日本EVクラブ、「第16回日本EVフェスティバル」開催 手作りからメーカー製まで、さまざまなEVが筑波で激走! |
日本EVクラブは11月3日、電気自動車(EV)の祭典「第16回日本EVフェスティバル」を茨城県 筑波サーキットで開催した。
北は青森、南は宮崎からやってきた改造EVがレースを行ったほか、会場にはメーカーによるEVなどの車両展示・試乗会が開催されるなど、参加者は1日を楽しんだ。
今年は、レースに18のチームが初参加。メルセデス・ベンツの「スマートEV」、BMW「MINI E」、日産「リーフ」、三菱「「i-MiEV」と4台のメーカー製EVも登場し、年々盛り上がりを見せている。
日本EVクラブ代表の館内端氏曰く「このイベントではあくまで市民が主役」と、EVにお金をかけて高性能にしても、レースを攻略できないようさまざまな仕組みができており、参加者の創意工夫が重要となるイベントとなっている。
■速さよりも正確さを競う「全日本電動美走選手権」
午前中最初のプログラムは、ガソリンレーシングカートをEVに改造した「ERK」(電動レーシングカート)で芸術性を競いあう、「全日本電動美走選手権」。ホームストレートに植木鉢とトンネルで作られた「美走リンク」と呼ばれるルートを走行する。速さではなく、正確さが評価ポイントとなる競技で、いわば「フィギュアスケート」のような競技。
後輪をパワースライドさせないと回りきれないほど狭い場所にパイロンが置かれているので、テクニックが必要となる。回りきれずにコースアウトしたり、トンネルと衝突したりするマシンが続出した。結果は、冷静に走行してみせたTeam GAIAの「enerace」が優勝した。
電動美走選手権 | ストレート上にトンネルとパイロン代わりに花の植木鉢がおかれる | 植木鉢の周りをくるくると回るにはパワースライドが必要 |
■バッテリー交換可能な「ERK 30分耐久チャレンジ」
続いてサーキットで行われたプログラムは、ERKによる「30分耐久チャレンジ」。
ERKには、DCブラシモーターで鉛バッテリー48Vの「ERK1クラス」、モーターは自由で鉛バッテリー72Vの「ERK2クラス」、鉛バッテリー以外を使用する「ERKスペシャルクラス」の3クラスがある。30分耐久チャレンジでは、ドライバーの人数やバッテリーの交換は無制限だが、バッテリー交換時はホームストレート上に用意されたピットで2分以上の停止が義務づけられている。
このERK、回転数の上昇とともに出力が上がるエンジン付きのカートとは異なり、スタートの立ち上がりから鋭い加速を見せる。ERK2クラスなら筑波サーキットを1分27秒011で走り、平均速度は85km/hと、なかなかの俊足の持ち主なのである。
ERK(電動レーシングカート) | ERKによる30分耐久レース | スタート直後は接触もなくスムーズにスタート |
静かな電気自動車なので、和太鼓による演奏を楽しみながらのレースとなる | レーシングカートを名乗るだけに並の乗用車より速い | バッテリー交換時には、ゴム手袋とゴーグルの着用が義務付けられている |
バッテリー交換が可能とあって電池切れで止まるマシンはほとんどなく、どのチームもレース終盤まで攻めの走りを見せていた。バッテリー交換作業も各チームで練習していたようで、マシンがピットインすると手際よくバッテリーを載せ替えていた。
ERK1クラスで1位となったのは、14周した神戸高専電気工学科の「山本和男研1号」(ベストラップ1分50秒510)。ERK2クラスはエナシースレーシングの「ODYSSEY EV KART」(1分38秒881秒)、スペシャルクラスのトップはハッスルおくぬき「ERKトニー」(1分48秒399)だった。
■音楽が流れるレース「74分ディスタンスチャレンジ」
午後はメインとなるイベント、手作りの電気自動車コンバートEVによる74分の耐久チャレンジが行われた。1周2kmのサーキットを74分で何周できるかを競うが、競技中は演奏時間74分のベートーベン「第九」が会場に流されるなど、静かなEVの特徴を生かした新しい感覚とレースとなった。
ドライバーの人数は無制限で、搭乗人数の多いチームには“いっぱい乗せたで賞”が贈られる。また、ピットイン5回以上、ピットストップ30秒以上の停止が義務づけられている。レース中のバッテリー交換、および充電は禁止(レース中以外でも許可のない充電は禁止)。また、レース前には、地球温暖化に関するクイズが出題され、正解の場合は周回数を加算、不正解の場合は減周されるなどのハンディキャップを設けている。
参加車両は、市販エンジン車を電気自動車に会員が自ら改造した「コンバートEV」。使用するモーター、バッテリーは自由だが、DCブラシモーター以外は1周減算される。レース中のバッテリー交換、充電禁止だ。
鉛バッテリーは、電池の総電力量が10kWh以上は1周減算のハンディを設け、10kWh未満は減算無し。鉛バッテリー以外のニッケル水素バッテリー、リチウムイオンバッテリー等は、電池の総電力量が9kWh以上は4周減算、9kWh未満は2周減算のハンディを設けた。車両重量は、コンバート前の車両重量の1.5倍まで。
今回このレースに初出場するのは、茨城オートパーツセンター、愛媛県EV開発センター、読売自動車大学校、チームEVあおもり、埼玉自動車大学校、KAIHO-Re927プロジェクト、Team Bolder、MAZ今津、チーム櫻星、久保田オートパーツ、Team GAIA、チームIWAKI、Team Fun-EVの13チーム。スタートグリッドには軽トラからスポーツカーまで、様々な種類の改造EV27台が並んだ。予選はなく、スタートグリッドはエントリー順となる。
74分の耐久レースなので、レース終盤になると電池を使い果たしてリタイアする車両が続出、レース終了間際までピットで待機して完走を目指すチームもいるなど、各チームいろいろ策を練っていたが、参加車両26台のうち完走できたのは15台となった。
レースを制したのは、東京都から参加したコスモウェーブチームの「EVマイティー」、ベース車両はスズキ「マイティーボーイ」で、周回数は35周であった。EVマイティはDCブラシモーターにリチウムイオンバッテリーを搭載、総電圧147.2V、総電力26.49kw/hと-4周のペナルティがありながらの優勝。また、コスモウェーブチームはレースに車両2台投入しておりもう1台の「EVカプチ」はレース終了直前で電池切れ、完走扱いにはなったがチェッカーフラッグを受けることができず、悲喜こもごもの結果となった。
2位の TEAM「いそずみ」EV-TOMORROWの走り | 3位の千葉県自動車総合大学校「Blue CATS-i」 | エスティマハイブリッドによるレース観覧車が用意された |
レース中のマシンに近づいて見られるので迫力がある | コース裏側にあるストレート | チェッカーを受けるEVマイティー |
■片山右京氏が最速EVデモンストレーションに参加
イベントの締めくくりとしてEV最速チャレンジが行われ、会場には片山右京氏、飯田章氏、桂伸一氏の3名が登場した。
片山氏は横浜ゴム有志により製作されたERK「ADVAN E-001」を、飯田章氏が市販EV「TESLAロードスター」を、桂伸一氏が、中学生EV教室で製作された電気フォーミュラーカー「サイド・バイ・サイド」をそれぞれドライブ。チャレンジ結果は、片山氏が1分6秒205、桂氏が1分9秒910、飯田氏が1分11秒391のタイムをそれぞれ記録した。
■表彰式
イベントの最後には各レースの表彰が行われ、表彰の最後には一番イベントを盛り上げたチームとして、京都府から参加した「TEAMいそずみ」に「あんたが大賞」が贈られた。
日本EVクラブ代表の館内氏は「古いクルマを丁寧に乗っていて、なおかつベーシックなお金のかからない方式で見事2位を獲得しました。モーターやバッテリーは進化するかもしれませんが、EVクラブが目指している“使う側の工夫が大事だよ”ということを示してくれた」と受賞理由を述べた。
最後に館内氏が挨拶をし、館内氏は「16回やってきて今日も無事終了しましたが、今回が一番うれしい」と感想を語り「今回は新しい人の参加により、フレッシュで緊張感があってよかった、参加が増えたことで大会も盛り上がりを見せてくれました、カーメーカーのEVの種類が増え、そのうち世界のEV大集合になるのかな? 16年やってきた誇りが私を幸せにしてくれたんだと思います」と述べてイベントを締めくくった。
イベントを一番盛り上げたチームに贈られる「あんたが大賞」は、京都府からEV-TOMORROWで参加したTEAM「いそずみ」が受賞した | 日本EVクラブ代表の館内端氏 |
(椿山和雄)
2010年 11月 5日