タイムアタックイベント「ディレッツァ・チャレンジ」リポート
インラップと計測ラップでライン取りを変える参加者の工夫に注目

本庄サーキットで行われたタイムアタックイベント「ディレッツァ・チャレンジ」

2011年5月4日開催



 5月3日に行われた「ダンロップ・サーキット・レッスン」については既報のとおり。同レッスンが終了した夕方から夜半にかけて本庄サーキットは雨が降ったが、タイムアタックイベント「ディレッツァチャレンジ2011」の開幕戦となる5月4日は、朝から好天でコースも完全に乾き格好のタイムアタック日和となった。

 開幕戦へのエントリーは、クラス1(排気量1900cc以下&排気量問わずFF車)が15台、クラス2(排気量1901cc以上のNAエンジン搭載2WD)が16台、クラス3(排気量1901cc以上の過給器付きエンジン搭載2WD)が11台、クラス4(排気量1901cc以上の4WD)が19台。タイムスケジュールは、7時からの参加受付、車検、ドライバーズブリーフィングという順で進行した。

早朝からパドックは大勢のエントラントで埋まっていた

 ドライバーズブリーフィングでは、競技委員長を務める大井貴之氏からタイムアタック時の注意点やタイム短縮のポイント、縁石をカットするときのルールなどが説明された。

 また、ゲストドライバーの青木孝行選手と田中哲也選手からは、本庄サーキットはコース幅が狭く前車を抜くポイントが限られているため、ダンロップヘアピンから最終コーナーの間で前車を抜こうとすると確実にタイムが落ちてしまうため、アタック中でないクルマは後方をしっかり確認し、コース幅の広いダンロップヘアピン前までに道を譲ること、アタック中のマシンは前車へ知らせるためにヘッドライトをハイビームにするといったことなど、タイムアタックイベントならではの他車への配慮を解説した。

ゲストドライバーの田中哲也氏(左)と青木孝行氏住友ゴム工業の宮川義宏氏
大会競技委員長の大井貴之氏車検委員長の熊倉俊夫氏ドライバーズブリーフィングでは、コース上の危険なポイントや抜かれるときの最善な場所などを説明していた
じゃんけんで勝った人はゲストドライバーがドライブする同乗走行の権利を得られるダンロップのスポーツラインのタイヤとホイールも展示されていた

 走行は、各クラス10分間の練習走行からスタートした。参加車両の少なかった3クラス以外はクラスを2つの走行枠に分けており、同時にコースインするのは多くて10台前後。練習走行の枠ではゲストドライバーの同乗走行もあり、コースの特徴やコンディション、グリップレベルなどを聞くことができていたようだ。

 練習走行の後は、各クラスタイムアタックの1本目を開始。クラス1~3ではトップ3が43秒前後のタイムをマークする一方で、クラス4の4WD勢はトップ争いが41秒台とハイレベル。この日の気温は25度にも達しようかというコンディションにも関わらず、昨年に本庄サーキットで開催されたディレッツァ・チャレンジ第3戦よりも各クラスともにタイムアップしていた。

練習走行からコースでは熾烈なタイムアタックが繰り広げられた練習走行中には同乗走行も実施された

 タイムアタック1本目のあとは1時間の休憩となり、昼食やこの時間を使ってコースの完熟歩行が行われた。完熟歩行は、田中哲也選手とエントラントが徒歩でコースを1周し、舗装や縁石の状態を確認できるとともに、コーナーによってはブレーキングポイントや攻略方法をレクチャーしてくれる。歩くことによって、運転時に感じ取れない微妙なアップダウンや舗装の違いを確認できるというわけだ。

 田中選手は「本庄サーキットはブレーキングのポイントを決めるのが難しい。何でもいいので、目印を見つけて自分なりのポイントを作ることを心がけよう」といったことや、完熟歩行の重要性について「プロドライバーでもコースを歩くことは必ずやります。歩きながらイメージを作り、それをドライブに活かしています」と、プロならではの視点から参加者にサーキット攻略法を語っていた。

完熟歩行では、ブレーキングポイントや路面の舗装状態を解説したほか、縁石はどこまで使えるかなど、直接見ないと分からないポイントを紹介していた

 ディレッツァ・チャレンジは、最速ラップの記録で順位が決まるのではなく、タイムアタック1本目と2本目の平均ラップで順位が決まる。そのため、1本目で好記録を出した選手も2本目で記録を落とすと抜かれてしまう可能性があるので、休憩後に行われた2本目も全力でタイムアタックを行っていた。1本目よりも気温が上がり、タイヤが消耗している中でもタイムを短縮する選手が多く、1本目と同様に各クラスともに熾烈な争いが繰り広げられた。

 結果は以下の通りで、各クラストップ3が、袖ヶ浦サーキットで開催される決勝大会への切符を手に入れた。

クラス1

左からクラス1で優勝した池田糧選手、2位高山尚也選手、3位田中健大選手
順位ナンバー名前形式タイム1タイム2タイム平均
1位10池田 糧YF☆戸辺POWERしびっく/EG642.94842.99642.972
2位4高山 尚也フェアリーズCR-X EF-8/EF-843.08343.48343.283
3位3田中 健大エンプラ☆フカヒレ君☆DXL/EG3改43.33243.51743.424

クラス2

左からクラス2で優勝した内藤頼重選手、2位山口浩選手、3位熊倉徹選手
順位ナンバー名前形式タイム1タイム2タイム平均
1位23内藤 頼重オートスポーツナイトウAP1/AP143.33943.52543.432
2位22山口 浩CWRTコロリンコMKS2000/AP243.75343.73443.743
3位24熊倉 徹ARVOU☆KUMAN☆S2000/AP143.98543.82443.904

クラス3

左からクラス3で優勝した稲垣茂選手、2位川口修司選手、3位鰐部光二選手
順位ナンバー名前形式タイム1タイム2タイム平均
1位46稲垣 茂TFR SJJ@RX-7/FD3S42.73242.30942.520
2位42川口 修司チーム菌ストラダーレRX-7/FD3S42.55542.79042.672
3位41鰐部 光二wako's suemazda RX-7/GF-FD3S43.18742.88843.037

クラス4

左からクラス4で優勝した木原大二郎選手、2位浅見真吾選手、3位内藤源氏選手
順位ナンバー名前形式タイム1タイム2タイム平均
1位61木原 大二郎Monster INI-D部長 CT9A evo9/CT9A41.44641.48041.463
2位70浅見 真吾ATTKD@ASAMI34R/BNR3441.52041.57441.547
3位63内藤 源氏ナイトー自動車KYBランサー/CT9A42.09141.85041.970

 ところで、コースサイドから見ていて興味深かったのが、最終コーナーのライン取りだ。計測前とアタックラップでは、ラインが大幅に異なっていた。最終コーナーから続くメインストレートは、コース上でもっともスピードが高くなるポイントで、トップスピードを伸ばすことができれば、それだけラップタイムも短縮することができるわけだ。

 そのライン取りの違いは、インラップは最終コーナーのクリップをあえて取らないという戦法だ。コーナーのアウトラインを沿うように通り、コーナーの湾曲を緩くさせ、アクセルを全開にする位置を早めてストレートスピードを稼ぐ。一方、計測ラップは最終コーナーを小回りし、コースの最短距離を走る。最終コーナーから計測ラインまでの距離を短縮させることによって、タイムを稼ごうとしているようだ。

 このように、各車がコース上でできる限りのタイム短縮方法を見つけ出したり、最適なラインを考え出したりしているのが非常に印象的だった。また、細かくセッティングを変え、コースにアジャストしていく様子は走行会とはまた違った本気度が垣間見え、エントラントでなくても楽しめるイベントとなっている。

 ちなみに見学は無料となっているので、最速のタイムアタッカーたちのライン取りやクルマ作りを見学するのも面白いのではないだろうか。

最終コーナーなら続くメインストレートはコースでもっともスピードが出る個所。トップスピードを高めるには、最終コーナーのラインを大きく変えるのが有効なようだコーナーの奥が鋭角なダンロップヘアピンは、進入の角度とブレーキングポイントが難しい

 今年は残り3戦が予定されていて、第2戦は5月29日の美浜サーキット、第3戦は9月25日のタカスサーキット、第4戦は10月2日の日光サーキットとなっている。各大会のクラス上位3名は、11月27日に袖ヶ浦サーキットで開催される決勝大会へ進出する権利が得られ、全国各地から集まったファイナリストがしのぎを削ることになる。

(真鍋裕行)
2011年 5月 17日