スズキ、若者ターゲットの“新感覚”軽ワゴン「MRワゴン」発表会 プラットフォーム、エンジン、デザインすべてを刷新 |
スズキは1月20日、同日発売した軽乗用車「MRワゴン」の発表会を都内で開催した。
MRワゴンは、「斬新で個性的なデザイン」「優れた基本性能」「広くて使いやすい室内空間」を特徴とし、2001年にデビューした。
今回のフルモデルチェンジにおいては、20代の若者をメインターゲットに「低燃費、広々空間、個性あふれるデザインで新しい価値と魅力を兼ね備えた新感覚軽ワゴン」をコンセプトに開発が行われた。
新開発プラットフォームを採用したMRワゴンは、自然吸気エンジンを搭載する「G」「X」と、ターボエンジンを搭載する「T」の3グレード構成で、それぞれ2WD(FF)と4WDをラインアップする。
■MRワゴン T
MRワゴン T(2WD)。ターボエンジンを搭載する。ボディーカラーはパールメタリックカシミールブルー |
■MRワゴン X
MRワゴン X(2WD)。自然吸気エンジンを搭載。ボディーカラーはアーバンブラウンパールメタリック |
スズキ会長兼社長 鈴木修氏 |
■新開発エンジンは補助デバイスなしで25.5km/Lを実現
発表会では、スズキの会長兼社長の鈴木修氏が始めに登壇。エコカー補助金が終了した10月以降、販売台数は厳しい状況にあるとし、「『日本丸』はどこにいくんだという状況だが、なんとか頑張って前年を上回る成績にしたい」と述べたほか、MRワゴンについては、今回16年振りに刷新した新開発エンジンを搭載したこと、これまで820kgだった車両重量を790kg(G、2WD車)に軽量化できたことなどを紹介。
また、新開発エンジンについては、燃費向上を目的とした補助デバイスなしで25.5km/L(自然吸気エンジン)を達成しているが、アイドリングストップを搭載することも視野に入れて開発したことを明言しており、今後同エンジンを使ったモデルにアイドリングストップを備えたモデルが出ることを示唆した。
スズキ取締役 専務役員 四輪技術本部長 本田治氏 |
■メインターゲットは20代の若者
次に、商品概要についてスズキ取締役 専務役員 四輪技術本部長 本田治氏が説明を行った。MRワゴンの特徴は以下の4点。
・「若者の感性に響く個性的なスタイリングとシンプルかつモダンなインテリア
・燃費、走り、静粛性を大きく進化させた新開発R06A型エンジン
・新プラットフォームが生み出す、ゆとりのパッケージング
・自分らしく使いこなすために、進化した基本性能・安全性能
今回新たに開発された「R06A型」エンジンは、シリンダーブロック、シリンダーヘッドなど基本構造を一から設計し直した。R06A型は、従来の「K6A型」からロングストローク化したほか、流れを強める吸気ポート形状、燃料と空気の混合を促進する燃焼室形状によって、燃焼速度・燃焼タイミングを最適化。また、細径のプラグの採用により最適な冷却経路を確保したことなどで、圧縮比11.0(自然吸気)という高い燃焼効率を実現した。
また、シリンダーブロック周辺の剛性を高めるとともに、CVTや補記類との締結剛性を上げたことで、締結部のねじれから発生する音を大幅に低減したほか、全回転域でエンジン音を2~4dB低減させたと言う。
そのほか、クランクシフトの細軸化、バルブシステムの構造やレイアウトの見直しなどで、自然吸気エンジンの重量を51.9kg(従来モデルより-1.5kg)、ターボエンジンを55.7kg(同-4.5kg)と、クラストップレベルの重量にすることができた。
これらにより、「燃費性能は従来より約15%向上」(本田氏)し、自然吸気エンジンの10・15モード燃費は25.5km/L、ターボエンジンは22.5km/Lを実現。ターボエンジンの4WD車はエコカー減税(環境対応車普及促進税制)により自動車取得税と自動車重量税が50%減税、そのほかのモデルは75%減税されることになる。
R06A型エンジンの特徴 | 燃焼室まわりを新設計。自然吸気エンジンは吸気/排気ともにVVT(Variable Valve Timing)を備える | 軽量化も徹底的に行われた |
R06A型ターボエンジン | |
R06A型自然吸気エンジン | |
従来モデルのK6A型とR06A型それぞれのピストン、コンロッドを展示。ピストンは96g、コンロッドは336gの軽量化に成功している | スパークプラグはK6A型よりも細身のものを採用 |
ボディーサイズは、3395×1475×1625mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2425mm。従来モデルよりもホイールベースは65mm延長されるとともに、室内長を2120mm(従来比+180mm)、前後乗員間距離を1000mm(同+155mm)とした。また、Aピラーの角度を立たせたこと、インストゥルメントパネルの内部構造を見直し、オーディオを前方に配置したことなどにより、前席の開放感を高めたと言う。
エクステリアデザインは、今回メインターゲットが20代の若者ということもあり、20代のデザイナーチームを結成し、若者のライフスタイルに溶け込むデザインを目指したと言う。デザイン面では、愛着のあるフロントマスク、ラウンドしたフロントまわりの面構成、前後に伸びるロングルーフ形状、ワイド感を強調したリアまわりなどが特徴となる。
一方、後席はワゴンRと同様に高めのヒップポイントを保ちつつ、345mmという低いステップ高にすることで乗降性を高めた。また、前後にスライド(Gのみ固定式)したりリクライニングしたりするシートは、フラットなフロアと相まって快適性に優れると言う。
また、静粛性向上を目的とした防音・防振対策については、吸音タイプのルーフの採用、カーペット裏の吸音材の配置、ステアリング支持部の剛性向上、ペンデュラム(振り子)式エンジンマウントの採用(2WD車)、ロアアームブッシュの防振ゴム特性の最適化など、音の発生源から徹底的に対処したことを紹介。
そのほか、快適装備として注目を受ける新開発のタッチパネル式オーディオは、CD、AM/FMラジオのほか、iPodなどのデジタルオーディオプレーヤーとUSBソケットを介して接続することが可能。オーディオまわりはデザイン家電を想起させるピアノブラック調とし、モニター部は後退時に車両後方を映し出すバックモニターとして利用することもできる。
タッチパネルは軽く触れるだけで反応する静電容量式を採用し、選曲や音量調節などはスムーズに行うことができると言う。またタッチ操作のほかスライド操作にも対応しており、画面スクロール、音量調節、CDトラック選曲、ラジオ選曲などができる。
本田氏は、MRワゴンはハイトワゴンの特徴を持ちつつ、室内の居住性のよさやタッチパネルオーディオの採用などにより「新感覚の軽ワゴンに仕上がった。実際に触ってみてクルマのよさを体感して欲しい」と述べていた。
(編集部:小林 隆)
2011年 1月 20日