プリウス PHVが電気をもらいながら日本縦走
日本グッドイヤー「エコミッション2010」リポート

エコミッション2010で仙台市立片平丁小学校を訪れたプリウスPHV

2010年11月9日



 日本グッドイヤーは現在、トヨタ「プリウス PHV(プラグインハイブリッド)」を使って全国で電気をもらいながら日本列島を縦断する「エコミッション2010」を行っている。大きく九州編、本州編、東北・北海道編に分けて行っているが、すでに九州編、本州編を終え、残る東北・北海道編がスタートした。

 クルマを運転するのはTeam ACP代表の横田紀一郎氏。横田氏と言えば日本人として初めてパリ-ダカールラリーに参加した人物であり、初代プリウスでは北米大陸、ヨーロッパ、サハラ砂漠を走破。2代目では北京-ウランバートルラリーと、ユーラシア大陸を横断する北京-パリラリーに出場し、南米大陸を縦断。現行モデルの30型プリウスではオーストラリア大陸を走破した人物。そして今回のエコミッション2010では、未発売のプリウス PHVで日本を縦断しようというわけだ。

 横田氏は、1997年の初代プリウス発表の現場にいて、その存在に背筋がぞっとしたと言う。「このクルマは僕が運転してるんじゃないんです。僕が踏んだアクセルに対してクルマが今はモーターがよいのかエンジンを使うべきかを判断して走らせている。みんな燃費にばかり話題を持って行ったが、そうじゃない。これは頭脳を持ったクルマ、全くの新種なんです。だから僕はこのクルマが現在のインフラに本当に耐えられるのか、試してみようと思った」と横田氏。当時環境に対する運動が活発になっていたころで、中でももっとも進んでいたアメリカのその現場を、実際にプリウスで巡ってみようというのが始まりだったと言う。

 そして今回のエコミッション2010。第3幕の東北・北海道編は11月5日に拠点である東京をスタートし、8日に茨城県の水戸にある「Gazoo村 里美」を訪問。筆者が合流した9日には宮城県に入り、仙台市内にある「仙台市立片平丁小学校」でプリウス PHVを充電させてもらえるよう交渉していた。

 現在の法律では電気を二次的に売買することが禁止されている。そのためお金を払って電気をもらうということはできない。横田氏から同校の西辰三校長に「電気くださ~い」と、お約束の文句でお願いして電気を分けてもらうことに。

いよいよ東北・北海道ステージがスタートし仙台に来たエコミッションプリウスPHV運転するのは横田紀一郎氏仙台市内を抜け小学校を目指す。途中に見つけたのは「ホテル プリウス」の看板
仙台市立片平丁小学校に到着電気の売買ができないことを説明し、西辰三校長に「電気くださ~い」とお願い家庭科室からひっぱってきたコードで給電を始める校長
充電中のPHVのエネルギーモニター。さらにダッシュボード上のランプが点灯する充電コネクターの途中についているのは、使用している電気の量を見られるモニター。今回エコミッションのために付けたもの100Vのコンセントに繋いでいるが、実際の電圧は94V程度。延長コードなどを使うとさらに電圧が下がることもあると横田氏
そのほかにも使用した電気の値段や電気の量、CO2も表示できる

 さらに充電している間、同校の1・2年生を対象に「飛行船教室」も開催。これは飛行船を通して環境問題について学ぼうというもの。タイヤメーカーとして知られるグッドイヤーだが、実は飛行船のエンベロープと呼ばれるヘリウムガスを貯めるバルーンの部分もグッドイヤーが開発しているのだ。

 飛行船が飛ぶのに必要なエネルギーは飛行機の約16分の1で、地球にやさしい大型輸送の手段として再注目されているのだと言う。この飛行船教室に、環境冒険家として横田氏も登場。ラリー中の空気圧調整の写真を使って、エコドライブのための注意点を説明したり、南米大陸縦断した際に立ち寄ったマチュピチュの水道の写真を使って水の大切さを説明したり、身近なところでできるエコについて分かりやすく話していた。

 さらにラジコンで動く全長4mのミニチュア飛行船を飛ばすと、生徒達は一気にヒートアップ。自分たちの頭上ギリギリをゆっくりと飛ぶミニチュア飛行船に、少しでも触れようとぴょんぴょん飛び跳ねている姿が印象的だった。

体育館では「みんなの飛行船教室」も開催横田氏も講師として身近なところからできるエコについて語ったミニチュアの飛行船も飛ばした。届きそうで届かない位置を飛ぶので子供達も手を伸ばして大はしゃぎ

 授業のあとの休憩時間には、校庭で充電しているPHVを開放。「クルマ離れ」などという言葉がウソのようにあっという間に周囲には生徒の人だかり。シートに座ろうと行列を成していた。また、エンジンルームをのぞき込む生徒からは「このクルマはエンジンはないの?」、充電コネクターを目の前にした生徒からは「ビリビリしない?」など、子供ながらの屈託のない質問が飛び交っていた。

休憩時間になると、充電中のPHVの周りに生徒達が集まってきた運転席に座ろうとすぐに行列ができていた目新しいクルマに皆興味津々といった様子
PHVの充電について熱心に質問する子供もエンジンルームを開けると「モーターはどこ?」などと質問が飛ぶ過去のオーストラリア大陸や南米大陸走破の模様のパネルも用意したが、こちらも熱心に読み込んでいた

 3時間程度の充電を終え、エコミッションは再び出発。翌日には女川町にあるバイオディーゼルバス「シーバル号」や、塩竃市のエネルギー好循環形成事業などを訪問した。週末となる11月13日、14日には仙台トヨペット本社にてイベントを開催するので興味のある人は足を運んでみてはいかがだろうか。

 翌週には青森から北海道に上陸し、その週末にもイベント参加の予定。翌22日に江別市立東野幌小学校への訪問を最後にミッションを終了する予定だ。

小学校を出発したプリウスPHVは青葉城跡にも立ち寄ったちょうど紅葉が見ごろを向かえていた青葉城跡片平丁小学校を眼下に見下ろすことができた

(瀬戸 学)
2010年 11月 11日