日産、クラストップの燃費15.4km/Lを実現した新型「セレナ」発表会
アイドリングストップからの再始動は世界最速0.3秒

新型セレナを前にプレゼンを行う志賀俊之COO

2010年11月8日開催



 日産自動車は11月29日に発売する新型「セレナ」の発表会を11月8日、本社内のNISSANホール/ギャラリーで開催した。発表会では同社COOの志賀俊之氏、開発担当者の角智彰氏によるプレゼンテーションが行われたほか、セレナのCM曲「風と未来」を担当したいきものがかりが特別ゲストとして登壇した。

志賀俊之COO

 詳細なグレード体系と価格については関連記事に譲るが、フルモデルチェンジしたセレナは、従来同様5ナンバーサイズに収まるボディーサイズと、直列4気筒2.0リッターエンジンを搭載するものの、エンジンを直噴化。20X以上のグレードでは、「ECOモーター」式のアイドリングストップ機構を備えることで、2リッタークラスの8人乗り(3列シート)ミニバンとしてはトップとなる、15.4km/L(10・15モード、2WD[FF])の低燃費を実現している。

 発表会において同社COOの志賀俊之氏は、セレナが2007年から2009年までミニバンの販売台数3年連続1位となっていることを紹介し、この新型セレナにおいてもトップを狙うことを宣言。「セレナは、家族みんなが快適に過ごせることをコンセプトに開発した」と言い、その仕上がりに自信を見せた。


セレナ ハイウェイスター(2WD)

商品企画本部 商品企画室 セグメント・チーフ・プロダクト・スペシャリスト 角智彰氏

商品コンセプトは“家族のためのイチバンミニバン”
 セレナの詳細については、商品企画本部 商品企画室 セグメント・チーフ・プロダクト・スペシャリストの角智彰氏が解説を行った。角氏は「新型セレナの開発は、従来のセレナがユーザーから高い評価を得ていた部分はそのままに、さらなる進化をさせた」と言い、時代の要請に応えてエコという要素を強化したことにあると述べた。

 商品コンセプトは“家族のためのイチバンミニバン”。家族のための“イチバン”であるために、デザインも従来の“ハコ=ミニバン”からの脱却を目指したと言う。家族を優しく包み込むカプセル“Space Capsule”をイメージしてエクステリアデザインを行い、外洋クルーザーのアッパーキャビンをイメージしてインストルメントパネルのデザインを行っている。Aピラーを従来型より100mmほど前進させ、Aピラー直後の“三角窓”を大きくし、“パノラミックフロントビュー”と呼ぶ視界を実現。フロントウインドーの長さは135mm長くなっていると言う。

 視界確保のためにフロントサイドウインドー前方のウエストラインを下げたデザインはそのままに、従来型では引き残しがあり全開とならなかったウインドーが全開となったほか、全開とならなかったために取り付けられていたサイドグリップも廃され、さらなる視界向上が図られている。

セレナの変遷。初代は脱キャブオーバーパッケージを図った。国内累計販売台数100万台を超える、大ヒットシリーズとなっている開発コンセプトは“家族のためのイチバンミニバン”デザインキーワードは“Space Capsulu”。家族を包み込むフォルムをテーマとしている
パノラミックフロントビューと呼ぶ、フロントまわりの眺め。外洋クルーザーのアッパーキャビンをイメージ新型セレナの3つのアピールポイントアピールポイント1。広い室内空間。競合S車、N車と比べて広い室内空間を実現
アピールポイント2。使いやすさ。ワンタッチオートスライドドア(グレートにより装備)と、その開口面積子供を乗せることを考慮して、2列目にロールサンシェードを全車標準装備3列目シートも改良。格納時のシート高を低くして、後方視界の改善を図っている
エコ関連の機能。エコ運転のレベルに応じて、さまざまな装備を用意ECOモーター式アイドリングストップ。回生充電機能を持つオルタネーターにより、エンジン再始動を行う。再始動時間は、世界最速の0.3秒アイドリングストップ機構などにより、燃費は2WDで15.4km/L。マーチ、エクストレイル、フーガ ハイブリッドに続くピュアドライブ第4弾

 パワートレーンに関しては、2WD(FF)車、4WD車とも新開発の直噴直列4気筒2.0リッターの「MR20DD」エンジンとCVTを搭載。MR20DDは、直噴化により低燃費とトルクの向上を図っているほか、吸排気とも可変バルブタイミングコントロール機構のCVTC(Continuous Valve Timing Control)が装備され、各部の低フリクション化とともに低燃費に寄与している。

 さらに20X以上のグレードでは、アイドリングストップ機構を搭載。ECOモーター式と呼ばれるこのアイドリングストップ機構は、減速時の回生充電機能を持つオルタネーターを兼ねるECOモーターによりエンジン再始動を行うもので、エンジン再始動時間は世界最速の0.3秒だと言う。

 これらにより、10・15モード燃費は、アイドリングストップ機構搭載車で15.4km/L(2WD)と14.4km/L(4WD)、アイドリングストップ機構を搭載しない20Sでも14.4km/L(2WD)と13.4km/L(4WD)を実現しており、先代セレナの13.2km/L(2WD)、12.2km/L(4WD)より向上している。

 最高出力・最大トルクは2WDと4WDで異なり、最高出力は2WDモデルが108kW(147PS)/5600rpm、4WDモデルが106kW(144PS)/5600rpm、最大トルクは2WDモデルが210Nm(21.4kgm)/4400rpm、4WDモデルが207Nm(21.1kgm)/4400rpm。

直噴のMR20DDガソリンエンジン吸排気バルブにCVTCを備える。先代は吸気バルブ側のみだった
直噴化のため、シリンダーヘッドデザインが変更されている。圧縮比は11.2補機類の駆動ベルトは1本。右上がエンジン再始動などを司るオルタネーターオルタネーターをシリンダー側から見る
MR20DDエンジンの解説パネル直噴化によるシリンダーヘッドデザインの違いCVTCは吸排気バルブに装備する
エンジンルーム内に収まるMR20DDエンジン左下に見えるのがECOモーターとなるオルタネーター反対側にはバッテリーが収まる。バッテリーもアイドリングストップに対応したもので、容量は95Ah。特性もアイドリングストップ車用に調整し、エンジン始動時にバッテリーの性能を確認する。そのため、社外品など特性のわるいバッテリーに交換すると、アイドリングストップが働かなくなると言う

 このクラスのミニバンで気になるのは、2列目シート、3列目シートの使い勝手。2列目、3列目の乗り降りに用いる両側スライドドアは、開口幅802mm、開口高1308mmと開口部を拡大し、クラストップの広さを実現。20Xでは助手席側にワンタッチオートスライドドアを(20Sではオプション)、20Gでは両側ワンタッチオートスライドドアを(20X、ハイウェイスターではオプション)標準装備している。

先代同様両側スライドドアを装備。グレードによって異なるが、ワンタッチオートスライドドア機構を持つ

 3列目シートは従来同様の両側跳ね上げ式だが、新たにツインリンク機構により、格納時のシート高を従来より175mm低くし、後方視界を確保。格納時に必要な力もガスステーを使ったことで低減しており、より容易に格納できるようになった。また、3列目シート格納時のシート高が低くなったことで、自転車積載時のハンドル干渉を避けることができ、2名乗車時(2列目、3列目格納時)であれば、26インチサイズの自転車を4台積載できる。

 これら大きな変更点を角氏は「新型セレナのアピールポイントは、“乗ってひろひろ”“使ってラクラク”“エコでわくわく”」と表現。自信を持って新型セレナを市場投入すると述べた。


セレナの3列目シート背もたれを倒し片手で簡単に持ち上がることができる
格納時のシート高も下がっている3列目両側、2列目シートを格納すると、自転車が4台積める4台積んでも、若干の余裕があるように見える
3列目シート。他車では床下格納式もあるが、それでは大人が乗りづらいシートとなるため、跳ね上げ式を採用。この方針は先代セレナから変わらないと言う2列目シート1列目シート
インストルメントパネル。視線移動を小さくするため、メーターパネルを上方奥に配置したステアリングホイールステアリングホイール位置やシート高などにもよるが、メーターパネルは、このような位置に見える
この新メーターパネルはマルチグラフィックアッパーメーターと呼ばれる。中央にデジタル表示の速度計とメーター内ディスプレイ、左に回転計、右に瞬間燃費や平均燃費などを示すエコドライブナビゲーターを配置回転計などのある左部右部のエコドライブナビゲーター
シフトレバー。エンジンのスタート・ストップスイッチはこの位置にフロンドサイドウインドー。ウインドー全開時に、ドア内にすべて収まるようになったアイドリングストップ機構搭載車には、リアゲートに「PURE DRIVE」のバッヂが付く

 セレナ発表会の会場には、同時にモデルチェンジしたオーテックジャパンのカスタムカー「セレナ ライダー」、福祉車両「セレナ LVシリーズ」も展示。特に福祉車両のセレナ LVシリーズは、福祉車両として最量販車種となるため、助手席スライドアップシート装備車など5種類をラインアップしている。

セレナ ライダーセレナ LVシリーズ助手席スライドアップシート
車いすのまま乗り降りができるリフターを装備車内には大型の手すりも装備する2列目シートの乗り降りを楽にする格納式のサイドステップ。大型の格納式サイドステップ装備車もある

CM曲はいきものがかりの「風と未来」
 発表会の後半は、会場をNISSANギャラリーに移し、特別ゲストとして、セレナのCM曲「風と未来」を担当したいきものがかりが登壇。いきものがかりは、ボーカルの吉岡聖恵さん、水野良樹さん、山下穂尊さんの3人によるバンドで、神奈川県厚木市などで音楽活動をスタート。日産のスタッフはいきものがかりを、「国民的な人気アーティスト。メンバー一人一人の生き方や音楽性などにセレナとして共感し、楽曲製作を依頼した。日産の開発拠点のある厚木の路上から音楽活動をスタートしたいきものがかりに関しては、デビュー以来注目していた」と紹介した。

 作詞・作曲を担当した山下さんは、「今回、お話をいただいてから楽曲を作った。自動車のCMに使われる曲ということで、疾走感や前向き感を意識して入れている。実は実家の車がセレナで、高校時代から乗っていた。両親にセレナのCM曲を担当することになったと話したら、とても喜んでくれた」とセレナとの浅からぬかかわりについて紹介。

 ボーカルの吉岡さんは、「いきものがかかりは、老若男女の人たちが聞いてくれたらうれしいなと思って活動してきた。セレナも老若男女の人たちに向けて作られていると言うことで、目指すところが一緒だなぁと思った。セレナに乗りながらこの曲を聞いてくれたらうれしいなと思います」と世界観の共通性について触れ、リーダーの水野さんは「僕らのライブは家族連れのお客さんが多い。セレナも家族連れの車ということで、本当に縁があったと思う」と言い、神奈川県出身のバンドとして、神奈川にゆかりのある日産自動車と仕事ができることをうれしく思うと語った。

 この「風と未来」は、11月3日に発売された初のベストアルバム「いきものばかり~メンバーズBESTセレクション~」にも収録されており、現在「いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! 2010 ~なんでもアリーナ!!!~」というツアーを行っている最中。風と未来は、ツアーでのお客さんの反応もよく、数多く歌っていきたいと言う。

NISSANギャラリーでは、新型セレナのCMが上映された日産の中村史郎CCO。いきものがかりを「セレナの世界観を共有できるアーティスト」と紹介楽曲について語るいきものがかり
リーダーの水野良樹さんボーカルの吉岡聖恵さん作詞・作曲を担当した山下穂尊さん

 

(編集部:谷川 潔)
2010年 11月 9日