エヴァンゲリオンカラーのFN09が登場した「トヨタ モータースポーツフェスティバル 2010」 中嶋一貴選手がドライブ |
秋晴れの中、富士スピードウェイで開催された「トヨタ モータースポーツフェスティバル 2010」 |
11月28日、トヨタ自動車のモータースポーツファン感謝イベント「トヨタ モータースポーツフェスティバル 2010」(以下、TMSF)が、今年も富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で開催された。
TMSFは、モータースポーツシーズン終了後に行われているイベントで、今年で10回目。トヨタ所属のレーシングドライバーらが登場してのトークショーが行われたり、トヨタの歴代レーシングカーが展示されたり、実際にレーシングコースを走るデモ走行などが行われたりした。
レーシングコースでは、デモ走行のほか、レーシングドライバーが運転するマシンに同乗する「サーキットタクシー」、観光バスでレーシングマシンの走行を間近で見られる「サーキットサファリ」などが行われ、グランドスタンド裏に設置されたステージでは、ドライバーによるトークショーなどが開催され、多くのファンを楽しませていた。
トヨタのSUPER GTマシンや、トヨタエンジンを搭載するフォーミュラ・ニッポンマシンが混走 | SUPER GTでもおなじみのサーキットサファリ | |
レーシングドライバーの運転を助手席で楽しめるサーキットタクシー | トヨタ 2000GTも走行。写真はレーシングバージョン | トヨタ 7 |
■豊田章男社長、小林可夢偉選手らが登場して盛り上がったウェルカムセレモニー
サーキットサファリやサーキットタクシー、各種のデモ走行の後、グランドスタンドに詰めかけたファンに対するウェルカムセレモニーが行われた。ウェルカムセレモニーでは、この日のイベントに参加する全レーシングドライバーが登場し、赤絨毯の上に整列し、詰めかけたファンに手を振って挨拶した。このレーシングドライバーの中には、Gazoo Racing所属のレーシングドライバー“モリゾウ”こと代表取締役社長の豊田章男氏も含まれており、この日はレーシングドライバーとして参加していた。
また、TDP(トヨタ・ヤング・ドライバー・プログラム)所属の中嶋一貴選手と小林可夢偉選手の2人のF1ドライバーも登場。小林可夢偉選手は、現在BMWザウバーF1チームのレースドライバーだが、依然としてTDPのドライバーとしての契約が続いており、トヨタのレーシングドライバーの一員なのだ。
このほか、中嶋悟監督や鈴木亜久里監督、星野一義監督など、これまでのTMSFの参加メンバーとは異なる人も招かれていた。中嶋悟監督は現役時代F1に行く前にはグループCカーの全日本耐久選手権で、トヨタ・トムスのCカーをドライブ、鈴木亜久里監督も同様で、ルマンでトヨタのCカーを走らせたことがあり、星野一義監督のチームは今年のフォーミュラ・ニッポンでトヨタエンジンを使用してチャンピオンを獲得した。トヨタのモータースポーツ活動の幅広さがうかがえる部分だった。
ドライバーや監督がずらりと並んだウェルカムセレモニー | ほかのドライバーと歓談するモリゾーこと豊田章男社長(左から4番目) |
日本のレースシーンを彩るスター監督の面々 | 脇阪寿一選手(中央左)と会話中の小林可夢偉選手(中央右)。可夢偉選手の隣は中嶋一貴選手 |
トヨタに関係するドライバーや監督などが整列し終わった後、トヨタモータースポーツを統括する山科忠・トヨタ自動車専務取締役が登場し、ファンに挨拶を行った。山科氏は「今年でこのTMSFも10回目と節目を迎えた。これもひとえにファンの皆様が支えてくれたおかげ。ファンの皆様にはぜひ一日楽しんでいってほしい」と言い、グランドスタンドに詰めかけたファンに感謝の意を述べた。
開会の挨拶を行う山科忠専務取締役 | 多くの観客が詰めかけた | 山科忠専務取締役を囲んで、全員で記念写真 |
■レーシングコースをNASCAR、エヴァンゲリオンカラーのFN09などが激走
TMSFの楽しみは、普段遠くでしか見ることのできないレーシングドライバーと近くで会えることだ。通常のシリーズ戦では、パドックパスを買わなければ近づけないピットまで無料で行くことができるため、お目当てのドライバーにサインをもらうことも割と簡単にできる。
もう1つの楽しみは、レーシングカーを普段のレースより間近で見たり、シリーズ戦では見られないレーシングマシンの走行や展示を見られること。今回のTSMFでも、トヨタF1の歴代の車両やWRCのラリーカー、グループCカー、NASCAR、フォーミュラ・ニッポン マシン、SUPER GTマシンなど多数の車両が展示されており、近くまで寄ることが可能になっていた。
TMSFでは、ピット部分を可能な限り開放。普段よりも近い位置でレーシングマシンを見ることができた | ピットビル屋上には歴代のF1マシンやWRCマシンを展示 | レーシングドライバーにサインをもらうことも比較的容易。写真はフォーミュラ・ニッポンとSUPER GTに参戦中の平中克幸選手 |
各車両は展示されているだけでなく、そのうちの何台かは実際にレーシングコースを走ってみせた。今回のTMSFでは、SUPER GT、フォーミュラ・ニッポン、NASCARといった現役のレーシングカーだけでなく、1990年代にWSPCやJSPCを戦ったグループCカーのTS010、1960年代のニュートヨタ7などの懐かしいレーシングカーも実際にコースを走った。さらに、特別デモとしてエヴァンゲリオン試作初号機カラーに塗られたFN09を中嶋一貴選手が走らせ、こちらも大きな注目を集めた。
■サーキットサファリは異次元の体験
冒頭でも述べたように、レーシングコースではファンの体験イベントとしてレーシングドライバーの助手席に乗って走ることができるサーキットタクシーや、レーシングカーが走る中をお客さんを乗せたバスが走るサーキットサファリが午前と午後にそれぞれ行われた。
今回筆者は午後のサーキットサファリに体験できる機会を得たので、その模様をお届けする。サーキットサファリは、TMSFだけでなく、フォーミュラ・ニッポンやSUPER GTのレースでも開催されているので、その記事などを目にしたこともあるだろう。今回のTMSFでは先着順の募集となっており、参加費用は2000円であった。
TMSFのサーキットサファリでは、観光バスに乗って、サーキットを1周する。このときバスにはレーシングドライバーないしはチーム監督が1人同乗する。今回筆者の乗ったバスには、RACING PROJECT BANDOHの片岡龍也選手が同乗しており、車内マイクを利用してサーキット走行時のポイントなどを説明してくれた。さらに無線を利用して、SUPER GTで片岡選手の相棒となっているコース走行中の織戸学選手とも会話するなどの工夫が凝らされていた。
実際にバスに乗ってみてびっくりしたのは、とにかくマシンが近いことだ。すぐ外にSUPER GTやフォーミュラ・ニッポンのマシンが走行しており、手を伸ばせば届きそうな距離だ(もちろん危ないので、バスから手を出したりしてはいけない)。解説の片岡選手も言っていたが、フォーミュラ・ニッポンのマシンとSUPER GTマシンの速度差が想像以上であることにも驚かされた。
ファンイベントのため、本気の走行ではないということもあると思うが、追い越されるときにSUPER GTのマシンはジワジワと抜いて行くのに対し、フォーミュラ・ニッポンのマシンは近づいて来たなと思ったら、あっという間に抜いていき、すぐ見えなくなってしまう。双方のマシンを楽しめ、しかも速度の違いを体感できるという意味で、TMSFのようなイベントでのサーキットサファリは興味深かった。
横を駆け抜けるマシンを見ている間に、サーキットの1周(約6km)はあっという間に終了。今回は、バスがコースの右側を走り、レーシングカーは左側を走っていたので、左側の席のほうが、より楽しめていたようだ。
■盛りだくさんのプログラムが組まれていたTMSF
このほかTMSFでは、レーシング仕様のヴィッツによる特別レース「Vitzスペシャルラウンド」、D1参加者によるドリフト走行デモ「ドリフト エクストリーム」、トヨタ系のSUPER GTマシンによる本気バトル「SUPER GTスーパーバトル」をレーシングコースで開催。
そのほか、グランドスタンド裏のトークショーや、ショートサーキットでの「ドリフト同乗体験」、モビリタでの「安全運転講習」など、富士スピードウェイをフルに使用してのイベント開催を実施。同時刻に開催しているプログラムも多く、すべてを楽しむことは不可能なほどのプログラムが組まれていた。TMSFを訪れたファンは、秋の穏やかな日差しもあって、このイベントを楽しむことができたのではないだろうか。
なお、グランドスタンド裏のトークショーや、ショートサーキットのイベントなどについては、別記事で掲載する。
(笠原一輝/Photo:清宮信志)
2010年 12月 2日