名二環新開通区間&JR東海「リニア・鉄道館」見学ツアーに参加してみた【前編】
3月20日に開通予定の名二環を一足早く体験

バス14台533名が参加した「名古屋第二環状自動車道特別見学とJR東海『リニア・鉄道館』貸切入場」

2011年3月10日開催



 3月10日、旅行企画・実施を行うクラブツーリズムが主催の「名古屋第二環状自動車道特別見学とJR東海『リニア・鉄道館』貸切入場」が開催された。3月20日に開通する名古屋第二環状自動車道(名二環)の名古屋南JCT(ジャンクション)~高針JCTの中間部分、鳴海IC(インターチェンジ)~有松IC間の徒歩見学と、3月14日にオープンしたJR東海「リニア・鉄道館」の事前見学がセットになったバスツアーで、この日だけの開催ということもあり、バス14台533名が参加した。

 3月20日15時に開通する区間は、伊勢湾岸道、名古屋南JCTと東名阪自動車道、高針JCTを結ぶ12.7km。新区間にできるICは南から有松IC、鳴海IC、植田ICの3つ。有松ICは国道1号線、植田ICは国道153号線と接続され、鳴海ICは新興住宅街に新たなICができることになる。名古屋東部と名古屋東南部を結ぶ太い幹線がなかったので、新区間の開通で人の流れや物流が大きく変わることが期待される。

名二環の新開通区間は12.7km新設されるICは3つ

 新区間の開通にともない、東名阪自動車道(名古屋西JCT~名古屋IC・高針JCT)の道路名称も名古屋第二環状自動車道(通称:名二環)に統一される。また料金も3月20日15時から新料金に変更される。

 従来の東名阪自動車道(名古屋西JCT~名古屋IC・高針JCT)は普通車は500円の定額料金だったが、新区間の開通後は、利用距離によって30kmは500円、30km以上は600円となる。

 ETC利用の場合は、出口に設置されたETCフリーフローアンテナで流出ICを確認し、距離に応じて料金を調整する。ETCフリーフローアンテナは出口上部に設置され、出口料金所はないので特別に減速する必要はない。従来の東名阪自動車道(名古屋西JCT~名古屋IC・高針JCT)の区間は30km未満なのでどの区間を利用しても従来通り500円となる。新区間のICを利用しても、距離が30km未満であれば500円で利用することが可能だ。

 ETCを搭載していない場合は出口ICを特定できないため、流入したICから最も遠い出口までの距離で料金が決まるためやや複雑な料金体系となる。

 内回り(反時計回り)の場合は最も遠い名古屋西JCTまでの距離が30km以上の場合600円。具体的には従来区間は30km未満なので500円、新区間から内回りを利用した場合が600円となる。当然新区間の有松ICから鳴海ICまで4.2kmを利用しても30km以上と判断され600円となる。

 外回り(時計回り)は最も遠い名古屋南JCTまでの距離が30km以上の場合600円。具体的には楠JCTから東側は500円、それより西の山田西IC~名古屋西JCTは600円となる。これにより従来は行きも帰りも500円だった区間が、行き帰りで料金が異なるケースが出てくる。例えば勝川ICから清洲西ICを利用する場合、行きは500円、帰りは600円となるので3月20日以降は注意していただきたい。

 名古屋西JCT~山田西ICから外回りを利用されている方は値上げとなるが、高速利用者のETC普及率は90%近くになっているので、影響を受ける人はそれほど多くないと思われる。

 今回開催された「名古屋第二環状自動車道特別見学とJR東海『リニア・鉄道館』貸切入場」に同行したのでその様子を紹介したい。

 参加者は出発地ごとに分かれ14台のバスで現地に到着した。バスは植田ICから名二環に流入し、鳴海ICまでそのままバスで移動、鳴海IC~有松ICの4.2kmが徒歩見学可能となった。

 9時40分、四日市、桑名方面からの参加者を乗せたバスが最初に到着した。バスを降りた参加者は説明員から新区間の説明を受けの後、4.2km先の有松ICに向け出発した。その後名古屋駅出発の10台のバスが続々と到着、最後の静岡発のバスが到着したのは11時過ぎだった。

植田ICから名二環と書かれたゲートをくぐり流入したいよいよ徒歩見学の始まり参加者はトンネル内で説明を受ける
説明を担当したのは中日本高速道路(NEXCO中日本)名古屋支社 名古屋工事事務所の紫垣課長名二環の工事進捗状況名古屋駅発のバスが10台と最も多く、内3台が到着
続いて4台が到着100人以上となると後ろからパネルは見えない写真を撮る人、ビデオ撮影する人、それぞれのスタイルで4km先の有松ICを目指す。筆者は、ほぼ最後尾からスタート

 では実際に4kmを歩いて目にしたものを紹介しよう。普段、車で高速道路を利用して気付いているが、実際に近くで見ることができないものがある。例えば非常電話の受話器やトンネルに設置された非常口の先の階段などは見たことがない人が多いであろう。それらの間近で見られるのが徒歩見学ツアーの醍醐味ではなかろうか。

普段から目にする非常電話。中の受話器を見たことがある人は少ないはずダイヤルはなく受話器を取って通話ボタンでセンターにつながる。会話ができない場合は受話器を取って「故障」「事故」などのボタンを押すこれも見慣れた消火器のボックス
中には2台の消火器が入っていたトンネルの照明は蛍光灯タイプ。側壁のケーブル類は、上段のハシゴの上が電力系、その下の黒いケーブルは通信系、下段のワイヤーはAM/FMラジオ用トンネルに設置された非常口。その扉の先は……
地上まで続く階段も見ることができた左右の路肩にあるマーカー。渋滞時に気付く人も多いと思うが、3枚の羽が車の風圧で回転し、それぞれの羽の内周、外周、中間のブラシで掃除する仕組み。手で回す見学者もいた

 走行中にその存在に気付かない設備もたくさんある。携帯電話のアンテナや、VICS用のビーコンなども歩いてみることで確認できる。

携帯電話のアンテナ。上段のグレーのボックスがアンテナ。下段左のボックスには移動通信基盤整備機構と書かれたシールが貼られていたので、全キャリアが共通で使用してるらしい高い位置に設置されているケースもあった電波VICS用のビーコン。右側のカマボコ型が従来タイプ。左側の丸いタイプが昨年から設置が始まったDSRC用の新型
ビーコンのすぐ下の側壁に2つのボックスがあり、それぞれの機器名は「路車間情報設備 情報ビーコン送信機」「路側無線装置(制御部)」となっていた。製造者は住友電気工業と日本電気。半分ほど通過、有松ICまで残り2km。トンネル出口が近付いてきた
側壁に「固定規制標識操作器」なるボックス上部に取り付けられた表示板を操作するボックスだった対向車線を見ると蛍光灯の間に多数のセラミックメタルハライド照明が見える。トンネル入り口側は明るくするために照明が増設されている
出口側のケーブル。下2本のアンテナ線は終端抵抗器で接続されている。ちなみにトンネル内のラジオは名古屋IC付近で受信し、各トンネル内のケーブルから送信している

 名二環は環境にやさしい道づくりに取り組んでいる。見ただけでは違いが分からないが、通常より隙間が多く空気を逃がすことで低騒音となる舗装が行われている。トンネル部の照明の電力は太陽光発電が利用され、昼間の電気集中をやわらげる工夫がされている。設置された太陽光パネルは約1万枚、パネル面積は1万4000m2。年間の予定発電量は約2180MWhとなり原油の削減量は55万L、CO2の削減効果は925tとなる。

トンネル出口に太陽光発電とLED照明のデモ装置が置かれていた太陽光発電の説明パネル。CO2削減能力は東京ドームではなくナゴヤドームの18倍トンネル上部に設置された太陽光パネルは約1万枚
太陽光パネルをさえぎると発電量が落ち、複数あるLED照明が徐々に消灯するトンネル出口から先は上り坂なので、道は空に通じているように見える
高速内はほぼ完成しているが、側道はまだ工事が行われている両側壁に取り付けられた金具は「この先工事、車線規制」などの看板を設置するためにある坂を上ると残り1km
カメラが設置されているすぐ下には画像処理式車両検知機とカメラ制御箱
画像処理式交通量計測設備は住友電気工業製今回特別に「ようこそ名二環」の文字が来場者のために表示されたトンネルの出入り口の側壁は保水素材と金網が張られいた。ツタが生長すると緑化壁になる
トンネル入り口に丸い筒は光量を測定する装置。天候に応じて入り口付近に増設されたセラミックメタルハライド照明で光量を調節する外回りの有松IC出口付近の短いトンネルに試験的にLED照明が設置されているLED照明は向きを変えた12個のLEDで構成されていた
入り口付近は照明を増設して明るめの設定。外が明るいと点灯する照明が増える有松ICの出口に設置されたETCフリーフローアンテナ。ETC搭載車はこの装置で料金を調整する。料金所と違い20Km/hまで減速する必要はない。トンネル出口から見た街並み。下の細い通りは旧東海道。古い家並みは有松宿。左のショッピングセンターが名鉄有松駅、写真右側に国道1号が通る
落下物などを発見したら道路緊急ダイヤル#9910。もちろん運転者以外が通報する徒歩見学のゴール直前。開通区間の終点、名古屋南JCTは伊勢湾岸道、名古屋高速に直結している新たに設置された料金自動精算機。上部は大型車、下部は普通車用
右側の黄色い部分が硬貨、中央ピンクが紙幣、左側のピンクがクレジットカードなど。右下のレバーを下げると係員につながり、カメラに障害者割引の手帖を見せると割引料金で通行できる一部の標識はLEDバックライト照明となり薄くなった。従来は厚みが20cmほどあった

 参加者は有松IC入り口付近まで徒歩見学をし、対向車線(内回り車線)を先回りしたバスに乗り中部国際空港(セントレア)で昼食をとり、その後、名古屋港金城ふ頭にあるJR東海のリニア・鉄道館に向かった。リニア・鉄道館の模様は後編でお届けする。

(奥川浩彦)
2011年 3月 15日