日本EVクラブ 、「中学生電気フォーミュラカー教室」開催 電気自動車の構造や原理について学ぶ |
中学生電気フォーミュラカー教室には小中学生25名が参加した |
2009年6月12日開催
日本EVクラブは6月12日、「中学生電気フォーミュラカー教室」を、東京都世田谷区成城にある都立総合工科高等学校で開催した。
中学生電気フォーミュラカー教室は、小学6年生および中学生を対象に、自動車と環境・エネルギー問題を考える体験学習型のワークショップ。電気フォーミュラーカー「電気サイド・バイ・サイド」の組み立て実技と試乗がこのワークショップの主たる目的で、全3回の授業が用意される。今回の教室は第1回目にあたり、地球環境・エネルギーについての講義や、モーター/バッテリーに関する講義、フォーミュラカー「電気サイド・バイ・サイド」の紹介、ホンダのハイブリッドカー「インサイト」の試乗などが行われた。
日本EVクラブ代表の舘内端氏 |
はじめに、日本EVクラブ代表の舘内端氏がEV(電気自動車)についての概要説明を行った。講義ではEVによる1充電航続距離の世界新記録を達成した日本EVクラブ製作のミラEVを例に挙げ、モーター、電池、インバーターなどEVに必要な部品の紹介を行うとともに、ミラEVは1kmあたり2.4円程度の電気代しかかからないこと、近年は電気自動車のインフラが整い充電設備がさまざまな場所に増えつつあることなどを紹介した。
日本EVクラブの椛澤明氏 |
次に、日本EVクラブの椛澤明氏は、「モーターの原理と構造」についての講義を開いた。モーターとは車載の電池を動力源として駆動する電気エネルギー変換装置のことで、電気モーター、超音波モーター、光モーター、分子モーターなどさまざまなモーターがあるが、「そのなかでも電車、洗濯機、冷蔵庫に用いられる電気モーターが主役」とし、その電気モーターにはDCM(直流モーター)、PM(永久磁石形同期モーター)、IM(誘導モーター)、SRM(スイッチトリラクタンスモーター)といった種類があり、中でも効率に優れるPMが「電気自動車、ハイブリッド車(HV)、燃料電池車(FCV)での主流」と解説。
そのモーターの効果について、ホンダ「シビック ハイブリッド」を例に挙げ、効率のよいモーターを組み合わせることで、より低回転からトルクを引き出せること、そして燃費を1.8~2.0リッターエンジンより燃費を約2倍に向上させることが可能になったことを紹介した。
また、ホンダの2.0リッター i-VTECエンジンと燃料電池電気自動車「FCXクラリティ」のパワーユニットを比較した場合、前者の重量が133kg(エンジンとトランスミッション)で出力110kWなのに対し、後者は64kg(モーターとインバーター)で出力100kWであることから、モーターはエンジンよりも効率よく仕事ができるとし、「自動車用モーターは軽くて力持ち」と、その特徴を述べた。
最後に、太陽光発電、水力発電、風力発電、地熱発電などCO2を増やさない再生可能エネルギーを電気自動車の動力に用いることで、「地球の将来は明るく楽しいものになる」と述べ、講義を終えた。
「並列シートのフォーミュラカーは世界初」と舘内氏 |
一通りの講義を終えた後、電気サイド・バイ・サイドの紹介、電気サイド・バイ・サイドに使われるモーターの組み立て体験会、インサイトの試乗会が開かれた。
電気サイド・バイ・サイドは、狭角V型2気筒エンジンをドライバーの横に搭載した、シングルシーターのフォーミュラカー「ホンダ サイド・バイ・サイド」をベースにしたモデルで、エンジンの代わりに三洋電機のリチウムイオンバッテリー「UR18650W」を2000本、に約100PSを発生するモーターを搭載。さらに本来エンジンがあった位置に助手席を装着し、2人乗りを可能にした。車重は約100kgで、最高速度はおよそ180km/h。舘内氏によると「前後シートの2人乗りフォーミュラカーはあるが、並列シートのフォーミュラカーは世界初」だと言う。
電気サイド・バイ・サイドに使われている4つのモーター(MF5型)のうち、1つを組み立てる体験会も行われた。子供たちはモーター内部に使われる回転子永久磁石の磁力の強さに驚きながら、指導員の元ゆっくり、丁寧に作業をこなしていた。
この電気サイド・バイ・サイドを教材とし、第2回ではサイド・バイ・サイドに搭載しているバッテリーの紹介や、サスペンションの組み立てを体験、第3回では筑波サーキット(コース1000)で助手席に座っての体験試乗会が行われる。
並列シートのフォーミュラカー、電気サイド・バイ・サイド |
(編集部:小林 隆)
2010年 6月 14日