯電話から、充電状況を考慮した上でのEVカーシェアリング借りだしやタクシーの配車手配もできる。また乗車中は最寄りの空きがある充電スタンドを探したり、さらに進化すれば、そこから予約もできるようになるだろうとした。
さらにEVを一つのバッテリーと考え、また、再利用したバッテリーを各家庭で持てば、太陽光発電などによるエネルギーの自給自足が可能になると言う。
それら各家庭の電気を繋ぎ、ITサポートによってマネージメントすれば、より効率的なエネルギーの運用が可能となるとした。
EV専用の通信システムをリーフに搭載。EVならではのドライビングサポートを実現する | 通信により利便性の向上を目指す | |
通信で充電スタンドの混雑状況を把握したり、カーシェアリングの充電状況やタクシーの充電状況を管理できる | ||
EVのバッテリーや家庭用バッテリーを組み合わせることで電気の自給自足を実現 | さらにそれらを地域で繋ぐことでより効率的な運用を実現 | モビリティとエネルギーを繋いでスマートシティを完成させる |
■ニューモビリティの提案
EVは今までのクルマとは違った形での価値も提案できるとした。その背景として、高齢者や単身者世帯の増加を上げ、乗用車の使用実態を見れば近距離移動では平均乗員数は1.6人だと言う。
そうした実情を踏まえ、近距離・個人用途に適した小型モビリティとして公開されたのがNew Mobility CONCEPTだ。2人乗りの小型モビリティで、その可能性としては、高齢者や子供連れの外出のサポートや、電車などと組み合わせた活用、観光地でのモビリティとしての活用やカーシェアリングなども考えられると言う。
あくまでコンセプトモデルではあるが、出力は4kwと8kwが用意され、8kwモデルでは最高速75km/h、航続距離は100km程度だと言う。充電時間は200Vで4時間、100Vで8時間だが、実際の使い方としてはもっと短い距離での利用、つまり少し走っては少し充電するような使い方を想定しているため、急速充電機能は持たせていないとのこと。とかく一般道での利用を考えてしまうが、排出ガスをださないので、大きな施設の中での移動など、可能性はいろいろ考えられるとした。
(瀬戸 学)
2010年 11月 2日