「ダンロップ・サーキット・レッスン」を受講してみた
コーナーリング、ブレーキングともにコース特性に合わせた攻略法を講習

「ダンロップ・サーキット・レッスン」には27名が参加した

2011年5月3日開催



 ダンロップ(住友ゴム工業)は5月3日、埼玉県の本庄サーキットでドライビングレッスン「ダンロップ・サーキット・レッスン」を開催した。

 昨年からタイムアタックイベント「DUNLOP DIREZZA CHALLENGE(ダンロップ ディレッツァチャレンジ)」の前日に開催され、参加者に好評を得ている「ダンロップ・サーキット・レッスン」。

 ドライビングテクニックの向上は無論のこと、ディレッツァ・チャレンジに参加する人のコース下見という目的でエントリーしている人もいるようで、今回はダンロップ・サーキット・レッスンにエントリーした27台中、14名が翌日に開催されるダンロップ ディレッツァチャレンジの開幕戦に参加したと言う。

 今回、筆者もエントラントの1人としてレッスンを受けてきたので、その様子をリポートしよう。

ゲストドライバーの田中哲也選手(左)と青木孝行選手
ドライビングレッスンを主催するダンロップの宮川義宏氏運営を取り仕切る大井貴之氏
会場となった本庄サーキット。最終コーナーからメインストレート方向を撮影参加車両はランサーエボリューション、S2000、シビック、RX-7、CR-Zとバラエティ豊かだった

 会場となった本庄サーキットは、関越自動車道の本庄児玉IC(インターチェンジ)から約10分。都心からアクセスしやすいサーキットの1つだ。

 コースは全長1112mのミニサーキットで、3つのタイトなヘアピンコーナーと2つのS字コーナーがあり、最終コーナーからアクセル全開で立ち上がっていくメインストレートは、4WDのターボ車ならトップスピードは150km/hに迫る。ヘアピンも単純な旋回ではなく、複合コーナーとなっているため、進入ラインやブレーキングポイントによってはタイム差が出るテクニカルなレイアウトが特徴だ。

緩く右にカーブする1コーナーの手前にスタート/フィニッシュラインがある1コーナー先に続くのがメインストレートメインストレートからフルブレーキングで進入する第1ヘアピン。進入よりも出口の方がRが緩くなっている
コース1番の難所となるダンロップヘアピン(第2ヘアピン)
第2ヘアピンの後は、短いストレートがあり1つ目のS字。その後、右に深く曲がりこむコーナーと続く
2つ目のS字コーナー。その後にはすぐ最終コーナーが待ち受ける
最終コーナーは左側にピットレーンがある本庄サーキットのコース図

 サーキットレッスンは7時にゲートオープンとなり、受付、開校式、ドライバーズブリーフィングという流れで進行した。

 レッスンの内容は以下のとおりで、まず初めにフリー走行があり、そのタイムによって3つのクラスに分けられ、クラスごとのレッスン、そしてフリー走行で閉められる。

フリー走行(15分)

レッスン1:ブレーキング(20分)

レッスン2:コーナリング①ダンロップヘアピン(20分)

レッスン3:コーナリング②S字~最終コーナー

フリー走行(10分)

フリー走行(10分)

ブリーフィングでは、講師を務める大井貴之氏、田中哲也選手、青木孝行選手からパッシングのポイントやコースの危険個所の説明があった

最初のフリー走行のタイムによってクラス分けが行われた。クラスによってゼッケンに貼られるテープの色が異なる

 プログラムはまずフリー走行から始まった。最初のフリー走行でタイムを計測し、記録したタイムによってクラス分けをする予定だったが、筆者を含め8名の参加者が本庄サーキット初走行だったため、この8名は3クラス目に入った。

 筆者の参加車両は初代ロードスター(NA)だが、フリー走行の序盤からエキゾースト周辺から排気漏れが発生してしまい、序々にその音が大きくなっていく。とうとう15分のフリー走行中盤すぎに、大音量となって走行不能になってしまった。パドックに戻って下回りを確認したところ、エキゾーストマニホールドが真っ二つに割れていた。

 日ごろのチェックやメンテナンスは重要だなとつくづく思いつつ、この後のリポートをどうしようか悩んでいたところ、レッスンの運営を行っている大井氏やダンロップの宮川氏のご好意により、ダンロップのデモカーのCR-Zを貸していただけることになり、なんとかレッスンを続けることができた。


積んでいた荷物を降ろしたり、ホイールナットのまし締めをしたりとサーキット走行前の準備を行う。タイム計測器はリアナンバーに装着
最初の3ラップくらいは排気漏れの影響もなかったが、フリー走行の中盤をすぎるとけたたましい排気音をあげるようになってしまった……

 コース上で行われるレッスンでは、全車にトランシーバーが預けられ、プロドライバーから1台1台直接指示を受けることになる。ドランシーバーは常に電源を入れているので、他の参加者のアドバイスも聞くことができるので、どんなラインを通っているのか、ブレーキングはどこから始めているのかといったことが分かる。

 まずは全クラスがフルブレーキングの練習を行い、その後にクラスごとにコース上の2つのポイントでレッスンを行う。1組目は最終コーナー手前のS字から最終コーナーを通過し、メインストレートを抜け1コーナーまで走りS字へ戻る。2組目はダンロップヘアピンの走行となる。

ゲストドライバーの田中選手と青木選手はコースが見渡せるところへ行き、各車にトランシーバーを使ってアドバイスを送る
コースを二分割して、S字クラスとヘアピンクラスに分けていた

 気を取り直して向かった最初のレッスンは、メインストレートと1コーナーを使ったフルブレーキングの練習。フルブレーキングによって、どのくらいの距離で止まることができるのかを体に覚えさせることがポイントとなるレッスンで、ブレーキング開始の目安となるポイントと、ブレーキング終了の目標ポイントにパイロンが立てられる。この区間でいかに短く止まることができるかが、練習の課題となる。

 コース上でもっともスピードが出るメインストレートから1コーナーへのフルブレーキングが練習ステージなので、クルマのブレーキ性能がはっきり分かる。また、ABSの特性を覚えるにも最適で、ブレーキングではABSを介入させてしまうと制動距離が伸びることもあるので、いかにABSを効かさずに短く止まれるかといった練習にもなる。

 CR-Zはハイグリップラジアルタイヤ「ディレッツァ スポーツZ1 STAR SPEC」を履いていたことや、ロードスターよりもストレートスピードが伸びないことから、最初はかなりブレーキングポイントが奥だった。しかし、何回か試走しているうちに的確なポイントも把握でき、1つ目のパイロンよりも奥でブレーキを開始しても止まれることが分かった。

足まわりとタイヤ&ホイール、マフラーを交換したダンロップデモカーのCR-Zをレッスンに使わせてもらった

 続いてのレッスンは、本庄サーキットの難所となっているダンロップヘアピン(第2ヘアピン)で行われた。バックストレートから左へ旋回してヘアピンとなるレイアウトだが、進入のコース幅は広いが出口は狭くなっていて、どのラインを走ればよいか分かりづらい。立ち上がりがとにかく狭いので、車両の向きがしっかり変わっていないとプッシュアンダーが出やすいので注意が必要だ。ポイントとなるのは進入のラインと立ち上がりの車両の角度、そしてブレーキングポイントの3つとなる。

 田中選手も、ダンロップヘアピンを「本庄サーキットでもっとも難しいコーナーで、他のサーキットのコーナーと比べても難しいレイアウトを持っている。ブレーキングポイントの目安もないし、進入のラインもどこを走ればよいのか判断しづらい。そして立ち上がりでしっかりとクルマの向きが変わっていないと、その先のヘアピンまでのタイムが稼げない。何度走っても難しさを感じるコーナーです」と語っているように、プロドライバーも攻略するのにてこずってしまうレイアウトなのだ。

 レッスンでは、バックストレートからステアリングを切りクリッピングへ車両を向けるところとクリッピングポイントにパイロンを立て、理想のラインとブレーキングの姿勢を体に覚えさせる。ただ、ブレーキングはバックストレートを真っ直ぐ走ってきて、ヘアピンに向けてステアリングを切ったところから始まる。なので、強い横Gが掛かっていると挙動が不安定になるとともに制動距離が伸びてしまうので、注意が必要となる。

 ブレーキの感覚は人やクルマによってそれぞれだが、筆者は思っていたよりも突っ込んでいっても止まることができ、またクリッピングを外すこともなかった。ラインは、アウトインアウトというよりもミドルから進入してインアウトという印象。パイロンがあったためライン取りやブレーキングの目安になり、どのように攻めたらよいのかがはっきりした。

バックストレートにはライン取りを分かりやすくするためにパイロンが立てられるパイロンの外側を通りクリッピングに向けてステアリングを切った直後にブレーキングを開始するクリッピングにもパイロンがあり、そこで停止する。このときに突っ込みすぎやブレーキの余りに注意
クリッピング付近では田中選手と青木選手がライン取りとブレーキングをチェックする
チェック後、走行したドライバーに対してアドバイスが送られる

 最後のレッスンは、S字から最終コーナーへの進入。S字は1つ目、2つ目ともに縁石をカットすることになるが、縁石を大幅にカットすると内側に凹凸があるので、クルマの下回りをヒットしやすいとの注意が事前に与えられていた。

 後輪駆動車だと、2つ目を通過したあとに右にGが掛かっているので挙動が乱れやすく、外側の崖方向にクルマが向きやすい。一方、CR-Zは前輪駆動で挙動も安定していたので、1つ目の進入からほぼアクセル全開で通過することができた。S字前のヘアピンの後がスタート位置だったので、コースを周回したときよりも速度が乗らないので、全開で通過できたようだ。

 最終コーナーはピットロードへの導入路が左側にあり、コースとの境にピットロードを示す凹凸が設けれている。その境のギリギリまで左に寄せてから、クリッピングポイントに向けてステアリングを切っていく。CR-Zよりもスピードが乗るクルマだと、S字2つ目の横Gがブレーキング時に残っているかもしれないので難しさを感じるかもしれない。

S字は縁石をカットしつつ最短距離で走行する

 以上の3つのポイントのレッスンを受け、午前中のプログラムは終了。

 昼食を終え次に行われたのは、田中選手、青木選手、大井氏による同乗走行。午前中のレッスンでライン取りやブレーキングのポイントを把握した上での同乗走行なので、よりプロドライバーの的確なドライビングを理解することができた。特に、第1ヘアピンとダンロップヘアピン、S字の攻め方は分かっていたつもりだが、それらのコーナーをつなげる走り方は実に参考になった。何より、自分のクルマでどの程度まで攻めることができるのかを知ることは貴重な財産になる。

 また、同乗走行とともに各クラス10分×2本のフリー走行も行われた。

 同乗走行やレッスンの成果を試そうと、各車ともはじめに行われたフリー走行よりもアグレッシブにコースを走行していた。本庄サーキット初走行だった参加者に話を聞いたところ、「午前中の走行ではどのラインを走ったらよいか分からなかったのと、どこまで攻められるのか不安でぎこちなくドライビングしていたが、レッスンや同乗走行を受けて、かなり限界まで攻めることができました。結果としてタイムが2秒以上アップすることができた」と、レッスンの効果を語ってくれた。

昼食中は気軽にゲストドライバーと団らんできる昼食後には講師陣とともにコース上に出て、攻め方のポイントを教わることができた。実際にコースを歩くことで危険なポイントや舗装を間近に確認でき、実にためになるすべての参加者がプロドライバーの同乗走行を体感できた
最後は大井氏からリザルトが配られてレッスンは終了となった

 「ダンロップ・ドライビング・レッスン」は、ディレッツァ・チャレンジにエントリーするハイレベルな参加者からサーキット初走行の人までエントリーしているが、タイムによってクラス分けされるのでスキルや車両に差があっても参加者が困惑することもない。

 また、参加者を少人数に抑えているため、気軽にゲストドライバーにアドバイスを求めることもできるので、ドライビングスキルを上達させるには最適なスクールと言える。そして、ディレッツァ・チャレンジの参加を予定している人は、より実戦的なセッティングのアドバイスやスキルを身につけることができるので、このレッスンが人気を得ているのがうなずける。

 Car Watchでは、翌日に行われたダンロップ ディレッツァチャレンジも取材してきたので、後日その模様をお伝えする。

(真鍋裕行)
2011年 5月 16日